江田島軍学校にて、戦治郎が榛名のいじめ問題解決の為に奔走していた頃、空達鎮守府建築組は一体どうしていたかと言えば……
「今回は本当に助かりました……、まさかあの中にそんな希少な深海魚がいたなんて……」
「俺もまさか発注していた魚の中に、未だに人類に発見されていない未知の深海魚が混ざっているとは思ってもいなかったぞ……」
その日、横須賀鎮守府にいた頃に戦治郎がクトゥルフに発注していた、艦娘ランドの水族館に展示する為の魚が、クトゥルフ配下のディープ・ワンの手によって艦娘ランドに届けられたのだが、届けられた魚のその多くが現在艦娘ランドの管理を任されている高雄達が知らない様な魚ばかりで、対処に困った高雄が空達に助けを求め、その結果鎮守府建築組の中で最も知識量が多い空が艦娘ランドにライトニングⅡに乗って出向き、魚達の中に未だに人類が遭遇した事の無い未知の深海魚が混ざっていた事に驚きながらも、現在の人類でも飼育可能な品種だけを残し、残りはこれらを持って来たディープ・ワンに持ち帰ってもらう様手続きをして何とか問題を解決すると、空と高雄はこの様なやり取りを交わしながら、ルルイエに帰還するディープ・ワンの背中を見送るのであった
その後、高雄から近い内に艦娘ランドが開園出来そうな程、艦娘ランドのスタッフとなる艦娘達の育成が進んでいる事を聞いた空は、その事を戦治郎に報告し戦治郎からのGOサインが出るまでは、現状を維持する様にと高雄に指示を出すと、ライトニングⅡに乗って長門屋鎮守府建設予定地へと帰還するのであった
そうして長門屋鎮守府建設予定地に戻って来た空は、目の前の光景を目の当たりにすると……
「これは一体どうしたと言うのだ……?一体此処で何が行われていると言うのだ……?」
思わずそう呟いてしまうのであった……
空が目にした光景、それは……
「ねぇ光太郎、貴方本当に悪いと思ってるの?」
「ごめん……、本っっっ当にごめん……」
「貴方、さっきからずっとそう言ってるわよね?」
目を吊り上げ両手を腰に当て、前屈みになりながら光太郎に詰め寄るキャシーと、そんなキャシーの目の前で俯いたまま正座し、壊れたラジオの如く謝罪の言葉を述べ続ける光太郎の姿であった……
因みにこれが原因となって、今の建築作業は完全に止まってしまっている……
「空さん、戻って来たんか……」
「龍驤か、これは一体どうしたんだ?何故此処にキャシーがいるんだ?」
空が戻って来た事に気付いた龍驤が、空に向かってウンザリした様子で声を掛け、それに対して空がキャシーが此処にいる理由を龍驤に尋ねたところ、龍驤は深い溜息を吐きながら、空の質問に答える為に言葉を紡ぐのであった
如何やらキャシーは、通信機で何時でも連絡が取れる様になったにも関わらず、一向に連絡を寄越してくれなかった光太郎に腹を立て、ワンコとリチャードから有給をもぎ取ると、こうして光太郎にこの事を問い詰める為に来日して来たのだそうな……
「キャシーさんな、ウチらが西方海域を発つより前に、光太郎さんと連絡出来る様になったら連絡寄越す様にって約束してたみたいなんよ……。そんで光太郎さん、この約束の事今の今までスッカリ忘れとったんやと……」
「あいつはまあ……、南方海域に行ってからは海域警護で頻繁に出撃していたり、日本に来てからは資格取得で忙しかったからな……。その多忙さ故に約束を忘れていた可能性もあるし、その約束を社交辞令か何かだと受け取っていた可能性もあるからな……」
龍驤から今の状況の説明を受けた空が、光太郎をフォローする様にそう言うと、それを聞いた龍驤は納得した様にあ~……と言う声を発しながら、再び光太郎達の方へと視線を戻すのであった……
因みに何故キャシーの方から連絡を入れなかったのかと言えば、もし自分が連絡を入れるタイミングが、時差の影響で光太郎達が就寝している時間だったり、戦闘中だったりで光太郎に迷惑を掛ける可能性があると考え、光太郎に嫌われる事を恐れたキャシーは、自分から光太郎に連絡を取ろうとはしなかったのである
さて、こうしてまるで光太郎の彼女の様に振舞うキャシーだが、何故彼女は光太郎に対してこの様に振舞っているのか……
それはキャシーがアムステルダム泊地とマダガスカルの問題が解決した後、光太郎と出会い彼の話を聞いている内に、彼に対して本気で惚れこんでしまったからである
光太郎もキャシーも1度は大きな挫折を経験し、地獄の泥を舐めた事があるのである
そんな中光太郎は再び立ち上がり、その経験を糧にして行動し、その結果生前果たす事が出来ず、未練とトラウマとなって彼を縛り続けていたものを、彼はアムステルダム泊地に囚われていた望救出と言う形で、自分の手で見事に断ち切ってみせたのである
キャシーはそんな光太郎を羨ましく思うと同時に、光太郎の命を懸けてでも命を救おうとするその姿勢と、話の最中に何度も彼女に見せた、憑き物が落ちたおかげで浮かべられる様になった、光太郎のその眩しい笑顔に惹かれてしまったのである
故にキャシーは光太郎から嫌われる事を恐れる様になり、光太郎からの連絡が来ない事に不安を覚え、ワンコから連絡が取れる様になったと聞くなり、ワクワクしながら光太郎からの連絡を待つも、それでも全く連絡が来ない事に今度は怒りを覚え、リチャードから彼等が日本に到着したと言う連絡を受けるも、それでもやっぱり連絡が来なかった事でキャシーの怒りは頂点に達し、遂に彼女は光太郎に直接説教する為に、こうして日本にやって来たのである……
それからしばらく時間が経過し、光太郎に対してのキャシーの説教が終わり、これでようやく作業が再開出来ると空達が思ったその刹那……
「空、悪いけど光太郎借りてくわ。光太郎には私を心配させた罰を、キッチリ受けてもらわなくっちゃいけないからね」
キャシーが空に向かってそう言い放ち、それを聞いた空達がその言葉の内容に驚き呆然とする中、キャシーは光太郎を引っ張って何処かへ行ってしまうのであった……
「こりゃ今日は作業どころじゃねぇな……」
「だな……、俺が見た限りこの場にいる者達全員に、今から作業を行おうと言う気力は残って無さそうだからな……」
そんなキャシー達の背中を見送る輝の呟きに対して、空は短くこの様に答えると今日の作業は中止、本日は急遽休日にする事を宣言するのであった
因みにキャシー達が向かった先は、佐賀県内にある大型のショッピングモールの1つであり、そこに光太郎が横須賀にいる間に購入した日産のGT-Rで向かったキャシーは、光太郎に荷物持ちをさせながら、光太郎の奢りで大量に衣服や化粧品を買い込み、買い物を終えて長門屋鎮守府建設予定地に戻り荷物を艤装の中に格納しすると、光太郎にこんな目に遭いたくなかったらこまめに連絡する様にと釘を刺すと、満足そうな笑みを浮かべながらマダガスカルへと帰っていくのであった……
「今日は大変な目に遭ったな……、まあこれは俺の怠慢が招いた結果か……。次からはこんな事が無いように、気を付けなくちゃだな……。……って、ん?」
疲労困憊と言った様子でキャシーを見送っていた光太郎が、ゲッソリしながらこの様に呟き、この疲労を抜く為に自室に戻ってゆっくり休もうと振り返ったその直後、その視界に大量の荷物を背負って工廠から出て来るなり、何時になく真剣な表情を浮かべながらライトニングⅡを展開する空の姿が映るのであった
「空?そんなに荷物を抱えてどうしたんだ?」
光太郎がそんな空に歩み寄り、この様に尋ねたところ……
「光太郎か、済まないが少し気になった事があってな……。その調査の為、しばらく留守にする」
「調査って……、何の調査だよ?」
ライトニングⅡを展開し終えた空が、その上に乗りながらこの様に答え、それに対して光太郎が重ねて質問を投げかけると……
「空母棲姫のパンツについての調査だ」
空はこの様に答えた直後、ライトニングⅡのエンジンを点火し、凄まじい速度で水平線の彼方へと消えて行ってしまうのであった……
「……はっ?」
予想の斜め上を閃光の如き速さですっ飛んでいく空の返答を聞いた光太郎は、空が飛んで行った方角へ間抜けそうな顔を向けながら、思わずこの様な声を上げるのであった……