「これは……、一体何が起こっているニュ……?」
相棒であるハチの弾切れ宣言によって、絶望の淵に叩き落されてしまっていたクロは、今自分達の目の前で繰り広げられるドッグファイトを目の当たりにするなり、思わず自身の中に湧き上がる疑問を口に出してしまうのであった
現在彼等の目の前では、艦戦であるワイルドと爆戦のベアによる航空戦が展開されており、つい先程まで自分達を追い詰めていた空母棲姫の艦載機達を、その機動力で翻弄しながら次々と撃ち落としていたのであった
いや、それだけではない……。ワイルド達が内側から外側に向かう様に相手を切り崩しに掛かっている様に、アグとトムがコンビを組んで空母棲姫の艦載機の群れを外側から攻め落としに掛かっていたのであった
「ンニャ~?もしかしてあの子達~、ハチ達を助けてくれるのかニャ~ン?」
「その通りだミャー!」
クロの呟きに続く様にしてハチがこの様な言葉を発したその直後、ワイルド達との話し合いの結果、この戦闘では貢献出来なさそうな艦攻であるヘルが、この状況を見て戸惑う彼等に接近し、ハチの疑問に答える様にこの様な言葉を口にするのであった
「ミャー達はご主人様の指示に従い、アンタ達を助けに来たんだミャー!」
「ご主人様って……、君達は誰かに飼われているのかニュ?もしかしてそのご主人様とやらも、僕達の事を狙っているんじゃないかニュ……?」
「細かい事は聞いてないから分かんないミャー!って言うかアンタ達ホントボロボロだミャー!そんな姿でよく飛んでいられるミャーね……。てな訳で!アンタ達はツベコベ言わずにミャーに付いて来て、ライトニングⅡで補給と修復を行うのミャー!」
「ちょっと待つニュ、何勝手に話を進めているニュ。僕達はまだ君達の事を……」
「クロ~、ハチとしてはここは素直にあの子の言う通りにしておくべきだと思うニャ~ン、正直なところ~、燃料の方もそろそろ空っぽになりそうなんだニャ~ン」
突然現れ自分達を助けようとするヘル達を訝しみながら、クロが話を強引に推し進めるヘルに向かってそう言った直後、ハチがのんびりとした口調でこの様な言葉を口にし、それを聞いたクロは仕方が無いとばかりに、渋々と言った調子でヘルの提案に乗る事にするのであった
「それで……、取り敢えず僕達は君の提案に乗るんだけど、そのライトニングⅡとやらは一体何処にあるんだニュ?」
「それだったらそろそろ……、来たミャー!」
ヘルの提案に乗る事にしたクロが、今の目的地であるライトニングⅡの所在をヘルに尋ねたところ、ヘルがこの様に返答したその次の瞬間、先程まで空が乗っていたであろう無人のライトニングⅡが機首を天に向け、空母棲姫の艦載機達を体当たりで叩き落しながら驚くべき速度で急上昇してクロ達の目の前まで来ると、クロ達に乗り込めと言わんばかりにハッチを開いてその場で滞空するのであった
その後、突然の出来事に驚き呆然をするクロを、ヘルが強引にライトニングⅡに押し込み、その様子を見届けたハチは……
「中々面白いものが見れたニャ~ン」
などと言いながら、ヘル達の後に続いてライトニングⅡに搭乗するのであった
「おいおいおい……、何だありゃ……?」
突然現れたワイルド達とライトニングⅡの様子を、呆気に取られた様子で海上に浮かぶ自身の艤装の上で見ていた空母棲姫が思わず疑問を口から零したところ……
「中々優秀な航空隊と艤装だろう?どちらも俺の自慢の代物だ」
ワイルド達の後を追ってやって来た空が、この空母棲姫に向かって得意げな表情を薄っすらと浮かべながらこの様な言葉を掛けるのであった
「あれはてめぇのなのか……、あんなん持っておきながら、てめぇは俺の獲物を横取りしようとしてんのかよ……っ!?」
「横取り?俺は只1人の猫好きとして、あの白猫艦載機達を虐待していたお前の行為が許せず、パンツ調査のついでにお前に灸を据えてやろうと思っただけだ」
「パンツ調査って何だよっ!?っとぉそれは兎も角、俺の邪魔しようってんなら容赦しねぇぞっ!!!」
空の言葉を聞いた空母棲姫が、その表情に怒りを滲ませながら空に向かってこの様な言葉をぶつけ、それを聞いた空がこの様に返答した直後、空母棲姫は空のパンツ調査発言に疑問を覚えながらも、怒りを露わにするとこの様に叫びながら、空に向かって艤装に付いている砲を向け、空に砲弾を浴びせようとその砲を発射するのであった
そうして空母棲姫の艤装の砲から砲弾が放たれた事を視認した空は、その場で半身をズラして砲弾を回避すると、この空母棲姫の意識を刈り取る為に即座に行動を起こし、一瞬の内に空母棲姫との間合いを詰め、得意の光速正拳突きを空母棲姫の腹目掛けて放つのだが……
「うぉっとぉっ!?危ねぇっ!!?」
なんとこの空母棲姫、この様な言葉を口にしながらあの空の正拳突きを上半身を思いっきり反らして回避してみせたではないかっ!
(……何っ!?俺の正拳突きを避けた……、だと……っ?!パンツ調査の為に殺さない様手加減しているとは言え、この正拳突きにはそこらの深海棲艦では反応出来ない筈……っ!?)
これは流石に躱せないだろうと思いながら打ち出した自身の攻撃を、ものの見事に躱された空が内心で驚きの声を上げていると……
「おらぁっ!!!」
空母棲姫は上半身の仰け反らせちゃ時の勢いを利用して、バック宙をする要領で空の顎目掛けて蹴りを放ってくるのであった
それに気付いた空は繰り出された蹴りを躱しつつ、相手の足をその手で掴み、そのまま前に押し込んで相手の上半身を艤装に叩きつけ、そこから流れる様に相手の足を抱え込む様に持ち方を変え、パンツ調査の為に相手を殺さない様細心の注意を払いながら、龍気を使っていない普通のプロレス技のドラゴンスクリューを繰り出して、空母棲姫を艤装から遠く離れた場所へ投げ飛ばすのであった
(俺の拳を避けた事と言い、先程の蹴りと言い……、こいつまさか……)
「まさかとは思うが……、お前……、転生個体なのか……?」
「転生個体ぃ?何だそりゃ?まぁ確かに俺は日課のランニング中、トラックに跳ねられそうになっていた子供を庇ってトラックに跳ねられて、気付いたらこんな姿になっていたが……。まさか俺、それが原因でなろう小説の主人公みたく、艦これの世界に異世界転生しちまったってのか?」
先程までの空母棲姫の動きから、こいつは転生個体なのではないか?と思った空が、空母棲姫に対してこの様に尋ねてみたところ、それを聞いた空母棲姫は不思議そうな表情を浮かべながら、この様な言葉を口にするのであった
(確定か……、そうなるとこいつのデータは使えそうに……、いや待て……、寧ろこれは好都合なのではないか?こいつのパンツの有無が分かれば、俺が異端なのか否かがハッキリするのではないか……?)
「まあ概ねその認識で合っているな……、お前の様子を見た限り、如何やらお前はこの世界の事情について……」
「あっはっはっはっはっ!!!そうかよっ!俺も転生者って奴になっちまったのかよっ!!たっはっはっはっはっ!!!」
空がこの様な事を考えながらも、この転生個体の空母棲姫に向かってこの様な言葉を掛け、こちらの世界の事情を教えるついでにパンツの有無の確認をしようと話を持ち掛けようとしたところ、話の途中で突然この空母棲姫は高笑いし始めるのであった
そんな空母棲姫の様子を空が怪訝そうな表情で見ていると、空母棲姫は高笑いを止めると空の方へと向き直り……
「こういうのは、大体特殊な力が備わってるってのがお約束って奴だよなぁっ!?さぁ目覚めろ俺の特殊能力っ!!!そんで俺の戦力強化の邪魔をしたあいつをぶっ潰せっ!!!」
この様に叫びながら腕を横薙ぎに振ったその直後、この空母棲姫が振るった腕の軌道上に艦載機の群れが現れ、特攻よろしく空目掛けて恐ろしい程の速度で飛んで来るのであった
これは不味いっ!!そう思った空が急いで艦載機の特攻を受ける為に、腕を×字状に交差させ、防御態勢を取るのだが……
「……?」
「……あん?」
件の艦載機達は文字通り空の身体をすり抜け、何処か彼方へと飛んで行ってしまうのであった……
「待て待て待てっ!!!そこは普通、身体に当たったところで大爆発するとこだろうがっ!?!何すり抜けて行ってんだよっ!??」
「あれは実体の無い幻か……?見た目は実体がある艦載機と見間違えるほど精巧に出来ていたが……」
その様子を見ていた空母棲姫が地団駄を踏みながらこの様に叫び、幻で出来た艦載機達が飛び去って行った方角に顔を向けながら、空が思わずこの様な言葉を漏らすと……
「……あっ!いい事思いついたっ!!!」
それを聞いていた空母棲姫は、その言葉で何かを閃いたのか、ハッとしながらこの様な言葉を口にすると、先程と同じ動作で幻の艦載機達を生み出し……
「行けおめぇらっ!!直接ダメージを与えられねぇってんなら、その身体であいつの艦載機達を攪乱してやれっ!!!」
幻の艦載機達にこの様な指示を送り、それを聞いた艦載機達は、今も尚空中での戦闘を繰り広げるワイルド達の方へと向かって飛んで行くのであった
これによりワイルド達は幾ら弾を叩き込んでも墜落しない幻の艦載機に驚き混乱し、その隙を付いて攻撃して来る空母棲姫の艦載機達に苛立ちと焦りを感じる様になり、徐々に追い詰められ始めるのであった……
「……如何やら俺は、お前に余計な事を吹き込んでしまった様だな……」
「おお、助言ありがとうな。お陰でてめぇの艦載機も頂けそうだぜっ!」
「まるで俺の事を容易く仕留められる様な言い方だな……、本当にお前にこの俺が倒せるとでも思っているのか?」
「余裕ぶっこいてんじゃねぇぞてめぇっ!そのムカつく面、グチャグチャに歪めてやらぁっ!!!」
空母棲姫に余計な知恵を与えてしまった事を後悔するする空が、溜息を吐きながらこの様な言葉を口にすると、空母棲姫はそんな空に向かって生意気な口を叩き、それを聞いた空は少々ムッとしながらこの様に尋ねたところ、空母棲姫はそう叫びながら空に向かって突撃して来るのであった……
それからしばらくの間、空とこの空母棲姫は一進一退の激しい攻防を繰り広げ、その最中、空はこの空母棲姫の体捌きから、この空母棲姫は格闘技の心得を持っている事を察知するのであった
そんな中……
『ギャーッ!!またハズレだったニャーッ!!!』
『この幻のせいで、弾薬がモリモリ減っていくミーッ!!』
『実体がある方の攻撃も、地味に鬱陶しいんだニーッ!!?』
『空っ!!早くそいつを叩き潰すニ"ャッ!!!そうすりゃこの幻も消えるはずだニ"ャッ!!!』
『ご主人様ーっ!!早くしないとこっちがジリ貧だナーッ!!!』
この空母棲姫が出した幻の艦載機達に悪戦苦闘する、ワイルド達の悲痛な叫びが空の頭の中に響き渡る……
(何とかしてやりたいところだが……、こいつ……、思った以上に出来る……っ!?こうなったらこいつのデータを諦めて、本格的に仕留めにいくか……っ?!)
それを聞いた空が、内心で舌打ちしながらそう呟いたその時だ
『こちらクロだニュ、如何やら早速恩返しが出来る機会が巡って来たみたいだニュ』
『ハチだニャ~ン、確かにこの状況、クロならパパ~っと解決出来そうだニャ~ン』
不意に空の頭の中に、ライトニングⅡ内で補給を済ませたクロとハチの声が響き渡り、その直後にトムが発艦する際に使用するライトニングⅡのカタパルトが動き出し、そこから2つの影が飛び出して来るのであった
その2つの影を視認するなり、空は思わず自身のその目を疑う。何せその2つの影は、どちらもトムが装備している様な兵装を纏い、トムに匹敵するほどの速度で航行しているのである。これには流石の空も、驚きを隠せずにいたのであった
「さてハチ、弾薬と燃料分の仕事をするニュッ!!!」
「任せるニャ~ン、この兵装が戻って来たら、あいつら何かハチの相手にならないのニャ~ン」
その2つの影の正体であるSR-71 ブラックバードの兵装を身に纏ったクロと、F/A-18E スーパーホーネットの兵装を身に纏ったハチは、この様なやり取りを交わした後、苦戦するワイルド達の救援の為に、空母棲姫の艦載機の群れの中に突撃して行くのであった……
これが空と関東地方全域を渡り歩き、関東地方の猫達の情報を知り尽くした情報屋の野良猫であるクロと、アグと同レベルの実力を持ち、『飛燕落としの