前回入れられなかった話を突っ込んでいきます
「それにしても、剛さんの銃の腕前もそうですがそのハンドガン、ヘルハウンドでしたか……、その銃も凄いですね」
先程弟子入り宣言のようなものをした不知火が言って来た、何が凄かったのか気になったので話を聞いてみるとまずは的の支柱を一発の弾丸で破壊し的を宙に浮かせたその威力、次に片手で撃っていたにも関わらず反動による手ブレが殆ど発生していなかった事、そして宙を舞う的を正確に撃ち抜く命中精度、あんなに激しく連射したにも関わらず動作不良や給弾不良を起こしていなかった事を挙げてきた。よく見ていたものだと思わず感心してしまった
ヘルハウンドに使われているのは.50AE、オートマチックハンドガン用の弾としては最高クラスの威力を持っているもので片手で使おうものならば間違いなく肩を脱臼するような代物である。今は亡き妻が設計したヘルハウンドはその威力を殺す事なく反動を驚くほどに軽減する機構を搭載し、更には動作不良なども殆ど起こさない信頼性、どんなに雑に扱おうと簡単には故障しない耐久性も持っているのだ。きっと私が如何なる苦境に立たされても無事に帰還出来る様にと思いを込めて作ってくれたのだろう……
「ヘルハウンドはアタシの最高の相棒だからね♪っと言っても、この子はアタシが生前使っていたヘルハウンドとは全く別の子なんだけどねぇ……」
私がそう言うとハッとした顔をする、そういえばこの子達はこの銃の事よりも私が普通に話せる事の方に驚いていたな……
「実際、アタシが使っていたヘルハウンドはグリップのところにアタシのトレードマークだった首が2つ付いた猟犬のエンブレムが付いてたんだけど、この子にはそれがないでしょ?」
このヘルハウンドのグリップにはそういった装飾が付いていない、付けていた形跡も全く見当たらないのだ、つまり陽炎達の立てた仮説は残念ながら外れた事になる
「つまり……、剛さん達の様にこの世界にこのハンドガンの開発に関わった人間が来ている可能性があると言う事ですか……?」
不知火の言葉は半分正解、半分はハズレと言ったところだろうか……
「不知火ちゃん、ちょっと惜しかったわね~、ヘルハウンドの設計開発は妻がたった1人でやった事なのよね~……」
「それって……!まさかっ!?」
ここまで言えば流石に分かるか……不知火は驚愕したまま動かない、これは仕方がない事だ……
「そう、この世界に私の妻だったアリー……、アレクサンドラ・稲田がいる可能性が極めて高いと言う事だ……、もしこの世界でアリーと再び会う事があれば私は……」
不知火は私が亡き妻との再会を喜ぶのだろうと思っていたようだが、今の私から漂う雰囲気と血が滲むほど握りしめた拳を見て訝しむ、そんな不知火の事などお構いなしに私は言葉を続ける……
「私は……、この手で今一度アリーに引導を渡さねばならない……っ!!!」
不知火が驚きを通り越してオロオロし始める、私が言った言葉の意味が分からなくて混乱しているのだろう……
「ごめんなさい不知火ちゃん……、ちょっと熱くなり過ぎちゃったわぁ……」
「いえ、その……、不知火の方こそ……えっと……」
まだ混乱している不知火を落ち着かせようと頭を優しく撫でながらアリーの事を話し始める
「アリーと出会ったのはアタシが軍にいた頃、軍で採用された新装備のテストをしているところを視察に行った時だったわぁ、新装備の使い方を説明している姿を見たときに運命って奴を感じちゃってねぇ……、所謂一目惚れって奴かしら?」
不知火は私に頭を撫でられながら静かに話を聞いていた
「その時ついアタシも新装備のテストをしたいとか我が儘言って皆をちょっと困らせちゃったっけ~、どうしてもお近づきになりたくて必死だったのを覚えているわぁ~」
この事は今でも鮮明に覚えている、このテストの後何とか連絡先をもらって熱烈なアプローチの末彼女と結婚するに至ったのだ。不知火には悪いと思いつつも年甲斐もなくつい調子に乗って当時のエピソードで惚気てしまった
「そんなある日、アリーがアタシにプレゼントをくれたのよ、それがヘルハウンドだったの。あの時は本当に嬉しかったわ~、愛する妻がアタシの為だけに作ってくれたものだったからねぇ、と~っても大事にしていたわ~」
とても重要な場面でいつも活躍してくれた、私の命を何度も救ってくれたヘルハウンドは正に私の最高の相棒だった。毎日メンテナンスをしてそれはそれは大事に扱ったものだ
「ただね、アタシがアリーが心の中に抱いていたものに気付いていたらこんな事にはならなかったでしょうね……」
私がヘルハウンドと共に戦場を駆け抜け幾多の勝利を収め、世界が平和になればなるほどアリーの様子がおかしくなっていっていた
「ある日、アリーは書置きも何も残さずにアタシの前から姿を消したの……、いつかきっとアタシの元に戻って来てくれると信じて待っていたのだけれど……」
アリーを待つ日々が続いたそんなある日、世界に途轍もなく巨大なテロ組織が誕生した
「『エデン』と名乗るそのテロ組織は戦争こそが人類を飛躍的に進化させる最高の方法とし、永遠の闘争を続ける世界こそが究極の理想郷であると言って世界各地でテロ活動を行っていたわ……、アタシもそいつらと幾度となく戦って遂に指導者を追い詰める事に成功したの……」
そこまで言ったところで不知火がこちらを心配した目で見ていた、どうやら気持ちが表情に出ていたようだ、心配させた事に詫びを入れて話を続ける
「そこにいたのはアタシの妻のアリーだったわ……、兵器を開発するアリーと戦場で戦うアタシ、戦争がなくなってしまえば自分達は一体どうなってしまうのだろうか……、そんな不安と恐怖が『エデン』を生んだみたいなのよね……、自分と同じような気持ちを抱えた人間を集めて戦争をする事で自分達の存在意義を確立させる……、ホント夢なら覚めて欲しかったわぁ……」
この時ばかりは自分の不甲斐なさを呪ったものだ、あの時アリーの不安や恐怖を受け止め解消してやる事が出来ればこんな事にはならなかったはずなのに……、今でもその事で今みたいに夜中に目覚めてしまうのだ……
「結局、アタシはアリーと戦ってこの手でアリーを射殺、『エデン』を壊滅させる事に成功したのだけど、首謀者がアタシの妻だった事と『エデン』との戦いで多くの死者が出た事で責任を感じてアタシは軍を辞める事にしたの」
「そういう事だったんですね……、その……嫌な記憶を思い出させるような真似をしてすみませんでした……」
不知火が頭を下げて謝罪してくるが不知火に落ち度は一切ないので頭を上げるように言う
「いいのよ気にしないで、これはアタシが勝手に話し始めた事なんだからね♪それに不知火ちゃんに話したらちょっと気分が楽になったわぁ☆」
この話は今まで誰にも話した事がなかったのだ、長い間ずっと心の中にあったそれをこの日初めて、今日会ったばかりの不知火に話した事で気が紛れたのは事実である
「あ、この事はまだ皆には秘密にしておいてもらえるかしら?アタシの気持ちの整理が完了したときにアタシの方から皆に話すその時までアタシ達だけの秘密、ね?」
「分かりました、この事は内密にしておきますね、とは言ってもこれは気軽に話せる内容じゃないですね……」
確かにその通りだ、この内容は余りにも重すぎるからな……
「取り敢えずアリーさんの事は分かったのですが、この世界で再会したとき引導を渡すと言っていましたが……」
「既にこんなものを作っている段階で気持ちも何も変わっていないんでしょうね……、恐らく何かしらの形で暗躍していつか大きな戦いを起こそうとしていると考えるべきでしょうねぇ……、そうなる前になんとかしなくちゃいけないわぁ」
ヘルハウンドの模造品を取り出して不知火に見せながら考えを話す、もしかしたらヘルハウンド以上に危険な代物を既に開発し何処かに流している可能性も考えられる……、もしこれが事実だとしたらこの世界は大変な事になるだろう……
「さって暗い話はこのへんにしておいて、軍を抜けてからの話でもしましょうかねぇ?」
不知火に、そして自分自身に言い聞かせるように言って軍を抜けた後の話を始める
「軍を抜けてからは母国の日本に戻って戦いと無縁なお仕事でもしようと思って色んなとこの面接受けたんだけど、前に言った筋肉ムキムキなおじさんだったから皆から怖がられちゃってね~、口調とかも変えてみてもダメだったからどうしよっか~って思ってるところに戦ちゃんの修理屋さんが事務員募集していてね?軍にいた時から書類作業やる事もあったから面接受けてみて見事合格!それからは長門屋ファミリーの一員として働いていたのよ☆」
「そうだったんですか……、しかし現場ではなく事務員……」
不知火が苦笑いしている、まあ誰だってそうなるだろうな……、筋肉お化けが事務作業しているとか想像出来ないだろう……
「それからはこれと言った不満のない楽しい毎日だったわね~、まあ、今はこんな事になっちゃったけど……、子供がいなかった事はホント幸か不幸か悩むところよね~」
子供がいなかった事はほんのちょっとだが心残りと言えるのかもしれない。正直に言えば子供は欲しかったがアリーも私もお互い忙しかった為中々夜の営みが上手くいかなくてなぁ……
「ホントは子供は欲しかったんだけどね~……、あっそうだ!いい事思い付いちゃったわぁ♪」
「? どうしたのですか? 何を思いついたのでしょうか?」
不知火が不思議そうに尋ねてきたのでズバリ言ってみよう
「不知火ちゃ~ん、よかったらアタシの子になってみない?」
「えっ!?剛さん、いきなり何を言い出すのですかっ?!冗談ですよね?!!」
私の唐突な提案にアタフタする不知火、可愛らしいなぁ……、こんな子供が欲しかったんだよなぁ……
「うふふ♪アタシは本気よん☆もし不知火ちゃんがよかったらでいいわぁ、お返事はいつでも受け付けてるわよん♪っとそろそろアタシは戻るわね~、また明日会いましょう、それじゃおやすみ~♪」
そう言い残して私は自室へと戻っていった、今ならぐっすり眠れる事だろう……
後日、不知火から恥ずかしいから皆に秘密にしてもらえるならばという条件付きでOKをもらえた