さて、ライトニングⅡ内で補給を終えたクロとハチが復帰した事で、現在空と対峙している空母棲姫の転生個体、2P(空が内心で勝手に命名)が呼び出した実体を持たない幻の艦載機が入り混じった上空の戦況は、瞬く間の内に形勢逆転、今までジリ貧になっていたワイルド達は、最早圧倒と言えるレベルで2Pの艦載機達を蹂躙し、次々と叩き落していくのであった……
一体何がどうなってこの様な状況になったのか……、それについてはその時の様子を少しだけ時間を遡って見てみるとしよう……
「それじゃあハチッ!いつも通りにやるニュッ!!」
「分かったニャ~ン」
窮地に陥ったワイルド達の救援の為、ライトニングⅡから飛び立ったクロとハチは、道中でこの様なやり取りを交わすと、相手を自分達の土俵に引きずり込む為に早速行動を開始するのであった
先ずブラックバードの兵装を纏ったクロが、突如機首を思いっきり上に上げて天に向かって急上昇を開始。そうしてグングン高度を上げていったクロは高度1万mに達したところで、高度を上げるのを止めるなり大きな円を描く様に飛び始めるのであった
そんなクロの様子を見ていた2Pは、クロの行動の意図がサッパリ分からなかった為、謎の行動に走ったクロを放置する事にしたのだが、それが彼の敗北を決定付けさせる事となるのであった……
「あれは一体何をしてるんだニャ……?」
2P同様、クロの奇行の意図が掴めなかったワイルドが、思わずこの様な言葉を口にしたその時である
「それはもう少ししたら分かる事だから~、もうちょっとだけ待つのニャ~ン」
いつの間にかワイルドの隣を飛行していたハチが、のんびりとした口調でこの様な事を口にする。と、その直後である
『OK、データ収集が完了したニュッ!今から僕が集めた情報を皆に伝えるニュッ!』
不意に上空を旋回しているクロからこの様な通信が入り、その直後にワイルド達の視界の隅にレーダー指示器であるPPIスコープの様な物が出現し、そこには2Pの艦載機が光点として表示されるのであった
突然の出来事にワイルド達は思わず驚いてしまうのだが、ワイルド達の驚きはそれだけでは終わらなかった
何故なら、この突如現れたPPIスコープには、幻の艦載機の反応が無かったのである
「おわっ!?目の前に艦載機がいるのに、このレーダーにはそいつの反応が無いミーッ!」
「だったらそいつは幻だニャ~ン、試しに攻撃してみるニャ~ン?」
「……頼んでもいいかニー?」
相手が目の前にいるにも関わらず、レーダーが反応していなかった事に驚いたベアが、思わず驚きの声を上げたところで、つい先程までワイルドの隣にいたハチが知らぬ間にベアの隣に移動しており、ハチがベアに向かってこの様に尋ねたところ、ハチとは反対側のベアの隣にいたタイガーが、ハチに対してこの様にお願いしたところ、ハチはそれを了承するなり、たった1発だけ機銃の弾を件の艦載機に向かって放って見せるのであった
こうしてハチの機銃から放たれた銃弾は、件の艦載機を通り抜けて何処かへと飛んで行き、その様子を見ていたベア達はハチが言っていた事は事実であると認め、ベアがこの事を空やワイルド達に話したところ、空からそのレーダーで相手を捕捉し、確実に撃墜せよと指示が飛び、それを聞いたワイルド達はすぐさま反撃に打って出るのであった
さて、突然ワイルド達の視界に現れ、ワイルド達に反撃の切っ掛けを作ったこのレーダーだが、これは現在も上空を旋回し続けているクロが発信源となっている
クロが装備しているこのブラックバードの兵装には、敵を直接攻撃する為の武器が一切備わっていないのだが、その代わりとして偵察用の高性能カメラや電波妨害装置、更には本来のブラックバードには備わっていない筈の数々の電子戦用装備や高性能な通信機器などが多く搭載されているのである
そう、謎の多かったクロのこれら一連の行動は、自身が持つ電子戦用装備を用いて広範囲にわたって索敵と偵察を行う為のものであり、これによって得られた情報は即座に分析・解析が行われた後、高性能通信機によってワイルド達の下へと届けられているのである
因みに幻がPPIスコープに映っていない理由だが、それは幻がクロが発する探知用電波を透過してしまっているからである。これにより幻はPPIスコープに表示されず、実体がある艦載機だけがPPIスコープに表示され、本物と幻が判別出来る様になったのである
尚、こうして索敵を行っている時のクロは、完全に無防備になってしまうのだが……
「あいつだっ!あの上空でクルクル回っているあいつを撃ち落とせっ!!」
「そうは問屋が卸してくれないんだニャ~ン」
この逆転劇の原因がクロにある事に気付いた2Pが、慌てた様子で艦載機達にこの様な指示を出し、それを聞いた艦載機達が一斉にクロに襲い掛かろうとするのだが、直後にハチがこの様な事を言いながらクロに殺到しようとする艦載機達の群れの中に単騎で突入し、艦載機達の合間を尋常ではない速度で縫う様にして飛び回り、艦載機達の急所とも言える弾薬庫や燃料タンクに、恐ろしい程正確に、そして確実に1発ずつ機銃の弾をお見舞いし、銃弾を受けた艦載機達は次々と、そして瞬く間の内にハチの手によって撃墜されていくのであった……
そんなハチが描く軌道は、とてもジェット機には真似出来ない……、いや、そもそも飛行機では実行出来ない様なとんでもないものなのだが、その尋常ではない俊敏さと反応速度を武器に、多くの荒々しい野良猫達を一撃必殺の名の下に下して来た事で『飛燕落としの蜂』の異名を持つ事となったハチは、それを2Pに見せつける様にして、鼻歌交じりにやってのけてみせたのであった……
因みにハチは、自身にこの様な異名が付けられている事をクロを通して知っており、異名通りに飛んでいる燕を落としてみようと思い立ち、クロが見守る中実際にやってみたところ、本当に飛んでいる燕を狩る事に成功してしまった過去を持っていたりする
さて、自身の能力をクロに打ち破られた挙句、ハチの戦いぶりをまざまざと見せつけられてしまった2Pは……
「おい……、何だありゃ……?あんなんいるとか聞いてねぇぞ……?つか何であいつらあんな風に豹変してんだよ……?おかしいだろ……?あんなん捕まえられるわきゃねぇだろうがよ……」
只の白ネコ艦載機だと思って追い回していたものが、実は自分の手に負えそうにないとんでもない化物であった事を知るなり、心が折れたとばかりに譫言の様にこの様な事を呟きながら、両膝を海面に突き項垂れてしまうのであった……
そんな2Pの様子を見ていた空は……
「凹んでいるところ悪いんだが、仮にお前があの艦載機達を手に入れたとしても、その艤装ではあいつらを発艦させる事は出来ないぞ」
2Pに向かって追い打ちをかけるが如く、この様な言葉を掛けるのであった……
「だったら……、ついさっきあいつらを発艦したてめぇの艤装を頂けば……っ!」
空の言葉を聞いた2Pが、この様な事を言いながら立ち上がり、空からライトニングⅡを奪おうと彼に襲い掛かろうとするのだが……
「そんな事させる訳がないミャーッ!!!」
その直後に、いつの間にかライトニングⅡから発艦していたヘルが2Pの前に立ち塞がり、彼の顔面に叩きつける様に魚雷を発射し、2Pの顔面に直撃した魚雷は轟音を立てながら爆発し、2Pを盛大に吹き飛ばしてみせるのであった
「てんめぇ……、このクソね……こ……」
見事に吹き飛ばされた2Pは、何とか立ち上がりヘルの方へ鋭い視線を向けながら、彼を口汚く罵ろうとするのだが、その言葉は航空戦を終えて空の下へ戻って来たワイルド達全員が、2Pに銃口やミサイル、鋭い牙を向けている事に気付くなり、尻すぼみになって消えていってしまうのであった……
「まだ続けるか?続けると言うならば、俺はお前に俺と艦載機達によるコンビネーションとやらを披露する事になるのだが……、どうする?」
そんな2Pに対して空がこの様に尋ねたところ、2Pは観念したのか降参の意思表示として両手を上げて見せるのであった……
その後、空は2Pに対してワイルド達で威嚇しながらパンツ調査を行い、彼が穿いていない事を知るなり眉間に深い皺を寄せて考え込んでしまうのであった……
(転生個体であるこいつが穿いていないのなら、何故俺はパンツを穿いた状態で転生していたんだ……?くそ……っ!益々謎が深まってしまった……っ!)
パンツ調査の結果を見て、空は渋いをしながら内心でこの様な事を呟き、そんな空の様子を見ていた2Pは、何故空がこの様な表情を浮かべているのか分からず、思わず不思議そうな表情を浮かべるのであった……
さて、ここで少しネタ晴らしをしよう
何故空母棲姫の転生個体である2Pはパンツを穿いておらず、空だけがパンツを穿いていたのか……
それは単純に、2Pと空を作った存在が違うからである
皆様は空の身体が作られた時の事を覚えているだろうか?
そう、空の身体だけはオリジナルコアが作ったものではなく、オリジナルコアが持つ転生個体製造用プログラムを一時的に乗っ取った護の魂によって作られたものなのである
この時護の魂は、恐らく無意識の内に幾ら女性の姿をしていても、知り合いの野郎のノーパン姿を見るのは流石に勘弁願いたいと思ったのか、空の身体を作る際ちゃんと服を身に纏い、パンツを穿いている空母棲鬼の身体をベースに、魔改造を施して空母棲姫に仕立て上げた様なのである……
この様な事があった為、空だけが空母棲姫の転生個体でありながら、破れていない衣服をしっかりと身に付け、パンツを穿いていたのである……
尚、この事は空も護も覚えておらず、この事実に空が気付くのは、当分先の話だったりする……