※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

483 / 655
積 始

始達を追っていたヤンキー達をあっという間に片付け終えた空は、ヤンキー達の返り血で真っ赤に染まった姿のまま始達に歩み寄るのだが、空が始達に近付いた途端山風がその身体をビクリと震わせるなり始にしがみつき、何かに怯える様にプルプルと震える様子を目の当たりにすると、もしかしたらまだヤンキー達の生き残りがいたのかと思い、険しい表情を浮かべながら周囲を警戒し始めるのだが、2Pの指摘によって山風は返り血塗れの空に怯えている事が判明すると、空は海水で返り血を洗い流し、改めて始達に接触するのであった

 

それにより空は始達の目的を知る事となり、空は始達に向かって2Pと始を穏健派連合の総本山であるガダルカナル島に連れて行った後、自分が山風を無事に日本に送り届けようと申し出たのだが、それは未だに空に怯える山風によって却下されてしまうのであった……

 

尚この提案に対して、話の中で身の安全がある程度保証され、食糧も安定して入手出来るガダルカナル島は自分にとっての理想郷だと思った始は、空の提案にそれなりに乗り気だったのだが、山風の様子を見るなり深い溜息を吐いてその提案を蹴る事にしたのだった……

 

因みに山風が提案を断った理由だが、単に初対面の印象が最悪だった空と一緒にいる事が嫌なだけではない。始と離れ離れになってしまう事が、空と行動を共にする事よりも嫌だったからである

 

山風は始と初めて出会った時、状況を上手く把握出来なかった事で発生した混乱と、集積地棲姫の姿をした始に対する恐怖から、彼に向かって自分に構うな、放っておいて、あっちに行ってなどと言い、その結果その言葉通りに始に丸2日間完全無視……、いや、下手したら存在そのものを認識すらしてもらえなくなり、それに耐え切れなくなった山風が最終的に折れ、その双眸に涙を浮かべながら始に謝罪する羽目になったのだが、それ以降は始も山風の相手をする様になり、口で面倒臭いと言いながらもなんだかんだで彼女の世話をしていたのであった

 

そんな事があった為、人見知り気味な山風は自分の命の恩人でもある始に懐いており、離れ離れになる事を嫌がったのである

 

その後空達は話し合いを行い、2Pと長旅で疲れているだろう始達をガダルカナル島に送り、空はそこで山風の艤装の修理を行った後長門屋鎮守府建設予定地へと帰還し、始と山風はガダルカナル島で1泊した後日本に向かう事になったのだが……

 

「さて……、空さん達が付いていてくれるなら、始さん達の方はもう大丈夫そうですね。では私は師匠探しを再開するので、この辺りで失礼しますね!」

 

話が纏まったところで突如比叡がこの様な言葉を口にし、空達に背を向けて何処かに向かって移動を開始したのであった……

 

こうして比叡と別れた空達は、予定通りガダルカナル島へ向けて移動を開始したのだが……

 

「そういや、山風は金属片塗れの竜巻に飲み込まれたんだったっけか?そんでそれが原因で艤装がオシャカになったみてぇだが、その割には傷1つ無い綺麗な身体してるな……」

 

その道中にて、ふと思い出した様に2Pがこの様な事を口にし、不思議そうな表情を浮かべていると……

 

「それはこいつを使ったからさ」

 

2Pの話を聞いていた始はそう言うと、自身の艤装から緑色のバケツを取り出し、空と2Pに見える様に掲げてみせ、それを見た2Pは納得した様な表情を浮かべるのだが……

 

「始……、お前……、それを山風に使ったのか……っ?!」

 

始が掲げたバケツ……、高速修復材が入っていると思われるバケツを目にするなり、空はそれはそれは険しい表情を浮かべてこの様な言葉を口にし、それを聞いた2Pは空の表情に一瞬ギョッとするのだが、すぐにそれの何処に問題があるのか?と言いた気な表情を浮かべるのであった

 

さて、そんな空の反応を見た始は……

 

「その様子だと、空は本来のコレの副作用の事知ってるみたいだね……。けど安心していいよ、これは空が知ってる高速修復材って奴とはちょっと仕様が違うから」

 

「どう言う事だ……?」

 

空に向かって不敵な笑みを浮かべながらそう言い放ち、それを聞いた空は眉間に皺を寄せながら始に対してこの様な言葉を放ち、その傍らでは何言ってんだこいつら?っと言わんばかりに、2Pが小首を傾げていたのであった……

 

その直後、始が言い放った言葉を耳にした空は、その内容に思わず驚愕し言葉を失い、空と共に始の話を聞いていた2Pは、空が驚いた理由に加えバケツの副作用の内容に愕然としてしまうのであった……

 

始が言い放った事、それは現在彼が掲げているバケツの中身は、彼の手によって副作用の内容を老化の促進から極僅かな睡眠作用に置き換えられた、全く新しい高速修復材であると言う、本当に驚くべき事実だったのであった……

 

始の話を聞く限り、如何やら始は『改変の紺碧』と名付けた能力を持っているらしく、その能力を用いて自身の艤装の中にあったバケツの副作用を改変し、人体に害の少ない高速修復材を完成させたのだとか……

 

「この改変の紺碧は、如何やら発動させた状態で触れた化学物質の構成を確認出来たり、その構成を自由にいじくったり、好きなだけ生み出したり出来るみたいなんだよね。まあ、これを本気で使いこなせるのは、恐らく僕と……、いや……、薬学に精通してる僕くらいだろうね」

 

始はそう言いながら紺碧を発動させ、バケツを手にしていない手に淡い青色の光を纏わせ、その手からバケツの中身と同じ物であろう緑色の液体をドバドバと出し始めるのであった

 

尚、始が紺碧の説明をしている最中、何か嫌な事を思い出したのか始の表情が一瞬だけ殺気立ったものになるのだが、それにたった1人気付いた空は、一瞬だけ垣間見えた始の表情と心境についてはあまり追及しない方がいいだろうと判断し、それを見なかった事にするのであった……

 

そんなやり取りを交わしている内に空達はガダルカナル島へ到着し、島に着く直前に空が入れた通信を聞いていた伊吹が彼等を出迎え、始達の身柄を伊吹に受け渡した空はそのまま日本に向かって飛んで行き、空を見送った始達が伊吹の案内で施設の方へと移動しようとしたその時だ

 

「おや、空はもう行ってしまったのか……」

 

仕事の都合で遅れてやって来たリチャードが、豆粒の様に小さくなってしまった空の背中を見るなり、残念そうにそう呟くのであった

 

「誰だアンタ?」

 

そんなリチャードに向かって、始が怪訝そうな表情を浮かべながらこの様に質問すると、リチャードはすぐに気を取り直して自己紹介を行う。すると……

 

「リチャード=マーティン……、だって……っ!?まさかエデンに暗殺されたアンタまで、この世界に来てたって言うのか……っ?!」

 

「おや、僕の事を知っているなんて光栄だね」

 

リチャードの名前を聞いた瞬間これまでにないくらいに始が驚愕し、その様子を見たリチャードは声高らかに笑った後、自分の存在に驚く者に対しての決まり文句となりつつある言葉を口にするのであった

 

その後、この世界の事情をよく知らない始の為に、リチャードが施設に向かう道中でこの世界の現状について説明していたのだが、リチャードの口からこの世界にもエデンが存在していると聞いた刹那、突然始が鬼気迫る表情を浮かべ、右手を驚くべき速度で伸ばすなりリチャードの胸倉を掴み……

 

「それはどういう事だっ!?何でこの世界にもエデンがあるんだよっ!?!おかしいだろっ?!!エデンは僕がリークした情報を基に、剛達特殊部隊の連中が壊滅させたはずだろうっ!!?答えろリチャード=マーティンッ!!!!!」

 

リチャードのの胸倉を掴むその手をプルプルと震わせながら、尋常ではない程の怒りをその声に乗せて、リチャードにこの世界にもエデンが存在している理由について言及するのであった……

 

「まさか君の口から剛の名前が出るなんてね……、まあそれについては後で詳しく話してもらうとして……、この世界にもエデンが存在している理由だけど……、それはこの世界にエデンの指導者のアリーと、No.2であるプロフェッサーも来ていてね……」

 

始の質問に答えようとリチャードがここまで言葉を紡いだ次の瞬間、始は左手を即座に伸ばし、両手でリチャードの胸倉を掴み……

 

「プロフェッサーだとっ!!!??あの腐れ外道までこの世界に来ているのかっ!!?!?ふざけるのもいい加減にしろっ!!!!!」

 

怒りの余り我を忘れ、始はリチャードに向かってそう叫ぶのであった……

 

その後、始の豹変ぶりに驚いて呆然としていた伊吹が我に返り、始をリチャードから引き剝がし、何とか落ち着かせてこの様な行動に走った理由を尋ねたところ……

 

「あいつは……、プロフェッサーは……、僕の両親の仇なんだ……。僕はあいつを何としてでも殺す為に……、顔も知らない僕の本当の父さんと母さんの仇を取る為に……、僕は剛にエデンの拠点情報をリークして、エデンを壊滅させようとしたんだ……。そんな奴がこの世界にいるって分かったら……、ね……」

 

プロフェッサーが自身の弟子夫婦を殺害して得た養子にして、彼の指示で強制的に作らされた覚醒剤で多くの命を奪ってしまった事に苦悩し、それに耐えられず脱走した先で剛と出会い、彼の口から己の両親の死の真実を知り、プロフェッサーに対しての復讐心に囚われた元エデンの構成員であった始は、忌々し気な表情を浮かべながら、呟く様にそう答えるのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに、パンツ調査を終えて帰還した空は、溜まっていた有給を消化するついでに長門屋鎮守府建設予定地に遊びに来ていた翔鶴と遭遇、光太郎から話を聞いていた翔鶴は涙を浮かべながら空に説教し、それで罪悪感を覚えた空は調査結果を全てシゲが生み出す炎に焼いてもらうと同時に、その炎の上に設置した鉄板の上で焼き土下座を実行したのだとか……

 

尚、焼き土下座の際についた火傷は、光太郎と望による適切な処置のおかげで、痕に残る様な事にはならなかったそうな……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。