那智から鈴谷の更生を頼まれた戦治郎は、先ず最初に鈴谷がどの様な問題行動をしているのかについて、依頼者である那智に尋ねてみたところ……
「くぉれはひどぅい……」
その内容を聞いた戦治郎は、思わずそう呟いてしまうのであった……
那智が言うには、如何やら鈴谷はほぼ毎日の様に授業に遅刻し、その授業中もしょっちゅう居眠りをやらかしているのだとか……
しかも鈴谷は座学の授業だけでなく、実習の時も眠そうにしているらしく、そのせいで簡単に回避出来る様な砲撃にも反応が遅れてしまい、回避し損ねてその砲弾をモロに受けてしまったり、常時フラフラしているせいでまともに照準を付ける事が出来ず、射撃訓練の成績も芳しくないのだとか……
それだけでは留まらず、その日の授業が全て終わるや否や、鈴谷は監視の目を掻い潜って許可無く軍学校を抜け出し、日付が変わってしばらくした頃になって、乱れた衣服など気にも留めずにようやく軍学校に戻って来るのだそうな……
特にこの脱走については那智も何度か現場を目撃し、その都度注意している様なのだが、鈴谷は一向にそれを直そうとはせず、雨が降ろうが風が吹こうが放課後には軍学校を抜け出し、何処かへ向かっているのだそうだ……。尚、那智が軍学校を抜け出して、一体何をしているのかを尋ねてみても、鈴谷は適当な言葉を並べて誤魔化してしまうのだとか……
「鈴谷の奴、よくこれで退学になんねぇな……?普通こんなんやってたら、退学間違い無しだろうがよ……」
「そこなんだが、私も何度もこの事は校長に報告しているのだが、どういう訳か校長は鈴谷に対して何の処分も行わず、鈴谷の件は野放しとなっているんだ……」
「それは流石におかしいですね……、これだけ問題行動を起こしていながら、全く処分を受けないなんて……。まるで校長が何処かから圧力を掛けられている様な……、そんな感じがしますね……」
戦治郎がふと口にした疑問に対して那智はこの様に返答し、それを聞いた大和は怪訝そうな顔をしながらこの様な言葉を口にするのであった
その直後、那智がそれについては心当たりがあると言い出し、それを聞いた大和は納得した様な表情を浮かべて見せるのだったが、戦治郎は頭上に疑問符を浮かべながら小首を傾げ、その様子を見た大和が戦治郎に分かる様に説明し始めるのであった
那智が言うには、鈴谷の友人に最上型重巡洋艦4番艦の熊野の艦娘候補生がいるらしく、大和が言うには如何やらその熊野は、神戸に本拠地を据える財閥の総帥の1人娘なのだとか……
「関西方面にある多くの海軍の拠点は、建築に熊野さんのお父さんが経営する会社が関わっているんです……。それ以外にも、熊野財閥は深海棲艦との戦争が始まってから、日本海軍に資金援助や艤装生産工場を建てる土地を提供していたりしている為、日本海軍は熊野財閥に頭が上がらないところがあるんです……」
「しかもそれが黒い感情抜きで、純粋な善意だけで行われている為、日本海軍は熊野財閥に対して強く出る事が出来ないでいるんだ……」
「OK、これ絶対熊野関わってるわ……、しっかし……、何で熊野は鈴谷を庇う様な真似してんだ……?普通だったら、熊野は鈴谷の行動を止めに入るべき立場だと思うんだが……?」
大和と那智の話を聞いた戦治郎は、頭上の疑問符を増やしながらこの様な事を呟き、それと同時にスマホを操作し始めるのであった
戦治郎のその行動を不思議に思った大和が、戦治郎に何をしているのかと尋ねると、戦治郎は少し熊野財閥の裏を探ると同時に、鈴谷と熊野の関係を洗う様に護に頼むと言いながら、スマホに表示されたメール送信ボタンをタップし、護にメールを送るのであった
それから数十秒後、雨のせいで建築作業が中止になってしまった事で、暇を持て余していた護から調査結果が返って来て……
「……護は敵に回すべきではないと言う事が、今のでよく分かった……」
「それな、俺もマジで護が味方で良かったって思うわ」
その内容を目にした那智が思わずそう呟き、それを聞いた戦治郎はメールの内容に目を通しながらこの様に返答するのであった
さて、こうして護からもたらされた情報だが、如何やら熊野財閥は熊野が艤装競技で摩耶ほどではないがかなり優秀さ成績を叩き出し、それを機にこの技術を活かす為に海軍に入って深海棲艦と戦う事を決意した時点で、海軍に協力する方針を定めたのだとか……。要は愛娘を助ける為に、海軍に力を貸しているのだそうだ……
そして鈴谷と熊野の関係についてだが、熊野は小さい頃から熊野財閥の力を恐れた者達によって避けられ孤立していた様なのだが、そんな熊野を見兼ねた鈴谷が彼女に声を掛け、それが切っ掛けとなって鈴谷は熊野の唯一の友人になったのだそうな……
そんな鈴谷は、護の情報によると如何やら家族仲がよろしくないようで、鈴谷の家からはしょっちゅう両親と喧嘩する鈴谷の声が聞こえていた事が発覚するのであった……
「う~ん……、熊野財閥がシロって事は分かった。んで、鈴熊関係の判断材料は集まったが~……、ちょっち決定打が欠ける感じだな~……」
「鈴谷が軍学校を抜け出して何をしているのか、そして何故それを熊野が止めないのか……、この辺りがまだ不明だな……」
「その辺りの話に関しては、本人達に直接聞くしかなさそうですね……」
護の情報に目を通し終えた3人はそれぞれ言葉を紡いだ後、不明な点の答えを探る様に考え込み始めるのであった
「取り敢えず、先ずは鈴谷が軍学校の外で何やってるか、それを調べるか……」
「しかしどうするんだ?まさかお前が鈴谷を尾行するなどとは言わないよな……?」
「いや、流石にそれは無理。艦娘科なら兎も角、提督科の俺がそんなんやったら、おめぇや大和の許可が下りていたとしても、夜に出歩くとかカトリーヌに確実に怪しまれて問答無用で一発退学だわ……。後おめぇらが尾行するってのも無しな、教官はほぼ全員面が割れてるだろうから、鈴谷に見つかったら間違いなく逃げられる」
「なら香取もこちらに引き込むか……?」
その後、このままでは埒が明かないと言う事で、戦治郎と那智がこの様なやり取りを交わしていると……
「なら、武蔵にお願いしましょう。あの子、呉鎮守府に飲み仲間がいないからと言って、よく街に飲みに行くそうなので、そのついでに鈴谷さんの事も調べてもらいましょう」
大和が両手をポン!と合わせながらこの様な事を言い、早速武蔵にこの件をお願いする為にメールを送ろうと、スマホを操作し始めるのであった
「武蔵って……、あいつ呉だとかなり有名なんじゃねぇか……?」
「確かに有名ですが……、よく飲みに出る事も知られている為、警戒される事は少ないんじゃないかと思われます。それに流石の鈴谷さんでも、こうも見た目が違えば大和と武蔵が実の姉妹だとは思わないでしょう。実際、この事は
そんな大和に対して戦治郎が疑問をぶつけたところ、大和はこの様に返答しながら武蔵宛てのメールを送信するのであった
因みに、大和がメールを送った後、武蔵からその件を了承する旨が書かれたメールが返って来るのだが……
『ただ、タダ働きするのもツマランから、報酬としてミゴロさんだったか?それをくれ』
その中にこの様な1文が添えられており、戦治郎による説得虚しく今回の件の報酬として大和や長門、そして戦艦棲姫状態の扶桑ですら持て余したガトリングキャノン356ことミゴロさんを武蔵に送る事が決定してしまうのであった……
尚、武蔵はミゴロさんを手に入れると、訓練に訓練を重ねミゴロさんを見事手懐け、先の未来にて、長門屋鎮守府にやって来た異世界からの来訪者達によって、武蔵改二の情報がこの世界にもたらされると、『虎に翼、鬼に金棒、武蔵にミゴロ』と言う言葉が生まれるほどの、ミゴロさんの使い手となるのであった……