※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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熊野と・・・・・・

今回の調査によって、鈴谷が軍学校を抜け出して何をやっているのかについてと、その行動の大まかな理由が判明した訳なのだが、ここでまた幾つか疑問が浮上して来る

 

何故鈴谷は学費を稼ぐ為にバイトをしなければいけない様な事態になったのか、この事は鈴谷の両親も把握しているのか、そして何よりも、何故鈴谷自身はそこまでして軍学校に在籍しようとしているのかについて、彼女の事情を知らない戦治郎達は只々疑問に思うのだった

 

「今回の調査で新しい疑問が幾つか生まれっちまったが……、取り敢えず鈴谷が無断外出してる理由が分かっただけでも良しとするか」

 

「この件の詳細については、前に言った様に鈴谷さん本人に尋ねるしかなさそうですが……、提督はどの様にして鈴谷さんや、この件に関わっていると思われる熊野さんとコンタクトを取るおつもりですか?」

 

自身が書いた鈴谷のバイト代の合計を記入したメモを改めて見ていた戦治郎が、空いた手で後頭部をガシガシと掻きながらこの様な言葉を口にし、その様子を見ていた大和が戦治郎に向かって未だ面識が無い鈴谷達とどうやって接触するつもりなのか尋ねたところ……

 

「それなら明日、チャンスがあるんだよな~」

 

「ああ、重巡艦娘候補生との合同実習か……。確かにそれなら、鈴谷や熊野と接触出来るな……」

 

大和に質問された戦治郎はニカッと笑いながらこの様に返答し、それを聞いた那智は心当たりを口にするなり納得した様に、顎に手を当てながら何度か頷いて見せるのであった

 

こうして鈴谷達との接触方法を決定したところで、今日の所はお開きと言う事で那智は自身の部屋へと戻り、戦治郎と大和は武蔵から調査結果が届くまでに書き上げたロードトレイン砲の設計図を食卓の上に広げ、ロードトレイン砲とそれ専用の格納庫を作る際に使用する資源と建材を、どうやって確保するかについて話し合った後、戦治郎の課題と予習復習を片付けてから床に就くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、最早1クラス分しか残っていない提督科の面々と共に、重巡艦娘候補生達との合同実習に参加する戦治郎は、艦娘候補生の訓練用の屋内プールにやって来た訳なのだが……

 

(ぬ~ん……、鈴谷が見当たらねぇな……。もしかして遅刻か……?)

 

提督候補生達と重巡艦娘候補生達が、今日の合同実習の説明を受ける為に教官達の前に整列する中、最後尾を陣取った戦治郎は鈴谷を見つけるべく辺りをキョロキョロと見回していたのだが、鈴谷の関係者であろうと思われる熊野こそすぐに見つける事が出来たものの、この中に鈴谷の姿が無い事に気付くと、内心でこの様な事を呟くのであった

 

戦治郎がそうしている間に候補生達が整列し終え、それを前に立つ教官達が確認したところで、合同実習の説明の為に那智が前に出て来るのだが、その表情が苦々しいものである事に気付いた戦治郎が、何事かと思いながら怪訝そうな表情を浮かべると、那智はその表情を崩す事無く……

 

「重巡艦娘候補生の中から、1名ほど今回の実習を欠席するとの連絡を受けたが、私達は予定通り実習を行うぞっ!」

 

良く通る声で候補生達に向かってそう告げた後、那智は予定通り今回の実習の説明を開始するのであった。それを聞いた戦治郎は、先程見つけた熊野の様子から、件の合同実習を欠席した艦娘候補生が、鈴谷であると直感したのであった

 

何故ならば、今の熊野の表情はそれはそれは暗く、彼女の周囲に漂うオーラも不安と焦りが綯交ぜとなったものとなっており、とても気軽に近寄れそうな雰囲気ではなかったからである……。恐らく熊野がこうなっている原因は、鈴谷の事が心底心配なのだろうと、そんな彼女の傍にいてやれない自分に苛立ちを感じているのだろうと、戦治郎はその様子からそう判断したのであった……

 

それからしばらくして、那智の話が終わってパートナー選びが始まった訳なのだが、提督候補生の誰もが熊野が放つオーラに怖気づき、彼女に話し掛けようとはしなかったのであった……

 

因みに我らが戦治郎はと言うと、最早恒例行事と言っても差支えが無いであろう、その格好の怪しさから重巡艦娘候補生達から一切相手にされず、相も変わらず売れ残っていたのであった……

 

(まあ……、今回に限っちゃ売れ残るのは都合がいいんだよな~……)

 

周囲の提督候補生達と重巡艦娘候補生達が、次々とペアを組んでいく様子を眺めながら、戦治郎は内心でそう呟きながら熊野の方へと歩み寄っていき……

 

「Hey!そこのお嬢さん!ちょっちいいか?」

 

それはそれは軽い感じで熊野に話し掛けると……

 

「……気安く話し掛けないでもらえません事?」

 

熊野は苛立ちを一切隠そうともせずに、気軽に話し掛けて来る戦治郎を睨みつけながら、この様に返答するのであった……

 

「そうは言うが、こっちとしてはそう言う訳にもいかねぇんだよな~……」

 

そんな熊野に対して、戦治郎が苦笑いを浮かべながらこの様に返答しながら自身の左右に視線を動かし、それを不審に思った熊野が目で戦治郎の視線を追ってみたところ、熊野の目には既にペアを組み終えた候補生達の姿が多数映り、これによって熊野は自分と目の前にいる不審者以外全員が、この合同実習を行う為のペアを作り終えている事に気付くのであった……

 

「見ての通り、悲しい事に俺達はお互い売れ残っちまったみてぇなんだわ。そんな訳で、売れ残り同士仲良くしようぜって事で、俺はおめぇに声掛けた訳よ」

 

熊野が今の状況に気付いた事を確認したところで、戦治郎が熊野に向かってこの様な言葉を掛けたところ、熊野は心底不服そうな表情を浮かべながら、無言でジットリとした視線を戦治郎に向けるのであった……

 

「……はぁ……、そう言う事なら仕方がありませんわ……。取り敢えず、実習の間わたくしの足を引っ張らない様注意してくださる?」

 

「応、任せとけ!」

 

それからしばらくして、熊野が大きな溜息を吐いた後戦治郎に向かってそう言うと、それを聞いた戦治郎は短くも力強くこの様に返事をし、戦治郎と熊野はペアとなって今回の実習に臨む事となるのであった

 

その後2人は数戦ほど演習を行った訳だが、正直なところその成績はお世辞にもいいものとは言い難いものとなってしまうのであった……

 

その原因は熊野にあり、如何やら彼女は鈴谷の事が余程心配なのか、心ここに在らずと言った様子で、演習中にも関わらず棒立ちになってしまう事が幾度かあったのである……

 

その度に戦治郎が熊野に良く通る大声で声を掛けて彼女の意識をこちらに引き戻し、それによって我に返った熊野はいつもギリギリのところで相手の攻撃に反応し、寸でのところで何とか攻撃を回避して、その通常ではとても反撃出来ない様な姿勢のまま即座に反撃を繰り出し、相手を確実に仕留めてみせると言った状況が、この実習中に何度も発生してしまうのであった……

 

一応戦治郎と教官である那智は、熊野のその戦闘技術は大変素晴らしいものがあると評価はしているのだが、今の演習に集中出来ていない状態は非常に不味いと考えていた訳なのだが……

 

「きゃぁっ!?」

 

演習がそろそろ終わると言う頃になって、遂に戦治郎と那智の嫌な予感が的中してしまう……。勉との演習中に熊野は例によって棒立ちになってしまい、その隙を見逃さなかった勉の指揮で動く重巡艦娘の攻撃に当たってしまったのである……

 

これにより動揺してしまった熊野に対して、勉は無情にも畳み掛ける様に艦娘に指示を出し、その猛攻を受けた熊野に轟沈判定が出てしまった事で、戦治郎達は最後の最後で敗北を喫する事となってしまったのであった……

 

 

 

 

 

「なぁ……、元気出せって……、今回ばかりは仕方ねぇって……」

 

「……」

 

敗北のショックと実習前に戦治郎に向かって叩いた大口が余程恥ずかしかったのだろうか、或いはそれらに鈴谷に対しての心配も合わさってしまった結果なのだろうか、隣に並ぶ戦治郎が掛ける慰めの言葉に一切反応せず、熊野は那智の合同実習を〆る挨拶中ずっと暗い表情を浮かべたまま俯いていたのであった……

 

そんな彼女を嘲笑うかの様に、更なる悲劇が彼女を……、熊野を襲う……

 

「な、那智さんっ!!大変ですっ!!!」

 

那智の話が終わろうとしたその直後である、かなり慌てた様子の鹿島がそう叫びながら屋内プールの入口の扉を勢いよく開いて姿を現し、那智の下へと急いで駆け寄っていく……

 

「どうした鹿島、随分と慌てている様だが……、一体何が大変なんだ?」

 

「今日の合同実習を休んでいた鈴谷さんの事ですよっ!!」

 

突然現れた鹿島に驚いた候補生達が騒めく中、那智が鹿島に何があったのか尋ねたところ、鹿島は顔色を悪くしながら、叫ぶ様にしてこの様な言葉をその口から放ち、それに反応した熊野と戦治郎は、鹿島の言葉を聞いてより一層騒めく候補生達を押しのけながら鹿島達の下へと急ぎ、詳しい話を聞く事にする……

 

鹿島の話によると、如何やら鈴谷は今朝から体調が悪いからと言って、軍学校内にある医務室のベッドで調子が戻るまで横になっていたそうなのだが、つい先程その鈴谷が突如意識を失ってしまったのだとか……

 

「軍医の先生によると鈴谷さんに何度話しかけても反応が無く、軽く身体を揺さぶっても起きる気配が無かったそうです……。それでこれはおかしいと思った先生が、少し検査を行ったところ……」

 

その後この様に言葉を続けた鹿島の口から、軍医の診断結果を聞いた戦治郎の顔色が見る見るうちに悪くなっていき……

 

「鹿島っ!!救急車は呼んだのかっ!?」

 

気付けば戦治郎はいつもの調子で鹿島にこの様に尋ね、それに驚いた鹿島が戦治郎の問いを肯定する様に首を縦に振ったその直後……

 

「急いでそれキャンセルしろっ!!!救急車じゃ間に合わねぇっ!!!確か軍学校の敷地内に校長の移動用のヘリか何かあっただろっ?!あれ使わせてもらって急いで広島本土のデカイ病院に鈴谷を連れて行けっ!!!でなけりゃ冗談抜きで鈴谷が死んじまうぞっ!!!!!」

 

戦治郎は鬼気迫る表情を浮かべながらそう叫び、それを聞いた鹿島は愕然としながらも1度戦治郎に頷き返した後、大急ぎでこの場を後にするのであった……

 

その後那智が解散宣言を出し、それを聞いた熊野は鈴谷に付き添う為に急いで鹿島の後を追い、そんな熊野を見送った候補生達もゾロゾロと移動を開始しこの場を後にする……。そうしてこの屋内プールには、心配そうな表情を浮かべる戦治郎と那智だけが残っていたのであった……

 

「まさかこの様な事になるとはな……、もっと早く私がお前にこの事を話していたら、この様な事にはなっていなかったのかもしれんな……」

 

「かもな……」

 

那智が悔しそうな表情を浮かべながら戦治郎に向かってそう言うと、戦治郎は何処か上の空と言った様子で、短くこの様に返答するのであった……

 

「そう言えば先程のアレは何だったんだ?鹿島から鈴谷の病名を聞いた後、血相を変えて指示を出していたが……」

 

「済まん……、それは今は話したくねぇんだ……。詳細は鈴谷が助かった時に話すわ……」

 

その後、那智が先程の戦治郎の様子に疑問を覚え、何となしにこの様に尋ねてみたところ、戦治郎は少々渋い表情を浮かべながらこの様に言葉を返した後、大和達が待つ浜辺の方へと移動を開始するのであった……

 

 

 

 

 

(まさか鈴谷が……、考えてみりゃそうだわな……、原因は似た様な感じだったしな……)

 

移動中、戦治郎は相変わらず苦々しい表情を浮かべながら、内心でこの様に呟いた後、鈴谷の無事を心より祈るのであった……

 

鈴谷が罹った病気……、それはかつて戦治郎の実の母親である長門 青海の命を奪い去った、戦治郎にとっては最も忌まわしい病気だったのである……。故に鹿島から鈴谷の病名を聞いた瞬間、戦治郎の脳裏に青海の最期の姿が浮かび、熊野に自分が味わった悲しみを経験させまいと、戦治郎は声を荒げてあの様な指示を出したのである……

 

その後戦治郎は浜辺で大和達と昼食を共にし、食事を終えると大和達に少々気分が悪いからと言い残して自室に戻り、部屋に入るなりベッドに倒れ込んで思考を巡らせていたのだが、その時不意に部屋の扉がノックされ、重い足取りで入口に向かって扉を開くと、そこには那智が立っていたのであった……

 

そんな那智に向かって戦治郎が用件を尋ねると……

 

「先程熊野から連絡があってな、鈴谷は何とか助かったらしい。それで私は今から鈴谷達がいる病院に向かう事となった訳なんだが、一緒に来るか?先程の様子から察するに、お前は鈴谷の事を相当心配している様子だったからな」

 

那智が戦治郎に向かってそう言うと、戦治郎は二つ返事でその誘いを受け、戦治郎の外出許可を取った後、2人は共に鈴谷達がいる病院へと向かうのであった

 

尚、その道中で戦治郎は屋内プールでの那智の質問に答え、それを聞いた那智はそう言う事なら仕方が無いと、納得しながらそう返すのであった

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