戦治郎にとって一番の難題であった鈴谷の治療を、偶々広島の病院に研修の為に来ていた悟に任せた後、戦治郎は鼻歌を歌い出しそうな程上機嫌になりながら、それはそれは軽やかな足取りで鈴谷の病室へと戻るのであった
すると病室を出ていった時とは明らかに様子が違う戦治郎に疑問を覚えた那智が、何があったのか戦治郎に向かって尋ねてみたところ……
「鈴谷の治療の件、偶々こっち来てた悟に任せて来たわ」
「成程な、ならば確かに何とかなりそうだな」
戦治郎の返答を聞くなり、那智は納得したのか腕を組んで頻りに頷いて見せ、2人のやり取りの内容がサッパリ分からない熊野は、只々不思議そうな表情を浮かべ小首を傾げながら、2人の様子を見ていたのであった
その後、戦治郎達3人は軍学校に戻る事となった為、戦治郎達が来る時に乗って来た車が停めてある病院の駐車場に向かって移動していたのだが、丁度戦治郎達が病院から外へ出て来たところで、不意に戦治郎の通信機に軍学校に残っていた大和から通信が入って来るのであった
如何やら大和は、戦治郎達が鈴谷が搬送された病院に向かった後、鈴谷の件に関わっているであろうと思われる校長のところへ向かい、校長がどのくらい今回の件に関わっているかについて、尋ねておいてくれたのだとか……
それによって分かった事と言えば、如何やら校長は熊野の父親から直接電話で鈴谷の事情を知らされると同時に、彼女の行動については大目に見て欲しいと言う、お願いに見せかけた圧力を掛けられていた事が判明するのであった……
この事を戦治郎が熊野に尋ねたところ、如何やら熊野の父親は熊野から鈴谷の事情を聞いており、古くから知っている愛娘の友人を助けたいと言う情と、愛娘である熊野からどうか彼女を助けてやって欲しいとお願いされた事から、この様な行動に出た様であった……
因みに校長から話を聞いた後、大和は校長の指示で鹿島と香取と共に鈴谷のバイト先に鈴谷の現状を伝えると同時に、本日付けで全てのバイトを辞める旨の連絡を入れていたのだそうな……
実際、軍学校としては鈴谷が退院後またバイトまみれの生活を送り、再び病院の世話になる訳にはいかない為、この事を聞いた戦治郎はこればかりは已む無しと心の中で呟くのであった……
こうして鈴谷の行動が見逃されていた理由を知った戦治郎は、大和に礼を述べた後通信を切って那智にこの事を伝えた後、3人は戦治郎が大和と通信している間に辿り着いた車に乗り込み病院を後にするのであった
その道中にて、後部座席に座る熊野が隣に座る戦治郎に戦治郎が鈴谷の事を任せたと言う悟の事を尋ね、戦治郎がこの世界で最も信用と信頼が出来る、超一流を超越したスーパードクターであると伝え、熊野に凄まじく怪訝そうな視線を向けられていると……
「鈴谷の治療については何とかなりそうだが……、今回の件で一番重要な学費の方はどうするつもりなんだ?」
「そうですわ、その辺りについて戦治郎さんはどうお考えなのでしょう?鈴谷はあれでも1度決めた事は絶対に曲げないくらい頑固なので、熊野財閥からの援助は絶対に受けてはくれないと思いますの」
車を運転する那智が、バックミラー越しに戦治郎に視線を向けながら尋ねると、それに同調する様にして熊野が言葉を続けたところ……
「それについては考えがある、……んだが~……」
戦治郎は苦笑交じりに何処か歯切れの悪い返答を行い、それを聞いた那智達は何事かと不思議そうな表情を浮かべるのであった
「那智には言ったから知ってるだろ?俺がロードトレイン砲って兵器作ろうとしてんの」
「ああ……、あのトンデモ兵器か……。それが鈴谷の学費と何か関係があるのか?」
「応、大有りよ。あれ作る時にな、参加者にバイト代払おうと考えてんのよ」
「まさか……、それに鈴谷を……?」
戦治郎と那智のやり取りを聞いていた熊野が、そう言いながら戦治郎にジットリとした視線を向けると……
「熊野大正解、素直に受け取ってくんねぇってんなら、こう言う形で出す以外方法ねぇからな。なぁに心配すんな、作業員の健康管理と作業場の安全管理についてなら任せとけ。そっちに関してはおりゃぁ専門だからなっ!まあ尤も、俺だけじゃ手が足りなくなるところもあっから、そんな時は大和に手伝ってもらう事になると思うがな」
戦治郎は不敵な笑みを浮かべながら、熊野の問いに対してこの様に答えるのであった
そんな戦治郎に対して、那智が先程の歯切れの悪い返答をした理由について、戦治郎に尋ねてみたところ、戦治郎は再び苦笑を浮かべながらこう答える……
「一応、バイト代は税金とか差っ引いた手取りだけで1年分の学費相当になる金額を、前金と後金って具合に2回に分けて支払うつもりなんだが……、如何せん少々手持ちが心許ないんよね……。いや、別に全く手持ちの金が無いって事はないんだが、出来りゃ懐に余裕持たせておきたいんよ、俺もな……」
戦治郎は軍学校に来る前に、空達と共に横須賀で桂島組の車の買い戻しや大量のゲーム機とソフト、特撮やアニメのDVDなどの爆買いをしていた為、戦治郎達がヨーロッパを発つ際にアクセルから貰った金と、ミッドウェーにあった資源を売却して手に入れた金の内、艦娘ランドが開園するまでの間に長門屋鎮守府の経営に使う予定の予算を差っ引いた、各自が自由に使える金はかなり減っていたのである……
「それで、そのバイト代はどうするんだ……?」
「それに関してだが、ちょっち寄って欲しいとこあるんよ」
戦治郎の返答を聞いた那智が、戦治郎に対してどうやってバイト代を調達するつもりなのか尋ねると、戦治郎はこの様に答えた後、那智にとある場所に向かって欲しいとお願いし、それを聞いた那智は戦治郎の指示に従って、軍学校へと向かう道を外れて目的地へと移動を開始するのであった
「とうっちゃーっくっ!!!」
それからしばらく車を走らせて移動したところで、戦治郎は那智に車を止める様に指示を出し、車から降りて少し歩いてとある売店の前に立つと、元気よく目的地に到着した事を宣言し……
「ここは……、宝くじの売店か……?」
「戦治郎さん……、まさかとは思うのですが……?」
戦治郎の後に続いていた那智と熊野が、戦治郎の目の前にある宝くじの売店を目にするなり、訝しむ様な表情を浮かべながら口々に戦治郎に質問し……
「いや~、大和と一緒に前もって参加者の募集しててな、結構な人数集まっちまったんよね。てな訳で、バイト代は結構な額必要になる訳なんだが……、そんなデカイ金額を即座に手にしようって思ったら、宝くじ買って当てるくらいしかないっしょ~!ってジャンボはねぇのか……。おっ!このスクラッチ結構額あるな……、こいつは小遣い用に1枚購入決定っ!!後は~……」
那智達に質問された戦治郎は、現在取り扱われている宝くじの内容を確認しながらそう答え、最終的にスクラッチとキャリーオーバーが発生している2種類の数字選択式宝くじを、それぞれ1枚ずつ購入して那智達の方へと戻って来て、再び車に乗り込むと軍学校へと戻るのであった
それからしばらく時が経ち、戦治郎が購入した宝くじの抽選日がやって来た訳なのだが……
「……とても信じられませんわ……」
「お前の入試の結果が嘘偽りではなかった事が、改めて証明されたな……」
宝くじの結果がどうしても気になった為、戦治郎と大和の部屋に訪れた那智と熊野が、当選番号が表示された戦治郎のタブレットと、戦治郎が購入した宝くじを前にしながら、信じられないと言った様子でそう呟いていると……
「ジャンボがあったら、前後賞込みで大体この3倍は稼げたんだけどな~」
「この3倍……、凄まじい金額ですね……」
戦治郎は今しがた削った1等のマークが揃ったスクラッチくじを、2人の前に滑らせながらこの様な言葉を口にし、その様子を見ていた大和は苦笑しながらこの様な言葉を口にするのであった……
そう、戦治郎が購入した宝くじはものの見事に全てが1等当選しており、それにより戦治郎はバイト代用の20億円と、自身の小遣い用の1000万円を手にしたのであった……
因みに先程の戦治郎の発言だが、戦治郎は生前に購入したジャンボ宝くじ50枚の中に、そのジャンボ宝くじの1等と前後賞が全て集まっていた事があり、合計約65億円を入手した事があった事をここに明記しておく……
また、ジャンボ宝くじが発売される度にこの様な奇跡を起こすせいで、戦治郎は宝くじ業界でブラックリストに乗っていたりもするのだが、これについては今はあまり関係ない事であろう……
尚、戦治郎がジャンボ宝くじで当てた65億円は、敷地の拡大や修理工場の設備や備品の購入、司が担当していた古着屋の土地と店舗購入などに使われた模様