※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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地下迷宮で捕まえて♪ 後編

クロム鋼を連想させる様な眩い輝きを放つプロテクターの様な追加装甲が、胸部や両腕両脚に取り付けられた全身タイツの様なスーツを身に纏い、恐らく追加装甲と同じ材質で出来ていると思われる、龍の頭部を模した大量のセンサーが内蔵され、ガスマスク機能が付いたフルフェイスヘルメットを装着した空は、突然の出来事に驚き立ち竦むアトラク=ナクアの姿を真っ直ぐ見据え……

 

(ふむ、ポーズも口上も完璧だな……)

 

フルフェイスヘルメットの下で、表情筋が死んでいるのではないかと思われるほど無表情なその顔に、ご満悦と言った様子の表情を浮かべた気分になりながら、内心でこの様な事を呟くのであった

 

そう、ここ最近まで目立った活動をしていなかったが、彼もまた戦治郎や光太郎同様、特撮番組をこよなく愛する集団、長門屋特撮同好会のメンバーであり、光太郎がシャイニング・セイヴァーに変身出来る様になった事を、心底羨んだ人物の1人なのである。故にサラからブレスレットとこのスーツの基礎となったパワードスーツを受け取った時は、表情や態度にこそ出さなかったものの、内心では自身の弱点の克服に繋がりそうな代物を手にした事と、自分が変身ヒーローになれる可能性が出来た事を大いに喜んでいたのであった

 

因みに今空が装着しているブレスレットだが、如何やら戦治郎が持っている腰部格納ボックスと同じ仕組みを持っている様で、その事に気付いた空はパワードスーツの改造と並行し、戦艦や空母クラスの艦娘の艤装が格納出来るレベルまで格納容量を増やし、それを艦娘が装着し使用する事で、何処ででも好きなタイミングで艤装を装着出来る様にしたブレスレットの研究開発と、量産計画を独自に進めていたりする……

 

さて、そんな幸せ全開の空と対峙している、旧支配者のアトラク=ナクアの方はどうしているかと言うと……

 

(もう訳が分からないですっ!こいつ本当に一体何なんですっ?!突然何か始めたかと思うと、次の瞬間には姿が変わっていて……、ああもうっ!!頭がおかしくなりそうですっ!!!)

 

内心でそう叫びながら、益々混乱を深めていたのであった……。まあ彼が混乱するもの無理はない……、目の前の男は部下である灰色の織り手達を蹴散らしながらここまで辿り着き、自分を前にするなり突如テストだ何だと言い出したかと思えば、刹那の間に銀色のスーツを身に纏い、よく分からない事を叫び出ながらポーズを決め出したのである……。そんなものが何の前触れも無く突然目の前に現れれば、誰だって、旧支配者だって混乱してしまう事だろう……

 

こうして双方が対峙し、微動だにせずに内心で呟いたり叫んだりしている間にも、時間は静かにゆっくりと流れていき……

 

「いくぞアトラク=ナクアッ!!」

 

空の鋭い声が沈黙を破った瞬間、状況が忙しなく動き始めるのであった……

 

アトラク=ナクアに向かって空がそう叫んだ瞬間、空は信じられない程の速度でアトラク=ナクアとの距離を詰め始め、空の声を切っ掛けに我に返ったアトラク=ナクアは、即座にそれに反応して跳躍、天井に張り付いて空が凄まじい風切り音を発しながら突き出した拳を回避した直後、地下空間の各所に散っている灰色の織り手達に、自分の元に集まる様にと言った内容のテレパシーを送る。するとアトラク=ナクアの周囲、天井から、壁から、そして地面から突如大量の灰色の織り手達が出現し、自分の戦力が集まった事を確認したアトラク=ナクアは、お返しとばかりに灰色の織り手達に空に攻撃する様指示を出し、それを受けた灰色の織り手達は一斉に空に襲い掛かり始める……

 

だが……

 

「【アル・ブラスター】!!!」

 

空は襲い来る群れに向かって突撃を開始し、普段は口にしない繰り出す技名を珍しく口走りながら、金色に輝き始めた右腕を勢いよく突き出して【アル・ブラスター】を放ち、密集して襲い掛かって来る灰色の織り手達に向かって次々と飛んで行く光球達は、それはもう豪快に、灰色の織り手達を次々と吹き飛ばし、あっと言う間に蹴散らしてしまうのであった

 

因みに【アル・ブラスター】の直撃を受けた蜘蛛は、ひっくり返ってビクビクと痙攣し、とても再攻撃に参加出来ない状態になっていた。何故なら彼等の外殻は非常に強固なのだが、反面中身の方はそれはそれは柔らかく、装甲などを貫通して相手の体内に浸透し、内部から破壊を行う空の龍気とは劇的に相性が悪いのである……。そう、彼等が今痙攣しているのは、【アル・ブラスター】によって注入された龍気によって、プニプニな中身を、現在進行形でズタズタにされているからなのである……

 

こうして空は灰色の織り手達を蹂躙し、彼等が襲い掛かって来なくなった事を確認したところで、彼等を嗾けて来たアトラク=ナクアの方へと視線を向けるのだが、その直後、アトラク=ナクアは空を拘束せんとばかりに口からそれはそれは太い糸を吐き出す

 

それに即座に反応した空は、アトラク=ナクアが吐き出した糸を真上に跳躍して回避するのだが……

 

(かかったですっ!)

 

「……っ!?」

 

如何やら口から吐き出した糸は囮だったらしく、空が跳躍して糸を回避したところを目にしたアトラク=ナクアは、内心でほくそ笑みながらそう呟き、直後に今度は腹の先端部分から先程口から吐いた糸よりも一回りも二回りも太い糸を発射し、それに反応し損ねた空の身体を見事拘束する事に成功……、したのだが……

 

「ぬんっ!!!」

 

なんと空は気合いの声を発しながら、クトゥルフクラスの旧支配者でも引き千切る事が困難なアトラク=ナクアの糸を、途轍もなく豪快に引き千切って見せ、それをまざまざと見せつけられたアトラク=ナクアを激しく動揺させるのであった

 

これによって僅かな間だが、アトラク=ナクアは思わず硬直してしまい、それを好機と見た空は……

 

「【ディフレクトランス】!!!」

 

その叫びと共に背後に出現した光の壁を蹴り、その勢いに乗ったままアトラク=ナクアの顔目掛けて光輝く飛び蹴りを放つが、それは空の狙いである顔の中央からややズレた位置、アトラク=ナクアの口付近に生えた鋭い牙状の顎に直撃し、アトラク=ナクアのその凶悪な形をした顎を粉々に粉砕してしまうと同時に、彼を天井から強引に引き剝がし、驚くべき程の勢いで背中から地面に激突させるのであった

 

これにはアトラク=ナクアも、ボロボロになった顎と軽く地面を揺らす程の勢いで地面に叩きつけられた背中から伝わる激痛を我慢出来なかったのか、痛みを誤魔化す為にそれはそれは甲高い悲鳴を上げて、地面に転がった姿勢のまま仰け反って見せるのであった

 

「これだけで終わると思うなよっ!」

 

そんなアトラク=ナクアに向かって、空は叫ぶ様にしてこの様な言葉をぶつけると同時に、自身が体得しているヒーロー技を次々と叩き込んでいく。回し蹴りの要領で【シャイニングキック】を先程破壊した顎目掛けて放った後、その回転を利用して放った【スパークリングロール】を更に顎に叩き込み、それを打ち終えた姿勢から今度は上半身の捻りを加えながら【フラッシュスクリュー】を繰り出して更に更に顎に突き立てる。そして後方宙返りで顎を蹴りつけながら後方に下がって間合いを開け、トドメとばかりに助走をつけながら【ブライトナックル】をアトラク=ナクアの顎にお見舞いし、アトラク=ナクアをぶっ飛ばしてみせるのであった

 

尚、空が執拗なまでにアトラク=ナクアの破壊された顎を狙ったのは、アトラク=ナクアがクトゥルフと同じ旧支配者であり、油断ならない相手であろうと判断し、有効打を効果的に与えるには弱点狙いに徹した方がいいだろうと思ったからである

 

因みに、空が珍しく繰り出す技名を口にしているのは、ヒーローは技を放つ際技名を叫んでナンボ、例えそれが原因で相手に攻撃を防がれたとしても、ロマンの前にはそんな事等些細な事であると考えているからである

 

さて、そんな空のヒーロー技ラッシュを受けたアトラク=ナクアは、攻撃され過ぎて顎の痛覚がイカレたおかげで、脳震盪から復帰すると冷静に思考を巡らせて……

 

「っ!?逃がすかっ!!」

 

空から逃げる事を決定し、空に尻を向けて一目散に走り出し、アトラク=ナクアが逃げ始めた事に気付いた空は、そう叫びアトラク=ナクアの後を追おうとするのだが、ここでブレスレットから突如ブザー音が鳴り出すのであった

 

このブザー音はプロトタイプスーツの活動限界時間を知らせるもので、これが鳴った後もスーツを着用して戦闘を続行しようものなら、スーツのパワーアシスト機能とヘルメット内のセンサー群がオーバーヒートを起こし、その熱によってスーツが暴走し着用者である空が危険な状態に陥る恐れがあったりする……

 

その為、ブザーが鳴った事に気付いた空は、舌打ちをしながらその場に立ち止まって変身を解除し……

 

「先ずは活動時間の延長を図らねばな……」

 

自身から離れていくアトラク=ナクアの背中を見送りながらそう呟いた後、この事を長門屋の面々に報告する為に帰還しようと、踵を返して来た道を戻っていくのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、空から逃亡を図ったアトラク=ナクアだが……

 

(とんでもない奴がいたもんですっ!!まさか小生をここまで追い詰める人間がいるなんて、予想外もいいところですっ!!!)

 

空が帰還し始めた事等露知らず、今も尚、空が自身の後を追って来ていると思い込んでいるアトラク=ナクアは、激しく混乱しながらも空から逃れようと必死になって地下空間を全力ダッシュしていた……

 

まあアトラク=ナクアが動揺するのも無理も無い、相手は旧支配者の中でも比較的武闘派な、クトゥルフを相手に互角に渡り合える様なトンデモ人間、仕事中毒で仕事に集中する為に外の情報を遮断していた関係で、外の情報にとことん疎いアトラク=ナクアはこの事を、クトゥルフが統治するルルイエが人間と同盟を組んでいる事などを全く知らなかったのである……

 

そんなアトラク=ナクアが、逃げながら空の足止めをする方法を考えていると、視界にあるものが映り込む……。以前地下通路内にクトーニアン達が侵入してしまわない様に、地中での交通整理を担当する事となった灰色の織り手達が移動の際に偶々掘り当て、巣を作る予定の場所をめちゃくちゃにしたあるものが噴き出す穴を塞ぐ、自分達が吐き出す糸で出来た蓋を……

 

その存在に気が付いたアトラク=ナクアは、邪悪な笑みを浮かべながら蓋付きの穴を1度通り過ぎた後、すぐさま振り返って灰色の織り手達を集めて指示を飛ばし、自分達と穴との間に自身の脚が1本通るくらいの穴が開いた堅牢な土の壁を作らせ、それが完了すると壁の穴に自分の脚を通し、蓋付き穴に脚が届いた事を確認すると、灰色の織り手達に壁の穴と自身の脚の間にある隙間を埋める様にと再び指示を飛ばす。そしてその作業が完了すると、アトラク=ナクアは脚の先にある鋭い爪で糸製の蓋をバッサリと切り裂いて蓋を開封するのであった……

 

するとどうだ、件の穴からは凄まじい勢いで石油が溢れ出し、それは瞬く間の内にアトラク=ナクア達が先程までいた地下空間を真っ黒に染め上げていくのであった……

 

 

 

 

 

「……む?」

 

地上に戻ろうと地下空間内をライトニングⅡで飛んでいた空は、後方から粘性の高い液体が勢いよく流れる様な音を耳にすると、思わずライトニングⅡを止め、後方へ視線を向けると、そこには地下空間の全てを満たさんとばかりに、尋常でなはい速度でこちらへ向かって流れて来る黒い液体があり……

 

「むぉっ!?」

 

それに気付いた空がこの漆黒の濁流から逃れようと、ライトニングⅡを急発進させようとするのだが、如何やら気付くのが少し遅かった様で、空とライトニングⅡは石油の津波に飲み込まれ、空達を取り込んだ石油はそのまま地下空間を突き進み、遂には空が此処に来る際空けた穴から、間欠泉の様にそれはそれは勢いよく噴き出すのであった……

 

尚、この時食堂に姿を現さなかった空を探していたシゲと護の2人が、耕作地及び牧場建設予定地付近で空が掘った穴を発見し、空の捜索の為に中に入るかどうかを穴の傍で相談していた様で、空が石油と共に穴から飛び出し、噴き出す石油の上で無表情のまま胡座をかいて思考を巡らせる姿を目の当たりにするなり、2人は唾液と鼻水を豪快に噴出しながら、腹を抱えて大爆笑するのであった……

 

因みにこの後、空は長門屋の面々に地下であった事を話すのだが、如何やら翔の除く他の面々は石油の方にばかり意識がいき、空の話を碌に聞いていなかったのだとか……

 

又、長門屋の面々は空が石油を発掘したと認識し、幾ら空がそれを否定しても耳を貸そうとはしなかったのだとか……。まあ、これについては空には前科が幾つもある為、仕方ないと言えば仕方ない事なのだが……

 

こうして石油の油脈が見つかった事で、珍しく雨が降らなかった為行われる事となった今日の鎮守府建築の作業予定は、大幅な変更が行われる事となり、その日の作業は石油コンビナートの建築となり、そこで採掘された石油は製油して艦娘達の燃料となったり、長門屋鎮守府の貴重な資金源の1つとなるのであった

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