地下空間でのアトラク=ナクアとの戦いを終え、彼等が掘り当てた石油と共に長門屋鎮守府建設予定地に帰還した空は、数日と言う時間をかけてこの戦いで浮き彫りとなってしまったプロトタイプクロム・ドラゴンスーツの改良に、熱を入れる様になるのであった
先ず空が最初に着手したのは、アトラク=ナクアを取り逃がした最大の原因と思われるスーツの稼働時間の延長であった
方法としてはスーツの胸部や両手脚に取り付けた追加装甲の内部にスーツの冷却システムを搭載、更に冷却システムが相手からの攻撃で簡単に破壊されない様に、装甲を厚くした上で冷却システムと装甲の間に緩衝材と断熱材としてクッション状のバンシー繊維を入れるのであった。これにより胸部装甲は大型化、見た目がバイク用のプロテクターの様なものから、大き目のブレストアーマーの様なものに、両手脚の追加装甲もプレートを張り付けただけの様なものから、立派なガントレットとグリーブ状のものに変化するのであった
又、装甲の大型化によって装甲の重量が増えた関係で低下した機動力は、胸部追加装甲の後部、肩の辺りに西洋の竜の翼の様に伸ばしたパーツに組み込まれた片側4基ずつ、合計8基の小型ブースターで補う事にした様である
これによりクロム・ドラゴンのシルエットは、何処ぞの天才科学者が変身する仮面ライダーの相棒である、龍の様な仮面ライダーの極熱筋肉ヴァージョンの様なものになっていたりする……
因みにこの時、空は追加装甲の耐久性を底上げしようと考え、何かいい素材はないかと思考を巡らせていたところで、重機の代わりに建築作業を手伝っていた大五郎の姿を見かけ、それを切っ掛けに大五郎が横須賀の乱の際、能力によって生み出した奇妙な結晶を盾に使っていたと戦治郎が言っていた事を思い出し、翔と交渉して大五郎の大好物であるキングサーモンを5匹とドラム缶1本分の蜂蜜を購入すると、それで大五郎を釣って能力を使用させ、この結晶が装甲強化使えるかどうかを調べ始めるのであった
それにより、大五郎の能力がデュラハライト粒子の体内生成と、デュラハライト粒子を自在に操るものである事が判明し、もしこの結晶を追加装甲の強化に組み込めば、自身の全身が戦治郎の顔の様になってしまうだろうと思った空は、デュラハライト結晶と名付けたそれを、スーツの追加装甲に組み込む事を断念するのであった……
尚、ディラハライト結晶を調べている中で、デュラハライト粒子とオベロニウム鋼を混ぜ合わせると凄まじい核分裂が発生する事が判明し、この事実を知った妖精さん達の手によって、後に戦治郎不在の大黒丸の切り札となる『レッドキャップ反応弾』と言う、対深海棲艦用核弾頭が生み出される事となるのであった
因みにこのレッドキャップ反応弾、周囲に放射線を撒き散らす様な事はしないのだが、如何せん爆発が起こった際の衝撃と発生する熱が尋常ではない為、艦娘の艤装に組み込むべきではないと判断されていたりする……
一応言っておくと、この実験によって核爆発が発生し、工廠が木っ端微塵に吹き飛び、工廠の建て直しによるストレスで輝の胃にダメージを与えると言った事態は発生しなかった為、そこだけは安心して頂きたい
続いて空が強化しようとしたのは、スーツ装着時の攻撃力の強化であった
一応クロム・ドラゴンスーツを装着した状態でも、ライトニングⅡとテキサスを装備出来る様にはなっているのだが、場所によってはそれらが使えない様な状況もある事を想定した結果、空はスーツに杭打機以外の武装を取り付ける事にしたのである
とは言ったものの、格闘中心の戦闘スタイルである自分用の武器となると、どうしても武器の種類が限られてしまう……
その問題をどうやって解決するかについて、空は思案しながら平成仮面ライダーシリーズのDVDを見ていると、不意にアイディアを思いつくのであった。そんな彼が見ていたのは、左右でカラーリングが違う2人で1人のあのライダーであった……
その作品から着想を得た空は、早速その武器……、いや、厳密にはデバイスと言うべきか……、それの開発を開始しすぐにプロトタイプを完成させるのであった
さて、こうして空が工廠でクロム・ドラゴンスーツの強化を行っていると、突然通信機から着信音が鳴り響き、空がそれに反応して応答したところ、剛から緊急で皆に集まって欲しいと言われた為、空は妖精さん達に作業の続きをお願いすると、作業を中断して急いで指定された場所へと向かうのであった
「ついさっきの事なんだけど、鹿島市市長経由で嬉野市市長から至急力を貸して欲しいってお願いが来たの」
空達全員が集まった事を確認した剛が開口一番この様な事を言うと、それを聞いた長門屋鎮守府(仮)のメンバーは一体何事かと騒めき出すのであった
その要請を受けた剛が言うには、如何やら嬉野市で行われていた下水道の点検作業中、作業員が下水道の壁に空いた大穴を発見、この大穴が空いた原因を探るべく数人の作業員が穴の中に入りしばらく経過したところで、穴に入った作業員達がその顔に恐怖の表情を張りつけながら、大慌てしながら出て来ると、譫言の様にデカイ蜘蛛がいたと言っていたのだとか……
「それ、何処の地球防衛軍ッスかね?」
「ああ~……、あのステージクリアした後は、皆で味方撃ち合うアレか……。確かに穴ん中で蟻や蜘蛛とやり合ったな……、ってそうじゃねぇや、そう言う話は先ず、陸軍に要請するもんじゃねぇんです?何で海軍のウチに依頼が来るんです?」
剛の話を聞いた護がこの様な事を言うと、それに反応したシゲがこの様な事を述べた後、己の中に浮かんだ疑問を剛にぶつけるのであった
「アタシもそこが気になって、弓取ちゃんに確認取ったんだけど~……、如何やら最初は陸軍に出撃要請したみたいなんだけど、その蜘蛛達には陸軍の武器が通用しなかったみたいなのよね~……。その関係でその蜘蛛達は深海棲艦の亜種ではないかって思われて、こっちにお鉢が回って来たみたいなのよ~……」
「まさかそんな個体がいるとは……、流石にこれは予想外ですね……」
シゲの疑問に対して剛はこの様に答え、それを聞いた通が神妙な顔でそう呟いたところで……
「あのぉ……、それってこの間空さんが言っていた、アトラク=ナクアの事なんじゃ……?」
「空は先日アトラク=ナクアと交戦したと言っていたが……、恐らくそのアトラク=ナクアが逃げた先が、その嬉野市の地下だったのかもしれないのだ……」
\えっ?/
翔が恐る恐ると言った様子で挙手しながらそう言い、ゾアがそれに続く様に前肢で腕組みしながらそう発言すると、それを聞いた面々は間抜け面を晒しながら気の抜けた声を出し、その反応を見た空、翔、ゾアの2人と1柱は呆れた様に溜息を吐くのであった……
その後、空が改めて地下でアトラク=ナクアと交戦した事を話し、この件はアトラク=ナクアを取り逃がした自分に責任があると言う事で、空が単独でこの問題を解決すると言い出し、話し合いの末、空が単独でアトラク=ナクアの下へ向かい、そんな空を鎮守府建設予定地から翔の魔法でサポートする事が決定するのであった
本来なら翔とゾア、そしてクトゥグアの力の一部をその身に宿したシゲも連れて行けば、アトラク=ナクアの討伐成功率は格段に上がるのだが、アトラク=ナクアが先日の報復として鎮守府建設予定地に眷属を送り込んで来る可能性も考慮した結果、翔とゾアとシゲは鎮守府建設予定地に残って眷属達の襲撃に備える事となり、問題のアトラク=ナクアの討伐は、アトラク=ナクアを逃走を図る程までに追い詰めた空が担当する事となったのである
こうして話が纏まった後、空は転生個体である事を隠す為に変装すると、直ちに現場に向かい関係者に接触すると、自分が穴の中に入った後、すぐにこの穴を埋める様にと関係者達に指示を出し、空が穴の中に入って行った事を確認した作業者達は、やや困惑しながらも空の指示通り下水道に空いた大穴を、コンクリートで埋めてしまうのであった
(翔、聞こえるか?)
『はい、テレパシーの感度は良好です』
穴が塞がれた事を確認したところで、空は変装を解いて翔が予めかけてくれたテレパシーの魔法を使って翔と通信出来る事を確認し、翔の返答を聞いた後は、魔法によってアトラク=ナクアの位置を突き止めた翔の指示に従って、アトラク=ナクアがいるであろう方角へと歩みを進め始めるのであった
何故この様な魔法を使う事になったのかと言えば、いくら高性能な通信機であったとしても、流石に地下にいる人間と地上にいる人間とで通信するのは無理だと言う事で、地下にいる空との通信は、翔のテレパシーの魔法に頼る事となったのである
又、翔はテレパシーの魔法だけでなく、空がいる場所の上に何があるかを把握出来る様になる魔法も空にかけている。これは緊急時、空の【技】を使って天井を貫いて真上に向かって逃げる際、地上に【技】に巻き込まれる恐れがある建物が無いかを確認する為である
そんな感じで準備万端な空が地下空間の中を移動していると、恐らくアトラク=ナクアの指示で設置されたと思われる幾多もの罠や、彼の眷属である灰色の織り手達が空に襲い掛かるのだが、空は翔のサポートもあったおかげで、時には翔の指示通りに罠や待ち伏せする眷属達を回避したり、時には殴って罠や眷属達を破壊したりしながら、難なく罠と眷属の群れを突破して行くのであった
そんな罠の中に、先日空を強引に地上に戻した流水トラップ……、あの時は石油だったが、今回は温泉の湯脈から引っ張って来たお湯を使った流水トラップがあったのだが、その存在に気付いた翔からの警告を聞くなり空はある事を思い付き、地上に何も無い事を確認すると、天井に向かって【真・アルフェニックス】を繰り出して大穴を空けて湯の逃げ道を作り、それによって地上に飛び出した空は壁の一部が硝子となった穴を通って地下に戻ると、流水トラップの蓋に少々仕掛けを施し、アトラク=ナクアの居場所までの進行経路を確保しつつ、自分に被害が及ばない様に準備を整えると、仕掛けを発動し流水トラップ用の蓋を破壊、これにより流水は空の思惑通りに地上に噴き出し、この流水は後に輝の手が加わり、長門屋鎮守府の収入源の1つとなる一般向けの温泉施設『自由の湯』となるのであった……
そうして数々の罠を掻い潜りながら空が歩みを進めていると、遂にターゲットであるアトラク=ナクアがいると言う広い空間に辿り着き、その空間の中央では空に攻撃された時の傷が癒えていないのか、痛々しい姿をしたアトラク=ナクアが、せっせと巣作りを行っていたのであった……
嬉野市には嬉野温泉があり、恐らく今回の流水トラップは、その湯脈のお湯が使われたんだと思います