こんな稚拙な作品を、ここまで読んでくださる読者の皆様には、感謝してもしきれません!本当にありがとうございます!
体力的な都合で投稿ペースこそ落ちるものの、今後もこの『鬼の鎮守府』を完結出来る様、頑張っていきます故、応援よろしくお願いします!
それと500話突破記念として、名前を「虧蚩尤」から「稲荷童子」に改名します
いつまでも欠けるとか背くとか、損をするとか不足すると言う意味を持つ「虧」の字を付けてるのも、縁起が悪いですからね……
江田島軍学校ではロードトレイン砲『布都御魂』の製作が行われ、長門屋鎮守府建設予定地では旧支配者であるアトラク=ナクアのエイブラムスが加入し、中間棲姫のマンションに新たに空母棲姫の九十九が棲む様になると言った具合に、空模様の割にえらく騒がしかった6月が終わり、夏の到来を知らせる様に蝉達が鳴き始める7月を迎えた頃、戦治郎は栄達整備兵候補生3人組に、艦載機が大好きな軽空母艦娘候補生の瑞鳳、更には戦治郎に金銭問題を解決してもらった事で、妙に戦治郎に懐いた鈴谷を加えた6人で、整備科の教官に頼んで貸してもらった整備科実習棟で何かを作っていた
「ふぅ……、取り敢えずこんなとこか……」
\おぉ~……/
戦治郎が作業の手を止め、そう呟きながら作業台の上につい先程完成させた物を、壊れない様に丁寧に置いたその直後、その様子を見ていた5人が感嘆の声を上げる
戦治郎はこの作業台で一体何を作っていたのか?戦治郎が製作物を置いた作業台の上を見てみると、そこには艦戦である零戦や烈風、艦攻の天山や流星、更には艦爆の彗星や爆戦仕様の零戦や艦偵の彩雲などが、それはそれは綺麗に並べられていたのであった
この艦載機群を見る栄達の表情には驚きの色が濃く出ており、瑞鳳に至っては恍惚の表情を浮かべながら、その眼にこの光景を焼き付けんとばかりに艦載機群を注視していた
さて、何故栄達や瑞鳳が烈風、流星、爆戦は兎も角、零戦や天山と言った割とありふれた艦載機達を目にしてこの様なリアクションをとったのかと言うと……
「ほほ~……、これがネームド艦載機ね~……。う~ん……、艦載機にあんま詳しくない鈴谷には、普通の奴との違いがよく分かんないな~……。でも、この艦載機達が凄いって事だけは、それだけは鈴谷でも何となく分かるよ……」
そう、この鈴谷の言葉の通り、この作業台の上に並べられているのは、全てネームド艦載機なのである
具体的に言うと、零戦は52型付岩井小隊と53型岩本隊、烈風は六〇一空、天山は友永隊と村田隊、流星は六〇一空、彗星は江草隊と六〇一空、そして爆戦岩井隊に彩雲東カロリン空となっている
因みに艦戦岩井と爆弾岩が同時に存在している件についてだが、これは妖精さんの不思議な力で岩井妖精さんが分裂……している訳ではなく、言霊の力と言うべきなのだろうか、艦載機の仕様とスペックを目的の艦載機と同じものにして、その艦載機を目的の艦載機の名で呼ぶ様にすると、その機体そのものに目的の艦載機の力が宿ると言った感じになっているからである。そのおかげでエースパイロット妖精さんがいなくても、どの空母艦娘でもネームド艦載機を使える様になっていたりする
まあ尤も、この方法の場合機体に力が宿っている為、その機体が撃ち落とされてしまえばネームド艦載機の力は失われてしまい、再度ネームド艦載機の力を得ようとすると、普通のものよりやや構造が複雑になっている艦載機をまた1から作り直す羽目となり、地味にコストと労力と時間がかかり、作るにはかなりの技術力が必要であると言うデメリットもあるのだが……
とまあこの様な事情もあってか、言霊式のネームド艦載機は重要な局面の時のみ横須賀鎮守府で量産され、作戦に参加する艦娘達に配備される様になっており、その関係で普段はあまり目にする事のない珍しい艦載機となっていたりする
尚、友永妖精さんを持つ飛龍や江草妖精さんを持つ蒼龍、村田妖精さんを持つ赤城の様に、エースパイロット妖精さんを保有する艦娘の場合、いくら機体を撃ち落とされたとしても、エースパイロット妖精さんが別の機体に乗り換えするだけで、機体が不思議な力でネームド化する為、コストも労力も大してかけずに戦力低下を防げる様になっているのだとか……
「おっ、鈴谷は見ただけでこいつらの凄さが分かるかっ!流石は航改二になれる可能性がある鈴谷型の艦娘候補生だなっ!」
\航改二……?/
鈴谷の言葉を聞いた戦治郎が、心底嬉しそうな笑顔を鈴谷に向けながらそう言うと、鈴谷達5人は不思議そうな表情を浮かべ、小首を傾げながら口を揃えてそう呟き、その様子を見た戦治郎は、何かを思い出したかの様に口をポカンと開いて硬直し、我に返ると鈴谷達に鈴谷が航巡である改二だけでは留まらず、更に改装する事で軽空母である航改二になれる事を説明し、鈴谷達を大いに驚かせるのであった
これまで戦治郎達は出会った艦娘の中で、戦治郎達が改二になれる事を知っている艦娘達を、自分達の手で悉く改装して改二にしてきているのだが、本来この世界は改二の情報が殆ど判明していない状態だったのである。先程の戦治郎のリアクションは、この事を今の今まで忘れており、鈴谷達の反応を見てその事を思い出したから出たリアクションなのである……
その後戦治郎は、自分の努力次第では改装によって軽空母になり、艦載機を自由に操れる様になれる事を知った事で、艦載機に興味を持った鈴谷の為に、これらの艦載機の詳細について話し始めたのだが……
「こっちの零戦が、ゼロファイターゴッドの異名を持つ岩井氏が所属する52型付岩井小隊の零戦で、こっちは零戦虎徹の異名を持つ岩本氏が隊長だったらって設定の53型岩本隊の零戦な。因みにどっちも正規空母の瑞鶴と縁がある機体なんだわ」
「ゼロファイターゴッドとか零戦虎徹とか、異名が超カッコイイじゃん!そんな風に呼ばれるくらいなんだから、きっと超強かったんだろうな~……。鈴谷も軽空母になったら、その人達みたいに強いパイロット妖精さん達を連れたいところだね~」
説明の内容が52型付岩井小隊と53型岩本隊のものに差し掛かったところで、戦治郎は話を聞いて期待に胸を膨らませる鈴谷とは対照的に、話が進む度にその表情を段々と暗くしていく瑞鳳の存在に気が付くのであった……
「どしたぞ瑞鳳?」
「えっ?」
何処か思い詰めた様な表情をする瑞鳳が気になった戦治郎が、瑞鳳に向かってこの様に何があったか尋ねてみたところ、如何やら無意識の内に表情を暗くしていた瑞鳳は、我に返るとその双眸を大きく開きながら、驚きの声を上げるのであった
これによってこの場にいる者達全員が瑞鳳の異変に気付き、気分を沈ませる瑞鳳に心配そうな視線を送り始め、再度戦治郎が瑞鳳に何事かと尋ねると、瑞鳳は少し言いにくそうに視線を右往左往させ始めるのだが……
「瑞鳳さん、何か悩みがあるならここで吐き出しちゃいなよ。そしたらきっと戦治郎さんが動いてくれて、瑞鳳さんの悩みを解決してくれるはずだからさ」
外見とは裏腹に自分より年上である瑞鳳に向かって、実際に戦治郎に金銭問題を解決してもらった事がある鈴谷がそう言うと、傍でそれを聞いていた戦治郎が苦笑する中、瑞鳳は意を決したのか、真剣な面持ちになると戦治郎達に自身が抱える悩みについて話し始めるのであった……
瑞鳳の話を聞く限り、如何やら彼女の高校時代の友人の妹が、この軍学校に艦娘候補生として入学しているそうなのだが、その妹さんとやらがいち早く誰よりも強くなる事を望み、毎日の様にオーバーワーク気味の自主練を繰り返しているのだとか……
「本当はゲームが大好きな子で、高校生の頃はよく家に遊びに行って一緒にゲームとかやってたんだけど、軍学校に入ってからは自分からゲームで遊ぶのを禁止して、休みの日もずっと訓練をしてるのよ……。そのせいで、上手くストレスが発散出来ていないのか、普段から妙にピリピリしてて、同じクラスの子達と上手く馴染めていないみたいなの……」
「ふむ……、その友人の妹さんとやらが心配なのな……。まあクラスから孤立して榛名みたいな事……、には流石にもうならんか……、あそこまで徹底してお仕置きしてやりゃ、誰もいじめとかやろうとは思わんわな……。問題は……」
瑞鳳の話を聞いた戦治郎が、そう言って鈴谷の方へと視線を向けたところ、鈴谷は乾いた笑い声を上げながら、戦治郎から視線を逸らすのであった……
「出来ればオーバーワーク気味の特訓も何とかしたいけど、今はどちらかと言うとストレスの発散を優先したいかな……?もしストレスが溜まり過ぎて、暴走して海に飛び出してドロップ艦なんかになって、深海棲艦に沈められたりなんかしたら、あの子に合わせる顔が無くなっちゃう……」
「傍にいながら暴走を止められなかったってなったら、冗談抜きで申し訳なさが凄まじい事になりそうだな……。OK分かった、そう言う事なら協力するわ」
瑞鳳の悩みを聞き終えた戦治郎は、瑞鳳に向かって1度頷いて見せた後、瑞鳳の悩みの解決に力を貸す事を約束し、このやり取りを傍で見ていた鈴谷や栄達も、戦治郎に続く様にして協力を申し出……
「それで、そいつは何て艦娘の候補生なんだ?」
戦治郎が瑞鳳にそう尋ねると……
「翔鶴型正規空母の2番艦、瑞鶴の艦娘候補生ね……」
瑞鳳はこの様に返答するのであった……
因みにその瑞鶴の姉で、瑞鳳の高校時代の友人と言うのが、横須賀鎮守府のあの翔鶴だと言う事が、この後に続いた瑞鳳の発言によって発覚するのであった……