※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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彼女が己を鍛える理由

整備科実習棟にて瑞鳳から瑞鶴の事を相談された戦治郎は、作業を終えた後大和が待つ自室に戻ると、先ずは瑞鶴とどうやって接点をもつかについて考えるのであった。もし瑞鶴との接点のもち方に失敗してしまえば、今後は瑞鶴に警戒されてしまう事となり、問題解決どころではなくなってしまうからである

 

戦治郎の中で現在最も上手く瑞鶴との接点をもつ方法と言えば、空母艦娘候補生との合同実習な訳なのだが、生憎空母や軽空母、水母や潜水艦と言った少々特殊な艦種との合同実習は、盆休み明け以降に行われる予定となっている為、それを利用して瑞鶴と接点をもつのは時間が掛かり過ぎると言う理由で没となっている……

 

「かと言って、面識ねぇのに自主トレしてるところに突撃すんのは、流石にナシだかんな~……」

 

「提督、こうなったら翔鶴さんにお願いして、翔鶴さんから提督の事を紹介してもらうのはどうでしょうか?」

 

「いや、もし瑞鶴が無茶している理由が、翔鶴に対してのコンプレックスからだったら、碌な事にならん気がするから、翔鶴を関わらせるのはナシだ」

 

「そうなると……、機会を待つしかありませんね……」

 

戦治郎は大和と共に、瑞鶴と接点を持つ方法について、遅くまで意見を出し合うのだが、どれもイマイチパッとしなかった為、後日改めて方法を模索しようと言う事で、明日の為に床に就く事にするのであった

 

尚、それからしばらくしたところで、大和が戦治郎の布団の中に潜り込んだ事は言うまでもない……

 

 

 

次の日、午前中の授業を終えた戦治郎が、毅達と共に昼食を摂る為に食堂に向かっていると……

 

「ねぇ、ちょっといい?」

 

突然背後から聞き覚えがある声が響き、戦治郎が思わずそちらへ視線を向けたところ……

 

(おぉおぉ~……、まさか向こうからやって来てくれるたぁなぁ……)

 

そこには戦治郎がどうやって接点をもつか考えていた、瑞鶴その人が険しい表情を浮かべながら立っており、瑞鶴の姿を見た戦治郎は思わず内心でそう呟くのであった……

 

「貴方が長門 戦治郎とか言う奴なの?」

 

「いや、俺じゃねぇし……」

 

当の瑞鶴は、鋭い視線を毅の方へと向けながらそう尋ね、質問された毅は困惑しながらこの様に返答した後、戦治郎はあっちだとばかりに戦治郎を指差し、毅の指先を視線で追った瑞鶴は、瑞鶴に向かって自分が戦治郎である事をアピールする様に、手をヒラヒラして見せる戦治郎の姿を見るなり……

 

「貴女が長門 戦治郎……?見た感じ女性みたいだけど……?」

 

「応、俺が長門 戦治郎だ。身体は女だが、魂は漢なんだZE☆」

 

戦治郎に怪訝そうな表情を向けながらそう尋ね、戦治郎は若干困惑しているであろう瑞鶴に対して、底抜けに明るくこの様に返事をするのであった

 

その後瑞鶴は、戦治郎に少し付き合って欲しいと言い放つと、戦治郎達に背を向けてスタスタと歩き出し、瑞鶴から呼び出しを受けた戦治郎は、毅達に昼食に付き合えそうにない事を詫びた後、小走りになりながら瑞鶴の背中を追って行くのであった……

 

 

 

それからしばらく歩いたところ、瑞鶴は戦治郎達が夜の特訓の際に使っている海岸から正反対の位置にある海岸に辿り着くと、そこで歩みを止めて戦治郎の方へと向き直るのであった

 

(人気の無い海岸か……、さって……、瑞鶴は俺に一体何の用があるのか……?って言うか、こいつは誰から俺の事聞いたのk……って、考えるまでもないか……)

 

「突然呼び出して悪かったわね」

 

戦治郎が視線だけで辺りを見回し、人気が無い事を確認しながら内心でそう呟いていると、突然瑞鶴が戦治郎に向かって詫びを入れ、早速用件を口にし始めるのであった……

 

「早速で悪いんだけど、貴方に聞きたい事があるの」

 

「聞きたい事?一体何ぞ?」

 

「瑞鳳さんから聞いたんだけど、貴方……、翔鶴姉と知り合いなの?」

 

瑞鶴の質問に答えるより先に、戦治郎は瑞鳳の事をさん付けする瑞鶴に、若干の違和感を覚えるのであった。その理由としては、艦これのゲームの中では瑞鳳の方が瑞鶴の事をさん付けで呼び、こちらはゲームでは触れられてはいない為詳細は不明だが、戦治郎の中では瑞鶴は瑞鳳を呼び捨てにしているイメージがあったからである

 

まあ、ここでは瑞鳳は翔鶴と同い年である為、瑞鳳より年下である瑞鶴が瑞鳳の事をさん付けする事は正しい事なのだが、その事に対して戦治郎はどうでもいい事とは分かっていながらも、どうしても違和感を拭い切れずにいたのであった

 

さて、こんな些細な事は取り敢えず横に置いておいて……

 

「横須賀の翔鶴か?あぁ、よっく知ってるぜ?俺は一時期横須賀鎮守府に身を置いていたからな、その時に翔鶴と会ったわ」

 

瑞鶴から翔鶴と知り合いであるか否かを尋ねられた戦治郎は、瑞鶴に対してこの様に返答するのであった

 

「そう……、じゃあ次。貴方……、石川 空って男の事を知ってる……?」

 

「ぶっふぉっ!?」

 

戦治郎の返答を聞いた瑞鶴は、戦治郎が何故横須賀鎮守府に身を置いていたのかについては一切触れずに、今回彼女が戦治郎をこの場所に呼び出した最大の理由である空の事について、戦治郎に向かって尋ねてみたところ、予想外の単語が瑞鶴の口から飛び出し、その事に驚いた戦治郎は思わず豪快に吹き出してしまうのであった……

 

その後何とか落ち着いた戦治郎が、空と自分が幼馴染であり親友である事を明かした後、何故瑞鶴が空の事を知っているのか尋ねたところ……

 

「去年の盆休みくらいの事なんだけど、翔鶴姉が見た事も無いスマホをいじりながら、しきりに空さん空さんって言ってて……、それで気になってその空さんって誰なのかって翔鶴姉に聞いたらさぁ……、3時間も4時間も惚気話聞かされて……!挙句の果てには翔鶴姉、その空さん……、いや、空とやらと結婚考えてるとか言い出すし……っ!!」

 

瑞鶴はこの様に答えるも、途中からその時の事を思い出したのか、怒りの余りにプルプルとその身を震わせ始め……

 

「いくら両想いだからってっ!!蟻の巣を見つける度にほじくり返す様な男がっ!!!翔鶴姉と結婚して私の義理の兄になるとかっ!!!!絶っ対に認めないんだからっ!!!!!」

 

遂には、瑞鶴は心を怒りに完全に支配され、衝動のままに怒りの咆哮を上げるのであった……

 

「あ~……、もしかしておめぇさんが無茶なトレーニングやってる理由って……」

 

「ええそうよっ!!!横須賀鎮守府のエース空母の1人であり、元帥から直々に【天衣無縫】の二つ名を賜ったあの翔鶴姉より強いとか言うその空って奴を、私がボッコボコにして金輪際翔鶴姉に近付けさせない様にする為よっ!!!悪いっ!!?」

 

怒り狂う瑞鶴の様子を見て察しがついた戦治郎が、確認の為に瑞鶴に無茶なトレーニングをしている理由を尋ねたところ、瑞鶴は声を荒げながらこの様に返答するのであった……

 

その後何とか落ち着いた瑞鶴に、やや引き気味の戦治郎が改めて用件を尋ねてみると、瑞鶴は本題である空の弱点について戦治郎に尋ね返すのだが……

 

「あいつの弱点っつったら~……、う~ん……、やっぱ翔鶴かな~……?それ以外ってなると、もう弱点らしい弱点はあいつにゃねぇかんな~……」

 

「何よそれ……、だったら正攻法で攻めるしかないって事……?」

 

「それもやめとけ、今のアイツべらぼうにつえぇかんな……。昔は俺もあいつと互角に闘り合えてたんだがな~……、一体何処で差が付いたんだろうな……?」

 

「いや、知らないし……」

 

戦治郎の言葉を聞いた後、瑞鶴と戦治郎はこの様なやり取りを交わし、戦治郎から空の弱点を聞き出せなかった瑞鶴と、横須賀鎮守府でクトゥルフに真っ向勝負を挑み、互角に渡り合っていた空の姿を思い出した戦治郎は、2人揃ってそれはそれは深い溜息を吐くのであった……

 

その後、気を取り直した戦治郎が、瑞鶴に対して瑞鳳が心配していた事を告げ、それを聞いた瑞鶴が申し訳なさそうな表情を浮かべたところで、これ以上瑞鳳に心配かけるなと瑞鶴に釘を刺してこの場を後にしようとしたその時である

 

「ちょっと待って!つい流しちゃったけど、貴方さっきサラッとその空とか言うのと互角に渡り合ってたって言ったわよね?!」

 

突然思い出したかのように、瑞鶴が戦治郎の背中に向かってこの様な事を言い、それを聞いた戦治郎が思わず足を止めたところで、瑞鶴は戦治郎に空を倒す事が無理でも、せめて鼻を明かせるくらいに鍛えて欲しいと言い出し、理由は兎も角目標を持って自分を高めようとする人間が好きな戦治郎は、自分の指導内容に文句を言わない事を条件として、瑞鶴の申し出を受ける事にするのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、瑞鶴は打倒空を目標として、戦治郎の指導の下己を鍛え上げていくのだが、とある事件の際、ある事を目撃した事で打倒空の夢を諦める事となるのだが……、それはまだほんの少し先の出来事である……

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