※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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宙を舞う恐怖

岩本妖精さんからの救援要請を受けた戦治郎達は、フタフタマルマル時にいつもの浜辺から軍学校を発ち、岩本妖精さんの棲み処があると言う軍学校から小弁天島付近に浮かぶ小島を目指して航行していた

 

この時戦治郎はなるだけ早く、そしてなるべく誰にも知られない様に注意しながらこの問題を解決しようと考え、その為にも迅速な移動が必要不可欠だと判断すると、横須賀鎮守府に滞在している頃から大和の為に作り、渡す機会を窺っている内に今に至ってしまっていたケートスの大和専用カスタム機である『八重桜』と、八重桜を格納及び携帯する為に妖精さん達と共に開発した、超小型の格納ボックスを自身の腰部格納ボックスから取り出して大和に与え、移動の高速化を図るのであった

 

その道中、戦治郎は先程与えた八重桜を運転する大和と、八重桜の後部座席に座る綾波に対して、岩本妖精さんから聞いた話をもう少し細かく説明する

 

岩本妖精さんの話によると、問題の神話生物はかなりの数が存在し、その全てが岩本妖精さん達の集落から少し離れた所に出現した洞窟から這い出て来ると、島に住む人間や妖精さん達に次々と襲い掛かり始めたのだとか……

 

因みに戦治郎が問題の生物を神話生物と判断した理由についてだが、それは横須賀鎮守府にいる間、資格を取り終えた翔とゾアが主催していた神話生物対策の為の講習会の中で、今回問題となっている生物と特徴が完全に一致する神話生物の話があった為である

 

洞窟から這い出て来た神話生物達が、島民や仲間達を襲いだすと言う光景を目の当たりにした岩本妖精さんは、相棒である岩井妖精さんや他のパイロット妖精さん達と共に艦載機に乗り込み、問題の神話生物達との交戦を開始するのであった

 

だが、どれだけ倒しても洞窟から這い出て来る神話生物達によって、岩本妖精さん達は徐々に追い詰められ始め、このままでは不味いと考えた岩井妖精さんの提案で、岩井妖精さん達が囮になっている間に、岩本妖精さんが救援を呼びに行く事となるのであった

 

その後岩本妖精さんは戦闘によってボロボロになった零戦53型で、何とか戦場から離脱する事に成功すると、最初は呉鎮守府に向かおうと考えるのだが、呉鎮守府が過去の観艦式襲撃事件からまだ完全に立ち直れていない状態である事を思い出すと、その代わりとして海軍の管轄下にある軍学校に向かう事にし、そちらに向かって針路をとって移動を開始するのだが、軍学校の傍まで辿り着いたところで零戦が遂に限界を迎えてしまい、岩本妖精さんが乗った零戦は海に墜落してしまうのであった……

 

それから岩本妖精さんはキャノピーを破壊して海の中に墜落した機体から脱出すると、残った力を振り絞って砂浜まで泳ぎ、何とか砂浜に立つとその足で軍学校の校舎に向かって歩き出そうとするのだが、戦闘による疲労と戦闘と機体から脱出する際に負った怪我が原因で、砂浜の上に倒れそのまま意識を失ってしまったのだとか……

 

「岩本妖精さんは、この戦いで多くの仲間を失っちまったみてぇだが……、相手が神話生物ってんなら仕方がねぇ事だわな……」

 

「恐らくですが、妖精さん達は神話生物のその姿を見た事で正気を削られ、戦いの中で追撃とばかりに恐怖を植え付けられてしまった結果、激しく動揺して大きな隙が生まれてしまい、そこを狙われてしまったのかもしれませんね……」

 

「もしその神話生物が、例の神話生物だったら……、襲われた島の人達や妖精さん達の多くは……」

 

「ほぼ間違いなく、綾波が考えてる通りだろうよ……。っと、島が見えて来たな……」

 

今回の事件の概要を話し終えたところで、3人がこの様なやり取りを交わしていると、戦治郎が問題の島に近付いた事に気付き、大和達に向かってその事を伝えると、鷲四郎を発艦し島の様子を見て来るよう指示を飛ばし、指示を受けた鷲四郎はすぐさまそれを了承し、物凄い速度で島に向かって飛んで行くのであった……

 

 

 

『……旦那、ちょいとこれを見てくれ……』

 

それからしばらくしたところで、戦治郎の頭の中に鷲四郎の声が響き、それを聞いた戦治郎は鷲四郎と視覚を共有し、鷲四郎が見て欲しいと言っていた物を確認する。すると戦治郎は、その表情を険しいものへと変化させ……

 

「……ったく、マジでアレが相手かよ……。つか、地上に出て来たのはつい最近だって話なのに、もうあんなもんをあんだけ作ってんのかよ……。こりゃ輝が知ったらビックリするだろうな……」

 

鷲四郎と視覚を共有したまま、思わずこの様に呟くのであった……

 

「その様子だと……、やはり……?」

 

「ああ、確定だ……」

 

そんな戦治郎の様子を見た大和が、戦治郎に短くこの様に尋ねたところ、戦治郎も至極面倒くさそうに、短く返事をするのであった……

 

その後戦治郎は、その神話生物との戦いに備え、大和と綾波の艤装に少々改造を施し、大和には三式弾を渡して3号さんに装填させ、綾波には大和達が艤装を取りに行っている間に、あり合わせの材料から急いで作り上げた秋月砲を2つ手渡し、自身のヨイチさんに大和の3号さん同様、三式弾を装填するのであった

 

因みに戦治郎が大和達に施した改造だが、これは改二改修の様な大規模な改修ではなく、大和達の艤装に補強増設スロットを外付けし、そこに大会議の後セオドールに頼んで譲ってもらっていたQF 2ポンド8連装ポンポン砲を取り付けた程度のものである

 

こうして準備を整えた戦治郎達は島への接近を開始し、島との距離が近くなったところで、その視界に先程鷲四郎が見て欲しいと言っていた物が映り込み、それを目の当たりにした大和達は、一瞬驚愕の表情を浮かべた後、すぐさまその表情を引き締め、気持ちを戦闘態勢に移行するのであった……

 

そんな大和達が目にした物……、それは玄武岩で作り上げられた、窓が一切ついていない塔の群れであった……

 

そうしている内に戦治郎達は島への上陸に成功し、問題の神話生物が近くにいないか確認する様に、周囲を見回しながら移動を開始する。そして戦治郎達がしばらく歩みを進めたところで、不意にその耳に艦載機のものと思わしき機銃の発射音が聞こえて来るのであった

 

それを聞いた戦治郎達は、もしかしたら岩本妖精さんの仲間が生き残っており、まだ神話生物と交戦しているのではないかと思い至ると、急いでその音が聞こえた方角へと走って行き、辿り着いた先で問題の神話生物の群れと空中戦を繰り広げる爆戦仕様の零戦62型を……、岩本妖精さんの相棒である岩井妖精さんを発見するのであった……

 

さて、岩井妖精さんが現在進行形で戦っている神話生物達だが、それはまるでイソギンチャクの様な姿をしており、身体の何処にも翼を持っていないにも関わらず、重力に逆らう様にフワフワと宙に浮かんでいたのであった……

 

その神話生物は、自分達に捕捉されない様急旋回などを多用して、辺りを縦横無尽に飛び回る岩井妖精さんの零戦62型目掛けて、身体から生えた触手を伸ばして攻撃を行うのだが、それはゼロファイターゴッドの異名を持つ岩井妖精さんが駆る零戦62型に掠る事も無く、虚しく空を切るのであった……

 

その様子を見ていた岩井妖精さんは、これをチャンスと受け取ると、先程攻撃して来た神話生物の方へと機首を向け、その身体目掛けて機銃の銃弾を浴びせて見事神話生物を1匹撃墜して見せるのだがそれも束の間、神話生物の群れの後方から新手が10匹程飛来し、岩井妖精さんに攻撃を仕掛けて来るのであった……

 

「大和っ!綾波っ!戦闘開始だっ!!作戦目的は岩井妖精さんの救援と、飛行するポリプの殲滅っ!!!そしてこいつらが這い出て来てるって言う洞窟の徹底破壊だっ!!!!こいつらを放っておくと、中国四国地方に甚大な被害が出ちまうぞっ!!!!!」

 

「「了解っ!!!」」

 

その光景を目の当たりにした戦治郎は、このままでは岩井妖精さんが危ないと判断すると、すぐさま大和達に向かってこの様な指示を飛ばし、それを聞いた大和達は力強く返事を返すなり、飛行するポリプの群れに対して砲撃を開始、そして大和達が攻撃を開始した事を確認した戦治郎は、変装を脱ぎ捨てて動き易い状態になると、ヨイチさんで三式弾をばら撒きながら突撃を開始、大和達が放つ砲弾や銃弾の間を縫う様にしながら飛行するポリプ達に接近し、久しぶりに背負った大妖丸を鞘から引き抜くなり、天高く跳躍した後大妖丸を豪快に横薙ぎに振り、複数の飛行するポリプをまとめて叩き斬って見せるのであった……

 

こうして、戦治郎達と神話生物である飛行するポリプの群れによって行われる、極めて熾烈な戦いが、この瞬間から幕を開けるのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……っ!?何よあれ……っ?!あれが貴女が言っていた化物なの……っ!?あんなの私、今まで一度も見た事ないわよ……っ?!!いや、それだけじゃない……っ!戦治郎さんって深海棲艦だったの……っ!??何で深海棲艦が大和さん達と協力し合ってあの化物と戦ってんの……っ?!?ホント訳が分かんないんだけどっ??!!」

 

戦治郎達が飛行するポリプ達と戦闘を開始した頃、戦場から少し離れた所にある茂みの中に隠れている瑞鶴は、戦治郎達の戦闘を目の当たりにするなり、恐怖と混乱によって震える腕で岩本妖精さんを抱きかかえ、涙目になりながらこの様な言葉を口にしていたのであった……

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