※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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増援来りて

大和達を追って来た事で、この戦いを目の当たりにする羽目になった瑞鶴の存在になど一切気付かずに、戦治郎達は洞窟から這い出て来たと言われている飛行するポリプの群れと激戦を繰り広げていたのであった

 

戦治郎が先陣を切ってポリプ達の群れの中に突撃し、大妖丸を片手で振り回しバッサバッサとポリプ達を斬り捨て、その遺体に格納ボックスから取り出した燃料缶の中身をぶちまけ、更にトドメとばかりにヨイチさんに装填された三式弾を浴びせ、三式弾の子弾によって引火した燃料は火柱を上げてポリプ達の遺体を次々と焼き尽くし、仕返しとばかりに戦治郎に襲い掛かろうとしたポリプ達は、後方に控えた大和の3号さんに装填された三式弾と、綾波が装備する秋月砲、そして周囲を飛び交う岩井妖精さんが駆る零戦62型の機銃の餌食となり、三式弾を浴びたポリプは火達磨になりながら、綾波の砲撃と零戦62型の銃撃を受けたポリプは、榴弾の爆発や豪雨の如く襲い掛かる銃弾によってその身をバチャバチャと飛び散らせながら、地面に向かって真っ逆さまに落下して行くのであった

 

尚、綾波や岩井妖精さんが仕留めた遺体に対しても、戦治郎は燃料をかけて入念に焼き払っていた。何故なら、もしこれでポリプが仕留められておらず、それに気付かぬままこの場を後にし、自分達が去った後に自己再生で損傷部位を修復した後、背後から修復を終えたポリプに襲撃される可能性を戦治郎が懸念した為である。故に戦治郎達は、ポリプの遺体を跡形もなく焼き尽くす事にしたのである

 

尤も、ここ以外にもポリプが湧いている可能性を考えた戦治郎が、ポリプを斬り捨てながらも今後のポリプ対策を立てる為に、斬り捨てたポリプの身体の一部をサンプルとしてティルタニア樹脂製のタッパーに詰め、抜け目なく回収していたりするが……

 

それはそうと、こうして飛行するポリプ達と戦っている戦治郎達だが、時が経つにつれてその状況は徐々に徐々に悪くなっていくのであった

 

言うのも、見た限りでは戦況は戦治郎達の優勢の様なのだが、実際のところ戦治郎達は倒しても倒しても後から後から湧いて来るポリプ達によって足止めを喰らっている状態に陥っており、目的地であるポリプ達が出て来ると言う洞窟の方へは全く向かえていない状態なのである

 

更に戦えば戦うほど、戦治郎達の体力は消耗していくのだが、一方のポリプ達は体力を消耗している個体がやられたとしても、後方から体力に余裕がある個体が新たにやって来て戦列に加わっていく為、ポリプの総数は戦闘によって確かに減っているかもしれないが、現状だけ見てみればただ只管戦治郎達だけが消耗している様な状態となっているのである

 

こうなって来ると、当然の如くトラブルが発生してしまうもので……

 

「っ!?」

 

「しまったっ!!岩井妖精さんっ!!!」

 

戦治郎達が到着するまでの間、単独で戦い続けていた岩井妖精さんの疲労が遂に限界を迎え、それにより岩井妖精さんは機体の操作ミスをやらかしてしまい、その隙を見逃さなかったポリプの触手による攻撃を、零戦62型の主翼に受けてしまうのであった

 

それに気付いた戦治郎が声を張り上げるのだが、岩井妖精さんの零戦62型からの反応は無く、機体は錐揉み状に回転しながら地面に向かって落下して行くのであった……。如何やら攻撃を受けた時の衝撃によって、岩井妖精さんはコックピット内で気絶してしまっている様である……

 

(チィッ!!どうする……っ!?このままじゃ岩井妖精さんが……っ!!)

 

その様子を目の当たりにした戦治郎は、内心で舌打ちしながらこの様に呟き、どうするべきか思考を巡らせようとするのだが、それはポリプ達の夥しい数の触手攻撃によって中断させられてしまうのであった

 

この時何故、戦治郎は岩井妖精さんを助けに行くのを躊躇ったのか……、それは今、敵陣のド真ん中に突っ込んで囮になっている自分が、岩井妖精さんを助ける為に動いてしまえば、自分に向いている矛先の全てが大和達に向かい、大和達を危険な状況に陥れてしまう可能性があったからである

 

尚も襲い掛かって来るポリプ達に反撃しながら、戦治郎は心の中で大和達の命と岩井妖精さんの命を天秤にかけ、どちらを優先すべきかで逡巡するのだが、戦治郎がそうしている内にも、岩井妖精さんの機体は地面との間を縮めていく……。それを見た戦治郎が、このままでは不味いと思い……

 

(ここは大和達を信じて……、行くしか……っ!)

 

戦治郎が大和達の事を信じ、岩井妖精さんを助けに行く決意を固め、そちらに向かって駆け出そうとしたその時である……っ!

 

「うわあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

突如近くの茂みから1つの影が飛び出し、その影は戦治郎達には聞き覚えがある声を張り上げながら、今にも墜落してしまいそうな岩井妖精さんの下へ一直線に駆け出し、まるでヘッドスライディングでもするかの様な勢いで、プロペラに注意しながらも岩井妖精さんの機体に飛びつき、機体の墜落を阻止してくれたのであった

 

「瑞鶴っ!?何でおめぇ此処にいるんだよっ?!」

 

その影に気付いた戦治郎が、影の正体である瑞鶴に向かって、驚きの色を含んだ叫びを上げるのだが……

 

「戦治郎さんっ!後ろっ!!」

 

当の瑞鶴はこの様に叫び返し、これによって自身の方へ伸びて来る触手の存在に気付いた戦治郎は、手にした大妖丸で向かって来る触手をバッサリと斬り捨てるのであった

 

さて、これによって戦況に変化が発生する

 

先程の瑞鶴の叫びによってポリプ達が瑞鶴の存在に気付き、ポリプ達からしたら忌まわしい事この上ない62型によって両手が塞がっている事で、瑞鶴は自分達に抵抗する手段を現状持ち合わせていない存在だと判断したポリプ達が、戦治郎や大和達からターゲットを変更し、一斉に瑞鶴に襲い掛かり始めたのである

 

「さっきと大して状況変わって……、いや、大和達に攻撃向かってないだけ若干マシか……。って言ってる場合じゃねぇっ!!!」

 

「提督っ!援護しますっ!!」

 

「瑞鶴さんっ!伏せて下さいっ!!」

 

その様子を見た戦治郎達が、思い思いに言葉を口にし、瑞鶴を助けようと行動を起こそうとしたその直後、突然瑞鶴が身を潜めていた茂みより更に後ろの方から、機銃……、いや、恐らく機関砲クラスの掃射音が鳴り響くと同時に、瑞鶴の方へと向かっていたポリプ達を銃弾の嵐が襲い、次々とその身体を蜂の巣にしていくのであった……

 

これに驚いた戦治郎が、瑞鶴の方へと駆け出そうとしたその足を止め、掃射音が聞こえた方角へ視線を向けようとするのだが、その視界に映り込んだポリプ達の死骸に起こった現象に気付くと、思わずそちらへ視線を向ける

 

先程の攻撃によって撃破されたポリプの死骸……、その身体には数多くの銃創が残っているのだが、その銃創の周りには何と緑色の光を点滅させるクトゥルフ文字が浮かんでおり、それは点滅の速度を上げるにつれて緑から黄色、そして黄色から赤に変化していき、それが点滅を止め一層眩く赤い光を放ち始めると、突然銃創を中心に次々と爆発、その爆発によって飛び散った肉片は赤い炎を纏いながら地に落ち、しばらく地上で燃えていたそれはやがて完全に焼失してしまうのであった……

 

「な、なんじゃこりゃ……っ!?」

 

戦治郎が、大和が、綾波が、そしてポリプ達のターゲットとなっていた瑞鶴が、その現象を目の当たりにして愕然とし、この中の誰よりも早く我に返った戦治郎が、思わず驚愕の声を上げると……

 

「ヴルったら、とんでもない武器を作ったものね……。でもこれなら十分……、いえ、十二分っ!神話生物とも戦えるわっ!!」

 

戦治郎の声に返答するかの様なタイミングで、掃射音がした方からこれまた戦治郎達にとって聞き覚えがある声が聞こえ、この場にいる者達全員がそちらに視線を向けると……

 

「五十鈴((さん))(教官)っ!?」

 

そこには軽巡艦娘候補生達の教官を務める、佐世保鎮守府に……、そう、文月に心酔している旧支配者のヴルトゥームが住まう佐世保鎮守府に所属する五十鈴の姿があり、五十鈴の姿を目にした戦治郎達が驚きの余り思わずそう叫ぶと……

 

「細かい事は後っ!!今はこの盲目のものの群れを何とかしましょうっ!!!」

 

五十鈴は驚愕する戦治郎達に向かってこの様に返答しながら、手にした大型の機関銃の様な武器を、鎮守府の皆にも悪い神話生物と戦える武器を作って欲しいと言う、文月のお願いを聞いたヴルトゥームが、その願いを叶える為に全身全霊を込めて作り出した対神話生物用機関砲を構え、その様子を見ていた戦治郎達は、我に返るなり五十鈴を戦列に加えて戦闘を再開するのであった……

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