集落跡地にて休憩をとっていた戦治郎達は、突如として襲い掛かって来た正体不明の敵と交戦する事となり、相手の情報が余りにも少なすぎる事が原因で、戦治郎達は思わぬ苦戦を強いられる事となるのであった……
「これでも喰らうザンスッ!!」
先程何かの艤装と思わしき存在が発艦した黒いタコ焼きの様な艦載機が、そう叫びながら自身の下部から生えた腕で持っている魚雷を戦治郎目掛けて投げつけ、それを戦治郎が何とか回避したその先には……
「待ってましたよっとぉっ!!」
艤装から黒タコ焼きと同時に飛び出したエイ型艦載機が既に待ち構えており、エイ型艦載機は回避したばかりで体勢を立て直し切っていない戦治郎の頭に向かって機銃を発射……
「ばいしょおおおぉぉぉーーーっ!?」
それに気が付いた戦治郎はよく分からない叫びを上げながら、勢いよく胸を反らしてブリッジの姿勢をとってそれを強引に回避、その後両足で地面を蹴ってバック転し何とか体勢を立て直すのであった
が、その直後……
「フクロウッ!コウモリッ!ナイス誘導でよっ!!」
如何やら戦治郎が現在立っている位置は、艤装が放つ衝撃波の射線上であったらしく、艤装は艦載機達に向かってそう叫ぶと、口から黒い衝撃波を放って戦治郎に攻撃を仕掛けるのであった
「こなくそおおおぉぉぉーーーっ!!!」
艤装の口元に暴力的な黒い何かが見えた瞬間、戦治郎はそう叫びながら地面を蹴って右方向に跳躍、その直後に手にしたヨイチさんの砲口を地面の方へと向けてトリガーを引き、その反動を利用して脚力だけで跳躍するよりも大きく右方向へ文字通り飛び、艤装が吐き出す衝撃波を何とか回避するのであった
(くっそ!こいつら一体何なんだよっ!?エイは兎も角、他の2匹は全く見た事ねぇぞっ?!しかもヘモジーと全く同じ攻撃方法持ってやがるしっ!!つかこいつらの正体や攻撃方法よりも、今気にするべきはこいつらの目的か……、確かさっき、こいつらは俺を見てリコリスの部下って言ってたな……。まさかこいつらの目的に、リコリスが関わってんのか……?……そういやウチの爺さんもガワはリコリスだったな……、一体どっちのリコリスに因縁があるんだ……?)
その最中、戦治郎が何故彼等が自分達に攻撃を仕掛けて来るのかについて考えを巡らせていると……
「提督っ!援護しますっ!!」
不意に戦治郎の耳に大和の声が聞こえ、戦治郎が声がした方角へチラリと視線を向けたところ、そこには3号さんと艤装に取り付けられた51cm砲の砲口を、戦治郎に対して攻撃を仕掛けている艤装の方へと向ける大和の姿と、艤装が発艦した艦載機達に機関砲や秋月砲を向ける五十鈴と綾波の姿があり、それに気付いた戦治郎が五十鈴達の援護の為に、腕から鷲四郎を発艦しながら射線上から退避すると、すかさず大和達が一斉に砲撃を開始する
これにより、五十鈴達の方は戦治郎を衝撃波の射線上に誘導したり、戦治郎の回避行動の妨害をする艦載機達の足止めが出来る様になったのだが、戦艦水鬼の転生個体である戦治郎でも耐えられそうに無さそうな攻撃を行う艤装を狙っていた大和の方は、誰もが予想する事も出来なかったであろう、とても信じ難い出来事が発生するのであった……
大和が自身に向けて砲撃を行った事を視認しているにも関わらず、艤装は一切回避行動をとろうとしなかったのである
それを見た戦治郎は、思わず怪訝そうな表情を浮かべる。先程の戦いの中で戦治郎は艤装の事をしっかりと観察しており、それにより艤装の動作が明らかに遅い事は知っていたのだが、それでも普通なら動作が遅いなりにも回避行動はとるだろうと考えていたのだが、肝心の艤装はそんな事は一切せず、その短い足で地面を強く踏みしめ、大和の攻撃をその身で受けるべく身構えていたのである……
(こいつ……、何企んで……)
戦治郎がそう考えた直後、艤装に大和が放った砲弾が直撃し……
艤装に当たった砲弾は爆炎を発する事も無く、まるで爆竹の破裂音の様な乾いた音を辺りに響かせ、それによって飛び散った砲弾の破片も、艤装の身体にペチペチと弱々しく当たった後、その弾力に押し負けて艤装の足元にポロポロと落ちていくのであった……
「そ、そんなっ!?」
「何じゃ今のはぁっ?!?」
目の前で起こった出来事に驚愕し、戦治郎と大和が同時に叫び声を上げると、艤装は愕然とする2人に向かってニヤリと笑い……
「驚くのも無理もねぇでよ、実際これを使える様になった時、使っているアッシ自身も驚いたもんでよ。まあそれはそうと……、攻撃が効かねぇ絶望感を抱きながら死に晒すでよ。かつてお前達がアッシとフクロウの目の前で沈めたあの子の様に……、数の暴力を目の前にして絶望しながらも、アッシ達に心配させない様笑顔を向けながら、アッシ達を逃がしてくれたアッシ達の持ち主の様にな……っ!!!」
戦治郎達に向かってそう言い放った後、艤装は衝撃波を発射する為に口を大きく開き始める……
と、その時である
「岩本さんっ!岩井さんっ!頼んだわよっ!!」
戦治郎達の後方から瑞鶴の声が聞こえ、その直後に戦治郎達の後方から零戦53型と零戦62型が姿を現し、艤装の口の中に機銃の弾丸と機体の下部に取り付けられた爆弾を放り込む。尤も、これらの攻撃も先程同様、簡単に弾かれたりかんしゃく玉の様な音を出すだけで、艤装に有効打を与える事は出来なかったのだが……
「瑞鶴っ!大怪我しとる岩本妖精さんに何やらせとんじゃいっ!?」
「大丈夫よっ!岩本さんの機体操作は私の方でやってるからっ!」
「そう言う問題じゃ……っ!」
「大体、私も反対したのよっ!けど岩本さんがやれってっ!やってくれってっ!!」
突然の出来事に驚きながらも、戦治郎が怪我人である岩本妖精さんを出撃させた瑞鶴を咎めようと声を発するも、瑞鶴のこの言葉を聞くとつい押し黙ってしまうのであった……。怪我を押してでも、故郷の為に戦おうとする妖精さんの気持ちを理解してしまった為である……
(妖精さん達が望んでるんなら仕方ねぇ……、っと言っても、妖精さん達が加わったとしても、この状況が好転するとは思えねぇ……。さて、どうしたもんk……ん?)
こうして艦娘候補生である瑞鶴までもが戦列に加わった訳だが、それによってこの状況が如何にかなる訳ではないと思った戦治郎が、攻撃が碌に効かないこの艤装に有効打を与えるには、どうしたらいいかについて考えようとしたところで、ある事に気が付き思わず考える事を止め、その様子を観察し始めるのであった
一体何が起こったのか……、それは艤装の身体から次々と妖精さんが姿を現し、艤装を止めるべくその身体や足にしがみついたり、艤装をペチペチと叩き出したり、挙句の果てには戦治郎達を守らんと、両手両足を大きく広げて戦治郎達の前に立ちはだかり始めたのである
「ちょっ!?お前ら止めるでよっ!!折角助けてやったのに、何でアッシの邪魔をするでよっ!!?」
「……助けた?おめぇが?妖精さん達を?」
突然自分に対して攻撃を始めた妖精さん達に驚き、艤装がこの様な言葉を口にすると、それに戦治郎が反応し、思わず艤装に対してこの様に尋ねるのであった
「そうでよっ!こいつらが何か空飛ぶでっかいイソギンチャクみてぇなのに襲われていたところを、偶々身体を休める為にこの島に来たアッシ達が助けたんでよっ!!妖精さんは深海棲艦と対立してるって、アッシ達の持ち主だったあの子が言ってたもんだから、助けた事を理由に深海棲艦をブッ倒す為の力を妖精さんから借りようと思ったんでよっ!!!」
戦治郎の問いに対して、艤装は群がる妖精さんを振り払いながらこの様に返事をし、それを聞いた戦治郎は少し考えた後……
「なぁ、取引しねぇか?俺達がその妖精さん達を何とかしてやるから、代わりにおめぇ達は大人しく俺達の話を聞いて欲しい……。これでどうよ?」
艤装に向かってこの様な取引を持ち掛け、妖精さんの鬱陶しさが我慢出来なくなった艤装はその取引に応じる事にし、それを聞いた戦治郎が妖精さん達に攻撃を止める様にお願いすると、妖精さん達はすぐに艤装への攻撃を止め、戦治郎達の下へと集まって来るのであった
この時、戦治郎が妖精さん達に対して、何故自分達を助けてくれた艤装に攻撃を始めたのかについて尋ねたところ、妖精さん達は先程戦治郎達を援護する岩本妖精さん達の姿を見た事で、戦治郎達は岩本妖精さん達が連れて来てくれた自分達の味方であると判断した様で、味方同士で潰し合いをして欲しくないと考えた妖精さん達は、避難場所として利用していた艤装の格納スペースから飛び出し、戦治郎達に攻撃を仕掛けようとする艤装を止めるべく行動を開始したとの事であった
こうして謎の艤装との戦いは、島に住む妖精さん達のおかげで終了し、戦治郎達と艤装達はお互いの状況を把握する為に、先程艤装が衝撃波で吹き飛ばした小屋跡地にて話し合いを始めるのであった