京都駅でバスに乗り換え、乗客の好奇の視線を一身に浴びながら、戦治郎達はバスで目的地である舞鶴鎮守府へ向かい……
「到・着!!!」
最寄りのバス停から今度は徒歩で移動し、舞鶴鎮守府の入口にある門の前に辿り着くと、戦治郎は人目など一切気にする事無く、内心で湧き上がる喜びを身体と声で表現するかの様に、両腕を大きく広げながら大声で叫ぶのであった
「おい馬鹿っ!!何大声で叫んでんだよっ!?皆こっちめっちゃ見てんぞっ!!!」
「おっほ!俺達人気者じゃ~ん!舞鶴鎮守府の艦娘の皆さ~ん!チャ~オ~♪」
「恥ずかしいから止めろってっ!!つか新幹線で人目がどうこう言ってたのは何だったんだよっ!!?」
「それはそれ、これはこ・れ☆」
「訳分かんねぇよっ!?!」
その直後、鎮守府の敷地内にいる艦娘達の視線が戦治郎達の方へと向けられ、それに気付いた毅はすぐさま戦治郎の頭を叩き、2人でこの様なやり取りを交わすのであった
さて、そんな2人のやり取りを見ていた瑞鶴は、ニコニコしながらふざける戦治郎の姿を見守る大和の方へと近付き……
「大和さん、確か舞鶴鎮守府の艦娘の皆さんは……」
「はい、舞鶴鎮守府に所属する艦娘の皆さんは、ほぼ殆どの方が横須賀の乱の際に提督の本来の姿を見ていて、提督が転生個体である事を知っていますね」
「正体を皆に知られているから移動の時ほど気を使わなくていいって事で、あれだけはっちゃけてるって訳か……」
「恐らくですが、提督は鎮守府の皆さんに自分達の到着を知らせる為に、あの様に振舞っているのかもしれませんね」
「それにしたって、流石に限度ってものがあるでしょう……。さっきの叫び声のせいで、まだ耳がキーンって鳴ってるし……」
戦治郎とじゃれる毅に話し声を聞かれない様に細心の注意を払いながら、大和とこの様なやり取りを交わすのであった
さて、戦治郎と毅、瑞鶴と大和がそれぞれ話をしていると、鎮守府内の艦娘達が何かに気が付いたのか、通信機で何処かに連絡を入れるや否や、それはそれは慌てた様子で門の両サイドに整列し始め、その様子を見ていた毅を瑞鶴は一瞬だけ驚きの表情を浮かべた後、舞鶴の艦娘達に一体何が起こったのか分からず、少々困惑しながらその様子を見守っていると……
「君が長門 戦治郎君か?」
不意にこの様な声が聞こえ、瑞鶴達がそちらの方へと視線を向けると、そこには大淀、雲龍、天城、羽黒、由良の5人を従えた老人の姿があり、老人が姿を現すなり整列した艦娘達は一斉に敬礼し、老人は艦娘達の間を通ってゆっくりと戦治郎達の方へと歩み寄って来るのであった
その様子を見た瞬間、瑞鶴と毅はこの老人の正体に気付き、大慌てしながら老人に向かって敬礼する。そう、この老人こそが、横須賀鎮守府にいる元帥の親友である舞鶴鎮守府の提督、大淀 隼人大将なのである
「初めまして大淀大将、自分が長門 戦治郎提督候補生であります」
大淀大将が戦治郎のすぐ傍まで来たところで、戦治郎は身なりを整えると先程とは打って変わって真剣な表情を浮かべ、大淀大将に敬礼しながら返事をするのであった。尚、戦治郎のそのあまりの変わり身の早さに、瑞鶴と毅は内心でドン引きしていたりするのであった……
「ふふっ、君の事はバタケから聞いているよ。そう畏まらず楽にしてくれて構わんよ」
「ではお言葉に甘えて……」
戦治郎の事を元帥から聞いていた大淀大将は、目の前にいる戦治郎と元帥から聞いていた戦治郎のギャップに笑みを零した後、直立不動のまま敬礼する戦治郎達に向かってこの様な言葉を掛け、その言葉を受けた戦治郎はこの様に言葉を返し、瑞鶴と毅が内心で「いや、甘えちゃダメだろう……」とツッコミを入れている中、いつもの調子に戻るのであった
「先ず、横須賀のr……」
「あーっ!大淀大将っ!此処で立ち話するのもアレなんで、先ずは執務室に行ってそこでゆっくり話しましょう!そうしましょうっ!!」
戦治郎がいつもの調子に戻ったところで、大将が横須賀の乱の時に所属艦娘達を避難させてくれた事や、剣持を仲間に引き込んでくれたおかげで彼の部下達と協力して鎮守府を守れた事に対して、戦治郎に向かって礼を述べようとするのだが、この話を事情を知らない毅の前で話すのは不味いと判断した戦治郎が慌てた様子で大将の言葉を遮り、その様子を見て大将が戦治郎の行動に疑問を抱いていると、すかさず雲龍が大将に戦治郎達の事情について耳打ちし、それを聞いた大将はしまった!と言った感じの表情を一瞬浮かべた後……
「確かにそうだな、この老体で長時間立ち話をするのは流石に堪えるからな、では執務室に案内するからついて来なさい」
大将はそう言うと戦治郎達に背を向けて歩き出し、戦治郎と大和は安堵の息を吐いた後、大将の後を追い始めるのであった
因みにこの時、戦治郎がすぐさまフォローを入れてくれた雲龍にこっそりと礼を言ったところ……
「気にしないで……、私は横須賀の乱の時だけでなく、ショートランド泊地にいた頃にも貴方達に助けられているし、何よりもアムステルダム泊地で苦しんでいた妹の天城の事も助けてもらっているから……」
雲龍は柔らかい微笑みを浮かべながら、この様に言葉を返したのであった
尚、先程大将が口にしようとした言葉に引っかかりを覚えた毅は、執務室に到着するまでの間、終始不思議そうな表情を浮かべていたのだとか……
そうして大淀大将直々に執務室に案内された戦治郎達は、執務室内にある大淀大将の執務机の前に整列し、そこで今回のインターンシップに関する話を聞く事となり、提督候補生である戦治郎と毅は大淀大将の指導の下、舞鶴鎮守府の主力艦隊である雲龍達の指揮を交代で執る事となり、艦娘候補生である瑞鶴は雲龍と天城の指導の下、舞鶴鎮守府で行われている訓練に参加する事となるのであった
因みに、出撃出来ない事に対して、瑞鶴が不平を漏らしたところ……
「流石に候補生を作戦行動に参加させる訳にはいかないので……」
「その代わり、貴方の訓練内容は実戦と遜色ないものにしてあげる……」
瑞鶴の指導を担当する事となっている天城が、申し訳無さそうにこの様に述べた後、天城の言葉に続く様にして雲龍がこの様な言葉を口にする。そんな2人の言葉を聞いて瑞鶴が溜飲を下げたところで、雲龍が音も無く瑞鶴の方へと歩み寄り……
「戦治郎さんから聞いたけど、貴方は空さんを倒す事を目標にしていたのよね……?同じ様な目標を掲げていた者同士、仲良くしましょう……、ね……?」
雲龍は瑞鶴にこの様な事を耳打ちし、それを聞いた瑞鶴は驚愕の表情を浮かべながら雲龍の顔に視線を向け、瑞鶴と目が合った雲龍は瑞鶴に向かってパチリとウインクをしてみせるのであった
これが切っ掛けとなって、雲龍と瑞鶴は性格や趣味こそ全然違うものの意気投合する事となり、雲龍は瑞鶴に対空用に編み出した自身の艦載機運用技術の殆どを伝授し、その技術と岩本妖精さん達の教えも合わさった事で、瑞鶴は江田島軍学校随一の空母艦娘候補生となり、瑞鶴はインターンシップの後も、メールやLINEなどで雲龍とプライベートな部分も含めたやり取りを交わす様になったのだとか……
そうしてインターンシップ関連の話が終わったところで、戦治郎達は艦娘の大淀の案内で鎮守府の中を見学する事となり、その中で戦治郎は、工廠で作業する球磨型重雷装巡洋艦の3番艦である北上の姿を発見するのであった……