「は~い、インターンシップ初日お疲れ様~」
「お疲れ~」
「提督も瑞鶴さんもお疲れ様でした」
大淀の案内での舞鶴鎮守府の見学を終え、食堂で夕食を済ませた戦治郎達は、毅以外の3人に割り当てられた部屋に荷物を置いた後、すぐさま戦治郎の部屋に集まっていた
何故毅だけ部屋が割り当てられていないのかについてだが、本来鎮守府の代表となる提督と言うものは、鎮守府の外に自宅を構えてそこから通勤するものであって、普段から国の所有物である鎮守府に住んでいる訳ではないのである。言ってしまえば、鎮守府に住む事になっている戦治郎達の方が、イレギュラー的な存在となるのである
それに加え、毅の実家は舞鶴鎮守府の割と近くにある為、インターンシップ参加だけでなく里帰りも今回の舞鶴行きの目的の1つである毅にとっては、鎮守府の1室を借りるよりも実家から通勤する方が都合が良いからである。この事を毅が大淀大将に伝え、実家からの通勤許可を申請したところ、大淀大将は二つ返事で了承したのである
尚、瑞鶴の実家は舞鶴鎮守府からかなり離れた場所にある為、彼女も戦治郎達と同じ様に鎮守府の1室を借りる事にしたそうだ
さて、こうしてインターンシップ初日を終えた3人は、互いに労いの言葉を掛け合った後、横須賀鎮守府に滞在していた事から鎮守府の設備について知っていた戦治郎が主体となって、鎮守府と軍学校の設備の違いについて初めて鎮守府を訪れた瑞鶴に尋ね、瑞鶴は設備の相違点を目にした時の驚きや疑問を戦治郎にぶつけ、戦治郎と大和は瑞鶴が疑問を口にする都度、瑞鶴にその疑問の答えを分かり易く丁寧に教えていた
「そういえば一部の所属艦娘さん達は、私達を出迎える為にわざわざ鎮守府を発つ日にちをズラしてくれたんだっけ……?」
「あぁそうだな~……、天城と羽黒にはちょっち悪い事したかな~?と思ったわ……」
そんな中、不意に瑞鶴がこの様な事を口にし、それを聞いた戦治郎はばつの悪そうな表情を浮かべ、後頭部をバリバリと掻きながらこの様に返答するのであった
そう、戦治郎達を出迎えてくれた艦娘達の中には、本来今日から休みに入り実家に帰省しようとしていた者もおり、その中には天城や羽黒の名前もあったのである
因みに鎮守府内の見学中、戦治郎は横須賀の乱の際に会った大井の姿を発見出来ず、その事を案内役の大淀に尋ねたところ、戦治郎達とそこまで親しい訳ではない大井は、休みに入るなりとっとと実家に帰省したのだそうな……
「提督、天城さん達は久しぶりに提督とお会いしたいと思ったからこそ、自主的に帰省を遅らせたのだと思われますから……」
「それもそうだな……。うん、今の発言は無し、天城達が帰省を遅らせたのは自分達で考えてやった事なんだから、俺達が気に病む必要は無いはずっ!っと……、それはそうと……」
天城達の休みを遅らせてしまった事に責任を感じた戦治郎の言葉を聞いた大和が、眉間に皺を寄せる戦治郎に向かってこの様に言うと、戦治郎はそう言っていつもの表情に戻るなり、腰の格納ボックスを漁り始め、中からノートPCを取り出すと部屋の中にある机の上に置き、PCをネットに繋ぐ為にテキパキとセッティングを開始し……
「護~?生きて……じゃなくて起きてる~?」
ノートPCをネットに接続し終えると、戦治郎は机に付属する椅子に腰掛け、すぐさま護とボイスチャットを繋げ、ディスプレイの先にいるはずの護に向かってこの様な言葉を掛けるのであった
『む?戦治郎ンゴ?護なら今は空達と一緒に、工廠の地下で大黒丸とか言う船用のドックを作ってるンゴ』
戦治郎が護に向かって声を掛けてから大して間も空けずして、護の部屋でPCを操作していたイオッチが戦治郎の呼び掛けに応え……
「えっ!?何こいつっ?!どうしてポケモンが人間の言葉喋ってるのっ?!?」
ディスプレイに内蔵されたカメラによって、戦治郎のPCのディスプレイにイオッチの姿が映し出されるや否や、それを見た瑞鶴が驚愕の表情を浮かべながら疑問を口にするのであった……
その後戦治郎が何とか瑞鶴を落ち着かせ、ディスプレイの先にいる存在が以前戦ったポリプの上位互換の様な存在である事を説明し、それを終えると護の代わりにイオッチにある事を尋ねるのであった
「昼間に大和が護に調査依頼出してたと思うんだが、それについて護から何か聞いてないか?」
『あ~、確か北上についてだったンゴ?それならワイも手伝ったから分かるンゴ、ちょっと今から調査結果を出すから少々待ってて欲しいンゴ』
戦治郎の問いに対してイオッチはこの様に答えると、突如身を震わせながら全身を発光させ始め、その様子を見ていた戦治郎と瑞鶴は、突然の出来事に思わずギョッとする
「突然身体が光出したけど、貴方一体何してるの……?」
『これンゴ?これはワイがハードディスクの代わりにしている、ワイの鱗に溜まっている電気から情報を引き出してるだけンゴ。っと、あったンゴ~』
瑞鶴は発光するイオッチにこの様な質問すると、イオッチはあっけらかんとした様子でこの様に返答し、直後に必要な情報を鱗の電気から引き出し終えると、全身を発光させるのを止めて、戦治郎側のディスプレイに調査結果とやらを表示するのであった
「思った以上に情報集まってんなぁ……」
『それはワイが身体を張って頑張った結果ンゴ、いや~……、頑張った後のピザは格別だったンゴ~』
さて、イオッチの手によってディスプレイに表示された情報を見るなり、戦治郎はその量に驚き思わずこの様に呟いたところ、イオッチは恐らく情報集めの手伝いの報酬として与えられたピザの味を思い出しながら、戦治郎にこの様に返事をするのであった
因みに、イオッチは身体を張って頑張ったと言っているが、一体どの様に頑張ったのだろうか?それについて、順を追って簡単に説明していく事としよう
手順① 護がイオッチを掴む
手順② 護がイオッチの頭をPCのUSBポートに挿入
手順③ イオッチがもがく様にしてUSBポートの中に入っていく
手順④ そこからLANケーブルの中に侵入し、LANケーブルを経由して情報が漂う電子の海へ……
手順⑤ 電子の海から必要な情報を拾い集め、情報を鱗に保存してから帰還
尚、イオッチがUSBポートに刺さってから、情報収集して帰還するまでにかかった時間は、驚くべき事に0.01秒だった模様……
「働かないっつってたのは何だったんだよ……?」
『ピザには勝てなかったンゴ……』
「ちょっと、その表情止めて……、私の中のロトムのイメージが壊れるから……」
イオッチから送られた情報に目を通しながら戦治郎がそう呟くと、イオッチはその表情をアヘらせながら答え、そんなイオッチの表情を目にした瑞鶴は、やや引きながらイオッチに向かってこの様なお願いをするのであった……
瑞鶴達のやり取りは置いておいて、戦治郎は調査結果を読み進めるにつれて、その表情を徐々に曇らせていくのであった……
さて、戦治郎が読み進めている調査結果だが、これは先程イオッチが言った様に、その内容はこの舞鶴鎮守府の工廠にいたと言う、北上についてのものとなっている
戦治郎達は大淀の案内で舞鶴鎮守府内を見学していた訳だが、戦治郎はその中で工廠で工作艦娘や妖精さん達と共に作業に取り組む北上の姿を発見している
ここだけ聞いていると、北上が自主的に工廠の手伝いをしている様に聞こえるが、ここで1つ思い出して欲しい事がある……。それは横須賀の乱の際、北上が出撃していたか否かについてである……
そう、雲龍達が悪ふざけで戦治郎を止めた時、主力メンバーの中にいてもおかしくないはずの北上の存在は一切触れられておらず、それどころか舞鶴鎮守府に帰還しようとする大井の口から、北上は舞鶴鎮守府に残っている事が明言されていたはずだ
横須賀の乱の際、戦治郎は大井の発言に引っかかりを覚えていたのだが、今回北上の姿を実際に見た事で、戦治郎は北上が出撃していなかった事に納得するのだが、それと同時に新しい疑問が戦治郎の中に生まれる事となり、戦治郎はこのモヤモヤを解消する為に、戦治郎の付き添いとして来ている関係で、戦治郎達以上に自由に動ける大和を経由して、護に北上の事を調査する様に依頼を出したのである
さて、戦治郎が目にしたと言う北上だが、如何やら過去に何かしらあったのか、工廠内を歩いて移動する時、左足を引きずる様にして歩いていたのである……
(大井が北上の事を気に掛けてた理由は分かった……、北上の方はあいつに任せるとして……、問題は大井か……)
イオッチから調査結果を受け取ってからしばらく経ち、送られて来た調査結果に目を通し終えた戦治郎は、内心でそう呟きながら椅子の背もたれに背中を預けるのであった
そんな戦治郎が先程まで目を通していた調査結果の中には、この様な文章が書き記されていた……
【●年〇月◎日 西方海域攻略の為に出撃した際、北上は潜水カ級eliteが発射した魚雷から旗艦であった大井を守る為に彼女を庇い大破、その際に左足を大きく損傷してしまい、左足に今後の出撃任務への参加が非常に困難になるレベルの後遺症が残ってしまう】