北上が戦治郎の提案を受け、悟から後遺症の治療を施してもらう事を決めたたその翌日、戦治郎達提督候補生2人が昨日と同様大淀大将の執務を見学していると、不意に司令室内に救難信号を受信した際に発せられるブザー音が鳴り響き、それを聞いた大淀大将はその表情を険しいものへと変化させ、秘書艦である大淀に通信に出る様指示を出し、指示を受けた大淀は急いで通信を繋ぎ、司令室の中にいる者達全員に通信が聞こえる様にコンソールを操作して音量を調整するのであった
その内容を簡単に説明すると、如何やら日本海側で漁を行っていた漁師達が、深海棲艦の艦隊の襲撃を受けてしまったのだとか……
一応、漁師達は漁に出る前に最寄の海軍の拠点に依頼を出し、護衛の艦娘を付けていたそうなのだが、如何やらその艦娘達の練度が思った程高くなかった様で、今もヌ級とリ級が2隻ずつ、そしてヘ級とロ級1隻ずつの編成相手に苦戦しているのだそうな……
因みに漁師達が深海棲艦の名前知っていたのは、深海棲艦関係で海軍に救難信号を出す際、正確な情報が欲しいと言う海軍の要請で漁協が漁に出る漁師達に配布しているパンフレットに、イロハ級の名前と姿が写真付きで記載されていたからである
「う~ん……練度が低い艦娘にヌ級とリ級の相手させるのは、流石に分が悪いですね……」
「そうだな……、話を聞いている限り、護衛の艦娘は駆逐艦ばかりの様だからな……。例え相手がノーマルばかりだったとしても、魚雷を使える状況に持ち込めない限り、思った様に相手にダメージを与えられない事だろう……」
「練度が高い艦娘だったら、駆逐艦だろうとヌ級の艦載機に搭載された爆弾や魚雷を狙い撃ちして撃ち落として、それ見て連中が動揺してる隙を突いて接近して魚雷叩き込むなり、艤装の砲口に砲弾ブチ込んで弾薬庫を誘爆させるなり出来るんだけどなぁ……」
「すまん戦治郎……、おめぇ一体何言ってんだ……?」
「流石にそれは……、要求される練度が高過ぎるのではないか……?」
「……うん、変な事言って申し訳ないです……」
通信を終えたところで、提督候補生ズと大淀大将はこの様なやり取りを交わした後、すぐさま件の漁師達の救援の為に、艦隊を編成して任務に参加する艦娘達に作戦概要を伝え、急いで出撃させるのであった
こうして、2隻のヌ級を相手する事となっている雲龍と、ヘ級とロ級の相手を担当する事となっている由良と駆逐艦娘3人、そして戦治郎の提案でこの任務に参加する事となった大和の6人で編成された艦隊は、現場に到着すると護衛の艦娘達と合流し、天を舞う龍を彷彿とさせる様な戦いぶりを見せる雲龍の艦載機達と、圧倒的過ぎる火力を誇る大和の主砲のおかげで、難なく深海棲艦達を沈める事に成功するのであった
因みに何故戦治郎は大和をこの任務に参加させたのかと言えば、1つは長い休みが原因で大和の戦闘に関する感覚が鈍ってしまう事を防ぐ為、もう1つはこの休暇でただでさえ少ない舞鶴鎮守府の主力戦艦艦娘が帰省しており、リ級の装甲を容易く抜けそうな艦娘がヌ級を相手取る雲龍を除くと大和くらいしかいなかった為、そして最後の1つは護衛任務を自分達だけで全う出来なかった事が原因で、深く落ち込んでいるかもしれない護衛の艦娘達を、日本海軍中で最も名前が知られている大和に励まさせる事で立ち直らせ、更にその二つ名に恥じぬ戦いぶりを生で見せる事で、自分もこうなりたいと思わせて、彼女達の向上心を上げようと考えたからだ
そんな戦治郎の思惑はズバリ的中し、護衛を担当していた艦娘達は大和の激励を受けるなりすぐさま立ち直り、大和に対して今以上に強くなる様日々精進を怠らないと宣言し、仕舞いには大和にサインをねだり始めるのであった……
その様子を漁船の漁師達や雲龍、そして雲龍の艤装に取り付けられたカメラ越しに見ていた戦治郎達が、何とも微笑ましい光景かと思いながら眺めていると……
「……っ!?ソナーに感ありっ!!海中から何かがこちらに向かって浮上して来ていますっ!!!」
突如周囲の警戒をしていた由良が異変を察知し、鋭い声を上げて大和達に注意を促し、それを聞いた大和達はすぐさま警戒態勢に移行するのであった
「先程の戦闘で近くに潜んでいた潜水艦がこちらに気付き、攻撃を仕掛けようとしているのでしょうか……?」
「それは無いと思う……、もし相手が潜水艦だったら、わざわざ浮上してこちらに発見されるリスクを冒す必要はなく、そのままこちらに魚雷を発射すればいいだけだから……」
潜水艦に対しての対抗手段を持たない大和と雲龍が、自分達の目には見えない相手を警戒する様に、険しい表情を浮かべながらこの様なやり取り交わしていると……
「え……っ!?これってどういう事……っ?!」
「ソナーの反応が……、凄い勢いで増えてる……っ!?」
「その数……、100……、200……っ!?300……っ?!!ってまだまだ増えてるよっ?!?!」
「しかも物凄い速度で浮上して来てる……っ!!来ますっ!!!」
由良と共に爆雷の準備を進めながら、ソナーで相手を捕捉しようとしていた駆逐艦3人が、浮上して来る相手の異常性に動揺し始め、相手が海面近くまで来た事に気付いた由良がそう叫んだ直後、海中からそれは姿を現したのであった……
それは身長2.5mほどの大きさで、樽の様な胴体の側面からは蝙蝠に似た膜状の翼とウミユリの様な触手がそれぞれ5つ、等間隔に並んで生えており、胴の上部にある球根状の首の上には、頭部と思わしき五芒星状のヒトデの様な形状をしたものがくっついており、その先端にはこの生物の目玉と思わしき球体が付いていた……
その異形の生物を目にした者達の多くは、未知の存在と遭遇した事によって湧き出て来た恐怖心に心を支配され、身動きが碌に取れなくなってしまい……
「これは……、以前戦ったフライングポリプとは別の……、神話生物……?」
神話生物との接触に慣れている大和は、そう呟きながら3号さんを構え始め、この謎の生物を迎え撃つ準備を整えるのであった……
「何で日本海に古のものがいるんだよおおおぉぉぉーーーっ!!?あいつらは南極方面に撤退したんだろうがよおおおぉぉぉーーーっ?!!」
「待て戦治郎っ!!古のものって何だよっ!?」
「あれが……、転生個体以上の脅威と言われる、神話生物と言うものなのか……?」
大和が迎撃準備を整えている頃、司令室で雲龍の艤装のカメラ越しに戦場の様子を見ていた戦治郎は、突然の神話生物の登場に思わず両手で頭を抱えながら絶叫し、状況が掴めていない毅は戦治郎の叫びに反応してこの様に叫び、大淀大将は神話生物である古のものを目にするなり、驚愕の表情を浮かべながらこの様に呟き、その後ろで同じく古のものを目撃した大淀は、ただただ愕然とし立ち尽くしていた……
その後、何とか落ち着きを取り戻した戦治郎は、翔の講習で得た知識を用いて大将達に古のものについて、そして神話生物について詳しく説明し……
「あいつらはあんなナリでも、一時期は地球を支配していた種族です……。そんな連中が本気になれば、恐らく大和だけでは抑えきれないかもしれません……。ですので大将……、俺に出撃許可を出して下さい……っ!!!」
「出撃許可って……、戦治郎、お前突然何言い出すんだよ……っ!?」
この状況を打破するべく、戦治郎は真剣な表情で大将にそう言って自身の出撃許可を出す様に懇願し、それを聞いた毅は戦治郎の方へ視線を向けながら、この様な言葉口にするのだが、直後に戦治郎が出撃に備えて変装用の衣装を脱ぎ捨て、その正体を明らかにすると、毅は驚愕のあまり絶句してしまうのであった……
「あの場にいる者達全員を救う為だ……、已むを得んな……」
「すまねぇ毅、細かい事は戻ってから話す……。だから……」
そんな中、大将は已む無しとばかりに、戦治郎の提案を受ける旨を伝える為に、そう呟きながら戦治郎に向かって頷いて見せ、それを見た戦治郎は毅に向かってそう言うと、駆け足で司令室の入口に向かおうとするのであった
と、その直後である
『戦治郎さん……、如何やらその必要は無いみたいよ……?』
不意に司令室内にいつの間にか我に返っていた雲龍の声が響き渡り、それを聞いた戦治郎が思わず足を止め、雲龍にそれはどう言う事かと尋ねたところ……
『私が飛ばしていた哨戒機が、心強い援軍を連れて来てくれたわ……』
雲龍はこの様に答え、その直後に司令室のディスプレイに表示された映像に、多大な変化が発生するのであった
「これは……、彼岸花の花びらか……?」
毅がチラリとディスプレイに映り込んだ物を見て思わずそう呟いたところ、戦治郎は内心で驚愕しながら血相を変えて毅達のへと引き返し、ディスプレイに現在映し出される光景を目の当たりにすると、内心の感情が表情に漏れ出し、その表情を更に驚きの色に染め上げるのであった……
現在ディスプレイの中では、突如として空から降り注ぐ大量の彼岸花の花弁が、次々と古のもの達を貫き、瞬く間の内にその身体をズタズタに切り刻み、更には大和達を守るかの様に辺りにフワフワと漂っていたのである……
(こんな事出来るのは……、この世界じゃたった1人しかいねぇ……っ!!)
戦場の様子を見た戦治郎がそう呟いた直後……
『脆いっ!!!脆過ぎるのうっ!!!元地球の支配者とはこの程度のものかあああぁぁぁーーーっ!!!??』
司令室内に、この場では戦治郎と雲龍だけが知る、究極至高最高の実力を誇る転生個体の声が響き渡るのであった……
「何で祖父さんがそこにいるんだよおおおぉぉぉーーーっ!!?」
『何でも最近出来た友達と、次のアンダーゲートの出店先を考えるついでに、空の散歩をしてたらしいの……』
「友達って誰だよっ!?」
その声を聞いた戦治郎が絶叫しながら疑問を口にすると、雲龍は問題の声の持ち主の方へとカメラを向けながら戦治郎の問いに答え、それを聞いた戦治郎が更なる疑問を声に出したところで……
『いや、ワシの身体を易々と叩き斬るお前からしたら、何でも脆く感じるもんじゃろうが……』
不意に司令室内に、戦治郎に聞き覚えの無い声が響き渡るのであった……
「今の声は……?」
聞き覚えの無い声を聞いた戦治郎が、不思議そうな表情を浮かべながらそう呟き、司令室のディスプレイを注視していると、そこには自身の能力である紅吹雪で作り出した紅い雲の様な物に乗って飛行する、戦治郎の祖父であり全転生個体中最高クラスの戦闘力、知識、経験、精神、財力、運を持ち合わせたリコリス棲姫の転生個体である長門 正蔵の姿と、伝説ポケモンとして広く知られているであろう、ジガルデ50%フォルムの姿があったのであった……
(今の声……、もしかしてあのジガルデの……?つか今さっき自分の身体を祖父さんが叩き斬ったって……。あの祖父さんにそんな事されて無事でいられるってこたぁ……、もしかしてあいつ……、滅茶苦茶強ぇ神話生物……?)
『さぁて、牽制はこれくらいにして……、あやつらを徹底的に叩きのめしてやるかのうっ!』
『正蔵、ここはワシに任せてもらおうか、なぁにすぐ終わらせてやるわい……』
『
ジガルデの姿を見た戦治郎が内心でそう呟いていると、不意に正蔵達がこの様なやり取りを始め……、直後にディスプレイ内の映像が真っ赤に染まり……
\キャアアアァァァーーーッ!!?/
「大和っ?!一体何があったっ!?」
司令室内に大和達の悲鳴が鳴り響くと戦治郎は再び血相を変え、大和達の無事を確認する為に声を張り上げるのであった……
そんな中……
『咲作うううぅぅぅーーーっ!!!核分裂や核融合を攻撃に使用する時は、先にワシに声掛けろと言ったじゃろうがあああぁぁぁーーーっ!!!』
『さっき任せろと言ったじゃろがいっ!!』
『やろうとしとる事をもうちょっち明確にせんかいっ!!!このアホなる神めがっ!!!』
咲作の古のものとその周囲に漂う空気を材料にして発生させた核分裂からの核融合コンボによって、古のもの達が跡形も無く一掃された海上に降り立った正蔵と咲作は、正蔵の紅吹雪のおかげで咲作の核熱コンボの被害を一切受けなかったものの、その威力の凄まじさに愕然する大和達の目の前で、年甲斐も無く口喧嘩をおっ始めるのであった……
これが正蔵との激闘の末、彼の茶飲み友達となった外なる神、アザトースの落とし子にしてツァトゥグアの祖父であるサクサクルースの咲作と、戦治郎とのファーストコンタクトなのであった……