外なる神サクサクルース……
それはこの世界の創造神とも言われる外なる神、アザトースより剥がれ落ちた身体の一部が核分裂を引き起こした事で誕生した、多くの神性の父と呼ばれている存在である
そんな彼は、普段時空を超えた場所に独りで棲んでおり、その日も最早家族同然に連れ添っている退屈と、突如として襲い掛かって来る寂しさと戦っていた……
しかし、そんな生活を送るサクサクルースの下に、自身の兄弟でありアザトースのお世話係を担当しているニャルラトホテプが訪れた事で、これまでの退屈な日々は終わりを迎える事となるのであった……
「ヘロ~兄上~、ご機嫌いかが~?」
「な~にが兄上じゃ気色悪い……、一体何の用じゃ?」
突如時空の壁を超えて姿を現したニャルラトホテプは、飄々とした雰囲気はそのままに陽気な声でサクサクルースに挨拶し、それによってニャルラトホテプの訪問に気付いたサクサクルースは、心底嫌そうな表情を浮かべながら、彼に訪問理由を尋ねるのだった
「いや~、家族に捨てられたぼっち老人が、誰にも悟られず床の染みになってないか、ちょっと確認をと思いまして~」
「よし、帰れ」
訪問理由を尋ねられたニャルが、ヘラヘラしながら恐らく嘘の訪問理由を口にしたところ、サクサクルースはその発言が余程癪に触ったのか、コメカミに青筋を立てながらニャルに向かって短く、そしてハッキリとそう言い放つのであった
因みに先程ニャルが口にした、サクサクルースが家族に捨てられたと言う件についてだが、一般的にサクサクルースは共食い欲が強く、家族をも捕食しようとしたが故に、それを恐れた家族達は自分達の身を守る為に、生みの親であるサクサクルースの下を去ったと言う事になっているのだが、実際のところそれは人間達が魔道書を翻訳した際、間違えて翻訳された内容が広く知れ渡ってしまったと言う一切の出鱈目であり、本当のサクサクルースは、家族に対して頻繁に食べてしまいたくなる程可愛いと連呼してしまうほど、家族大好きアウターゴッドであり、それが余りにも鬱陶しいと感じたが為、彼の家族は彼をユゴスに置いて出て行ってしまったのである……
「プップス~wwwあ、もしかして図星突かれて怒った?wwwねぇねぇ怒った~?wwwwww兄上もしかして激おこなの~?wwwwwwwww」
「よし、今すぐその捻じ曲がった根性を叩き直してやる……っ!!!」
「いや~ん☆こわ~い♪せ~っかくアザトースの世話で忙しくて仕方ないこの僕が、時間の合間を縫って寂しさの余り毎夜枕を濡らしている兄上の為に、と~っても素敵な提案を持って来たって言うのに~☆彡」
「提案……?」
サクサクルースの返答を聞いたニャルが、まるで頬袋一杯に餌を詰め込んだリスの如く、両頬を大きく膨らませながら盛大に吹き出し、サクサクルースの事を煽る様にそう言うと、遂にサクサクルースの怒りが限界を突破し、彼は怒りでその身をプルプルと震わせながら立ち上がり、ニャルの周囲にある全ての物体を材料にして、彼に対して核攻撃を行おうとしたのだが、今の言葉は冗談だと言わんばかりに、その身体をクネクネと動かしながらこの様な返答をするニャルの言葉に反応し、サクサクルースは核攻撃を仕掛けようとするその手を止め、ニャルの提案とやらに耳を傾けるのであった……
こうしてニャルの提案とやらを聞いたサクサクルースは、その提案に賛同すべきかどうかについて、独り思考を巡らせ始めるのであった……
さて、このニャルの提案とはどんなものなのか?正直そう難しい事では無い、あっちが帰省する素振りも見せないのならば、こちらから出向いてやればいいと言うものだ
「ほら、最近よく耳にするっしょ?ツンデレって言葉。本当は兄上の家族達も兄上の事がだ~い好きでぇ、事ある毎に可愛いとか言われるのが気恥ずかしくて、兄上から距離を置こうとしたんじゃないの~?だったら兄上の方から行ってあげないと、家族の皆が可哀想なんじゃな~い?」
その後、サクサクルースはまんまとニャルの口車に乗せられ、ニャルが調べておいてくれたと言う家族の居場所を記したメモを手に、戦治郎達が住まう世界へと、時空の壁を超えて降り立つのであった……
そんなサクサクルースを見送った後、ニャルは静かにほくそ笑む……
「さて、ルルイエでの一件の報復はこれでよしっと……、いや~、やっぱ孤独な老人は利用し易いね~。歳による思考の劣化のせいで正しい判断が出来なくなってるし、それに寂しさって感情が先走ってくれるおかげで、こうも簡単に言いくるめられてくれたよ~。んじゃ、後は翔達があの爺相手にどう立ち回るか、高みの見物と洒落込みますか~☆」
ニャルはそう言うとシャンタク鳥を呼び出し、その背に乗るとサクサクルースに気付かれない様に、己が持つ力をフル活用して姿や気配を完全に消し去ると、こっそりと彼の後を追い始めるのであった……
こうして、家族と再会する為に時空を超えて来たサクサクルースを待ち受けていたのは、心の奥底から彼との再会を嫌がる家族達による暴力と、人類には到底想像出来ない様な罵詈雑言の嵐であった……
特に彼の息子であるギズグスの配偶者であるズスティルゼムグニからの攻撃は凄まじく、サクサクルースはここで家族達と会う事を断念し、棲み処に帰ろうかと考えたほどである……
しかし、それでもサクサクルースは家族に会いたい一心で、何とか歯を食いしばって邪念を頭から追い出し、フジウルクォイグムンズハーとギズグスとの再会こそ諦めたものの、ギズグスの下を離れ地球に移り住んだと言う、最愛の孫であるツァトゥグアに会おうと決心すると、すぐさま地球へ向かうのであった……
そして戦治郎達が小弁天島でポリプ達とドンパチしている頃、サクサクルースは衛星軌道上にある人工衛星のカメラの目を掻い潜って地球に飛来し、南西諸島方面の海上へと降り立つ事に成功する……のだが、ここで思い出したかの様に彼の腹の虫が空腹を訴え掛けて来るのであった……
そう、彼は時空を超えてから今の今まで一切食事や水分補給などもせずに、光年単位の距離を移動し、時には家族達の猛攻を激しい動作で躱したりしていたのである……。故に彼の体内のエネルギーは枯渇寸前に陥り、身体が消費したエネルギーの補給を求め、腹の虫と言う形でサクサクルースにサインを送ったのである
因みにこれを無視して行動すると、外なる神であるが故に死ぬ事こそないものの、すぐさま身体が無駄なエネルギーの消耗を抑えようとして、サクサクルースの意思を無視し勝手に身体が休眠状態に陥ってしまうのだとかなんとか……
「ツァトゥグアに会う前に休眠状態になる訳にはいかんな……、さて……、どうしたものか……」
地球に降り立ったサクサクルースがこの様な事を考えていると、不意に彼の耳に人間達の騒ぐ声が聞こえ、それに気付いたサクサクルースがそちらに視線を向けてみたところ、そこには物資の輸送の為シンガポールを発ち、台湾に向かおうとしていた輸送船が存在しており、サクサクルースは先程の声はこの輸送船の乗組員のものでないかと思い至るのであった
「ふむ……、パッと見栄養価の高そうな人間はいなさそうじゃが……、まあ背に腹は代えられんか……」
サクサクルースはそう呟くと、常に泡立つジェル状の物体の塊であるその身体から数本の触手を伸ばし、輸送船の乗組員達を捕食するべく輸送船を掴もうとする。外なる神である彼からしたら、人間なぞ玩具か食糧に過ぎないのである……
そうしてサクサクルースから伸びる触手が、後数m……、数cm……と、徐々に輸送船へと近づいていたその時である。突如現れた大量の赤い花びらが触手と輸送船の間に割って入り、発生原理が全く不明な強力な斥力を発生させ、サクサクルースの触手を弾き飛ばしてしまうのであった
(……!?一体何が……?)
突然の出来事に驚いたサクサクルースが、内心でそう呟いていると……
「そこのデカブツウウウゥゥゥーーーッ!!!ワシが知覚出来る範囲内で人様を喰らおうとするとは、いい度胸しとるのうっ!!!えぇ?!おいいいいぃぃぃーーーっ!!?」
突如小さな波を発生させかねない程の大きさの声が辺りに響き渡り、サクサクルースが音源の方へと視線を向けたところ、そこには白糸で家紋が刺繍された黒地の紋付羽織袴を身に纏い、腰に刀を差した真っ白な人間の女性の様な生物が立っていた……
そんな女性のすぐ傍には……
「うおお~!おっきいですね~!」
「正蔵さん……、本当にこいつとやり合うつもりなの……?」
「例えどんな存在であろうとも、人類に危害を加えようとしているならば、全力で戦って追い払うだけよっ!!!」
「朝潮姉さんったら、ホント何時も真面目ね~」
薄群青の髪をツーサイドアップで纏め、飯盒の様な帽子を被った少女や、髪を団子付きのツインテールに纏め、大声で叫ぶ白い女性同様腰に刀を差した少女、鋭い目つきでサクサクルースを見据える黒髪ロングヘアの少女に、両手に白い小さな十字架の様な物を持つ、茶髪ロングヘアの少女が控え……
「あれは一体何なのニャ……?正蔵さんは兎も角、何で朝潮達はアレを見て一切動揺したり怖がったりしてないのニャ……?」
更にその後方には、サクサクルースの姿を見て呆然と立ち尽くす、桃色のショートヘアの少女の姿があったのであった……
これが、後に穏健派連合内に設立されるお達者クラブ『ジジーズ』のメンバーである
尚、ジジーズのメンバーは後1人は増える模様