※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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リンガ泊地主力艦隊出撃!

その日正蔵はシンガポールに新たに出店したアンダーゲートの視察の為にシンガポールを訪れており、滞りなく新店舗の視察を終えると、すぐさま朝潮達が所属するリンガ泊地へ向かうのであった

 

南方海域での問題が解決した後、正蔵は自分のシゴキを耐え抜いた朝潮達3人の事を甚く気に入ったらしく、空き時間が出来る度にリンガ泊地へと赴き、彼女達を引き続き鍛え上げているのである

 

因みに正蔵はヤマグチ水産やアンダーゲートの経営以外にも、インド洋で輸送船の物資目当てで暴れ回るカルメンの雑兵達の駆除なども行っているのだが、最近はリーダーとしての自覚を持ったワンコ率いる穏健派連合マダガスカル支部の面々が、積極的にカルメンの駆除を手伝いに来てくれる様になったおかげで、前より空き時間を確保出来る様になっているのだとかなんとか……

 

それはそうと……

 

「いや~正蔵さ~ん、今日も来て下さったのですね~。ホントいつもいつもありがとうございます~」

 

(出たなドサンピン……)

 

正蔵がリンガ泊地に到着し、紅吹雪で作った筋斗雲から降りたところで、正蔵の来訪に気付いた泊地の提督が泊地の本庁から飛び出して来て、その顔にハッキリと気持ち悪いと斬り捨てる事が出来そうな笑顔を張りつけ、まるで蠅の様に揉み手しながら正蔵を出迎え、それを目にした正蔵は内心で舌打ちしながら悪態をつくのであった

 

正直なところ、正蔵はこのリンガの提督の事を心底嫌っていた

 

その切っ掛けとなったのは、正蔵が朝潮達と出会う切っ掛けとなった輸送任務中、正蔵がリンガの提督に対して札束ビンタと物資クラッシュをぶちかました時で、提督の見事な掌返しっぷりに、正蔵は思わず呆れ返ってしまったのだそうな……

 

確かにあの時提督が簡単に靡いてくれたのは、正蔵からしてみれば都合が良かったのだが、艦娘達の命を預かり、纏め上げるべき存在である提督が、金と物資をチラつかせただけでコロッと意見を変えてしまうのは、提督としてどうなのかと正蔵は思ったのである……

 

又、これは満潮達から聞いた話なのだが、この提督は大きな勝負に出る事をトコトン嫌っているらしく、今の今まで大型建造に挑戦した事が無い上に、通常建造も最低値レシピばかり回しているせいで、リンガ泊地には軽巡以上の艦種が着任していないそうなのだ……

 

(せめて通常建造くらい、戦艦や空母を狙ってみんかい……っ!このド阿呆が……っ!!)

 

特に後者に関しては、経営者として社員の生活までかけ金にした大博打に挑む機会が多い正蔵の癇に障った様で、正蔵はそんな提督を裏では『玉無しドサンピン』と呼んでいたりするのである……

 

その後、正蔵は提督から今すぐにでも離れる為に、彼の長ったらしいおべんちゃらを完全に無視して朝潮達の居場所を尋ね、提督から朝潮達の居場所を聞き出すとさっさとこの場を後にするのであった

 

そうして辿り着いた場所で、正蔵は日本刀を手に素振りを行う満潮の姿を発見し……

 

「お~お~、精が出ておるの~」

 

「何?また来たの?最近しょっちゅう来てるけど……、貴方そんなに暇なの?」

 

正蔵が満潮に向かってそう話し掛けると、正蔵の声を聞いた満潮は眉間に皺を寄せながら、正蔵に向かってぶっきらぼうにこう尋ねるのであった

 

さて、そんな満潮が手にしている日本刀だが、驚くなかれそれは以前正蔵が仕込み刀として使用していた、正蔵がリチャード達と出会うより前、深海棲艦の襲撃によって沈没してしまった艦船の残骸を利用して正蔵自身が作り出した日本刀である『大嶽丸』なのである

 

何故満潮が正蔵の愛刀であった大嶽丸を所有しているのかについてだが、それは至極単純な理由で、正蔵が満潮に木曾以上の剣の才覚を見出したからである

 

リンガ泊地での特訓を開始した初日、正蔵は朝潮達に深海棲艦との戦闘時の近接格闘の有用性を説き、彼女達に色々な武器を触らせる事で手に馴染む武器を探させた際、日本刀を手にした満潮の姿を見るなり、正蔵の身体に電流が走ったのだそうな……。その感覚を信じ、正蔵が満潮に日本刀を振らせてみたところ、満潮は日本刀に関してはド素人であるにも関わらず、器用に刀を振り回し、その刀身を閃かせたのだとか……

 

それを目の当たりにした正蔵は……

 

(まさか満潮にこの様な才覚があるとはのう……、こりゃ鍛えたら間違いなく化けるぞ……。っと、そんな娘に二束三文の安物を使わせる訳にはいかんな……)

 

内心でそう呟くと、満潮の下へとゆっくりと歩み寄り、この事を彼女に告げるなり、自身の愛刀を何の躊躇も無く彼女に差し出すのであった

 

それに対して満潮は、余りにも突然過ぎる出来事に動揺し、大嶽丸の受け取りを拒否しようとするのだが、正蔵が浮かべる真剣な表情から、彼が言っている事は真実であると確信し、恐る恐ると言った様子で正蔵から大嶽丸を受け取ったのだとか……

 

因みに大嶽丸を満潮に渡した正蔵は、その日の特訓を終えた後、ガダルカナル島へと向かい、技術班の者達に事情を話して刀の材料になりそうな金属を融通してもらい、自らの手で新たなる愛刀である『酒呑童子』と、艦船の残骸で作った際には材料不足で作れなかった懐刀の『両面宿儺』を作り出していたりする

 

「ミッチーは相変わらずじゃのう……、まあそれはそうとして、今日もたっぷり仕込んでやろうと思うんじゃが……、他の連中は何処に行っとるんじゃ?」

 

「荒潮は大潮を連れて射撃場、多摩さんは基礎体力作りの為に泊地周辺をランニングしてるわ。んで、朝潮なんだけど……」

 

満潮の返事を聞いた正蔵が一瞬しょぼくれた姿を見せた後、この場に姿が見えない朝潮達について満潮に尋ねたところ、満潮はそう言いながら建物がある方角を指差し、正蔵がそちらへ視線を向けたところ、そこには建物の壁を背にその双眸を閉じて瞑想する朝潮の姿があったのであった

 

「朝潮は正蔵さん教えてもらった体術を中心に鍛えてるんだけど、最近少し伸び悩んでるみたいなのよ……」

 

「ああ~……朝潮の奴、日々実力を伸ばしておるミッチーと自分を比較して、焦りを感じてしまったんじゃろうな……。んで、その焦りの原因は自分の未熟さが~とか言って、それをとり去ろうと瞑想に打ち込んでおる、と……」

 

「察しがよくて助かるわ……」

 

瞑想する朝潮を見つめる正蔵に、満潮が最近の朝潮の様子をある程度説明すると、その内容から朝潮の心境を察した正蔵は、ばつの悪そうな表情を浮かべながら推論を口にし、満潮は正蔵の異様なまでの察しの良さにやや引きながら、正蔵の言葉を肯定するのであった

 

先程正蔵は深海棲艦との戦闘時の近接格闘の有用性を説き、様々な武器を朝潮達に触らせて、手に馴染む武器を探させたと言ったが、その時に正蔵は体術についても軽く触れ、彼女達に簡単な組み技をレクチャーしていたりするのだが、この時に朝潮は体術こそが自分に合う近接武器だと考え、正蔵の指導の下本格的な体術を教えてもらう事となったのである

 

しかし、正蔵は確かに体術の心得はあるのだが、正直なところ正蔵のメイン武術は剣術……それも抜刀術であった為、朝潮への指導内容は剣術の指導内容と比較すると、少々お粗末なものとなってしまっていたのである……

 

この件に関して正蔵は、中途半端な体術を使う自分より、体術に関しては自分よりも遥かに優れた技術と知識と才能を持つ空から指導してもらった方が、確実にそのスキルを伸ばす事が出来るだろうと言い、朝潮に空が所属する長門屋への異動を薦めているのだが、今までずっとチームを組んで来た満潮達と離れる事に不安を覚えた朝潮は、その返答を今でも保留していたのであった……

 

「あの子にはお父さんの敵討ちって言う立派な目標がある……、それを実現させようと思ったら、迷わず戦治郎さん達の所に行くべきなのに……」

 

「……自分達が朝潮の楔となってしまう事が嫌か?」

 

正蔵の隣で朝潮を見ていた満潮が、思わず内心を吐露する様にこの様な事を呟くと、それを聞いた正蔵が満潮に対してこの様な事を尋ね、それを聞いた満潮はその表情を暗くしながら静かに頷いて見せるのであった……

 

「その事を、朝潮に伝えておるか?」

 

そんな満潮の反応を見た正蔵が、続けてこの様な質問をしたところ、満潮は今度は静かに左右に頭を振って見せ……

 

「取り敢えず、先ずはその事をキチンと朝潮に伝えんとじゃな」

 

「そうね……」

 

それを見た正蔵が、満潮に対して自身の思っている事をしっかり朝潮に伝えるべきだと促し、それを聞いた満潮が短く返答したその直後、緊急事態が発生した事を艦娘達に伝えるサイレンが泊地中に鳴り響き、それを聞いた正蔵と満潮はすぐさまその表情を引き締め、瞑想していた朝潮は閉じていた双眸を勢いよく開き、正蔵達同様真剣な表情を浮かべ……

 

「正蔵さんっ!満潮っ!急いで司令官の所へ向かいましょうっ!!」

 

正蔵達に向かってそう言い放ち、それを聞いた正蔵と満潮は朝潮に向かって同時に頷き返すと、急いで提督がいるであろう執務室へと駆け出すのであった……

 

 

 

 

 

「え~……、先程リアウ諸島付近を航行していた輸送船から、針路上で巨大な怪物を発見したと言う救援信号付きの連絡があったのですが、我々リンガ泊地の戦力ではその巨大生物に対抗出来ないだろうと言う判断から、この件は全てブルネイ泊地で対応してもらう事に……」

 

先程のサイレン聞いて、執務室に集合したリンガ泊地の主力艦達と正蔵に対して、提督が作戦概要を話し始めたところ、その内容を聞いて頭に来た正蔵が、提督がまだ話をしている最中であるにも関わらず、突然提督の下へ駆け寄るとその胸倉を乱暴に掴み、鼻っ柱に鉄拳を突き刺すのであった……

 

「貴様何寝たぼけた事を言っとるんじゃっ!!!」

 

「ど、どうしたんですか正蔵さんっ!?!」

 

「救難信号付きとなると、乗組員の命が係わっとると言う事じゃろうがっ!!!何で位置的に近いリンガがそれを無視して、現場から少し距離があるブルネイに仕事押し付けようとしとるんじゃっ!!!莫迦か貴様はっ!??それでも日本海軍の司令官かっ!!!??」

 

「し、しかし……、リンガの戦力では……」

 

「穏健派連合最強の転生個体の儂を目の前にして、よくもまあそんな事がほざけるのうっ!!!つかこう言う事態に備えて、戦艦や空母を建造しておくべきなのに……、貴様は今まで一体何を考え、何をして来たと言うのだっ!!?!?」

 

「で、ですが、戦艦や空母の建造には時間と資源が……」

 

「時間なら腐る程あったじゃろうがいっ!!!それに資源の消費量?以前儂が送った数千万単位の各資源じゃ全然足りんと言うつもりかぁっ!?!?!」

 

「ひっひいいいぃぃぃーーーっ!!!」

 

正蔵は激情にその身を委ね、提督とこの様なやり取りを交わし……

 

「正蔵さ~ん、もっと言ってあげて~」

 

その様子を見ていた荒潮は、いいぞもっとやれとばかりに正蔵を煽り……

 

「おおーっ!今日の正蔵さん、いつにも増して迫力がありますねーっ!」

 

最近リンガ泊地に着任して来た朝潮型駆逐艦の2番艦の大潮は、いつもとは違い怒り狂う正蔵の姿を目の当たりにすると、驚きの声を上げ……

 

「これに関しては、正蔵さんの言い分の方が正しいわね……」

 

「今回の件で、司令官に少し失望しました……」

 

満潮は緊急事態に何をやっているのかと思いながらも、正蔵の発言を肯定する様な意見を口にし、満潮の隣で話を聞いていた朝潮は、リンガの提督に軽蔑の眼差しを向けながらこの様な事を言い……

 

「球磨達が言ってたのは本当だったニャ……、今後正蔵さんを怒らせない様に注意しなきゃいけニャいニャ……」

 

大潮同様最近リンガ泊地に着任して来た、親戚である球磨と木曾から正蔵の事を聞いていた球磨型軽巡洋艦の2番艦である多摩は、正蔵に恐怖を覚えながらこの様な言葉を口にするのであった……

 

因みに大潮と多摩は正蔵が主催する特訓に参加した結果、泊地に着任したばかりであるにも関わらず、リンガの主力艦隊の座を勝ち取っていたりする

 

尚、多摩が正蔵の特訓に参加する事になった切っ掛けには、球磨と木曾の存在が大きく関わっており、リンガに着任して早々多摩は球磨達の親戚である事を正蔵に知られ、それが理由で正蔵から特訓への参加を誘われ、この件を球磨達に相談してみたところ……

 

『『この世界で生き残りたいのなら、正蔵さんの特訓には是が非でも参加するべき(クマ)』』

 

球磨と木曾が2人揃ってこの様な返答をしてきた為、多摩は2人の言葉を信じて特訓に参加する事にしたのだとか……

 

さて、正蔵が提督をぶん殴ってからしばらくして、正蔵は正蔵に殴られた事が原因で、鼻から鼻血をドバドバと垂れ流す提督を思いっきり投げ飛ばして壁に叩きつけると……

 

「今回の件、リチャードを通して日本海軍の方へ報告し、日本海軍にリンガ泊地の提督の処遇を決めてもらうとして……。これからリンガの主力艦隊は、輸送船の救助の為に出撃するぞっ!!!朝潮、満潮、荒潮、大潮、多摩の5名は、準備を整え次第儂に続けっ!!!」

 

\了解っ!!!/

 

提督の代わりに朝潮達に指示を出し、それを聞いた朝潮達は正蔵に向かって敬礼しながら力強く返事をし、急いで工廠に向かって艤装を装着すると、正蔵を旗艦として救難信号を出している輸送船があると思われる、リアウ諸島方面へと急行するのであった……

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