穏健派深海棲艦達の働きによって、心置きなくサクサクルースとの戦闘に集中出来る様になり、輸送船救出任務に参加したメンバーの誰よりも早く、サクサクルースに挑みに行った正蔵は、疾風迅雷の勢いでサクサクルースとの間合いを詰め、酒呑童子を鞘から抜くと同時にサクサクルースのその巨大で、ボゴボゴと絶え間なく泡を噴き出し続けるジェル状の胴に斬りかかる
だが……
「なぬっ!?」
その一閃は間違いなくサクサクルースの胴を捉え、一刀両断の名の下にバッサリと上半身と下半身を斬り離すはずだったのだが、正蔵の予想を覆すかの如く、サクサクルースの身体を構成するジェル状の物質は、変わらず泡を噴き出し常に流動しているにも拘らず、正蔵の手にまるで刀を重厚な金属板に叩きつけた様な手応えを伝えながら、大きく弾き飛ばしてみせ、それを目の当たりにした正蔵は驚きの余り思わず驚愕の声を上げ、その双眸を大きく見開くのであった
その直後、サクサクルースの胴から一際巨大な泡が出現し、それは愕然とする正蔵の目の前で盛大に弾け、完全に油断していた正蔵を後方に大きく吹き飛ばしてしまう
そんな正蔵の様子を見ていた正蔵の後を追って来ていた朝潮と満潮は、目の前で起こった現象に驚きつつも、吹き飛ばされた正蔵の下へ急いで駆け付け合流すると、吹き飛ばされた衝撃で転倒した正蔵とサクサクルースとの間に割って入り、サクサクルースの追撃を警戒する様に、正蔵に背を向け彼を守る様にして立ち、サクサクルースを鋭い目つきで見据えながら……
「正蔵さんっ!大丈夫ですかっ!?」
「正蔵さんの斬撃を弾くとか、何なのよあいつの身体っ!?」
正蔵の無事を確認する為に、彼に向かって声を掛ける
「儂の方は大丈夫じゃ、この程度では儂の身体に傷などつかんわ。それよりもじゃ……、あいつの身体はダイラタント流体で出来とるんか?まるで鋼鉄の板を殴った様な感触じゃったぞ……」
「ダイ……、何ですか?」
「分からんなら後で教えちゃるわい、っとぉそんな事よりも来るぞっ!」
それに対して正蔵がこの様に返事をすると、ダイラタント流体について何も知らない朝潮が不思議そうな表情を浮かべながらこの様な事を言い、それと同時にサクサクルースが動き出した事に気が付いた正蔵は、朝潮に対してこの様な返事しながら、2人に注意を促すのであった
(あうちちち……、まさかワシに痛みを感じさせる存在が、神話生物以外に存在するとはのう……。全く、地球にはとんでもない奴がいるもんじゃな……)
正蔵の一撃を受けたサクサクルースは、その一撃によって感じた痛みに耐えながら内心でこの様な事を呟き、地球上には自身にダメージを与える存在などいないだろうと高をくくり、完全に油断していた事を反省しながら、自身にダメージを与えた張本人である正蔵を、警戒する様に見据えるのだった
(さて……、こ奴等はワシを倒す気満々の様じゃが……、どうしたものか……。正直こ奴等の相手をする気は無い……、いや、そう言えばこ奴等はワシの飯の邪魔をしおった……。飲まず食わずで移動してやっとこさ辿り着いた地球で、ようやく飯にありつけると思っとったところで、こ奴等の邪魔が入って飯を食い損ねたんじゃった……。うむ、そう考えたら何かイライラして来たし、こ奴等には少しばかり報いを受けてもらおうかのうっ!)
その最中、この様な事を考えていたサクサクルースは、正蔵達にちょっとしたお仕置きでもしてやろうと思い至り、
因みに、サクサクルース的にはこれはデコピン感覚で繰り出されているのだが、触手の速度は人間からしたら割ととんでもない速度に至っており、体格差や重量の違いも相まって、直撃を受けようものならば強めの転生個体であろうとも、致命傷はほぼ確実に待逃れない様な凄まじい威力となっていたりする……
「ちょっとおおおぉぉぉっ!?流石にこれは洒落になってないわよーーーっ?!!」
「こりゃ今の紅吹雪じゃ、全て捌き切れんじゃろうな……っ!!!」
「あの無数の触手による攻撃は、それ程の威力を持つものなのですか……っ!?」
サクサクルースによる触手攻撃が始まった瞬間、正蔵は急いで体勢を立て直すと朝潮達の前に立ち、紅吹雪で作り出した球体状の物理障壁で自分達の周囲を覆い、触手攻撃耐えながらこの様なやり取りを交わすのだった
「くっそ……っ!この調子じゃと後数十発もらうと、紅吹雪がカチ割られそうじゃ……っ!!」
「そうなる前に、何とか此処から離れないと……っ!!」
「どうせ此処に留まっていても、結果は同じか……。やるしかないわね……っ!!」
まるで豪雨の様に襲い掛かって来る触手攻撃に耐える中、正蔵は朝潮達に向かって紅吹雪の限界が近付いている事を告げ、それを聞いた朝潮達はこの様に返答した後、覚悟を決めたのかその表情を引き締め、正蔵が紅吹雪を解除した直後に動き出せる様に身構える
そして……
「準備はいいかっ!?解くぞっ!!!」
正蔵がそう叫び、紅吹雪を解除しようとしたその瞬間……
「どーん!」
突如としてこの様な声が正蔵達の耳を打ち、直後に彼等の頭上を戦艦用の砲弾並の大きさの砲弾が通過し……
「そこね~」
砲弾が正蔵達へと殺到する触手の群れの中に潜り込んだ刹那、今度は正蔵達にとって聞き覚えがある声が辺りに響き、それと同時に今度は砲弾の速度よりも圧倒的に速い速度で銃弾の嵐が砲弾に殺到し、銃弾が砲弾に直撃した事によって砲弾内部の炸薬が爆発を起こし、その爆風によって触手達の軌道が正蔵達から逸れるのであった
突然発生したこの出来事に驚きながらも、正蔵達はこれを好機だと受け取ると急いで後方へと下がり……
「大潮っ!荒潮っ!よくやってくれたっ!!」
「上手くいってくれて良かったです~……、正直に言うと、荒潮の指示通りに砲弾が飛んでくれるか、ちょ~っと不安だったんです~……」
「私は貴女なら絶対に出来ると信じていたから、あんな指示を出したのよ~。それはそうと~、あの触手……、爆発で粉々に吹き飛ばすのは無理でも、爆風で軌道をズラすくらいの事は出来るのね~」
爆風による触手の軌道ズラしの仕掛け人である大潮と荒潮に向かって、正蔵が賛辞を送ったところ、ハルコネンによる精密射撃に自信が無かったのか、大潮は柄にもなくこの様な言葉を口にし、それを聞いた荒潮は大潮に対してこの様に返した後、事実を確認する様にこの様な事を口にするのであった
「それが分かっただけでも大収穫じゃ、おかげであの触手の対策が立てられる様になったのじゃからなっ!」
そんな荒潮に対して正蔵はこの様に答えた後、触手対策について思考を巡らせ、その結果を朝潮達に伝えると、サクサクルースに対しての反撃の準備を開始するのであった……
(もうちょっと炸薬の量が多かったら、触手が吹き飛ばされてしまうところだったわい……。触手の方はその細さのせいで、どうしても胴体程の強度を持たせられんからのう……。っと、如何やらあ奴らは小賢しい事を企んでおる様じゃが……、果たしてそう上手くいくかのう……?こっちにはまだ手はあるからのう……っ!!)
先程の大潮達のコンビネーションによって、触手が大きな爆風で逸らせる事がバレてしまったサクサクルースは、内心でそう呟くや否や、今度は