「お、終わったのかニャ……?」
正蔵達の熾烈な戦いを遠くから呆然と見ていた多摩は、戦いが終わると同時に我に返り、急いで正蔵達の下へ向かうと正蔵達に対しておずおずとしながらこの様に尋ね……
「あっ……、多摩さん……」
「そう言えば多摩さんも来ていたんだっけか……、あの得体の知れない化物との戦いに意識が行き過ぎて、すっかり忘れていたわ……」
「戦いに参加してなかったのは悪かったニャ……、けど存在を忘れるのは流石に酷過ぎるニャ……」
それにより多摩の存在に気付いた朝潮と満潮が、一瞬ハッとした後それぞれこの様な言葉を口にし、それを聞いた多摩はガックリと項垂れながらこの様に言葉を返すのであった
その後朝潮達リンガの艦娘達は、朝潮達は多摩の存在を忘れていた件について、多摩はこの戦いに参加していなかった事に関して互いに謝罪の言葉を述べた後、先程まで戦っていた巨大な怪物……、今は正蔵に左右真っ二つに斬られた姿のまま沈黙するサクサクルースの方を見据えながら、これは一体何なのかについて話し始め、そんな中紅吹雪を解除していつのも紋付羽織袴姿となり、相手の正体について独り黙考していた正蔵が、何か思い当たるものがあったのか……
「こやつ……、まさかとは思うが、クトゥルフと同じ神話生物なのか……?」
以前オーストラリア西部のアンダーゲートを視察して回っていた際、テーブル席で只ならぬ気配を発する人間に化けたクトゥルフを発見し、取り敢えず禍々しいオーラをそこかしこに撒き散らしながら食事をする彼から此処にいる理由を聞き出す為に、クトゥルフを店の外に連れて行き、戦いを挑んで一方的にボコボコにして彼からアンダーゲートにいた理由や、神話生物についての情報を聞き出していた正蔵は、不意にこの様な事を口にするのであった
因みにこの事件、穏健派大連合結成後に発生した事件であり、神話生物に関しての情報は既にリチャードの方に渡っていた為、実際の所クトゥルフは殴られ損……と言う訳でも無く、クトゥルフがアンダーゲートに来ていた理由……、ルルイエのグルメ街化計画において、人間に化ける事が出来る様になったディープ・ワン達を地上の料理店に送り込み、一人前の料理人に育て上げる為の修行場を探していた事を聞いた正蔵が、一方的に殴った詫びとしてアンダーゲートルルイエ店をオープンし、そこでディープ・ワン達の育成を行う事を提案してくれたりしている為、この事件によってルルイエと穏健派連合の間にヒビが入る様な事は起こらず、寧ろ互いに利益になると言う事で、この2つの組織は良好な関係を築いていたりする
尚、正蔵はクトゥルフから神話生物の存在を知らされた訳だが、これは正蔵がヤマグチ水産やアンダーゲートの経営で忙しく、中々リチャードと連絡が取れていなかった事が原因となっており、この件についてはリチャードから正蔵に謝罪の言葉が送られている
これは余談だが、ルルイエにはこの時点では通貨らしい通貨が存在しておらず、アンダーゲートルルイエ店での支払いは、全て海底に存在する金鉱脈から採掘され、精練された金塊で行われていた為、アンダーゲートルルイエ店はアンダーゲート内でもトップクラスの売り上げを計上していたりする
尚、ルルイエに正式な通貨が実装されるのは、ルルイエのグルメ街と艦娘ランドのフードコートがワープ用魔法陣で繋がってからになる模様……
話を戻そう、正蔵の言葉の中に神話生物と言う聞き慣れない単語が出て来た事で、朝潮達が揃って不思議そうな表情を浮かべ、それを見た正蔵は東の方へ顔を向け……
「あっちに金属片が大量に入ったでかい竜巻があるじゃろ?ああいった輩の事じゃよ」
「え……、あれって生物なの……?」
この場所から3000kmは離れているにも拘らずしっかりと視認出来る、過去に山風を西方海域まで吹き飛ばし、始と巡り合わせた件の巨大竜巻……、旧支配者グッハナイを顎でしゃくりながらそう言うと、満潮が引き攣った表情を浮かべながらこの様な言葉を口にする……
因みにこの時、グッハナイがやたら甲高い声で「イエエエエェェェーーーイッ!!!」などと叫んでいたが、気にしてはいけない
と、その時である
「厳密に言えば、先程名前が出たクトゥルフや、あそこの見た目通りクルクルパーなグッハナイは旧支配者と呼ばれる神話生物であって、ワシはその更に上位の存在である外なる神と言う神話生物なんじゃがな」
突然辺りに聞き慣れない声が響き渡り、その唐突過ぎる出来事に驚いた正蔵達が、警戒しながら辺りをキョロキョロと見回していると……
「こっちじゃこっち」
再び先程の声が正蔵達の耳を打ち、正蔵達が声の発生源……、正蔵によって真っ二つに切り裂かれたサクサクルースの方へと顔を向けると、そこには切り口から大量の糸状のジェルを出し、その巨体を再生させるサクサクルースの姿が……
「させるかぁっ!!!」
それに気付いた直後、正蔵はそう叫びながらサクサクルースの方へと、まるで猛吹雪の様な勢いで身体を右に向けながら突撃を仕掛けて間合いを詰め、サクサクルースを間合いに収めると三日月を描く様に酒呑童子を振り上げ、折角つながったばかりのサクサクルースの身体を再び真っ二つに切り裂きながらバックステップで後方に下がり、今度は紅吹雪製筋斗雲で飛行する際の原理を利用し、彼岸花の花弁を背中から大量に噴射して爆発的な推進力を発生させながら、その勢いに乗せて追撃とばかりにサクサクルースの身体を横薙ぎに斬り付けるのであった
もしこの時、戦治郎や空がこの場にいたならば、正蔵が放ったこの連撃の事を【乱れ雪月花】と呼んでいた事であろう……
「ギャアアアァァァーーーッ!!!??」
正蔵の【乱れ雪月花】の直撃を受けたサクサクルースは、その激痛に思わず叫び声を上げ……
「まだ叫ぶ余裕があるかっ!!!」
「待たんかいそこの白いド阿呆っ!!!」
それを聞いた正蔵が更なる追撃を仕掛けようとした所で、サクサクルースは極めて慌てた様子で、この辺り一帯の空間を揺さぶる程の、それはそれは大きな声を張り上げて、今にも襲い掛かって来そうな正蔵に待ったをかけるのであった……
「あんた……、喋れたの……?」
「人間如きに話し掛けるつもりはなかったんじゃが、ワシをここまで追い詰めた人間なぞ早々おらんからのう。そんなお前達に興味が湧き、敬意を表すると言う意味合いも込めて、ワシはこうしてお前達に話し掛ける事にしたんじゃ。これはと~っても名誉ある事じゃから、親類縁者皆に自慢して回ってもいいんじゃよ?」
「あら~、私達に負けたクセに、随分な物言いじゃな~い?」
「喧しいわいっ!!」
サクサクルースが声を上げた後、何事も無かったかの様に自己再生を終わらせたサクサクルースの姿を見て、朝潮達が激しく動揺し始めてからしばらく時間が経過し、何とか彼女達が落ち着きを取り戻し、この場にいる誰もが疑問に思った事を満潮が皆の代表としてサクサクルースに尋ねたところ、サクサクルースは顔が無い為分からないが、ドヤ顔をしていそうな雰囲気を辺りに漂わせながら満潮の質問に答え、それを聞いた荒潮がクスクスと笑いながらこの様な事を口にすると、不快そうなオーラを放ちながらこの様な事を口にする
「名誉云々などどうでもいいわい、それよりも……、さっきお主は自分の事を外なる神と言ったが、それは旧支配者とどう違うんじゃ?」
「何じゃこいつ、若い娘の姿をしとるクセに、まるで爺みたいな喋り方なぞしおって……」
「人間の雄は80年以上生きとりゃ十分爺じゃろうがい……、それよりも……」
「ふむ、旧支配者は知っとる様じゃが、外なる神については知らんようじゃな……。全く……、クトゥルフはこやつに一体何を教えて……、ってちょい待て、頼むからその刀から手を放しとくれ、でなけりゃ落ち着いて話も出来んわ……」
その後、正蔵とサクサクルースがこの様なやり取りを交わし、それからサクサクルースは旧支配者と外なる神の違いについての説明と、自身の簡単な自己紹介を行い、自分が本気を出せば時空を歪めつつ太陽系の星々全てを材料にして核反応を起こす事で、太陽系を容易く滅ぼせる事をそれはそれは自慢げに語り、正蔵達をドン引きさせるのであった……
「……旧支配者と外なる神の違いは分かった……、んで……、そんな外なる神であるお前さんが、どうしてこの地球なんかにおるんじゃ?」
「それを聞いてしまうか?聞いてしまうんじゃな?いいじゃろう、特別にお前達にワシが地球に来た理由を教えてやろう。それはもう、涙無しじゃ語れん話でな……」
こうして旧支配者と外なる神の違いをサクサクルースから聞いた正蔵が、サクサクルースに対して地球に来た理由を尋ねたところ、サクサクルースはもったいぶった様子を見せた後、正蔵達に自分が地球に来た理由……、自身の孫であるツァトゥグアに会いに来た事と、自分が自身の子供達から受けた仕打ちについて語り始め……
「何ちゅう家族じゃ……、儂の所では考えられんな……」
「何……じゃと……っ!?」
「ええか?儂の所はのう、儂と妻が誕生日を迎える度に、家族皆が忙しい中態々集まって身内だけの誕生日パーティーを開いてくれてじゃなぁ……」
「ほほう……、それで……?」
「いや~、儂、総一、戦治郎の3人でカラオケではしゃいだのはいい思い出じゃったなぁ……。まあ、戦治郎……、儂の孫なんじゃが……」
「ええのう……、羨ましいのう……」
話の途中で何故か話題が家族自慢に変わり、正蔵は普段は親不孝者と罵る戦治郎の事を、何だかんだ言いながらも長門家の最高傑作として自慢する様にべた褒めし、サクサクルースは正蔵の話をそれはそれは羨ましそうに聞いた後、今度は自分の番とばかりに家族自慢を開始するのであった……
これにより正蔵とサクサクルースは意気投合し、正蔵はフルネームで呼ぶのは面倒であると言う理由でサクサクルースに『咲作』と言う名前を付け、互いに呼び捨てし合う仲となり、その様子を見ていた満潮達を呆れさせるのであった……
「っとそう言えば正蔵、お主は釧路と言う場所を知っとるか?何か日本と言う国にあるそうなんじゃが……」
「応、釧路なら知っとるわい。儂は元々日本出身じゃからな」
「おおっ!!だったら案内してくれんか?如何やらそこに孫のツァトゥグアが棲んでおるみたいなんじゃよ」
「ぬ~……、お前さんを孫に会わせてやりたいのは山々なんじゃが……、お前さんの事を報告したり、仕事の都合で今すぐはちょっち無理じゃが……、機会があったら必ず案内するから、それまでしばらくの間、オーストラリアにある儂の家で待っててもらえんか?」
さて、家族自慢が終わったところで、ふと思い出したかの様に咲作が釧路の場所を正蔵に尋ね、正蔵が釧路の場所を知っている事を知るなり案内をお願いしたところ、正蔵は少々困った様な表情を浮かべながらこの様に返事をし……
「そう言う事なら仕方ないのう……、ならばしばらくの間、お前さんの所に世話になるとしよう」
それを聞いた咲作は、正蔵の提案を承諾ししばらくの間正蔵の家に滞在する事にするのであった
尚この時……
「おお~!正蔵さんのお家は、今の咲作さんでも入れる程大きいんですねっ!」
「……咲作、済まんがその身体を小さく出来んか?幾ら儂の家がデカくても、流石に今のお前さんが入れる程デカくはないんじゃが……」
「注文が多いのう……、っとそう言えば人間と言う生き物は、神話生物を見るだけで頭がおかしくなると聞いとったのう……。そう言う訳で、人間が見ても大丈夫そうな生物に擬態しようと思うんじゃが、何かいい生物はおらんか?ああ、頭の中にその生物をイメージしてくれればええぞ、ワシの方でそのイメージを読み取るからのう」
「そうじゃのう……、これなんか子供が見ても大丈夫そうじゃのう」
大潮の発言により、咲作は大幅なサイズダウンを行うと共に、その姿を正蔵が頭の中に思い描いた生物、大人からも子供からも愛されるポケモンの中で、正蔵が何か咲作っぽいと言う理由で選んだジガルデ50%フォルムに変化させるのであった
因みに、この後正蔵は咲作にジガルデの事を細かく教えており、咲作は50%フォルムだけでなく、10%フォルムにもパーフェクトフォルムにも変身出来る様になっている模様……
これが、後に世界最強の老人会だの究極のお達者クラブなどと呼ばれる様になる『ジジーズ』結成の瞬間である……
その後、正蔵達は今回の件を説明する為に、咲作を連れてリンガ泊地へと帰還するのであった……
そういえばクニガティンザウムはツァトゥグアの玄孫ってなってますけど、ツァトゥグアの孫娘であるスファトリクルルプが母親ならば、クニガティンザウムは玄孫ではなく曾孫なのではないのでしょうか……?