※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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このままでは過去編の最終章が余りにも長くなると判断した為、戦治郎の軍学校での話や長門屋鎮守府建設に関わる話がメインとなるこの章は、夏休み前、夏休み中、夏休み後の3つに分ける事にしました


ゾア汁

護達が後に『ゾア汁』と呼ばれる事となる、ゾアの出汁を使用した味噌汁の先駆けとなったしじみの味噌汁を食べて気絶してからしばらく時間が経過し、農場作りに参加していたメンバーが、午後の作業に備える為に昼食を摂りに食堂に入ったところ、食堂内には仁王立ちする空の前に、しょぼくれた表情を浮かべながら正座して並ぶ食堂組の姿と、奥でヴェルとシゲに介抱される護、輝、藤吉の姿があり、状況が分からない農場建設組は、その光景を目の当たりにするなり大いに困惑するのであった

 

「空、これは一体何事だ?」

 

「光太郎か、実はな……」

 

そんな中、困惑するメンバーの中から代表として光太郎が空に事情を尋ねたところ、空は事情を知らないメンバーにも聞こえるくらいの声量でこの状況について説明し、それを聞いて艦娘達がドン引きする中、光太郎は血相を変えてまるで弾け飛ぶバネの如く勢いで護達の下へと駆け寄り、現在横須賀の方に残った悟の代わりに長門屋の医療担当の代表を任されている望に連絡を入れながら、ゾア汁を口にした護達の容態を診始めるのであった

 

「さて翔……、事態はお前が想定していたものより酷いものとなってしまっているのだが……、取り敢えずお前がこの様な行動に走った原因が分からないと、俺はお前の行為に対しての罰などの判断を下せない訳だ……。正直に話してもらえるよな……?」

 

「あっ、はい……」

 

護達を診察し始めた光太郎の様子をチラ見した後、空がやや怒気を込めながら食堂組の代表である翔に対してそう尋ねると、翔はこの様に返事をした後、その身を縮こませながら事の発端について、嘘偽りなく話し始めるのであった……

 

さて、翔が何故この様な行動に、ゾア出汁によるバイオテロを敢行したかについて話すより先に、翔がどうやってゾア出汁の存在に気付いたのかについて話そうと思う

 

事の発端は空がエイブラムスをとっ捕まえて来た時、副産物として発見された湯脈から、長門屋鎮守府建設予定地にある入渠施設内に、配管によって引っ張って来られて作られた温泉に、翔とゾアが一緒に入った時に起こったのだそうな……

 

この温泉の温度は基本43℃に設定されており、この時温泉に入っていた翔とゾアも、少々熱いかな?などと思いながらも、温泉を楽しんでいたのだそうな……

 

そうして1人と1柱が湯船に浸かって温泉を満喫していた時、翔がゾアの身体からうっすらと黒い液体が滲み出ている事に気付いたのだとか……

 

それを見た翔は、最初はそれはゾアの身体の汚れだと思ったのだが、翔が湯船に浸かる前にゾアの身体をしっかりと洗っていた事を思い出した為、その考えは翔の中で即座に否定され、翔は次の可能性について考え始め、その結果これはゾアの出汁なのではないか?と、翔は料理人らしい考えで答えに辿り着いたのだとか……

 

「で……、その出汁が料理で使えるかどうか試す為に、こうしてバイオテロを敢行した、と……?」

 

「いえ、その前にちゃんと2クッションほど入れてます。温泉でゾアの出汁の存在に気付いた後、僕は自室に帰るとすぐにゾアにお願いして出汁を取らせてもらって、それでお吸い物を作って自分で飲んだんです。それこそ、この出汁が料理に使える物か試す為にですね」

 

「……続けてくれ」

 

「はい、それで遅れて自分の身体に異常が出るかもしれない可能性を想定して、それを1週間続ける事で、出汁が取れる温度と出汁に問題が無い事を確認して、そこから今度は望ちゃんの立ち合いの下、食堂の皆にも事情を話してこの出汁で出来たお吸い物を飲んでもらったんです」

 

温泉でゾア出汁の存在が発見されたくだりで、空が右こめかみに人差し指を当てながら、困った様に眉間に皺を寄せてそう尋ねたところ、翔は真剣な表情を浮かべながらこの様に答え、食堂組の皆を苦笑させるのであった……

 

と、その時である

 

「えっ!?望ちゃん?!」

 

「望もその吸物を口にしたのか?」

 

「はい、で、望ちゃんも特に問題無いって判断してくれたので、最終テストとして今日の昼食にこの様な形で出したんですけど……」

 

翔の言葉を聞いた途端、光太郎が作業の手を止めて驚きの声を上げ、それに続く様にして空がこの様な質問をすると、翔はこの様に返事をしながら、ゾア汁を口にして倒れた3人の方へと視線を向けるのであった……

 

さてここに来て、翔の話を黙って聞いていた空が、その内容によって少々混乱するのであった

 

この時空は、今回味噌汁を口にして倒れたメンバーには、まだ能力に覚醒していないと言う共通点を見つけ出しており、それに沿って皆に注意喚起を行おうと考えていたのである

 

しかし先程の翔の発言により、まだ能力が覚醒していないはずの望が無事であった事が発覚し、それによって空が考えた可能性に綻びが生じてしまい、空はほんの僅かに混乱してしまったのである……

 

(龍気を持つ俺や迦具土を持つシゲ、Eyes ofを持つ翔が無事だった事から、この味噌汁の影響は無能力者にだけ出ると考えていたのだが……、望までもが無事だったとなると……、いや……、もしかしたら俺達が見落としているだけで、実は望は既に能力覚醒が終わっている……?)

 

翔への罰についてなどそっちのけで、空がこの味噌汁の影響について静かに考えていると……

 

「……」

 

「おっと!護、意識が戻ったのか?」

 

今まで白目を剥いて気絶していた護が、不意に無言で上半身を起こして翔の方へと顔を向け、診察していた光太郎の言葉を無視して徐に立ち上がり始めるのであった

 

「護……?まだ安静にしていた方が……」

 

その様子を不審に思った光太郎が、思わず護にそう呼び掛けたその刹那……

 

「翔うううぅぅぅーーーっ!!!」

 

急に護が普段の彼を知る者からしたらとても信じられない様な、凄まじい咆哮を上げるのであった

 

そんな護に誰もが驚く中、護はまるで幽鬼の様にゆっくりと翔の下へと歩み寄り始め、翔との距離がある程度縮まったところで、突然護の身体からバチバチと火花が散り始めるのであった……

 

そして、腕を伸ばせな翔の胸倉を掴める位置まで護が来ると……

 

「何て事しやがるんッスかあああぁぁぁーーーっ!!!自分、しじみ汁の余りの不味さで死ぬところだったんッスよおおおぉぉぉーーーっ!!?」

 

護は一切の躊躇いも無く翔の胸倉を掴み、翔の顔にベチャベチャと唾を掛けながらそう叫び出し、それと同時に護の身体の至るところからまるで雷の様なものが放出され、それは食堂に整然と並べられた机や椅子を容易く吹き飛ばし、食堂の扉や窓に張られたガラスを悉く粉砕し、更には厨房内にある電子レンジや冷蔵庫と言った電化製品達にまで襲い掛かり、それら全てから黒煙を噴き出させ、挙句の果てには食堂のブレーカーまで破壊してしまうのであった……

 

「マモッ!?気持ちは分かるがちょい落ち着けってっ!!!」

 

「護っ!!周りを見ろってっ!!!」

 

この場に居合わせた者達の多くが、やや混乱しながら護が放つ雷撃から逃れる為に、食堂から急いで退避していく中、護が放電を開始するなり驚きの余り呆然としていたシゲと光太郎が我に返り、護を翔から引き剝がして落ち着かせようとして、護の身体に慌てた様子で触れたところ……

 

「「ぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!」」

 

慌てていた事が原因で失念していたのだろうか、帯電している護に不用意に触れてしまった事で2人は揃って感電してしまい、声を揃えて苦痛の叫びを上げた後、ブスブスと黒煙を上げながらその場に倒れ伏せてしまうのであった……

 

因みにこの時、農場建設時に使用した為バッテリー残量が減っていた光太郎の艤装は、これによりフルチャージされたそうなのだが、今はそこまで重要な事では無かった……

 

「この件はホント悪かったと思ってるからっ!ホントゴメンってっ!!だからちょっと落ち着いてってっ!!!ねぇっ!!!」

 

そんな中、クタニドお手製のフリル満載の黒いエプロンドレスを着用していた事から感電を待逃れている翔が、謝罪の言葉と共に護を落ち着かせようと、涙目になりながら必死になって言葉を掛けるのだが……

 

「あんなヘドロにあらゆる劇物をありったけ混ぜ込んだ様なモン食わされて、落ち着いていられる訳がねぇって分かるモンッスよねえええぇぇぇーーーっ!??」

 

護は聞く耳持たずと言った様子で、そう叫びながら翔の身体を前後にグワングワンと激しく揺らす……。それからしばらくの間、護は翔の身体を揺らしながら思いつく限りの罵声を浴びせ続けるのであった……

 

そうしてある程度時間が経過し、叫び続ける護が喉の渇きを覚えたところで……

 

「護、翔も反省している様だからその辺にしておけ、これでも飲んで少し落ち着いたらどうだ?」

 

不意に空がこの様な事を言いながら、護の攻撃によって壊れた冷蔵庫から取り出した物なのだろうか、グラスに入ったオレンジジュースを護に差し出すのであった。尤も、そのオレンジジュースは若干黒ずんでいたが……

 

「幾ら空さんがそう言っても……」

 

そう言いながら空からグラスを受け取った護が、中身を碌に確認せずにグイッとオレンジジュースを飲み干すと……

 

「うっまあああぁぁぁーーーっ!!?これ一体何なんッスか?!無茶苦茶旨いじゃないッスかっ?!!一体何処のメーカーのオレンジジュースなんッスかっ!?!これは自分、箱買い確定ッスよーーーっ!!!」

 

今まで掴んでいた翔の胸倉をパッと離し、護は驚きと歓喜の入り混じった声で、このオレンジジュースを手渡して来た空に質問攻めを開始するのであった

 

(ふむ……、ゾア出汁は転生個体の能力覚醒に使用する事が出来、対象は能力に覚醒した後は普通にゾア出汁を摂取出来るのか……。しかも味噌汁などの料理だけでなく、ジュースなどに混ぜ込んで使用する事も出来る、と……)

 

そんな護の様子を見ながら、ゾアが食堂に持って来たものの、時間が経過し過ぎてすっかり冷めきってしまったゾア出汁を混ぜたオレンジジュースを護に飲ませた空は、内心でゾア出汁の効果を解析しながらそう呟くのであった……

 

その後、問題のオレンジジュースには、しじみ汁の出汁として使用されたゾア出汁が混ぜられていた事を知らされた護は、その事実がとても信じられなかったのか、しばらくの間呆然としていたのだとか……

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