※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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北上様、横須賀に立つ

「北上か、その恰好を見た限り、今から実家に帰るのか?」

 

「そうだね~、まあその前に『アレ』をやっておこうと思ってね~。んで、帰省ラッシュとぶつからない様にする為に、提督にお願いして私だけ昨日の休みを今日休みになる様に変えてもらったんだ~」

 

食堂にてプチ祝勝会を行っていた戦治郎達の下へやって来た北上に対して、戦治郎がこの様な質問を投げかけたところ、北上は過去の出撃で負傷し、後遺症が残ってしまった自身の足に目を向けながら、この様に返答するのであった

 

「戦治郎さん、『アレ』って?」

 

「『アレ』って言うのは、北上の足の治療の事だ」

 

「戦治郎さんの友達に、だいぶ時間が経った後遺症もパパっと治療出来ちゃうって言う、すっごいお医者さんがいるみたいでね~。私は横須賀鎮守府にいるって言うその人と会って、実家に戻る前にこの後遺症を治してもらおうと思ってるのさ」

 

北上の発言を聞くなり、食堂中の誰もが不思議そうな表情を浮かべる中、その代表と言わんばかりに瑞鶴が北上の言う『アレ』について戦治郎に言及したところ、戦治郎は簡潔に『アレ』について説明し、それに続く様にして北上がこの様な事を言うと、元々舞鶴のエース格であった北上と再び共に戦える事を確信した、食堂中の舞鶴の艦娘達が歓喜の声を上げ、北上が言うお医者さんこと悟と面識が無く、その腕前が信じられないでいる瑞鶴は、そんな中1人怪訝そうな表情を浮かべていたのだが……

 

「瑞鶴には鈴谷が患った世界レベルの難病を、たった1日で快癒してみせた奴って言った方が分かり易いか?」

 

「あぁ……、鈴谷がスーパードクターとか言ってた人か……」

 

戦治郎のこの一言を聞くなり、浜辺での訓練中に鈴谷からこの件について、センジローさんの友達は凄いと何度も聞かされていた瑞鶴は、そう言って納得した様な表情を浮かべ……

 

「悟さんの能力……、由良達と別れてから更にパワーアップしてません……?」

 

「そりゃおめぇ、あの後も俺達は大小含めてバカスカ怪我してたからな、悟の能力は使用頻度でパワーアップする性質を持ってるから、嫌でもパワーアップしちまうさ」

 

戦治郎と瑞鶴のやり取りを聞いていた由良が、やや驚きながら恐る恐ると言った様子で戦治郎に対してこの様に尋ねると、戦治郎はあっけらかんとした様子でこの様に返答するのであった

 

「っとぉ、話が脱線しちまったな。んで、俺のとこに来たのは……」

 

「いや~、特に深い意味は無いよ~。ただ単に、悟さんって人を紹介してくれた戦治郎さんに、行く前に一言挨拶でもしとこうかな~って思っただけ~」

 

「せかせか」

 

その後戦治郎と北上はこの様なやり取りを行うと、新幹線の指定席を取った為、そろそろ行かないといけないと言う北上に対して、戦治郎は念の為自身が悟宛てに書いた紹介状は持って行っているかを尋ね、北上が件の紹介状をスーツケースの中から取り出して見せて来た事を確認すると、笑顔で彼女を送り出すのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~……、ようやく着いた~……。いや~……、深海棲艦や転生個体と戦争してるって言うのに、こっちは相変わらず人が多いね~……」

 

後遺症によって不自由になってしまった己の足を引き摺り、その姿を周囲の人達から憐れむ様な目で見られながら、様々な乗り物に乗り継いでようやく東京駅に到着した北上は、戦時中で尚且つ裏社会では黒い取引などの犯罪が横行している世の中であるにも関わらず、艦娘ブームによって活気づいている東京の街並みを目にすると、思わずこの様な事を呟くのであった

 

「っと、東京の街並みを眺めるのはこのくらいにして……、確か提督の話だとこっちまで迎えが来てくれてるんだっけ……」

 

その後気持ちを切り替えた北上がそう呟いたところ……

 

「あっいたいたっ!!お~い!こっちこっち~!!」

 

不意に聞き慣れた声が北上の耳を打ち、北上がそちらの方へと顔を向けたところ、その視線の先には、北上がまだ後遺症を負う前、まだ戦場に出ていた頃に、演習で何度か戦った事がある横須賀鎮守府の飛龍が、北上に向かって手を振っていたのであった

 

「やっほ~飛龍さ~ん、こうして会うのは久しぶりだね~」

 

「ホント久しぶりよね~、まぁ、怪我して戦場に出れなくなってたんなら、仕方ないっちゃ仕方ないと思うけど……。でもまぁ、それも今日までって感じ?」

 

「だね~、これでもし本当にこの後遺症が治ったら、ハイパー北上様大復活ってところだね~」

 

飛龍の存在に気付いた北上は、ゆっくりとした動作で飛龍の方へと近寄り、互いに軽く挨拶を済ませると、雑談を交えながら飛龍と共に東京駅の駐車場へと向かうのであった

 

こうして飛龍の案内を受けながら駐車場をしばらく歩き、今から自分達が乗る車の所に到着し、件の車の運転席の方へと目を向けると……

 

「やっほー北上さんっ!待ってたよー!」

 

そこには飛龍の相棒である蒼龍の姿があり、北上の存在に気付いた彼女はそう言った後北上達に車に乗る様に促し、北上達もそれに従って蒼龍の自家用車であるトヨタの青いアクアに乗り込み、目的地である横須賀鎮守府に向かうのであった

 

さて、何故北上を迎えに来たのが、横須賀鎮守府の主力空母であり、『ダブルドラゴン』と呼ばれ恐れられているこの2人なのか……?舞鶴では雲龍と天城は前半後半に分かれて休みを取っていたのに、どうしてこの2人は揃ってこの場にいるのだろうか……?不思議に思ったこの疑問を2人にぶつけてみたところ……

 

「こう言った送迎なんかについては、本当なら陸軍の人達がやるところなんだけど……」

 

「生憎今、陸軍の人達は剣持大将主導の強化合宿をやってて、皆揃って山籠もりしてるみたいなのよ……。陸軍の人達、如何やら横須賀の乱の件で責任取らされる羽目になって、休みが没収されちゃったらしくてね……」

 

「んで、夏休み中なら鎮守府なんかに残る人の数も少ないから、最近元帥が設立した特警の人達だけでも問題が発生してもすぐに対処出来るだろうって事で、いい機会だからって剣持さんが強化合宿を大本営に提案したところ、それが可決しちゃって……」

 

「それで急遽元帥からのお願いされて、休暇中の私達は北上さんの送迎をやる事になったのよね~」

 

「2人が私を迎えに来てくれた理由は分かったけど~……、その様子だと2人揃って休み取った感じだよね?それって航空戦力的に大丈夫なの?」

 

「それについては無問題っ!!」

 

「今横須賀鎮守府には、翔鶴が残ってくれてるからねっ!!」

 

「ああ、ウチに来た雲龍さんと同じ、元ショートランド泊地の人だっけ?」

 

「そうそうっ!その翔鶴がホント凄くてね~……。翔鶴の調子がいい時とか、私達2人掛かりでも負けそうになる時とかあるくらいにね~……」

 

「愛の力って……、偉大よねぇ……」

 

「っとまぁそんな訳で、翔鶴のおかげで私達はこうして2人揃って休みが取れてる訳」

 

「なるほどね……、うん、納得したよ」

 

車を運転する蒼龍と助手席に座る飛龍は、この様な調子で事情を知らない北上に横須賀鎮守府の事情を話し、それを聞いた北上は納得した様に何度か頷き、この様に返事をするのであった

 

因みに翔鶴の件に関して、何故北上がアッサリ納得する事が出来たのかについてだが、それは舞鶴の工廠で北上が戦治郎と共に作業をしていた時、戦治郎から翔鶴が持つ艦載機についてや、それを自在に操れる翔鶴の腕前について事前に聞かされていたからである

 

こうして女性三人で姦しく雑談を交わしていると、あっと言う間に目的地である横須賀鎮守府に到着し、蒼龍達は北上を車から降ろした後、そのまま車で東京の方へ遊びに向かったのであった

 

「おぉ~……、此処は随分様変わりしてるね~……。特に艦娘寮とか、これ何処のリゾートホテルなのさ……?」

 

横須賀鎮守府に到着した北上が、鎮守府の入口で以前見た横須賀鎮守府の様子と今の横須賀鎮守府の様子を比較し、思わず感想を零していると……

 

「おめぇかぁ~?戦治郎の奴が言ってやがった患者ってのはよぉ~?」

 

不意に自身の前方から聞き慣れない声が聞こえ、すぐさま北上がそちらに視線を向けると、そこには不気味な笑みを浮かべた、少々胡散臭そうな潜水棲姫の姿があり……

 

「……あんたが戦治郎さんが言ってた悟さん……?」

 

怪訝そうな表情を浮かべる北上が、警戒しながらねっとりとした口調で喋る不気味な潜水棲姫に問いかけると……

 

「そうだぜぇ?この俺がぁ、おめぇのとこや佐世保にいるって言う元アムステルダム泊地の艦娘達やぁ、今はウチに所属している元横須賀の神通の後遺症を撲滅した医師、伊藤 悟ってモンなんだわぁ。っとぉ、おめぇ確か戦治郎から紹介状貰ってんだろぉ?治療する前に先ずはそいつを俺に見せなぁ」

 

悟はそう言って北上に紹介状を見せる様に促し、紹介状の事を知っているなら、この目の前の潜水棲姫こそが戦治郎の友人であると確信した北上は、悟に向けていた警戒を解きながら言われた通りに紹介状を悟に見せ、それを見た悟は1度頷いて見せた後、後遺症の治療を行う為に北上を医務室に案内するのであった

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