※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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ジガルデ軍団と大淀の野望

戦治郎達の惨敗と言う形で対神話生物演習が終わった後の事である

 

この演習が午前中……と言うよりも、鎮守府が動き始めた直後に行われた関係で、この日は舞鶴鎮守府の責任者である大将の判断で、急遽艦娘達は休みを取る事となったのだが……

 

「演習で疲れ切ってしまった艦娘達を休ませるのはいいとして……、今日やらねばならない諸々の任務はどうしたらいいものか……」

 

本来今日艦娘達にやってもらう予定であった任務の事に関して、大将は苦い表情を浮かべ、頭を抱えながらこの様に呟くのであった……

 

ここでもし、今日やる予定に任務の中にある護衛任務の依頼主側に対して、『今日は急遽休みになったので、そちらの護衛をする事は出来ません』などと言おうものならば、ただでさえ横須賀の乱で下がっている帝国海軍の評判が、更に悪くなってしまうと考えられる為、大将としてはどうにか護衛任務だけでもやっておきたいところなのだが、肝心の艦娘達が先程の演習のせいで心身共に疲弊しており、とても護衛任務に参加させられない状態となっているのである。その為、大将はこの問題をどう対処すべきかで悩む羽目になってしまったのである……

 

そんな大将の姿を見た正蔵と咲作は、互いに顔を見合わせた後、アイコンタクトで何かを決定したのか、同時に首を縦に振って見せた後……

 

「演習で艦娘を駄目にした詫びとして、その任務とやらの件はワシに任せてもらえんだろうか?」

 

咲作が大将に向かってこの様な事を言い、それを聞いた大将は咲作の案の詳細を聞くと、少々困惑しながらその案にOKを出すのであった

 

さて、そんな咲作の案とは一体どの様なものなのだろうか?その答えは演習中、咲作が戦治郎達を攪乱する為にとった行動が深く関わっていた

 

そう、咲作は艦娘の代わりに、自分が生み出した生命体達を護衛任務に就かせ、自分達のせいで空いてしまった穴を埋めようとしたのである。そしてその提案が了承された為、咲作は遠隔操作が可能なジガルデ50%フォルムを旗艦とし、その両脇を固めるジガルデ10%フォルム2匹と、ジガルデ・セル3匹で構成された艦隊を10個ほど作り出し、旗艦であるジガルデ50%フォルムに大将直筆の手紙を持たせ、疲れ切った艦娘達の代わりに、このジガルデ軍団を出撃させたのであった

 

尚、このジガルデ軍団を目の当たりにした依頼主側の関係者達は、最初こそ大いに困惑したのだが、咲作の分霊とも言えるジガルデ軍団の働きぶりを見て、艦娘達を自分達の都合で休ませた事を咎めない方針で意見を固めると共に、艦娘以上の力で深海棲艦達を次々と粉砕して見せるジガルデ軍団による護衛が、今日だけである事を非常に残念がったのだとか……

 

こうして任務に関しての問題は解決した訳だが、ここで次の問題が浮上して来るのであった……。形は兎も角任務をやった以上、元帥達にその内容を報告する為に、大将は任務の詳細について書き記した書類を作成しなければいけないのである……

 

これに関しては、大将はその莫大な数の報告書を作成する際、普段は大淀のサポートを受けながら報告書を作るのだが、今回はその大淀も演習で完全に疲れ切っており、とても自分のサポートをさせられる様な状態ではなくなっていたのである

 

その事を考えた大将が、書類の事を口にした後、深い深い溜息をついたところで……

 

「だったら書類の件、俺が手伝いますよ。俺の方はまだまだ体力に余裕がありますし、書類の書き方は元帥とリチャードさんに徹底的に仕込まれましたからね」

 

そんな大将の事を案じてか、戦治郎がこの様に名乗り出たのであった

 

その際、大淀と大和も手伝うと言い出したのだが……

 

「大淀には書いた書類を持って行く場所を聞かないといけねぇから仕方ねぇところがあるが、大和は咲作さんの攻撃捌く時、結構無茶してたはずだろ?俺の神帝之型で身体能力と艤装のスペックを強化してたとしても、元が低速の大和はそれがあっても精々高速+が関の山だったはずで、そんな大和が速力が最速になってる俺達に追いつこうとしたら、相当身体も艤装も無理させないといけなかったはずだからな。だから大淀にはある程度疲れが取れたら執務室に来てもらって、俺を書類の保管場所まで案内してもらう様にして、大和は他の皆より酷使したその身体を、しっかり休ませてやってくれ」

 

戦治郎はこの様な事を言い、大淀の申し出は兎も角、大和の申し出は断るのであった

 

尤も、この時戦治郎は大和とアイコンタクトを取っており、それによって戦治郎がやろうとしている事に気付いた大和は、素直に戦治郎の言う通り、その身体を休める事にしたのであった

 

そう、戦治郎はこの機会を利用して、大淀との距離を詰めようと考えていたのである。もしここで大和の申し出を受け、彼女に自分の手伝いをやってもらった場合、大和はずっと戦治郎の傍に控える事となり、大淀と戦治郎が2人きりになる機会が失われ、大淀の本心を聞き出す機会をみすみす逃してしまう可能性があった為、戦治郎は大和の申し出を断ったのである

 

こうして戦治郎は大将と共に今日の任務の報告書を大量に作成し、それが丁度終わったところで執務室にやって来た大淀と共に、妖精さん達が作り上げたと言われている、書類を元帥の下に瞬時に転送する装置があると言う資料室に向かうのであった

 

「流石に横須賀の資料室と比較したら、こっちの資料室はこじんまりしてるな……」

 

「横須賀鎮守府の資料室は、全ての日本帝国海軍の書類や資料が集まって来る為、此処より規模が大きくなるのは当然と言えば当然でしょうね……」

 

それからしばらくして、大淀の案内で資料室に辿り着いた戦治郎が、資料室の中に入るなりこの様な事を口にすると、大淀はやや苦笑しながらこの様な言葉で返答するのであった

 

その後戦治郎は、大淀に件の装置の使い方を教えてもらい、無事に報告書を元帥のところに転送し終え、資料室を後にしようとするのだが……

 

「戦治郎さん、この後何か用事はありますか……?」

 

「いや、特にねぇけど……?」

 

不意に背後から大淀に話し掛けられ、戦治郎は思わずその足を止めてこの様に返答するのであった……

 

この時戦治郎は……

 

(もしかしてもうキター?もしかしたら運よく話聞けるかもくらいで考えていたが……、幾ら何でも早過ぎる……。俺、大淀の心開く様な事何かやったっけか……?)

 

内心で困惑しながら、この様な事を呟いていたのであった……

 

まあ戦治郎が困惑するもの無理はない、大淀が戦治郎を見定めた理由である、演習時の立ち振舞いに関しては、戦治郎はほぼほぼいつも通りにやっただけであって、戦治郎の当初の予定の通りに、演習中に狙って大淀と接触して好感度を上げたりしている訳ではなかったからだ。いや、そんな事をする余裕が無かったと言った方が正しいだろう……、それだけ咲作が強かったのだから……

 

「でしたら、少し私とお話しませんか……?」

 

戦治郎がこんな事を考えていると、大淀はこの様な事を言いながら戦治郎の隣を通過し、資料室の扉を閉め、誰も資料室に入って来れない様にする為に、扉に鍵を掛けてしまうのであった……

 

「別に構わねぇが……、どうして扉の鍵まで閉めたんだ……?」

 

「この話は他の人にはあまり聞かれたくないものですから……」

 

大淀が扉を閉めた事で資料室内は真っ暗になり、それによってどの様な表情を浮かべているか分からなくなった大淀に向かって、戦治郎が訝しむ様な表情を浮かべながらこの様に尋ねたところ、大淀は照明代わりに手にした探照灯を点けながらこの様に答えた後、資料室の奥にある棚の方へと向かって行き、探照灯の光を頼りにしながら棚を漁り、目的の物を見つけるとそれを手にして戦治郎の下へと戻り、それを戦治郎に手渡すのであった……

 

「これは……?」

 

「取り敢えず、先ずは何も言わずにそれに目を通してみて下さい……」

 

大淀から資料の様な何かを受け取った戦治郎が、これが一体何なのか分からず大淀に向かってこの様に尋ねたところ、探照灯の光によって僅かに姿が見える様になった大淀は、無表情のままこの様に答え、戦治郎に資料に目を通す様促すのであった

 

こうして受け取った資料を目にした戦治郎は、思わず眉間に皺を寄せながら、この資料を作成した張本人である大淀を真っ直ぐ見据え……

 

「……正気か?」

 

大淀に向かってこの様に尋ねたところ、彼女は戦治郎の言葉を肯定する様に、無言で頷いてみせるのであった……

 

どうして戦治郎はこの様な反応をしたのだろうか?その答えの全ては、今戦治郎が手にしている資料の中にあった……

 

その資料には、帝国海軍の穏健派の代表である元帥を失脚させ、強硬派を中心としたメンバーで帝国海軍を再編成した後、深海棲艦に対して積極的に攻撃を仕掛け、相手を根絶やしにする事でこの戦争を終結させる為の作戦の概要が、事細かく書き記されており、その他にも、大将が予想していた穏健派の提督を強硬派に寝返らせる為の手順についても、この資料に書かれていたのだった……

 

(流石親族なだけはあるな……、考えはお見通しって訳か……)

 

資料を目にした戦治郎が、内心で苦々しい表情を浮かべながら、この様な事を呟いていると……

 

「この作戦を実行するにあたって、どうしても戦治郎さんの力が必要になって来るのです……。どうでしょうか?戦治郎さんのその力……、たった一声で多くの者を惹き付けるそのカリスマ性を、深海棲艦以上の存在とも真っ向から戦えるその戦闘能力を、帝国海軍の改革の為に貸してもらえませんか……?」

 

大淀は相変わらず無表情のまま、戦治郎に向かってこの様な事を口にするのであった……

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