「んん……?」
午後15時頃、琵琶湖の湖底で眠っていたグラーキは、並々ならぬ気配を無意識に感じ取り、普段の起床時刻よりも明らかに早いにも関わらず、思わず目を覚ますのであった
「何だこの気配は……?とても人間のものとは思えない、凄まじく強大な気配が3つ……、こちらに向かって来ているのか……?」
自身が感知した気配のせいで眠気が吹き飛んでしまったグラーキは、背筋に薄ら寒いものを感じながらこの様な事を呟く……
「一体何者かは知らんが……、警戒はしておくべきだろうな……。しかし……、こんな時間に目が覚めてしまったら、いつも以上に腹が減ってしまいそうだな……。よし、今日の夕食はいつもより多めに集める様にしておくか……」
その後グラーキは、この様な事を呟くと静かに3つの目を閉じ、以前自身が作り出したアンデット達にテレパシーで指示を出すのであった……。まさかこの後、自分にとんでもない悲劇が訪れる事になるとは微塵も思いもせずに……
その頃、戦治郎達はと言うと……
「グラーキとグラーキの従者と呼ばれるゾンビ達の説明は以上じゃ、何か質問はあるかのう?」
大将に事情を話した際、大将から教えてもらった由良の実家に到着するなり、状況説明ついでに、咲作主催で由良と由良の両親、そして戦治郎、正蔵、大和、大淀、瑞鶴を対象とした神話生物の説明会を開催していたのであった
尚、その会場となった由良の実家で一番広い部屋の隅には、大和、瑞鶴、大淀、そして由良の艤装が鎮座していたりする……。因みに由良の艤装だが、グラーキと戦闘になるかもしれないと言う戦治郎の予想から、戦治郎が工廠の工作艦に事情を話し、持ち出し許可を貰うと格納ボックスに格納して持って来たのである
「生きた人間をゾンビに作り変えてしまうなんて……、なんて酷い事を……」
「神話生物であるワシが言うのも何じゃが、神話生物からしたら所詮人間は下等生物でしかないからのう……。そしてその認識は神話生物サイドの力が強ければ強いほど、より酷いものとなっていき、扱い方も残酷なものになっていくんじゃ……。実際ワシも正蔵達に敗北するまで、人間の事などゴミか玩具くらいに考えておったからのう……」
グラーキが従者を作る時、どの様な事をするのかについて聞かされた由良が、その双眸に涙を湛えながらこの様に述べたところ、それを聞いた咲作は申し訳なさそうな表情を浮かべながら、由良に向かってこの様な言葉で返答するのであった……
(舐めてかかった相手にボコられた後、自分達と比べりゃ明らかに寿命が短いそいつらが、自分達の行いを後世に伝える為に遺して来た物を目の当たりにして、ここまで認識を変えるんか……。クトゥルフさん達もそうだったけど、意外と神話生物って純粋なのか……?)
そんな中、咲作と由良のやり取りを見ていた戦治郎は、心から申し訳無さそうに佇む咲作の姿を目にするなり、思わずこの様な事を呟くのであった
と、その時である
「ねぇ咲作さん、そのグラーキって奴にゾンビにされちゃった人は、人間に戻してあげる事は出来ないの?」
小弁天島での惨劇を目の当たりにしてから、神話生物による人的被害を可能な限り抑えたいと考える様になり、今回も神話生物絡みの事件であると聞くや否や、グラーキ討伐に名乗りを上げた瑞鶴が、咲作に向かってこの様な質問を投げかけるのであった
「普通なら無理じゃな、じゃが今回に関しては可能と答えておくわい。何たって今此処には、ワシと言う超常を超越した存在がおるからのう。ワシが被害者達がグラーキの被害に遭ったと言う事実そのものを能力で分解してしまえば、被害者達は攫われた時の前後の記憶に齟齬が発生はするものの、グラーキに攫われた事実が消滅している関係で、ゾンビになってしまった事も無かった事になるんじゃ」
「なら一安心ってところね……」
「過去の事象に干渉する事も出来るのですか……、本当に咲作さんは凄い方なのですね……」
「これでも
その後咲作の返答を聞いた瑞鶴は、安堵の息を吐きながらこの様に述べ、そのやり取りを瑞鶴の隣で聞いていた、神話生物関連の事件の解決に動く事も有る長門屋に異動する事を決意し、演習とは違う、本当の神話生物との戦いを実際に体験しておこうと考え、今回の戦いに参加する事にした大淀が、苦笑しながらこの様な言葉を口にすると、咲作はこれまでの申し訳なさそうな表情を引っ込め、何処か得意げに、ニヤリと笑みを浮かべながらこの様に返事をするのであった
「咲作よ、もし儂らがゾンビ化した被害者達に襲われた場合、儂らは被害者達には攻撃しない方がいいんか?」
「その辺も気にする必要は無いのう、グラーキに襲われた事実が消滅すれば、被害者達はワシらと戦う理由も、グラーキに従う理由も一緒に無くなり、更にはワシらと戦闘したと言う事実も一緒に消滅する事になるんじゃ。じゃからもし被害者達に襲われる様な状況になった場合、遠慮なく被害者達を吹き飛ばしても斬り捨てても構わんよ。仮に何かあったとしても、ワシの方で何とかしておくわい」
「ご近所さんを撃つのは気が引けるけど……、そうしないとお父さんもお母さんも、グラーキに酷い事をされちゃうから……、こればかりは仕方ないよね……、ね……?」
「ああ……、シカタナイネ……」
瑞鶴の質問に対しての答えが出た後、今度は正蔵が被害者達に襲われた時の対処法について尋ねてみると、咲作は常識的に考えればとんでもない内容で正蔵の問いに対して返答し、それを聞いた由良が複雑そうな表情を浮かべながらこの様な事を呟くと、それに続く様にして戦治郎がこの様に呟くのであった
「被害者の皆さんを助ける方法……、そして被害者の皆さんに襲われた時の対処法についてはよく分かりました。それで咲作さん、この事件の犯人であるグラーキの討伐に関しては、どの様な方法を採るおつもりなのですか?」
咲作が正蔵の質問に答えた直後、今度は戦治郎が戦いに参加するならばと言う事で、戦治郎について来た大和が今回の作戦内容について質問したところ……
「そうじゃな、そろそろそっちについて話しておいた方がいいかもしれんのう」
咲作はこの様に述べた後、今回の作戦について話し始めるのであった
今回のグラーキ討伐だが、実際にグラーキがいると思われる琵琶湖の湖底に向かうのは、戦治郎、正蔵、咲作の2人と1柱だけで、大和、瑞鶴、大淀、由良の艦娘4人は、念の為に咲作が生み出したジガルデ・コアとジガルデ・セル達と共に由良の実家に残り、由良の両親をゾンビ化した被害者達から守ると言う手筈になっている
グラーキと直接戦う面子から艦娘達が外されている理由については、グラーキが琵琶湖の湖底で活動している関係で、潜水艦ではない大和達では長時間の潜水が出来ず、グラーキがいるところまで辿り着く事が出来ない事と、此処にいる艦娘達の火力が旧支配者の相手をするにあたって少々心許ない事に加えて、そもそも水上艦の艤装が水中では使い物にならない事、そして戦治郎達が艦娘達のフォローに入ったばかりに、グラーキに対しての攻撃の手数が減ってしまい、結果としてグラーキを撃ち漏らしてしまう可能性が出てしまう事が挙げられており、最初はグラーキと戦う面子から外された事を不服に思った瑞鶴も、戦治郎から理由を聞くと取り敢えず納得し、渋々ではあるが作戦内容を了承するのであった
因みに非戦闘員である由良の両親は、咲作の指示で丁度説明会をやっていた部屋にあったクローゼットの中に退避する事となり、2人がクローゼットの中に入った事を確認した咲作は、そのクローゼットに自分の事を示す印、サクサクルースの印を刻みつけ、グラーキの従者と成り果ててしまった被害者達では、クローゼットに簡単に近付けない様にし、それが終わるとクローゼットの中にいる2人に対して、改めて自分が良いと言うまでクローゼットから出ない様にと釘を刺すのであった
こうして準備が整うと……
「よっし、後はゾンビ達が活動を開始する日没までに、俺達が湖底にいるグラーキを捕捉して、徹底的に叩きのめした上で、落とし前つけさせるだけだな……」
「グラーキは確かにでかく、見つけやすい分類に入るじゃろうが、琵琶湖そのものがかなり広いからのう、グラーキを捕捉するには結構な範囲を探し回る事になるじゃろうな……」
「グラーキが儂らの存在を感知して、湖底中を逃げ回らなけりゃいいんじゃがのう……」
「っと、こんな事やってる時間が勿体無ぇ、行くぞ祖父さん達っ!!!」
\応っ!!!/
戦治郎達は由良の実家を出て琵琶湖へ向かい、岸でこの様なやり取りを交わした後、すぐさま琵琶湖に飛び込み、グラーキを見つけ出す為に琵琶湖の湖底目指して潜水していくのであった
「さて……、提督達も出撃された事ですし、大和達ももしもの時の為に備えておきましょうっ!!」
\了解っ!!/
そうして戦治郎達が琵琶湖の中に潜っていく姿を見届けた大和は、自分と共に残る事となった瑞鶴達に向かってそう言うと、瑞鶴達は真剣な表情を浮かべながら大和に向かって力強く返答すると、来た道を辿って由良の実家に戻ると、持参した艤装を装着し、もしかしたら来るかもしれない戦いの時に備え、事前に自分達で話し合って決めておいた配置に着くのであった……