由良の実家でブリーフィングを終え、グラーキを見つけ出す為に琵琶湖に飛び込んだ戦治郎達であったが……
「あぁーっ!!!もうっ!!!全っ然グラーキを発見出来る気配がしねぇぞっ!!!」
「流石は日本最大の湖……、思った以上に広いのう……」
「むぅ……、グラーキはそこそこサイズがある旧支配者じゃから、発見はし易いと思ったんじゃがのう……」
戦治郎達が思っていた以上に琵琶湖が広かった事と、海上とは違い水中では思った速度で移動出来ない事が災いし、グラーキの発見は戦治郎達の想定よりも難航していたのだった……
一応、咲作がその力の一部を解放し、魔力によって水中での索敵範囲を広げる事で、今回の事件の犯人であるグラーキの発見率を格段に上げる事は出来るのだが、それをやってしまうとグラーキが咲作の魔力を感知し、その魔力の凄まじさに恐れをなし、逃走を開始してしまう可能性も大幅に引き上げられてしまう為、それは最後の手段にしようと言う事で、戦治郎達は地道に目視で湖底にいるであろうグラーキを探していたのである
しかし、それではグラーキを中々発見する事が出来ず、戦治郎達は時間だけを無駄に浪費するだけの状況に陥っていたのであった……
「くっそ……っ!こうしている間に、そろそろ日が沈む時間になっちまった……っ!」
「このままでは埒が明かんな……、これ以上時間をかけてしまっては、地上のお嬢ちゃん達に危険が及ぶ可能性が出てしまうのう……」
「グラーキがでかいからって、完全に油断しちまってたな……。確か前も俺の見通しの甘さが原因で、状況が悪くなっちまった事があったよな……ちきせうっ!こうなったら仕方ねぇっ!咲作さん、切り札切っちまって下さいっ!!」
グラーキを中々発見出来ず、大和達が危険に晒されてしまう事に焦りを覚えると共に、自分自身の未熟さに苛立ちを覚える戦治郎と、自身の未熟さに気付く事が出来た戦治郎の姿に、内心ではその成長を喜んではいるのだが、状況が状況故にそれを表に出せないでいる正蔵は、この様なやり取りを交わした後、この状況を打開する為に咲作に魔力による索敵範囲の拡大を頼むのであった
「已むを得んな……」
それに対して咲作はこの様に返答した後、すぐさまグラーキに容易に発見されない様、抑えに抑えていた自身の魔力の一部を解放し、それを用いてグラーキの捜索を開始するのであった……
「なっ何だ……っ!?湖の中に飛び込んで来た気配の1つから魔力が……っ!それもこの量……、まさかこの気配の中に外なる神がいるとでも言うのか……っ?!しかし何故外なる神が……?いや、今はそんな事を考えている場合ではない……っ!!この湖の中に入って来たと言う事は、この外なる神は私が狙いのはず……っ!!外なる神の相手など、命が幾つあっても足りんぞ……っ!!えぇいっ!何時までもこんな所にいれるかっ!!私は逃げるぞっ!!!」
咲作が魔力を解放しての捜索を開始した直後、やはりと言うべきか、湖底の中に潜伏していたグラーキは、咲作の魔力を感知すると激しく動揺した後、魔力の発生地点から可能な限り遠ざかる様に、湖底の中から這い出ると急いで逃走を開始するのであった……
「いたぞっ!!8時方向、15km先じゃっ!!!あ奴、湖底の中に身を隠す様に潜り込んでおったわいっ!!」
咲作の魔力を感知したグラーキが逃走を開始した直後、グラーキを捕捉する事に成功した咲作は、叫ぶ様にして戦治郎達にこの事を伝え……
「道理で目視で見つからねぇ訳だわなぁっ!!!」
「そんな事言っとる場合かっ!!行くぞ戦治郎っ!!!」
「居場所を捕捉出来たんならこっちのもんじゃいっ!!最大戦速で行くぞおおおぉぉぉーーーっ!!!」
その情報を耳にした戦治郎と正蔵は、この様なやり取りを交わした後、戦治郎の神帝之型で自分達を強化すると、咲作が言ったポイントに急行するのであった
それからしばらくして……
「グラーキを目視で発見っ!って、何か思った程でかくない……?」
「何かナメクジとヤマアラシのキメラの様な姿をしとるのう……」
戦治郎と正蔵はアフリカゾウ程の大きさのグラーキを見つけると、何処か拍子抜けした様な様子で、それぞれグラーキの外見に関する感想を述べ……
「って、やってる場合じゃねぇやっ!さっさとあいつを仕留めねぇとっ!!」
「そうじゃのう、あ奴にはキッチリ落とし前を付けてもらわんとのう……っ!」
それからすぐに我に返ると、急いでグラーキとの距離を詰め始めるのであった
しかし……
「むっ!例の外なる神の従者達かっ!?」
戦治郎達の存在に気付いたグラーキは、そう言うと戦治郎達の追跡を振り切る為に、出鱈目な軌道で移動しながらその移動速度を上げるのであった
尚この時、グラーキは戦治郎達に気を取られていた為、自分が逃げようと思った相手である咲作の気配が、唐突に消えていた事に気付けずにいたのであった……
「うぉっ!?あいつ、思った以上に速ぇっ!!」
「あの身体でよくこんな速度が出せるのう……っ!」
急に速度を上げたグラーキに驚いた戦治郎達だが、此処まで来てグラーキに逃げられる訳にはいかないとばかりに自分達も更に加速し……
「おっしゃっ!射程に……っ、入った……っ!!」
戦治郎が持つアンカークローの射程内に入る程まで、グラーキとの距離を詰める事に成功した戦治郎は、そう言うと腰に装着していたアンカークローを手に取って構え、泳ぎながらであるにも関わらずグラーキにピッタリと照準を合わせると、即座にトリガーを引いてアンカークローの爪部分を射出するのであった
戦治郎の算段では、アンカークローをグラーキの身体に突き立て、爪部分とグリップ部分を繋ぐ鎖を全身全霊の力で引っ張り、グラーキの足止めを行う予定となっているのである
戦治郎がトリガーを引いた直後、シリンダーによって急激に圧縮されたシリンダー内部の水は、逃げ場を求めるかの如く凄まじい勢いでアンカークローの爪部分を押し出し、その勢いに乗った花の蕾の様に閉じた5本の鋼鉄の爪は、自身の内部に内蔵されたスクリューの補助を受けながら、真っ直ぐグラーキの方へと向かって行くのだが……
「やらせんぞっ!!!」
グラーキのこの一言と共に、グラーキの背部にある無数の棘がまるでロケット弾の如く射出され、その直撃を受けたアンカークローの爪は、軌道を逸らされ明後日の方向に弾き飛ばされてしまうのであった……
「そんなのアリかよっ!?っとぉ、ろっしょいっ!!!」
「えぇいっ!あ奴、棘を発射した時の反動を利用して、更に加速しおったっ!!」
その直後、グラーキの行動に驚きつつも、戦治郎は気合で自分達の方へと向かって来る無数のグラーキの棘を回避し、紅吹雪で障壁を作って棘による攻撃を防ぐ正蔵は、忌々し気にこの様な言葉を吐き捨てると、先程の攻撃で戦治郎達を足止めしつつ加速した事で再び開いてしまったグラーキとの距離を詰める為に、共にグラーキの追跡を再開するのであった
さて、戦治郎達が追跡劇を展開している間にも、時間は無情にも刻一刻と過ぎていき、遂には完全に日は沈んでしまい、グラーキの従者と成り果ててしまったグラーキの被害者達が動き出す時間となってしまうのであった……
「待てやゴルァアアアァァァーーーッ!!!」
「小賢しい真似ばかりしおってぇっ!!!いい加減儂らに成敗されんかいっ!!!このクソナメクジもどきがあああぁぁぁーーーっ!!!」
「貴様らの思い通りにはさせんっ!!!私は生きるっ!!!生きて日本中の人間をっ!!!私の信奉者にする野望を成し遂げるのだあああぁぁぁーーーっ!!!」
そんな事とは露知らず、戦治郎達は互いにこの様な言葉をぶつけ合いながら、時にグラーキからの攻撃を捌きながら、琵琶湖の湖底で壮絶な鬼ごっこを展開するのであった……
「ふむ……、此処ならグラーキを追い詰める事が出来るかもしれんな……」
そんな中、魔力の放出を極限まで抑え、いつの間にか姿をくらませていた咲作は、索敵中に発見した、湖底内に存在していた洞窟の中で、この様な事を呟いていたのであった……