※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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由良の実家防衛戦線

戦治郎達がグラーキの追跡を開始した頃、戦治郎の指示で地上に残った大和達はどうしていたかと言うと……

 

「2時方向に多数の影っ!増援だと思われますっ!」

 

「ちぃっ!一体これで何度目の増援よっ!?」

 

ブリーフィングの後、最悪の事態を想定した戦治郎から譲り受けた夜偵を飛ばして、周囲を警戒していた大淀が、夜偵が入手した情報を声を張り上げて皆に伝え、それを聞いた瑞鶴が思わず舌打ちし、悪態をつきながら腰の矢筒に手を伸ばし、そこから矢を1本取り出すと、すぐに弓に番えて艦攻を発艦するのであった

 

そう、彼女達は今、戦治郎達がグラーキを打ち倒す事に手間取っている間に日が沈み、それによって活動を開始してしまったグラーキの従者と成り果てた被害者達と交戦している真っ最中なのである

 

戦治郎達と別れた後、彼女達は作戦通りに先ずは由良の実家の屋根に上がり、先程述べた大淀の夜偵で周囲の警戒をしながら時を待ち、戦いが始まるとすぐさま従者達に対して頭上から攻撃を開始したのである

 

さて、何故彼女達は態々足場が悪い屋根の上に上ったのかと言えば、もし由良の実家の前に陣取って戦闘を開始すれば、由良の実家の裏から従者達が接近して来た場合、由良の実家が障害物となってしまい、それに対処すべく大和達がそちらに移動をしている間に、従者達が由良の実家の内部に侵入してしまう恐れがある事と、大和達が従者達に対して攻撃を行う時、可能な限り視界を広くとっておいて、高所から狙撃する様な形で、従者達を由良の実家から離れた位置で対処出来る様にする為である

 

一応、由良の両親が避難しているクローゼット付近には、咲作が置いて行ってくれた2匹のジガルデが控えているのだが、そいつらが戦闘を開始してしまえば、ほぼ間違いなく由良の実家の内部が必要以上にズタズタにされてしまう可能性が高まってしまう為、それは流石に勘弁して欲しいと言う由良の意思を汲み取り、大和達は可能な限り従者達を由良の実家に近付けない様にしようと心に誓ったのであった

 

因みに現在の大和は攻撃の手数を増やす為と言う理由で、水偵の代わりに水戦を装備しており、大和の水戦達は由良が放った照明弾の明かりの下、瑞鶴が放った岩本妖精さん率いる艦戦部隊と連携をとりながら従者達に銃弾の雨を叩きつけて回っていた。艦娘が放つ艦載機は見た目こそ小さいものの、艤装に民間用リミッターが付いていない状態であるならば、その威力は艤装の兵装同様実物と変わらないものとなる為、艦攻&水戦の連合部隊は、従者達を容易に蹴散らしてみせるのであった

 

そんな中……

 

「このっ!これ以上、貴方達を由良の家には近付けさせないからっ!!」

 

「艦攻隊っ!由良に合わせて魚雷を投下してっ!!」

 

由良がこの様な事を叫びながら、戦闘機の群れを掻い潜って接近して来た従者達目掛け、ありったけの魚雷を投擲し、それに合わせて瑞鶴が先程放った艦攻部隊にこの様な指示を飛ばし、それを受けた艦攻達はすぐさま指示に従い、機体下部に吊り下げられた魚雷を、従者達の頭上で機体から切り離し……

 

「今ですっ!大和さんっ!!」

 

「主砲っ!!薙ぎ払えっ!!!」

 

その様子を夜偵越しに見ていた大淀が合図を送ると、それに合わせて大和が艤装に取り付けられた51cm砲を従者達に向けて放ち、その砲弾が従者の1匹に直撃し大爆発を発生させると、先程由良達がばら撒いた魚雷の1つが爆炎に飲み込まれて誘爆、その爆発が別の魚雷を更に誘爆させると言う連鎖が発生し、それによって従者達は次々と吹き飛ばされていくのであった

 

「咲作さんからは気にせずに戦えと言われてるけど……、やっぱりご近所さんだった人達を撃つのは少し気が引けるなぁ……」

 

大和達の見事な連携によって薙ぎ払われる従者達を見て、戦治郎が少しだけ置いて行ってくれた資源を使い、魚雷を補充する由良がこの様な事を呟くと……

 

「そのご近所さんって、多分序盤に吹き飛ばした連中の中にいたんじゃない?今来てる連中は、他の琵琶湖周辺の住民から作られた従者だと思うんだけど……」

 

「恐らく瑞鶴さんが言っている通りでしょうね……、その数や来ている方角から考えても、今来ている従者の多くは、グラーキ由来の行方不明事件が明るみになる前から、グラーキによって従者に作り変えられた方々だと考えられますね……」

 

魚雷を補充する為に戻って来た艦攻を格納し、魚雷の再装填を終えた艦攻を再び発艦させながら瑞鶴がこの様な事を口にし、それを聞いた大淀も瑞鶴の言葉を肯定する様に、この様な言葉を口にするのであった

 

因みに由良の実家のご近所さん製の従者達だが、その数はこの戦いが始まるほんの少し前から本当に地味に増えていたりする。その理由として挙げられるのは、戦治郎達との追いかけっこの最中、グラーキが放った棘の多くが琵琶湖中から飛び出し、それを手にした従者達がグラーキのテレパシーに従い、まだ無事であった住民達の家を襲撃し、その棘を1人の人間に対して2本使用する事で、従者の数を増やしたからである

 

「確かに由良さんからしたら心苦しいところがあるかもしれませんが、今はそんな事を言っている場合ではありません。もしここで大和達が従者達の勢いに押し切られる様な事があれば、大和達までもがグラーキの従者に仕立て上げられ、被害が更に拡大してしまう事でしょう……。そんな事は、絶対に許されてはいけない事なのです……っ!!」

 

そんな由良達のやり取りを聞いていた大和が、真剣な面持ちでこの様な事を口にすると、それを聞いた誰もがその表情を引き締め、己を奮い立たせるのであったが……

 

「そう……、大和が提督以外の誰かの従者に成り下がるなど、絶対にあってはならない事なのですっ!!!」

 

「そこぉっ!?大和さんって、ホント戦治郎さんに心酔してるわね……」

 

大和がこの様に続けた直後、由良と大淀は思わず苦笑を浮かべ、瑞鶴はすかさず大和にツッコミを入れるのであった……

 

その後彼女達は、きっと戦治郎達がグラーキを如何にかしてくれる事を祈りつつも、従者達の弱点である太陽が昇る明け方まで戦い続ける覚悟を決め、しばらくの間後から後から続々とやって来る従者達に対して、情け容赦なく攻撃を続けるのであった

 

大和が戦治郎から譲り受けた3号さんが唸りを上げ、1発1発が重巡の主砲クラスの砲弾を大量にばら撒き、瑞鶴が発艦した艦爆部隊が編隊を組んで絨毯爆撃を開始し、それでも2人が撃ち漏らした従者達を、大淀と由良が主砲や魚雷の誘爆で確実に仕留めていく中、遂に従者達に変化が起こるのであった

 

本当に何の前触れも無く、突如として従者達がその歩みを止めたかと思えば、今度は大和達の視界の中で次々とその場で崩れ落ちる様に地面に膝を突き、倒れ伏せ、やがては全身がボロボロと崩れ始めたのである

 

「如何やら戦治郎さん達が、この事件の首謀者を討ち取ってくれた様ですね……」

 

「ようやくか……、はぁ~……、長かったぁ~……」

 

「流石は提督……、やると決めた事は必ずやり遂げる……、大和はそんな提督が大好きです……♪」

 

「本当に良かった……、お父さんもお母さんも無事で……、本当に良かった……」

 

その様子を目の当たりにした艦娘達4人は、それを作戦が終了した合図であると受け取ると、その表情に疲労の色を見せながらも、各々に思いの丈を口にする。特に両親を己の手で守る事が出来た由良に至っては、喜びの余りその2つの瞳に涙を浮かべながら、この様に呟くのであった

 

その後大和達は取り敢えず由良の実家の屋根から降り、由良の両親に襲撃が終わった事を告げて狭いクローゼットの中から解放し、由良の両親から心からの感謝の言葉を受けた後、由良の実家の前で戦治郎達の帰還を待っていると……

 

「「「えっほえっほえっほえっほ」」」

 

遠くから3人分……、いや、あのメンバーの場合2人と1柱の方が正しいだろう。2人と1柱の声が聞こえて来て、大和達が声が聞こえた方に顔を向け、暗闇の中目を凝らしてその方角を見ていると、そこには真っ赤な大きな柱の様な物を担ぎ、こちらに向かって走って来る戦治郎達の姿が見えるのであった

 

尚、戦治郎達が担ぐその柱には、最早全身から血を流しながら柱の中に埋まっているとしか表現出来ない状態となった、哀れな今回の事件の首謀者である旧支配者、グラーキの姿があったのであった……

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