今回の事件の首謀者であるグラーキが、どの様にして柱の中に埋められたのかについて説明する為に、少し時間を遡るとしよう
琵琶湖の湖底にて、グラーキと追いかけっこを始めた戦治郎達であったが、グラーキからの妨害もある為か、中々グラーキに追いつく事が出来ず、時が経つに連れて徐々に焦燥感に苛まれ始めるのであった
アンカークローを射出された棘によって弾かれた後、戦治郎達は現在使用出来るあらゆる手段を用いて、湖底を走り回るグラーキの拘束を試みたのだが、それらは悉く失敗に終わってしまっていた……
先ず水中ではアンカークロー以外の射撃系武器が無い戦治郎が、隙を見つける度に果敢にもアンカークローによる拘束を何度も試みるのだが、やはりと言うべきか、それは先程と同じ様に棘で弾き飛ばされてしまったり、まるで背後に目が付いているのかと思いたくなってしまう様な正確さで回避されてしまっていた
これ以外にも戦治郎は、神帝之型の力を利用して、湖底を隆起させて作った岩の槍や、地割れを発生させてグラーキの足止めを試みたのだが、それもグラーキに勘付かれてしまっていたのか、浮力を利用した跳躍などによって悉く回避されてしまうのであった
そんな戦治郎の様子を見ていた正蔵が、戦治郎と交代して紅吹雪による足止めを試みたのだが、自身が生み出せる最大数の花弁で攻撃を仕掛けてみるも、それも結局棘で全て撃ち落とされてしまったり、ものの見事に回避されてしまっていたのである……
「あああぁぁぁーーーっ!!!あの棘ホント邪魔っ!!!マジで何なんだよアレッ!!?」
「あ奴は一体どうやってあそこまで精密な射撃を行ったり、こちらの攻撃を把握して回避をしておるんじゃ……?」
グラーキの棘攻撃に苦戦を強いられる2人が、思わずグラーキに対して悪態をついたり、その行動の正確さについて疑問を覚えていると……
「だったらあ奴の目を見てみるといい、そしたらその原因が分かるぞ?」
不意に聞き覚えがある声が2人の耳を打ち、2人が揃ってそちらに視線を向けてみたところ、そこにはいつの間にか姿をくらませていた咲作の姿があり……
「咲作さんっ!?何時の間に戻ってたんですかっ?!」
「お前、何か途中から姿が見えんかったが、一体何処に行っておったんじゃ?」
「すまんのう、ちとあやつを追い込むのに丁度良さそうな場所があってな、其処の様子を見に行っておったんじゃ」
いつの間にかいなくなっていた咲作が戻って来ていた事に驚いた2人は、それぞれこの様な言葉を咲作に投げかけ、それを聞いた咲作は、2人に向かって別行動を取っていた理由について話し……
「このタイミングでそんな情報を……、アンタは神か……?」
「神じゃよ?」
「あっそうだったわ」
「そんな下らんやり取りやっとらんで、はよそのあ奴を追い込める場所とか言う奴を教えんかいっ!」
「全く、正蔵はせっかちじゃのう……」
2人と1柱はこの様なやり取りを交わした後、咲作から件の場所の位置について教えてもらうのであった
「此処から南にある島……、沖島か……」
「そうじゃ、其処に奥が行き止まりになっておって、入口も1ヶ所しか存在しない、あ奴を追い込むのに丁度良さそうな洞窟があったんじゃよ」
「どうしてそんな所に洞窟が……、いや、今はそんな事を考えておる場合ではないのう。問題はあ奴をどうやってそこまで誘導するかじゃな……」
「あいつ、マジで背中に目が付いてるのか?ってくらいに、こっちの攻撃に反応して回避したり迎撃しやがるからな……」
「だからあ奴の目を見てみろと、さっきワシが言ったじゃろうがい、このバカチン共が……っ!」
その後、洞窟の場所を把握した戦治郎達が、その場所にどのようにしてグラーキを誘導するかについて頭を悩ませ始めた直後、少々苛立ちが混ざった咲作の声が2人の耳に入り、それを聞いた2人は我に返ると急いでグラーキの目を目を凝らして観察し始め……
「あーっ!?」
「……あ奴、3つある目の内の1つを、常にこちらに向けておったのか……?」
「その通りじゃ、じゃからあ奴はお前達の攻撃をこちらを向いている目でしっかり捕捉し、回避や迎撃を正確に行う事が出来るんじゃよ」
「待った待った、それじゃあ俺がやった地面からの攻撃に反応出来た理由は?」
「神話生物の感覚を侮るでない、地面に足を着けておったら、よっぽど別の事に意識を取られておらん限り、ワシらは地面の微細な変化を感知出来るんじゃよ」
「くっそっ!!くっっっそぉっ!!!そんなのアリかよぉっ!!!」
戦治郎と正蔵は、3本の管の先端にそれぞれ付いたグラーキの目の内、真ん中の1つがずっとこちらを向いている事に気付くと、こんな単純な方法で苦戦を強いられた事を大いに悔しがったのであった
そうしている間に、戦治郎達は件の洞窟の近くに辿り着き、グラーキを洞窟内に追い込む作戦について、グラーキを追跡しながら話し合いを開始し……
「おっしゃっ!!その作戦でいこうっ!!」
「儂らをコケにした事……、存分に後悔させてやるわい……っ!!」
「お前達だけでもそこそこいい線までいってたんじゃ、ワシも加われば確実に上手くいくじゃろうて」
作戦内容が決まると、戦治郎達は各々に言葉を口にした後、すぐさま行動を開始するのであった
先ずは正蔵が紅吹雪で広範囲に亘って攻撃を開始し、それに釣られてグラーキが迎撃の為に棘を発射し始めると、正蔵が生み出した彼岸花の花弁達は突然その軌道を変え、次々と棘を撃ち落とし始めるのであった
(何か妙な奴が加わってから、奴らの動きが変わった……?奴らは一体何を企んでいるんだ……?いや、そもそも問題の外なる神は何処に行った……?まさか、あの珍妙な奴が……?)
唐突に姿を現したジガルデパーフェクトフォルムと、今まで自分に対して直接攻撃を仕掛けていた正蔵の行動の変化に困惑するグラーキが、内心でこの様な事を呟いていると、不意に視界が真っ白になり……
「……っ!?ぐぁあああぁぁぁーーーっ!!!」
直後に視界が暗転、真っ暗になるや否や身体と目を繋ぐ管の先端に焼ける様な痛みを感じ、グラーキは突然の出来事に驚愕しながら、その激痛に思わず悲鳴を上げるのであった
グラーキの身に一体何があったのか?それは咲作が撃ち出した核熱を利用した熱線が、グラーキの3つある目を全て焼き尽くしたのである
そう、これは正蔵が最大出力の紅吹雪でグラーキの棘を処理している間に、咲作が熱線を発射してグラーキの目を潰してまともに行動を出来なくしてしまうと言う、戦治郎達の作戦の内の1つなのだ
普通ならば、これだけでグラーキの足止めは成功したと思うところだが、咲作から神話生物の再生能力を侮ってはいけないと忠告された戦治郎達は、グラーキが確実に逃走出来ない様にする為に、目を再生されても簡単に逃走出来ない様に、逃げ場の少ない洞窟の中にグラーキを放り込んだ後、しっかりグラーキを拘束する事にしているのである
さて、こうして完全に視界を潰されたグラーキに対して、戦治郎が追い撃ちを掛ける
「しゃああぁぁぁりゃあああぁぁぁーーーっ!!!」
戦治郎は雄叫びを上げながらアンカークローを射出、その鋼鉄の爪が今度こそグラーキに突き刺さると、グリップを握り込んでアンカークローの爪を展開し、簡単にグラーキの身体から爪が外れない様にすると……
「う"お"お"お"ぉ"ぉ"ぉ"---っ!!!!!」
先程以上の声量で咆哮を上げながらアンカークローのグリップを握り込み、同時に自分の身体を軸にして横回転を開始する。するとどうだ、グラーキの身体は地面から離れ、まるでハンマー投げのハンマーの様にグルグルと戦治郎に振り回され始めたのである
「お~、回っとる回っとる~」
「後は洞窟の中に正確に放り込めるかじゃのう」
その様子を眺めるジジーズが、各々に感想を述べ……
「なあああぁぁぁーーーっ!?!??」
目を潰された事で状況を把握出来ないグラーキが、激しく混乱しながら叫び声をあげると……
「じょいやあああぁぁぁーーーっ!!!!!」
戦治郎が再び咆哮を上げながらグリップを握る力を緩めて爪を閉じ、それによって爪がグラーキの身体からすっぽ抜けると、グラーキの身体は凄まじい速度で、洞窟の方へと一直線に飛んで行くのであった
「おっしゃっ!狙いバッチリッ!」
「戦治郎っ!最後の仕上げにかかるぞっ!!」
「あいよっ!!!」
その様子を眺めていた戦治郎が、狙い通りにグラーキを飛ばせた事に対して、喜びの余り思わずガッツポーズをとりながら叫び、直後に紅吹雪で作った先端が鋭利に尖った、直径1mほどの巨大な柱を抱えた正蔵がそう叫び、それを聞いた戦治郎は返事をしながらすぐさま正蔵の下に近付き……
「「どっせえええぇぇぇーーーいっ!!!」
2人で真っ赤で巨大な柱を抱えると、呼吸を合わせて柱を洞窟目掛けて投擲、柱は2人の狙い通りに洞窟の中に入ると……
「あ"があ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"---っ!!!」
洞窟の入口のすぐ傍まで投げ飛ばされたグラーキの身体に突き刺さり、それに反応したかの如く柱から生えて来た大量の蔓状の花弁が、グラーキの身体を柱に縫い付ける様に、何度何度もグラーキの身体を貫いては、別の所から再びグラーキの身体を貫いて柱に戻るを繰り返し、やがて花弁がグラーキの身体が柱に埋没した様に見えるほどまで縫合したところで、柱は洞窟の壁に勢いよく突き刺さるのであった
そんな攻撃を受けたグラーキは、柱が壁に突き刺さった瞬間に襲って来た衝撃と、全身に走る激痛の余りに意識を失い、完全に沈黙してしまうのであった……
その後戦治郎達はグラーキが気絶している事を確認すると、特に洞窟の中を探索したりはせず、グラーキが刺さった柱をそのまま回収し、大和達が待つ由良の実家に帰還するのであった
尚この時、咲作は最初に洞窟に来た時には感じなかった違和感を感じ取るのだが、早く地上に戻りたがっている戦治郎達の姿を見て、これは気のせいであると自分の中で処理する事にして、戦治郎達と共に地上に戻るのであった
「ふぅ……」
今回の事件の首謀者であるグラーキを捕獲した戦治郎達が、グラーキが突き刺さった柱を担いで洞窟から去った後の事である、突如として洞窟内部の空間が歪み、その中から幾何学的な形状をした、何処かメタリックな見た目をした、手のひらサイズの何かが姿を現すなり、溜息とも安堵の息とも受け取れる吐息を吐くのであった
「ふむ……」
それは何かを思案する様にそう呟き……
「うん……」
自分の中で何かを決定すると、呟きを1つ残した後、再び歪んだ空間の中に入り、その姿を完全にくらませてしまうのであった……