「今回の事件の首謀者、とっ捕まえたぞーっ!」
「こ奴、本当に小賢しい真似ばかりしくさりおってのう、思った以上に捕獲に手こずってしもうたわい……」
「ワシが戦列に戻ってからは、サクサクと話が進んだがのう」
「提督も正蔵さんも、そして咲作さんもお疲れ様でした」
由良の実家に帰還した戦治郎達が、自分達の帰りを待ってくれていたであろう大和達に向かって、捕獲したグラーキを見せながら作戦が成功した事を告げたところ、血塗れでグッタリするグラーキの姿を見て瑞鶴達が引き攣った表情を浮かべる中、大和だけが特にグラーキに対するリアクションも見せず、たった今帰還した戦治郎達に向かって頭を垂れながら労いの言葉を掛けるのであった
「こいつ、生きてるの……?」
「見た目は酷い事になっておるが、ちゃんと急所は外しておるから生きておるぞ?」
「こ奴には、生きて罪を償ってもらう必要があるからのう」
瑞鶴が表情を引き攣らせたまま、グッタリとしてピクリとも動かないグラーキの様子を見て、これが本当に生きているのかどうかについて正蔵達に尋ねてみると、ジジーズはあっけらかんとした様子でこの様に返答し、瑞鶴を更にドン引きさせるのであった
「罪を償う……ですか……」
「そうじゃ、まあ具体的な内容はこれから話すとして……、先ずはこ奴を話が聞ける状態にせねばな」
先程の咲作の発言に対して、大淀がこの様に呟いたところ、それを聞いた咲作はこの様に返事をした後、グラーキの方へと顔を向け、本当に一瞬だけその目を光らせる
するとどうだ、咲作に焼き払われたグラーキの目が見る見るうちに復元されていき、更には身体中の傷から垂れ流されるグラーキの血液もピタリと止まり……
「……うぅ……っ」
遂には身体は柱の中に未だに埋まったままではあるものの、グラーキの身体がピクリと動き、やがてグラーキはくぐもった呻き声を上げながら、意識を取り戻すのであった
「これは……っ!?一体何が……?」
「何、目の方はワシから攻撃されたと言う事実を分解して元の状態に戻しただけで、身体の方はこ奴の細胞組織を上手い具合に結合させて、無理矢理傷口を塞いで止血しただけじゃよ。細胞関係については、ワシが本来持つ分解と融合に関する力と、ジガルデ達を生み出す時の技術を応用すれば、どうとでもなるもんじゃ」
「ご、ご丁寧にどうも……」
グラーキの身に起きた出来事を目の当たりにした大淀が、思わず目を見開いて驚愕の声を上げるのだが、それに対してこの現象を引き起こした張本人である咲作は、平然とした様子で即座にこの様に返答し、それを聞いて目の前で起こった現象については、これ以上踏み込んで言及すべきでは無い、仮にこれ以上言及したところで、その理屈を完全に理解する事は不可能であろうと判断した大淀は、苦笑しながらこの様に返答するのであった
と、その直後である
「ああ、事実の分解で思い出したわい。そう言えばグラーキの被害者達を復活させんといかんかったな」
「咲作さん……、本当に被害者の皆さんは蘇る事が出来るんですか……?正直、こんな状態からでも復活出来ると言うのが、少々信じ難いんですけど……?」
自身の発言で被害者達を元の人間に戻す事を思い出した咲作が、ポンっと手を打ちながらこの様な言葉を口にし、それを聞いた由良が、グラーキが気絶してしまった事で、人としての原型を全く留めていない、灰の山と化してしまった被害者達の今の姿をチラ見しながら、この様な疑問を口にしたところ……
「それはお前さん達の理屈じゃな、生憎ワシにはそう言った理屈は通用せんのじゃよ。まあ、口で言うより実際見せた方が早いかのう……」
咲作はこの様に返答すると、静かにその目を閉じながら俯き……
「ふむ……、ワシら基準では大した規模とはとても言えんが、人間の基準で見てみれば、かなりの被害が出ておるのう……。これはひょっとしたら、多少時空が歪むかもしれんな……」
恐らく人類には到底触れられない何かに触れ、その内容に対してこの様な事を呟き、そんな咲作の様子を静かに見守っていた戦治郎達は、咲作の呟きを耳にすると……
「何か今、すっごくヤバそうな言葉が聞こえたんだけど……?」
「え……?時空が……何だって……?」
揃ってこの様な言葉を口にしながら、驚愕と困惑が絶妙に混ざり合った様な表情を浮かべるのであった……
と、その直後である
「さて、どのくらいの規模で事実を歪めれば良いか分かった事じゃし、早速やるとするかのう」
咲作がそう言いながらその双眸を開き、その目を眩く輝かせたその瞬間、世界に異変が発生するのであった
咲作が行動を起こした直後、大気と大地がほぼほぼ同時に激しく震え始め、戦治郎達の視界に映るありとあらゆるものが、突如としてまるで陽炎の如くユラユラと揺らぎ、更には女性陣が身に付けているアナログ式の腕時計の針と言う針が、トチ狂ったかの様に文字盤上をグルグルと回り始め、戦治郎が身に付けているデジタル式の腕時計に表示される文字達も、最早時計としての役割を放棄し、液晶パネルの中で暴れ始めるのであった……
これでもかなりの異常事態なのだが、揺らぐ戦治郎達の視界の中で、更なる異変が起こり始める。そう、従者達の灰が突然人の形に変化したと思った直後、表面の灰がボロボロと崩れ始め、その中から何処からどう見ても人間にしか見えないものが姿を現したのである
「よし、こんなところじゃな」
咲作のこの発言の直後、今まで発生していた異変が唐突に収まり、灰の中から出て来た者達が次々と倒れ伏せていくのであった
「なぁ咲作さん……、この人達ってホントに生きてんのか……?」
「信じられんのなら、自分で確認したらいいじゃろう?」
目の前で起こった出来事がとても信じられず、思わず戦治郎が咲作にこの様に尋ねたところ、咲作は不機嫌そうな表情を浮かべながら、戦治郎に向かってこの様に返事をし、それを受けた戦治郎が実際に倒れ伏せた人間達の生死を確認してみたところ、咲作が言った通り、倒れ伏せた者達はしっかりと呼吸をしている事と、脈がある事が確認出来、この事実を知った戦治郎は、背筋に薄ら寒いものを感じ、思わずその身をブルリと震わせ……
「嘘でしょ……?」
「これが外なる神の実力……」
「咲作さんが味方で本当に良かったと……、今この瞬間から思う様になりました……」
戦治郎から衝撃の事実を知らされた瑞鶴達も、その内容に戦慄しながら口々にこの様な事を口にし……
「そう言えば……、この方々はこの後どうするのですか?やはり元いた場所に連れて帰るのですか?」
「このまま寝転がしておけば、後は意識を取り戻した者から順に、勝手に帰っていく事じゃろう。じゃから放っておいても構わんじゃろ」
「念の為、幾らか金を渡しておいてやるかのう……、此処から元いた場所に戻る時、文無しで公共の交通機関が使えんなどと言う状況になられては、こっちが困るからのう……」
そんな中でふと大和が被害者達の処遇について思った事を口にしてみたところ、咲作は気にする事ではないとばかりに、その手をヒラヒラさせながらこの様に返答し、それを聞いた正蔵は、流石に被害者達が家に帰れなくなってしまうのは可哀想であると思い、この様な事を言いながら、被害者達の懐に1人辺り2万円ほどの現金を忍ばせてあげるのであった
その後……
「さて、被害者達の方はこれで良いとして……、今度はこ奴の処遇について考えんとのう……」
「それなら場所移しましょう、もし意識を取り戻した人達がこのブッサイクなナメクジもどきを直視したら、最悪精神病院まっしぐらになりかねませんからね……」
被害者達の問題が解決したところで、次はこいつの番だとばかりに、咲作が柱に埋まったまま、黙って何かを考えていると思われるグラーキを睨みつけながらこの様な事を言い、それを受けた戦治郎がこの様な提案をした事で、彼らはグラーキが埋まった柱を担ぎ、人目に付かない場所へと移動するのであった