※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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『お話し合い』の前に気分転換を

戦治郎の提案を受け、人目に付かない場所に移動してからグラーキに対して今回の事件を引き起こした切っ掛けについて問い詰めようとする戦治郎達であったが……

 

「うぅ……、何か変な感じがする……」

 

「何というか……、地球の空気とは何かが違う……、そんな感じがしますね……」

 

「身体に空気が纏わりついて来る様な……、そんな不快感を感じますね……」

 

「周りの風景も相まって、少し吐き気が……」

 

『その場所』に立ち入った艦娘達が、口々に『その場所』に関する苦情を訴える中……

 

「「はぁ~……、どっこいしょーっ!!」」

 

「ぐぉっ!!」

 

戦治郎と正蔵は担いで来たグラーキが埋まる柱を、『この場所』の地面に勢いよく突き立て、その衝撃を受けてグラーキが苦悶の声を漏らすのであった

 

「すまんのう娘っ子達、あの状況で人目に付かない場所と言うと、どうしても『此処』しかなかったんじゃよ……」

 

そんな戦治郎達を尻目に、咲作は何処か申し訳なさそうな表情を浮かべながら、居心地悪そうにしている艦娘達に向かって、謝罪の言葉を口にしながら頭を垂れるのであった

 

何故咲作が艦娘達に対して謝罪するのか?いや、その前に『この場所』とは一体何処の事なのだろうか?

 

その答えを簡単に述べると、なんと『この場所』と言うのは、咲作が地球に飛来するまでの間……、最早天文学的な数値になりかねない程の長い年月を独りで過ごして来たと言う、咲作自身が作り出したと言う異次元空間の中なのである

 

戦治郎の提案で人目に付かない場所に移動する事になった一行だったが、戦治郎から譲り受けた夜偵で周囲の状況を把握していた大淀から、グラーキ被害者達が至る所に存在しており、近くにそう言った場所が無い事を知らされ、それを聞いた誰も頭を抱え始めた時に、咲作がこの異次元空間を使う事を提案、状況が状況である為已む無しと言う事で、一行は咲作の異次元空間の中でグラーキと『お話し合い』をする事にし、今に至っているのである

 

その空間の中は照明の類など一切存在せず、完全に闇に包まれているはずなのだが、何故か中にいる者達は光で照らし出されているかの如く、その輪郭までハッキリと視認出来る様になっており、それが艦娘達からしたら非常に不気味で仕方が無かったのである

 

他にもこの空間には地球の様な大気は存在せず、本来ならば人間が生身でこの空間に入ろうものならば、その人間には宇宙空間に宇宙服を装着せずに投げ出された時と同じ現象が発生し、最悪の場合、その人間が死に至る可能性がある様な場所なのである

 

そんな場所であるにも関わらず、戦治郎達がこの空間で不快感こそ感じるものの、平然としていられる理由だが、それは咲作が魔力を用いてこの異次元空間の中に、地球の大気と同質の大気を作り出したからである

 

そしてその大気には、咲作が大気を作り出した際に用いた強大な魔力が含まれており、それが魔力を持たない艦娘達に不快感を与えていたのである

 

こう言った事情があった為、咲作は艦娘達に対して謝罪を行い、それを受けた艦娘達は、しょぼくれる咲作に対して今回に関しては仕方が無い事だから、そんなに気に病まないで欲しいと、優しく語り掛けるのであった

 

さて、咲作達がこの様なやり取りを交わしていると……

 

「おっしゃ!準備OKだっ!!」

 

『お話し合い』の準備が整った事を知らせる戦治郎の声が辺りに響き渡り、それを合図にして咲作達が戦治郎達の方へと向き直ると、其処には鞘を付けたままの大妖丸や酒呑童子を、肩に担ぐ様にして手に持つ戦治郎達の姿と、そんな戦治郎の目の前に整然と並べられた、艦娘の人数分のスレッジハンマーが存在していたのだった……

 

「……ナニコレ?」

 

「いやな、おめえ達もこいつの被害者達と戦わされたせいで、こいつに対しての怒りを覚えてるんじゃねぇかって思ってな。んで、『話し合い』の前にそいつでこいつをぶん殴って、皆スッキリした気分で『話し合い』に臨もうって事で、こうして輝の得物のプロトタイプであるこれを準備した訳よ」

 

目の前のスレッジハンマーの事が気になって仕方が無い瑞鶴が、戦治郎に向かってこの様に尋ねてみると、戦治郎はニカッと笑いながら瑞鶴に対してこの様な返答をし……

 

「なるほどね……、そう言う事なら一番槍は私が貰うわね。正直、被害者達と戦っている時もそうだけど、戦いが終わって被害者達が灰になった瞬間を見た時、小弁天島の時の事を思い出しちゃって、今滅茶苦茶気分が悪いのよね、私……」

 

戦治郎の返答を聞いた瑞鶴は、納得した様な表情を浮かべながらこの様な事を言い放ち、戦治郎の目の前に並べられたスレッジハンマーの内の1つを手に取ると……

 

「ふんっ!!!」

 

柱に埋まったグラーキの顔面に、気合いの籠ったハンマーによる一撃を叩きつけ……

 

「ごふっ!!」

 

瑞鶴のその一撃をモロに受けたグラーキは、思わず苦悶の声を上げてしまうのであった

 

それから大して間も空けずして……

 

「提督のお心遣い、感謝します。大和も瑞鶴さん同様、今回の件で小弁天島の事を思い出し、非常に不快な思いをしたのですが……、それ以上に……、この生物が湖底を逃げ回って提督の手を煩わせる様な真似をしてくれた事を、大和は絶対に許しません……っ!!!」

 

今度は大和がこの様な事を言いながらハンマーを手に取り、ありったけの怒りを込めてグラーキの脳天目掛けてハンマーを振り下ろし、その衝撃によってこの空間が本当に僅かに震えるほどの一撃を、グラーキにお見舞いするのであった……

 

その後は大淀、由良の順に続き、由良に関しては家族が被害に遭うところであった事から、戦治郎から親御さんの分まで含めて3発殴って良いとの通達があり、由良はそれに従って先ずは野球のバッティングの要領でフルスイングして一撃、続いて今度はテニスの両手バックハンドの様に、払う様にして更なる一撃を加え、最後はこれまでグラーキを殴って来たメンバーと同じ様に、グラーキの脳天にハンマーを勢いよく振り下ろすのであった

 

そんな艦娘達の様子を、遠巻きに見ていた戦治郎達は……

 

「お~お~、殴りおる殴りおる」

 

「大和と瑞鶴の一撃は重そうだな~……、まぁ当然っちゃ当然か~……、あの時の事を想起させられりゃぁ、誰だって怒るわな~……」

 

「大和の嬢ちゃんの方は、何かちょっと違う様じゃったが……、まぁワシが気にする事では無さそうじゃな」

 

暢気にこの様なやり取りを交わしていたのであった

 

 

それからしばらくして、今回の事件の首謀者であるグラーキに一撃を加えた事で、多少なれど気分が晴れた艦娘達と交代し、戦治郎達がグラーキに向かってどうして琵琶湖にいるのかについてや、何故この様な事件を起こしたのかについて尋ねてみたのだが……

 

「……あの件にサクサクルースが噛んでいると分かっていれば、私もこの様な事はせず、大人しくこの湖の中に引き籠っていただろう……」

 

グラーキが人間と深海棲艦の戦争に巻き込まれない様にする為に、日本は快適と言うイオッチの言葉を信じ、イギリスから態々日本に移住して来た事が判明した後、戦治郎が事件を起こした切っ掛けを尋ねた時、グラーキがこの様な事を呟いた為、戦治郎達は思わず顔を顰めるのであった

 

そう、先程のグラーキの発言からすると、如何やらグラーキがこの事件を起こした理由には、咲作が関わっている様に聞き取る事が出来るのだが、地球に来てまだ日が浅い咲作には、全くと言って良いほど心当たりがないのである。そしてその事は戦治郎達もよく分かっていた為、戦治郎達はグラーキの発言を聞いた瞬間、訝しむ様にその表情を顰めたのである

 

「グラーキよ、『あの件』とは一体何の事なんじゃ……?」

 

グラーキが言う『あの件』と言うものが気になった咲作が、全身から絶望感を漂わせるグラーキに向かってこの様に尋ねてみると……

 

「遂にボケたか、サクサクルースよ……。去年の6月辺りから、貴様は西日本で人間達の理性や道徳心、自制心や罪悪感を分解する事で大量の従者を作り出し、その従者達を日本各地で暴れさせているではないか。私はそれに対抗する為に、こうしてこの場所で自分の信者を増やしていたのだ」

 

「ちょっち待て、咲作が地球に飛来したのは確か今年の6月頃じゃぞ?」

 

「つか、それってどう考えても咲作さんの従者の増やし方じゃねぇだろ……?」

 

「……は?」

 

グラーキは呆れ返った様な様子で、咲作の問いに対して返事をするのだが、それを聞いた正蔵が、会話に割って入る様にして咲作が飛来した日時について口にし、それに続く様にして戦治郎がこの様な言葉を放ったところ、グラーキは信じられないと言った様子の表情を浮かべながら、思わず間の抜けた声を上げてしまうのであった……

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