「サクサクルースはあの件とは無関係だと……?では一体誰が……?いや、それよりもだ、何故あの件とは無関係なはずのサクサクルースが、態々本体である私の所にまで来て、私の従者集めを阻止しに来たのだ……?」
「そう難しい話ではなかろう、儂らの身内がお前さんの従者集めに巻き込まれそうになって、儂らに助けを求めて来たからじゃよ」
咲作が自分が抱えている問題とは無関係であると知ったグラーキが、その身をプルプルと震わせながらこの様な疑問を口にし、それに対して咲作の代わりに正蔵がこの様に答えたところ……
「従者風情が我々の話に口を挟むなっ!!」
正蔵達の事を咲作の従者であると思っているグラーキが、正蔵に話に割って入られた事に対して不快さを露わにしながら叫ぶと……
突如として轟音と共に異次元空間全体が震え、グラーキが埋まっている柱が豪快に吹き飛んでくのであった。轟音と衝撃が発生した直後、驚きの余り刹那に目を閉じ耳を塞いでいた一同が、一体何が起こったのかを確認する為に、轟音の発生元であるグラーキの柱の方へと視線を集中させると、そこにはジガルデパーフェクトフォルムの姿となり、グラーキの柱があった場所に向かって拳を真っ直ぐ突き出した正蔵の姿があったのであった。如何やら先程発生した轟音と衝撃は、咲作が柱を思いっきり殴りつけた為発生したものではないかと、それを見た者達はそう思い至ったのであった
「誰が誰の従者だと……?ふざけた事を抜かすのも大概にしておけ、この糞餓鬼が……っ!」
突然の出来事に誰もが驚愕する中、咲作は正蔵の事を従者呼ばわりしたグラーキに対して怒りを剥き出しにした様な口調で、心底忌々し気にこの様に言い放つ
「いいかグラーキ、よく聞くのじゃ……」
そう言いながら咲作は、殴られた理由が分からず目を白黒させるグラーキの方へとゆっくりと歩み寄り、グラーキから痛みだけを残して傷付いた事実を分解してその傷を癒すと……
「お前がワシの従者と言った正蔵はのう、ワシを孤独から解放してくれただけでなく、この空間にいては見る事の出来なかったものを数多くワシに見せ、ワシの凝り固まった古い価値観を見直す機会を与えてくれた、言わばワシの恩人に当たる人物なんじゃ……」
咲作はこの様に言葉を続けながら地べたに転がるグラーキの傍に立つと、ギチギチと音を立てながら右腕を引き……
「そんな正蔵がワシの従者な訳が無かろうがっ!!!」
そう言い放った直後、咲作の拳は再びグラーキに突き刺さり……
「ごっはぁっ!!?」
咲作の渾身の一撃をモロに顔面に受けたグラーキは、襲い掛かって来る激痛に耐える事が出来ず、思わず悲痛の叫びを上げてしまうのであった……
その後も咲作は、執拗なまでにグラーキを空間が震える程の勢いで殴りつけては、グラーキが死んでしまわない様に回復させてを繰り返し……
「うわぁ……、咲作さん、ブチギレてるな~……」
「あ~……、俺がガキの頃やってたお稽古事を馬鹿にした野郎共を、ボッコボコにした空の事思い出すな~……」
「提督を馬鹿にした不届き者達……、ですか……」
「大和さん、顔が凄く怖いです……」
「今咲作さんが怒っている理由は、戦治郎さんが言っている事と同じベクトルのものなのでしょうか……?」
「あの馬鹿タレ……、こっ恥ずかしい事を叫びおって……」
その様子を引き攣った表情で見ていた面々は、各々に思った事を口にし、名前を出された正蔵は少々恥ずかし気に、この様な事を呟いていたのであった
それからしばらく時間が経過し、咲作の両腕がグラーキの血液で染まり切ったところで、咲作はグラーキを殴る手を止め、片腕だけでグラーキ入りの柱を持ち上げ……
「さて……、お前さんからは聞く事も聞いた事じゃし、そろそろ今回の事件を引き起こしたお前さんに罰を与えようかのう」
「待てっ!待ってくれっ!!今のが私に対しての制裁ではないのかっ!?」
「黙れ小僧……っ!」
咲作はブリーフィングの際、戦治郎達と話し合って決めていたグラーキに科す罰の話を切り出し、それを聞いたグラーキは慌てた様子でこの様な言葉を口にするのだが、その言葉の続きは咲作のやたらドスの利いた声と、圧倒的な殺意に満ちた鋭い視線によってかき消されてしまうのであった……
「いいかグラーキよ……、古き良き京都の街だけでなく、日本全土を脅かそうとしていた貴様は、今後はワシが生み出した眷属達の監視の下、其処にいる由良と言う艦娘の奴隷として、残りの生涯を彼女と舞鶴鎮守府に尽くす為だけに使うがいい……」
グラーキが咲作の圧によって押し黙ったところで、咲作は淡々とした口調でグラーキに向かってこの様に言い放ち……
「な……っ!?わっ私が人間風情の奴隷……」
それを聞いたグラーキが、納得いかないとばかりに声を荒げた直後、即座に咲作の左腕が唸りを上げてグラーキを再び黙らせ……
「口答えするな、それとも何か?お前さんは人間の奴隷になるくらいなら、今此処でワシに殺された方がマシだと言うのか?もしそうであるならば、ワシは今すぐお前さんの全身を分解し尽くし、その存在を完全に抹消してやるが……、どうするんじゃ……?」
喚くグラーキに向かって、咲作はこの様に尋ねてみたところ、グラーキは咲作の気迫に完全に呑まれてしまい、結局グラーキは咲作の提案を呑み、由良の奴隷になって生き延びる事を選択するのであった……
因みにこの提案、考え出したのは戦治郎である。戦治郎がこの提案を思いついた切っ掛けは幾つかあり……
①翔がルルイエに行った時もそうだが、基本従属神以上の神話生物は人間を下等生物扱いしており、そんな人間に隷属させられるのは、神話生物的には屈辱だと思われるから
②咲作が被害者を生き返らせてくれてはいるものの、結局グラーキは殺る事犯ってしまっている為、落とし前をつける為に奴隷として罪を償ってもらいたいから
③桂島の提督の時もそうだが、安直な死刑は責任からの逃げと受け取れるから
④ゾア、エイブラムス、イオッチがいる長門屋や、ヴルがいる佐世保の様に、敵対する神話生物や強大な転生個体に対して、強力な神話生物をぶつける事で対処出来る鎮守府を増やしたいから
こう言った理由が重なった結果、戦治郎はグラーキを奴隷にして戦力として利用する事を思い付き、この様な提案をしたのである
因みに何故由良の奴隷にする事になったのかと言えば、この事件の詳細を知っている舞鶴鎮守府所属の艦娘は、現状由良と大淀の2人なのだが、大淀の方は長門屋に異動する事が確定している為、選択肢から外される事となったのである
又、由良は今回の事件が起きた場所の出身で、尚且つ自分だけでなく両親までもがこの事件に巻き込まれており、グラーキが罪を償うべき対象となっている事も、大きな理由となっている
この様な事情があった為、グラーキが仕えるべき主人は由良であるべきだと戦治郎が訴え掛け、それを聞いた由良は不安こそあるものの、戦治郎の言い分に納得し、グラーキの主人になる事を承諾したのである
こうして話が纏まったところで、柱から解放されたグラーキは咲作の手によって簡単に暴動を起こせない様にと、以前正蔵の記憶から自分の姿を作り出す際に知ったポケモンのヌメラの姿に変えられ、本来の姿に戻るには由良に『グラーキの黙示録』と言う名の全12巻……なのだが、現在12巻が紛失している為11巻からなる自作ポエム集を朗読してもらわなければならなくなってしまうのであった……
尚、このポエム集はグラーキにとって黒歴史である様で、本来の姿に戻る為に由良に朗読してもらった場合、もれなくグラーキが恥ずかしさのあまり悶絶する様になっている模様……
又、この時にグラーキは由良からグラーキのままだと可愛げが無いからと言う理由で、『グラグラ』と言う名前を与えられる事となるのであった
こうして、グラーキ改めグラグラが引き起こした一連の事件は解決し、戦治郎達はまだ休暇が残っている由良を残し、大将や神話生物対策本部の代表である翔に、本人の口から事情を説明してもらう為に、グラグラを連れて咲作の異次元空間経由で舞鶴鎮守府に帰還するのであった