※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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報告タイム

戦治郎達が舞鶴鎮守府に帰還する頃には、既に時計の針は21時を示しており、この時間には流石に大将も帰宅しているだろうと考えていた戦治郎達は、大将に対しての報告は明日行おうと思うのだったが、一行が執務室がある本庁の方へと視線を向けたところ、窓のカーテンこそ閉めてはあるものの、執務室にはまだ明かりが点いており、それに気付いた一行は大将がこの件の報告を聞く為に、態々自分達を待ってくれていたのだと推測すると、大将に対して感謝の念を感じながら急いで執務室へと向かうのであった

 

そして戦治郎達の推測通り、戦治郎達からの報告を待ってくれていた大将に対して、戦治郎達は先ずは感謝の言葉を述べた後、今回の事件の詳細について報告、それから今回の事件の首謀者であるグラーキ改めグラグラを紹介し……

 

「こいつは今回の事件を起こした罰として、由良に隷属する事が決定しました」

 

「……何故由良君なのかね……?」

 

「グラグラが由良の実家付近にある琵琶湖を拠点にし、由良や由良の両親まで己の従者にしようとしていた……、つまり由良達が危うくこいつの被害者になるところであった事や、由良が俺達に連絡をくれた事が今回の事件の解決に繋がった事、更に今回の戦いで、所謂神話技能と呼ばれる神話生物に対しての知識が、舞鶴鎮守府に所属する他の艦娘達以上に由良に身に付いた事や、既に退役するつもりである大将にこれ以上負担を掛けたり、退役すると言う覚悟を揺るがせる様な真似はしない様にしようと考えた結果、この様な決定になったんです」

 

「そう言う事なら仕方ないか……」

 

グラグラがどうして由良に隷属する事になったのかについて、大将が戦治郎に向かって尋ねてみたところ、戦治郎はハッキリとした口調でこの様に返答し、それを聞いた大将は戦治郎の言葉に納得したのか、目を伏せてこの様に呟くのであった

 

こうして大将への報告が終わると、戦治郎達は執務室から退出し……

 

「今回はホント疲れたわ……、戦治郎さん達はこの後も何かやるんだろうけど、私はこの疲れを明日に残さない様にする為に、この辺りで寝る事にするわ……」

 

心の底から気だるそうに言う瑞鶴と別れた後……

 

「よう、お疲れさん」

 

由良から連絡を受けた時、戦治郎達と共に食事を摂っていた関係で今回の事件の事を知るものの、艦娘達や戦治郎達転生個体の様に戦う力を持っていなかったが故に、舞鶴鎮守府に残る事になってしまった毅と戦治郎達の部屋の前で合流、それから戦治郎達はそのまま戦治郎と大和の部屋の中へと入って行き……

 

「……とまあ、これが琵琶湖近辺の行方不明事件の顛末だわ」

 

『成程……、そう言う事だったんですね……』

 

タブレットを使用した通信の準備を整えた戦治郎は、すぐさま神話生物対策本部の代表である翔に通信を繋ぎ、今回の事件の顛末を報告し、それを聞いた翔はこの様に答えながら、考え込む様な仕草をするのであった

 

「どしたよ翔、何か考え事か?」

 

『いえ、戦治郎さんの話を聞いて、ちょっと納得出来る事があったんです』

 

そんな翔の様子を見た戦治郎が、思わず怪訝そうな表情を浮かべながらこの様に尋ねたところ、翔はハッとした後姿勢を正し、戦治郎に向かってこの様な言葉で返事をするのであった

 

「そこ、詳しく」

 

翔の言葉を聞いた戦治郎が、今以上に不思議そうな表情をしながら、再び翔に向かってこの様に尋ねると、翔は今日この日、長門屋鎮守府建設予定地で起こった出来事について話すのであった

 

『実は今日、長門屋に沢山お客さんが来たんですよ。確か……、陽炎さん達と同じ施設出身の磯風さん達に、佐世保の加賀さん達だったかな?その中に旧支配者のヴルトゥームのヴルさんがいて、少々気になる事を言っていたんですよ……』

 

「あぁ、五十鈴が言ってた奴か」

 

『あ、ヴルさんの事は聞いてたんですか。それなら話が早いかな?それで文月教の教祖をやっている……』

 

「ちょっち待って?今何つった?文月教?教祖?どっこと?ヴルさんは対神話生物用兵器を開発してるだけじゃないのん?その辺おっちゃんに分かり易く教えて頂戴?」

 

『あ~……、そっちは聞いてないんですね……。今回の話はこの部分が結構重要なので、今から説明しますよ』

 

このやり取りの後、戦治郎は翔からヴルが文月教の教祖をやっている事と、文月教の信者達が活動の一環として佐世保の治安維持に貢献している事を聞かされると、思わずあんぐりと口を開け、愕然としてしまうのであった。まあ戦治郎の気持ちも分からなくはない、普通に考えれば旧支配者であるヴルは崇められる立場であり、誰かを崇める様な存在では無い筈なのである……。にも拘らず、この世界のヴルは文月教を開宗し、文月を神の如く崇めているのである……。もし神話技能を持っている者がこの話を聞けば、戦治郎と同じ様なリアクションをするか、知識と現実のギャップに発狂してしまう事だろう……

 

それはさておき……

 

『此処からはさっき言い掛けた事の続きになるんですけど、文月教の教祖であるヴルさんが言うには、文月教の皆さんが頑張って治安維持活動をやってくれているにも拘らず、佐世保での犯罪発生率は文月教が発足する前と今を比較しても、ほぼ変わっていないみたいなんですよ』

 

「ふむ……、翔の話を聞く限りだと、佐世保の犯罪発生件数がアホみたいに増えているって考えた方が良さそうだな……」

 

『ですね、それでどうしてこんな事になっているのかについて、ヴルさん達と一緒に話し合ったんですけど、この時は僕達が持っている情報がちょっと少なくて結論が出なかったんですよ……。ですけどさっきの戦治郎さんの話を聞いて、ある事を思い出したんです』

 

「ある事とな?」

 

『ええ、以前クトゥルフさんが東京の居酒屋で、ある旧支配者を見つけたと言っていたのを覚えていますか?』

 

「……っ!そうかっ!!確かにあの旧支配者だったら、こんな真似は容易に出来るはずだわっ!!!」

 

翔とタブレット越しに言葉を交わしていた戦治郎は、翔の口から出て来た言葉を耳にすると、横須賀にいる時にクトゥルフから聞いた話を思い出し、ハッとしながら勢いよく椅子から立ち上がり、夜中であるにも拘らず興奮した様に大声でこの様な言葉を発するのであった

 

「今しがた、旧支配者と言う単語が聞こえて来たのじゃが……、戦治郎よ、一体何について話しておったんじゃ?」

 

「あっ咲作さん、今翔と話をしてて、グラグラが対抗しようとしていた奴の目星が付いたんですよ」

 

その直後、旧支配者と言う単語に反応した咲作が、戦治郎達の会話に割って入りながらこの様に尋ね、それに対して戦治郎は落ち着きを取り戻しながらこの様に返事をするのであった

 

因みに咲作が此処にいる理由は、グラグラと共に神話生物対策本部関連の手続きを行う為であり、それに付き合わされる羽目になった正蔵は、戦う力を欲する毅から自分に稽古をつけて欲しいとせがまれ、暇つぶしがてら毅の身体能力を調べる為に、グラグラを用いてバスケットボールのドリブルを行い、毅に向かって自分からグラグラを奪ってみろと言い渡し、現在は毅と共に部屋の中で戯れていたりする

 

尚、ボールとして何度も床に叩きつけられ、激しく上下運動されたり回転運動されたりしているグラグラは、幾度となく襲い来る苦痛にその表情を歪めながら、吐き戻す事を必死になって我慢している模様

 

『この方がイオッチが言っていた咲作さん……、アザトースが生み出した外なる神の内の1柱……』

 

「む、お前さんが出雲丸 翔じゃったか?カメラ越しとは言え、顔を合わせるのは初めてじゃったな」

 

そんな中、咲作の姿を目にした翔が、目を丸くしながら驚き、思わずこの様な言葉を呟いたところ、その呟きを耳にした咲作は、そう言った後翔に向かって自己紹介を行い、咲作に自己紹介された翔は、慌てた様子で咲作に対して自己紹介を行うのだった

 

「さて、挨拶も終わった事じゃし、お前さん達が目星を付けた旧支配者とやらの、答え合わせをしようかのう」

 

「その言い方だと、咲作さんは端から目星が付いてたんですか?」

 

「当然じゃ、伊達や酔狂で億単位で生きとらんわい」

 

『流石です……』

 

翔と咲作が挨拶をし終えたところで、咲作がこの様な事を言いだし、その口調に違和感を覚えた戦治郎が、咲作にこの様に尋ねてみると、鎮守府に戻った辺りからジガルデ50%フォルムにフォルムチェンジしていた咲作は、身体から生やした触手でサムズアップしながらこの様に答え、それを聞いた翔は苦笑しながらこの様に呟くのであった

 

さて、このやり取りの後、戦治郎達は声を揃えて問題の旧支配者の名を口にする事になり……

 

「良いか?せーの……」

 

「「『イゴーロナク』」」

 

咲作の合図に合わせて、戦治郎達は西日本に犯罪者を撒き散らしている犯人の名を、悪を司る旧支配者であるイゴーロナクの名を一斉に口にするのであった……

 

その直後の事である、正蔵達にバスケットボール扱いされていたグラグラが、遂に限界を迎えてしまい、戦治郎と大和の部屋に吐瀉物を撒き散らしたのは……

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