※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

561 / 655
九州治安維持強化令

戦治郎達が今回の事件の裏に潜む、日本の治安悪化の元凶であるイゴーロナクの名を口にし、それと同時にグラグラが盛大にゲロを吐いてから間もなくして、正蔵達に茶を出そうとしたものの茶葉が切れている事に気が付き、酒保まで茶葉を買いに行っていた大和が、急いで戻って来た為か若干息を切らして部屋に戻って来ると……

 

「それとだ、おめぇらはこの後すぐ、俺達の部屋の中にゲロの臭いが残らない様、しっかり掃除するんだぞ。でなけりゃ俺と大和がゲロの臭いで眠れなくなっちまうかんな」

 

「この程度で吐き戻すとは……、何とも根性の無い神話生物じゃのう……」

 

「俺、掃除用具取って来るわ……。今回ばかりは、俺達が絶対悪い立場だからな……」

 

「何故私まで……、私はどちらかと言えば被害者だろうに……」

 

其処には床に広がる吐瀉物を前にして正座させられる正蔵と毅とグラグラの姿と、まるで鬼の様な形相で、吐瀉物を挟む様にして正蔵達の前に立ち、自身の右手で背中を摩る戦治郎の姿があり、戦治郎が2人と1柱に向かってやや怒気の籠った声でこの様な事を言うと、正蔵とグラグラは正座したままこの様な愚痴を零し、心底申し訳なさそうな表情を浮かべている毅は、そう言うとゆっくりと立ち上がり、掃除用具を取りに廊下にある掃除用具入れの所へ行こうとするのであった

 

「あの……、これは一体どう言う状況なのでしょうか……?」

 

「おかえりなさい大和さん……、この状況に関しては、私の方から順を追って説明しますね……」

 

その光景を目の当たりにした大和が、非常に困惑しながらそう言うと、その声に気付いた大淀がそう言って、どうしてこの様な状況になってしまったのかについて説明を開始するのであった

 

取り敢えずグラグラがゲロを吐いた原因については、既に情報が出ている為此処では割愛するが、それ以降の話……、戦治郎が如何して自分の背中を摩っているのかについて触れようと思う

 

グラグラが戦治郎達の部屋の中にゲロを撒き散らした直後、戦治郎はすかさず毅との間合いを詰め、その脳天に毅が死なない程度の力を込めた拳骨を振り下ろし、更に正蔵に酷い扱いをされ、ゲロを撒き散らしたグラグラにも追い打ちをかけるかの如く拳骨を浴びせ、そして最後にゲロ撒き散らしの元凶である正蔵にも殴りかかろうとしたのだが……

 

「100年早いわぁっ!!!」

 

この掛け声と共に正蔵は戦治郎の腕を掴み取ると、柔道の投げ技の1つである山嵐を仕掛け、見事戦治郎を投げ飛ばし返り討ちにしてみせたのである……。その様な事があった為、戦治郎は余りにも咄嗟の出来事であった事もあり、上手く受け身が取れず背中を強く床に打ち付けてしまい、こうして痛む背中を摩っているのである……

 

尚この時、ゲロの上に戦治郎を叩きつけるのは流石に可哀想であると言う、正蔵の咄嗟の判断により、戦治郎の身体はゲロの無い所に叩きつけられており、そのおかげもあってか戦治郎の身体はゲロで汚れる事無く、ゲロで手を汚す恐怖に怯える事無く、戦治郎は安心して背中を摩っていたのであった

 

さてその直後、流石にこの仕打ちは理不尽過ぎると言う事で、正蔵はニャルすらも怯ませた翔のEyes of(恐怖)をタブレットの画面越しに受けて身動きが取れなくなったところで、呆れた様子の咲作と尚もEyes ofを使用する翔からお叱りの言葉をもらう羽目になり、その結果渋々と言った様子で戦治郎の説教を受ける事になるのだった

 

因みにこの時、何故正蔵が翔と咲作の言葉を素直に受けたのかと言えば、咲作は先刻の事件で事象すらも歪めると言う、正蔵でも抗う事が難しいであろう事を平然とやってのける姿を見た事で、咲作は下手に怒らせるべきではないと考える様になったから、翔に関してはもしかすればアンダーゲートと日本帝国海軍がコラボイベントを開催する様な機会が訪れ、その際に翔からコラボ限定メニューの案を出してもらう事で、アンダーゲートの売り上げに貢献してもらえる可能性があり、その時に必要な交渉をスムーズに行う為に、翔の機嫌を損なう様な事は悪手であると、その様な可能な限りしない方がいいと判断したからである

 

その後正蔵達は……

 

「いいか馬鹿タレ共、夜中に室内で暴れるな、どうしても騒ぎたいのなら外でやれ」

 

戦治郎からこの様なお叱りを受ける事となり、その後は大和が目にした通りと言った感じの流れとなっているのであった

 

こうして大淀からこの部屋で起こった出来事について説明を受けた大和は、正蔵の自由人っぷりに苦笑しながらも、毅と共に掃除用具を取りに廊下に出ようとしたのだが……

 

「ふむ、正蔵達も取り敢えずは反省しとる様じゃし、今回はこのくらいにしておいてはどうじゃ?」

 

「ぬ?それってどう言う事です?」

 

その直後に咲作がこの様な事を言いだし、その言葉の意味がよく分からなかった戦治郎が、不思議そうな表情を咲作に向けながら、この様に尋ねてみたところ……

 

「こう言う事じゃよ」

 

正蔵はそう言うと身体から2本の突起が付いた触手を1本生やし、突起同士を指を鳴らす様に擦り合わせるのであった。するとどうだ、先程まで戦治郎達の部屋を汚していたグラグラのゲロがみるみる内に消滅していき、更には室内に充満していたゲロの臭いまでもが、まるで嘘だったかの様に消えてなくなってしまうのであった

 

『これは……っ?!』

 

その様子を画面越しに見ていた翔が、驚きの余り目を丸くして思わずそう叫ぶと……

 

「事象を歪める程の力を使って、ゲロ掃除とはたまげたなぁ……」

 

「セットで悪臭の原因になっとる物質も、素粒子レベルで分解しておいたぞい!」

 

至極しょうもない事に凄まじい力を使った咲作に対して、戦治郎は呆れた様子でこの様な事を言い、それを聞いた咲作は、ドヤ顔に触手によるサムズアップを添えながら、何処か自慢げにこの様に返事をするのであった

 

この後翔は、戦治郎から咲作が何を行ったのかについて説明を受け、その内容の凄まじさに思わずドン引きしながら咲作に視線を向け……

 

「仕方ないじゃろう、ワシらが真剣な話をしている背後で、正蔵達がヒーヒー言いながらゲロ掃除しておったら、集中して話が出来んじゃろうが」

 

翔の視線を受けた咲作は、やれやれと言った感じの素振りを見せながら、この様な言葉を口にするのであった

 

 

 

こうして咲作のおかげで部屋の中が綺麗になったところで、正蔵は自分に稽古をつけて欲しいとせがんでいた毅を引っ張って外へ出て行き、戦治郎達は先程の話を再開し、話し合いを始めるのであった

 

「確か今回の事件の切っ掛けを作った犯人は、今の日本の治安悪化の原因を作り出していると考えられる旧支配者、悪の神とも言われてるイゴーロナクだった……ってとこだったっけか?」

 

『ですね、クトゥルフさんが言うには、怪傑ズインことムサシさんが関東地方で頑張った結果、自分の手足となる信者や食糧になる犯罪者が関東地方では激減してしまい、それを切っ掛けにイゴーロナクは別の都市に移動して活動しようと考えていたらしく、同じ旧支配者であるクトゥルフさんにこの事を愚痴ったところで踏ん切りが付いたのか、覚悟を決めて行動を開始したらしいですよね……』

 

「グラーキやヴルトゥームの話から考えると、如何やらイゴーロナクの奴は西日本の何処かにに潜伏しておる様じゃのう」

 

『現状イゴーロナクが潜伏している可能性が高いのは、恐らく九州地方の何処かじゃないかと思います。ヴルさんと話し合った後、僕は剛さん経由で運よく福岡の陸軍駐屯地に残っていた弓取さんから、日本全土の犯罪発生率に関するデータをもらったんですけど、西日本の犯罪発生率が軒並み上昇していて、特に九州地方は有り得ないくらいの勢いで、犯罪発生件数が増えているみたいなんです』

 

「……ほぼ九州の何処かで間違いないのう」

 

「九州は大陸に近い事もあって、チャイニーズマフィアとかが流れ込んで来たりするからな……。それによって地元のヤクザも海外のマフィアを日本から追い出そうと躍起になって、そこから周囲の治安悪化が進む羽目になると……。そうなると信者になる犯罪者が欲しいイゴーロナクからしたら、九州は環境が整っていると言えるだろうから、活動拠点を構えるならもってこいの土地だわな……」

 

「それ以外にも、正蔵が言っておった成金達も、自分達の私兵を手にする為に暗躍し、犯罪発生率に拍車をかけているのかもしれんな……」

 

『それに便乗して、今まで潜伏していた犯罪者達も、ここぞとばかりに活動を開始して、更に治安が悪化する、と……。これもう負のスパイラルが完全に出来上がっていますね……』

 

戦治郎達は真剣な表情を浮かべながら、重い空気の中この様なやり取りを交わした後、頭を抱えながら深い溜息を吐くのであった……

 

「こりゃ思った以上にデカイヤマかもしんねぇな……」

 

『この規模になると、今の僕達だけじゃどうしようもないですね……』

 

「ワシも神話生物関連の事件と言う事で、出来れば力を貸してやりたいところなんじゃが、如何せんインド洋で暴れておる連中を野放しにしたままには出来んからのう……。他にも正蔵の仕事の手伝いもあるもんじゃから、尚更のう……」

 

「くっそ、俺が提督になるまでは、長門屋の戦力を使って事件解決の為に動く事も出来ねぇし……、この件に関して現状動けるのが、翔達神話生物対策本部と弓取さん達九州の陸軍、それにヴルさんが率いてるって言う文月教だけなのか……」

 

『こうなったら仕方が無いです、僕の方からヴルさんと弓取さんに今回の話し合いの事を伝えて、現状動かせるメンバーだけで解決までは至らなくても、これ以上問題の規模を大きくしない様に、やれる事をするしかないですね……』

 

こうして今回グラグラが引き起こした事件によって明るみに出た、イゴーロナクが現在進行形で引き起こしている事件についての話し合いは終わり、それからすぐに翔は先程自分が言った通りにこの事を弓取とヴルに伝え、旧支配者であるイゴーロナクが事件を起こしている事もあって、翔は神話生物対策本部の代表として『九州治安維持令』を発令し、戦治郎が長門屋鎮守府に着任するまでの間、イゴーロナクによる被害をこれ以上拡散させない様、3つの組織で協力し合って九州の治安維持に尽力するのであった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。