「佐世保近辺の犯罪発生件数の増大……、ですか……」
「そうだ、我々文月教教徒が文月の『お願い』に従い、犯罪防止の為に地域の巡回などの治安維持活動をしているにも拘らず、佐世保方面では犯罪発生率は文月教が発足する前とほぼ変わらっていない、犯罪発生率を算出する際に使用する犯罪発生件数が、時が経つに連れて加速度的に増えて来ているのだ」
ヴルの口からヴルがこの長門屋鎮守府(張りぼて)に来た理由の1つ、佐世保の犯罪発生件数増加の話を聞いた光太郎は、翔の案内で通された食堂の奥の席に着き、真剣な表情を浮かべながら、ヴルに話の内容を確認する為にこの様な事を口にすると、ヴルは静かに頷き返しながら、この様に返答するのであった
「実際、休暇中に車で鎮守府の誰かと出掛けた時、危うく車を盗まれそうになった事があるわ……」
「確か赤城さんと出掛けた時の事だったか……、買い物をする為に駐車場に車を停め、店内に入ってしばらくしたところで、怪しい連中が加賀さんのWRXと赤城さんのフェアレディZに群がり始めて、鍵を壊そうとしていたんだったな……」
「あの時は肝が冷えたわ……、もしあの時赤城さんが気付いてくれていなかったら、大変な事になるところだったわ……」
その話を裏付けするかの如く、加賀が渋い顔をしながらこの様な事を言い、そんな加賀の言葉を聞いた長月が、事情を知らない長門屋のメンツに詳細を教える様にこの様な事を口にすると、加賀はより一層渋い表情を浮かべながら、この様な事を言うのであった
尚……
「赤城さんはZなのか……」
「赤城はホンダ派ではなかったか……、残念だ……」
加賀の話を聞いたシゲと、ふと耳に入ったヴルの発言が気になり、エイブラムスとの話し合いを中断してこちらの話に参加する事にした空は、赤城が日産のフェアレディZのオーナーである事を知ると、少々残念そうにこの様な事を呟き……
「いや、そこは車上荒らしが店の近くの駐車場に堂々と現れて犯行に及ぶと言う、佐世保の治安を心配するべきところではないのか……?」
そんな2人の呟きを聞いた、まだ2人に対して自己紹介も行っていない磯風が、思わずツッコミを入れるのであった
「あそこの2人の事は放っておくとして、ヴルさんはその原因について何か心当たりはありませんか?」
「済まないな、文月教の諜報部が全力で調査を進めているのだが、現在はまるで手掛かりらしきものは掴めていないんだ……」
「諜報部がある宗教とか、おっかねぇッスねぇ……」
「文月教は凄いよ……?情報集めをする諜報部以外に暴徒鎮圧用の特殊部隊とか、凶悪犯罪を秘密裏に解決する暗部とかもあるんだよ……?しかもその構成員は元々ヴルの親衛隊クラスの信者だった火星人みたいで、戦闘技術も人間離れしている上に、武装もヴルが開発した兵器で固めてるんだよ……?まあ、大多数は佐世保市の人達なんだけど、兎に角この辺りの戦力がホント凄まじい事になってるんだ……」
「生産性こそ劣っているものの、1つ1つの品質ではクトゥグアのところの兵器を上回る、ヴルトゥームの兵器で固めているのは恐ろしいンゴねぇ……」
「その戦力を深海棲艦に……、あぁ、そうしたら世界のバランスがおかしくなっちゃうんでしたね……」
佐世保鎮守府の車事情で盛り上がるシゲ達を放置して、光太郎がヴルに対してこの様な質問をしたところ、ヴルは首を横に振りながらこの様に返答し、それを光太郎の傍で聞いていた護が、その表情を引き攣らせながらこの様な事を言えば、文月教誕生の瞬間を知る皐月が文月教の構成員について呟く様にして話し、それを聞いたイオッチが戦慄しながらそう言うと、今度は明石が何かを提案しようとするのだが、横須賀にいる時に戦治郎達から聞かされた話を思い出し、自身の提案をすぐさま撤回するのであった
「まあこう言った事情もあって、もう少し
「それで光太郎さん達にヴルの事を紹介するついでに、光太郎さん達にもちょっとだけ力を貸して下さいってお願いしに来たの~」
その後、ヴルがこの様な言葉を口にし、それに続く様にして文月が困った様な表情を浮かべながら、光太郎に向かってこの様な事を言うのであった
「話を聞いている限りだと、事態は相当深刻な様だね……。それにこの問題を放置していると、最悪佐賀県にも悪い影響が出てしまいそうだし……」
「ヴルとやら、1つ聞いておきたい事があるのだが、先程皐月が言っていた暗部が処理していると言う凶悪犯罪と言うのは……」
「当然、行方不明事件だけでなく、強盗殺人の様なものも含まれている」
厨房から料理を持って来た翔が、ヴル達に対してこの様な事を言い、それに空が続く様にして質問を投げかけ、ヴルがこの様に返答した瞬間、場の空気が一瞬にして張り詰め、こう言った空気にまだあまり慣れていない磯風達は、場の空気が変わるや否や、辺りに漂う緊張感に圧倒され、思わずその身をビクリを震わせるのであった
「これは一刻も早く解決するべきだね……」
「うむ、翔鶴が長門屋に着任した後も、佐世保の治安がこの様な調子では、おちおちデートにも誘えんからな……」
「空さん……、ブレないですね……。まあ俺としても、自分より弱ぇ奴を狙った犯罪とか、気に食わねぇ事この上ねぇからな……」
「僕としても、何としてでもこの問題は解決したいね……。これじゃあゾアと約束した、佐世保のB級グルメ巡りが出来なくなりそうだし……」
そんな中、光太郎、空、シゲ、翔が口々にこの様な事を言い……
「うわぁ……、何か皆、佐世保の人達が困ってるからとか言う理由じゃないし……」
空達の発言を聞いた水無月が、やや引いた様子でこの様な事を呟くと……
「生憎、自分達は世界のピンチ云々よりも、自己都合を優先するッスからね~」
そんな水無月に向かって、ニヤニヤしながら護がこの様な言葉を口にし、水無月を更に引かせてしまうのであった……
その後、光太郎達は話し合いの末、ヴルからの要請を受ける事にするのだが……
「問題は、その問題解決の為に、どのくらいこちらの人を割くかだね……」
光太郎が少々困った様な表情をしながら、この様な事を口にする。事実、今の長門屋は建物の見た目こそは、輝の能力のおかげで完成しているものの、中身の方はまだまだ半分くらいしか出来上がっていない状態なのである。なのでその件に人を割き過ぎてしまうと、折角輝が頑張って完成予定を早めてくれたにも拘らず、どうしても鎮守府の完成が予定より遅れてしまう事態になってしまうのである。それ故、この中の誰よりも正義感が強く、この問題を早期に解決したいと考える光太郎は、どのくらいこの件に人を割いて良いものかと、本気で悩む事となってしまったのである
すると……
「それなら丁度いい奴らがいるぞ」
空がこの様な事を言いながら、食堂でお茶を啜りながら話し合いが終わるのを待っていた、エイブラムスの方へと視線を向けるのであった
「喜べエイブラムス、お前達に新しい仕事を与えてやろう。しかもこの仕事は労働基準法などの影響を受けない仕事だから、早出も残業も休出もやり放題だぞ」
「その話、乗ったでぃしゅっ!!!さぁその仕事の内容について、しっかりハッキリ細かく説明するでぃしゅっ!!!」
その直後、空は仕事に飢えたエイブラムスに向かって、声高らかにこの様に言い放ち、それを聞いたエイブラムスは、まるで飛び掛かる様な勢いで空に接近し、空から仕事内容の詳細を聞き出そうとするのであった
そうして空から仕事内容を聞いたエイブラムスは、大急ぎで織り手達の溜まり場へと向かい、空から新たに与えられた仕事……、佐世保中に織り手達を派遣し、文月教の諜報部と協力して情報収集を行う事を織り手達に伝え、早速一部の織り手達を佐世保に派遣するのであった
そんな中……
「……どうして佐世保だけで、こんな事が起きてるんだろう……?福岡の方とかどうなってるんだろ……?」
「確かにそうなのだ……。翔、我は福岡の方の犯罪発生率についても調べるべきだと思うのだが……」
「そうだね……、ちょっと調べてみようか。確か福岡には、剣持さんがいた陸軍の駐屯地があったはずだし、少しズルいかもしれないけど、神話生物対策本部の代表の肩書を使って今の福岡の犯罪事情を教えてもらおう」
翔はふと頭の中に浮かんだ事を、自分の頭の上に乗ったゾア以外の誰にも聞こえない様な声量で呟き、それを聞いたゾアがこの様な提案をすると、翔は小さく頷いて見せた後、この様な言葉を口にするのであった