光太郎達がヴルの頼みである佐世保の犯罪発生件数増加の原因の調査に、協力する旨を伝えた後、彼らは翔が客人達の為に準備した料理に舌鼓を打ちながら、各々の推測を交えて犯罪発生件数増加の原因について話し合うのだが、この時点ではあまりにもお互いが持つ情報量が少なすぎた為、結局結論が出る事は無かったのであった
因みに……
「そう言えばさ、今回の件って戦治郎さんに話を通さずに、光太郎さん達の方で勝手に決めちゃってよかったの?」
ふと思い出したかの様に、皐月が濃厚な肉の味がありながらも、大根おろしと翔特製の和風タレのおかげで脂っこさを感じさせず、生姜の香りとさっぱりした口当たりを楽しめる特製の和風ハンバーグを頬張りながら、光太郎達がヴルに協力する事を決定した事について疑問を口にする
「それについてなんだけど、ヴルさんが神話生物である以上、今回の件は神話生物対策本部の預かりになるんだ。で、神話生物対策本部の代表である僕は、神話生物関連の出来事に関してだけは、捜査と解決では警察以上、外交と戦闘では陸軍と海軍の元帥以上の権限を持っていて、僕がOKを出せば、例えこの鎮守府の提督が戦治郎さんだったとしても、戦治郎さんは僕が決定した事に従わなきゃいけない決まりになってるんだ」
「翔さんは料理の腕だけでなく、持っている権限も凄いのですね……」
「基本的に神話生物と言うものは、存在しているだけでもとてつもない脅威になるンゴ。特に外なる神クラスともなれば、人間とは大きくかけ離れた価値観を持っている奴も多く、最悪会話が成立しないで流れで世界規模の戦いが始まる可能性もあるンゴ。んで翔はそんな危なっかしい連中の集まりの1つであるルルイエと、人類との架け橋となってくれているンゴ、だからこのくらいの権限を持ってないとやってられないはずンゴ」
そんな皐月の発言に対して、翔は自身の料理を満喫してくれている皐月に向かって、優しく微笑みかけながらこの様に返答をし、それを聞いた秘伝のタレによって旨味を最大限に引き出された、色とりどりの新鮮な刺身がたっぷりと乗った海鮮丼のオカワリを、翔の手伝いの為に食堂に来ていた鳳翔から受け取る浜風が、驚きながらこの様な事を言えば、それに対して様々な茸とやや厚めに切られたベーコンを、食欲をそそる芳醇な香りを辺りに振りまくチーズが優しく包み込んだピザを食べていたイオッチが、翔の代わりにこの様に返答するのであった
「ウチとしては、翔さんが持っちょる権限云々よりも、その料理のレパートリーの多さの方が気になるんじゃが……」
「翔は本当に凄いのだっ!その気になれば和食だけではなく、世界三大料理のフルコースも単独で作り上げ、更にはサバイバル食も美味しく作り上げてしまうのだっ!」
そんな中、目の前のテーブルにこれでもかと並べられた、翔達が自分達の為に作ったと言う古今東西の様々な料理の群れを目にした浦風が、愕然としながらこの様な事を口にすれば、それを聞いたゾアが何処か自慢げにこの様に返答するのであった
さて、この場にいる誰もが、翔の料理を笑顔を浮かべながら満喫する中……
「そう言えば、長門屋の皆さんに1つ聞きたい事がありました」
白銀に輝く白飯が山盛りに装われた茶碗を手にした加賀が、ふと思い出したかの様にこの様な事を言い、それを耳にした長門屋の面々は一旦会話を止め、加賀の方へ視線を集中させると、静かに加賀の言葉を待ち始めるのであった
それからそう時間も掛けず、加賀が口にした言葉を聞いた長門屋の面々は、それはそれは不思議そうな表情を浮かべる事となるのであった
「長門屋の皆さんは、赤城さんと金剛さんの改修に関して、どのくらいの知識をお持ちなのですか?」
「「「「「……」」」」」
加賀が長門屋の面々に対してこの様な質問を投げかけた直後、佐世保鎮守府所属の艦娘達が一斉に黙り込み、その質問の中に登場した赤城と金剛の改二改修及び改二丙改修に直接携わったヴルが、無言で加賀に向けて険しい視線を向ける……
何故佐世保の面々が、加賀の言葉に対してこの様なリアクションを取ったのかと言えば、佐世保鎮守府の面々は赤城と金剛が今あるデータ以上の改修を施されている件については一応は知ってはいるのだが、その詳細……、兼継が如何して赤城改二と金剛改二丙の改修データを持っているのかについてや、兼継が何者なのかに関しては一切知らされておらず、更にはこの件に関しては秘書艦である赤城や金剛から、例え信用出来る相手であっても決して口外しない様厳命されている為、常に上記の2つの疑問を頭の中に抱えながら、艦娘生活を送っている状況にあるのである
そして2人の改修に関わっているヴルは、兼継本人から裏で細かい事情を聞かされており、もしこの事が誰かにバレようものならば、今後一切文月と関われない様にすると脅しを掛けられている関係で、今にも秘密をバラそうとしている加賀に対して、この様な態度を取ったのである……
「金剛は改二まで、赤城は改が限界じゃなかったか?」
この様な事情から、佐世保の面々が辺りに緊迫した空気を漂わせる中、シゲが不思議そうにこの様に返答したところ……
「……やはりそうですよね、変な事を聞いてすみませんでした」
加賀はシゲの言葉を聞くと、そう言って深々と頭を下げ、その様子を見ていた佐世保の面々は、ホッと胸を撫で下ろしながら緊張の糸を解くのであった
尚、加賀が何故長門屋の面々に対してこの様な質問をしたのかについて、長月が帰りがけに加賀に尋ねてみたところ……
「提督が持つデータが、長門屋の皆さんからの情報ではない事を確認したかっただけよ」
加賀は表情を変える事無く、平然と長月の問いに対してこの様に返答するのであった
さて、そんな加賀の真意なのだが、如何やら加賀はこの謎多き提督である兼継の正体を突き止め、独断で必要性を感じたのならば、兼継の事を戦治郎達に報告しようと考えているのである。まあ加賀がこの様に考えてしまうのも無理はない、今の加賀達からしたら、兼継はあまりにも怪し過ぎる存在であり、もしかしたら兼継が持つ情報は、エデンの様な敵対勢力の転生個体からもたらされたものではないかと……、加賀はそう考えたのである
尤も、加賀の考えは大外れで、今回の件をネタに提督に詰め寄り、真実を知る事となった加賀は、この事を戦治郎達に知らせようものならば、長門屋が大いに混乱してしまう可能性があると考え、兼継の事は戦治郎達が直接兼継と会うその時まで、秘密にする事を決意する事となるのであった……
尚その時、戦治郎は生き別れた弟と再会の喜びを分かち合うと同時に、義妹が一気に3人も増えてしまったと言う事態に、驚きを隠せない状態になってしまうのだが、これについてはまだまだ先の話になる事であろう……
それはさておき、こうして食事を終えた面々が、長門屋鎮守府(張りぼて)の内部を案内しようと、翔達食堂組を置いて食堂を後にしたその時である……
「さあ野郎共っ!!準備はいいでぃしゅかーーーっ!!?」
車庫の方からこの様なエイブラムスの叫びが聞こえ、誰もが車庫の方へと視線を向けると、車庫の中から8本の脚の内、最前列の2本の脚の先端に大きなドリルをそれぞれ1つずつ、そしてそれよりも巨大なドリルを砲塔部に1つ、車体の前面に2つ取り付けた、陽炎のペーガソスの様な何かが姿を現すのであった……
「あれは……、陽炎さんのペーガソスですか……?」
横須賀にいる時にペーガソスの事を見ていた明石が、思わずこの様な事を口にすると……
「いや、あれはペーガソスではない。あれは俺がペーガソスを基に作り上げたエイブラムス用の地底調査及び採掘作業用パワードアーマー……、その名も『モリブデン・アーマー』だ」
空は明石の言葉を否定した後、この様な事を口にするのであった