※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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クロムモリブデン鋼

「作業用パワードアーマー……ですか……?」

 

「作業用と言う事は、あれは戦闘には使えないと言う事なのか?」

 

空の言葉を耳にした明石が、モリブデン・アーマーの製作者である空に向かってこの様な事を言い、それに磯風がこの様に続くと……

 

「いや、エイブラムスの話によると、如何やら地底には数多くの神話生物が住んでいるらしいのでな、作業中にそれらの縄張りに侵入した際に発生するであろう戦闘に備え、装甲は地中の圧力だけでなく、神話生物の攻撃にも耐えられる様強化しているし、削岩用ドリルも神話生物の皮膚や装甲を貫ける様、強度の高い材質を使用して作り、その出力も大幅に強化している。尤も、武装はあのドリルくらいしか付いていないがな……」

 

空はそう言って磯風の発言を否定する

 

因みに件のモリブデン・アーマーだが、陽炎のペーガソスには付いていた車体後部のサブ砲塔が取り外された代わりに、鉱石などを大量に積載出来るコンテナが取り付けられていたりする

 

「あの……、空さん……、1つ聞いてもいいですか……?」

 

そんな空の発言を聞いた浜風が、オズオズと挙手にながら空に発言権を求め、それを空が認めると浜風はこの様な質問をするのであった

 

「エイブラムスさんは空さんと戦って負けた結果、この鎮守府に来る事となったと戦治郎さんから聞いていたのですが、そんな強力そうな物をエイブラムスさんに与えてしまえば、エイブラムスさんが空さんに対して謀反を起こしてしまうのではないでしょうか……?」

 

「ああ~……、それならアレの装甲をよく見てみな……」

 

空に向かって浜風がこの様な質問をしたところ、空の代わりにシゲがこの様な事を言って、浜風達にモリブデン・アーマーの装甲をよく見る様促し、浜風達がそれに従って目を凝らしてモリブデン・アーマーの装甲を観察すると……

 

「……何かアレ、所々に修復した様な跡があるんですけど……?」

 

「それ見たら、大体察しがつくんじゃないッスか?」

 

明石がモリブデン・アーマーの装甲に修復した跡がある事に気付き、空に向かってこの様に尋ねたところ、今度は護が空の代わりに赤しの質問に返答するのであった

 

そう、エイブラムスはこれを空から譲り受けたその直後に、下克上と称してモリブデン・アーマーを装着し、空に襲い掛かったのである。尤も、それでも空との戦力差を埋める事が出来なかった様で、エイブラムスはモリブデン・アーマーごと、クトゥルフ並の戦闘力を持つ空にボッコボコのベッコベコにされてしまったのである……

 

尚この時、エイブラムスを打ちのめした空は……

 

「製作者であるこの俺が、そのアーマーの弱点を把握していないとでも思ったか?」

 

地に伏せ呻き声を上げるエイブラムスに向かって、この様な言葉を掛けていたのだとか……

 

さて、こんなやり取りをしている間に、エイブラムスは空達が見ている事に気付いていなかったのか、特に空達に話し掛ける様な事はせず、そのまま前脚のドリルで地面に穴を開けて地中に潜り込んでその姿を消してしまい、それを見届けた空達は鎮守府(張りぼて)の案内を再開するのであった

 

 

 

さて、ここで空がモリブデン・アーマーを作った本当の理由について話しておこう

 

このモリブデン・アーマーには地底調査と採掘作業以外に、もう1つ仕事が存在しているのである。それがどの様な内容であるかと言うと、簡単に言えば空がブレスレットを用いて変身するクロム・ドラゴンの戦闘サポートと、モリブデン・アーマーに搭載されているUSBメモリ型のクロム・ドラゴンの強化パーツである『モリブデン・チップ』を、妨害の為の地上からの攻撃を避ける為に地中を移動する事で、チップを守りながら確実に空の下に届けると言うものである

 

先程話の中に登場した『モリブデン・チップ』とは、空がエイブラムスとの戦いの際に使用した『アイアンシンタリンガー』に、空のブレスレットに搭載された『クロム・チップ』と共に挿入する事で、機動力と装甲貫通力が大幅に強化されたクロム・ドラゴンのもう1つのフォームである『アロイ・ドラゴン・クロムモリブデン』にフォームチェンジする為に必要なものなのである

 

因みにモリブデン・アーマーのドリルの出力が上がっているのも、このチップがモリブデン・アーマーのドリルや、本体のエンジンの最大トルクを強化してくれているからだったりする

 

ここで如何して空はそんな大切なチップを、日頃から携行せずにエイブラムスに預けているのかと言う疑問が浮かぶが、これに関してはベルトの脇にチップ専用のホルダーを取り付け、そこにチップを差して携行していた場合、何かの拍子にチップを紛失してしまうかもしれない事と、戦闘中にホルダーからすっぽ抜けたチップを誤って破壊してしまうかもしれない事、そして敵からチップを奪われてしまう事を警戒した結果、この様な形にした方が間違いは少ないだろうと言う結論に至り、クロム・ドラゴンの変身に欠かせない『クロム・チップ』はブレスレットに、アロイ・ドラゴンへのフォームチェンジに必要不可欠な『アイアン・チップ』はアイアンシンタリンガーに、脚力強化と腐食耐性強化を促す『ニッケル・チップ』はデフォルトでクロム・ドラゴンの右ふくらはぎ部分に、推進力強化と腕力強化を促す『コバルト・チップ』は空の艤装であるライトニングⅡに、武装の威力強化と装甲の耐久性強化を促す『タングステン・チップ』はテキサスに搭載される事となったのである

 

因みに今まで挙げて来たチップは、全てが既に空の手によって作り上げられ、現在空が実際に使用しているものであり、これら以外にもまだまだ開発中である『バナジウム・チップ』、『カーボン・チップ』、『シリコン・チップ』などがある模様

 

又、モリブデン・アーマーは水上や水中での作業は出来ない仕様になっており、空はその問題を解決するべく、鎮守府に必要な機材を作る合間を縫って、新たなエイブラムス用のパワードアーマーを作っているのだとか……

 

さて、こうして着々と作られていくクロム・ドラゴンの強化パーツや、エイブラムスが装着するパワードアーマーの類は、後に九州北部で発生する『喰らう手事件』や、地球を飛び出し宇宙で発生する『ヒアデス星団カチコミ事件』において活躍する事となるのだが、その詳細については時が来た時に話す事としよう……

 

 

 

話は戻り、空達は客人である磯風達を連れて農場を作る予定となっている土地を説明しながら通過し、他の鎮守府にはまず無いであろう石油コンビナートの見学を行い、それらが終わると入渠施設へと案内し、彼女達にエイブラムスとの戦いの際に見つかった湯脈から配管して引っ張って来た事で出来た温泉に入り、石油コンビナート見学の際に付いた身体の汚れを落とす様促すのであった

 

それと同時刻、食堂に残っていた翔達は、翔の自室に向かうとタブレットを用いて福岡の陸軍駐屯地と通信を繋ぎ、今回の話を弓取に詳しく伝えた後、弓取から福岡の犯罪発生率や犯罪発生件数に関するデータを送ってもらうのであった

 

そのやり取りの中で……

 

「そう言えば、ムサシさんとヴォルヴァドスさんは元気にしていますか?」

 

翔が横須賀の乱の際に知り合った、ムサシとヴォルヴァドスの事を弓取に聞いたところ……

 

「あ~……、あの2人ですか……。多分今は何処かの山の中で、剣持大将にしごかれていると思います……。如何やらあの2人、剣持大将に気に入られたみたいで……、恐らく今頃、2人だけ大将発案の特別メニューを課せられているでしょうね……」

 

「1人と1柱ではないのか?」

 

「いえ、今のヴォルヴァドスさんは炎山 煌(えんざん こう)と言う名の人間に擬態していて、本人からも陸軍に所属している間は、人間として扱ってもらいたいと言われているので、それに則って2人と言ったのですよ」

 

弓取は苦笑しながらこの様な事を言い、それを聞いたゾアが小首を傾げながらこの様に尋ねると、弓取は相変わらず苦笑を浮かべたまま、ゾアの質問に対してこの様に答えるのであった

 

 

 

 

 

同時刻、とある山の中……

 

「ふぅ……、陸軍の人達のキャンプ地は、確かこの辺りのはずなんだけど……」

 

その身体には少々不釣り合いな大きなリュックサックを背負い、登山用装備でフル武装した陸奥は、連休前にムサシから渡されたGPSとにらめっこをした後、この様な事を呟きながら辺りを見回していたのであった

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