※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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強化合宿の真意

陸奥が煌とこの様なやり取りを交わしていると……

 

「む……、陸奥か……?」

 

「えっ!?陸奥さんっ?!」

 

如何やらムサシと戦っていた剣持が陸奥の存在に気付き、この様な事を口にしたところ、それに反応したムサシが攻撃の手を止め、驚愕の表情を露わにしながら剣持の視線を追う様にして、陸奥の方へと顔を向けるのであった

 

それによりムサシは完全に無防備になり、その隙を突いて剣持が無言で一気にムサシとの距離を詰め、瞬速の一閃をその身に叩き込もうと手にした太刀を振るうのだが……

 

「……ほう……」

 

「生憎……、陸奥さんの前ではカッコ悪い所は見せられないのでね……っ!」

 

その次の瞬間、ムサシは驚異的な反射神経で剣持の攻撃に反応し、手にした電撃鞭……、ムサシが『ショックビュート』と名付けたソレで剣持の太刀を見事絡め取って見せると、剣持は思わず感心した様にこの様に一言呟き、対してムサシは少々苦しそうな笑顔を浮かべながら、剣持に向かってこの様に言い放つのであった

 

因みにムサシがこの様な表情を浮かべているのは、剣持の攻撃を防げるかどうかの判断を下すのが少しでも遅れれば、確実にその攻撃が直撃、盛大に吹き飛ばされて陸奥の前で恥ずかしい姿を晒す羽目になる事から来る焦りと緊張感に苛まれた後、それらから解放されて嬉しかった事と、中々かっこいい姿を陸奥に見せる事が出来た事、そしてこれまで訓練と称して自分をボコボコにして来た剣持に対して、ちょっとだけしてやった感を見せつけたかったからだったりするが、最後のものに関しては、細かい事情を知らない陸奥は兎も角、剣持と煌には完全に見透かされていたりする……

 

その後、剣持達は組手を一旦終了して休憩に入る事にし、その際に陸奥は持って来たリュックサックからムサシの着替えを取り出しつつ、剣持に対してこの様な質問をするのであった

 

「このキャンプ地に来た時、一般兵の皆さんが揃いも揃って死にそうな顔をしてたけど……、ちょっと訓練のメニューが厳し過ぎるんじゃないの?」

 

「あぁ~……、僕と煌からしたら丁度いいレベルなんだけど、他の方からしたら……、あのメニューはまぁ地獄だね……」

 

「でもまあ、今の陸軍の状況を考えると、ゆっくりと新人を鍛えてる場合じゃないですからね……」

 

陸奥の質問に対して、剣持に代わって陸奥から着替えを受け取り、早速着替えを開始したムサシと、途中から慣れた手つきで熊の血抜きを開始した煌が苦笑しながらこの様に答え、それを聞いた陸奥が不思議そうな顔をしていると、驚くべき早さで着替えを済ませた剣持が、2人の発言について詳しく説明してくれるのであった

 

剣持が言うには、今の陸軍の兵達は横須賀の乱で大幅に減った陸軍兵の緊急補充の為に、以前戦治郎が剣持に提案した方法、一部の人間からしたら知名度があるズインの名前を使って募集をした結果集まった者達ばかりであり、その練度はハッキリと言ってあまりにも低過ぎるもので、このままでは元から陸軍にいた剣持傘下の兵達に、大きな負担を掛けてしまう恐れがあると言う状況にあるのである

 

ここでこれまでそれでやってこれたなら、そこまで気にしなくてもいい事なのでは?と思う者もいるかもしれないが、4月になれば軍学校を卒業した提督や艦娘達が大量に各地の鎮守府や警備府、泊地や基地などに着任する事となり、それに合わせて憲兵を陸軍から派遣しなくてはいけなくなっているのである。その事を踏まえると、今の陸軍は非常に危うい状況にあるのである

 

「国民の陸軍への信用と信頼を取り戻し、有事の際にはしっかりと国民に我々の指示に従ってもらう為、災害救助の際に不信に満ちた国民からの妨害を受けず、兵達が安心して救助活動を行える様にする為、そして強靭な兵達を育てる事で敵から国民を守り、国民に安全と安心感を与える為にも、今の陸軍の者達には厳しい訓練を積む事で、屈強な身体と不屈の精神を、早急に手に入れてもらわなければならんのだ……」

 

「それに先程剣持さんが言った敵って言うのは、普通の深海棲艦だけでは留まらず、僕みたいな転生個体や、煌みたいな神話生物まで含まれている訳だから……」

 

「転生個体や神話生物が上陸して、その力を躊躇い無しに振るおうものならば、周囲に甚大な被害が出てしまうのは目に見えている……。そしてそれは何時、何処で発生してもおかしくない状況にある……。だからこそ、僕達は急いで力をつける必要があるんですよね……」

 

「欲に塗れた痴れ者達の尻拭いをさせられる感じがして癪だが、それを事前に止める事が出来なかった俺にも非があるからな……。なのでこの状況に関しては俺は甘んじて受け入れ、陸軍の頂点に立つ者としてその責任と役割を全うする。それが今の俺が国民に対して出来る数少ない罪滅ぼしだからな」

 

「……そう言う事情があるのは分かったけど……、あまり無茶をさせ過ぎて、新人さん達を壊したりしない様に注意しなさいよ?」

 

陸軍の現状について話し終えた剣持が、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべながらこの様な事を言い、それにムサシと煌が少々その表情を暗くしながらこの様に続き、そこから更に剣持がこの様な事を言う。そして此処まで話を静かに聞いていた陸奥は、困った様な表情を浮かべながら、剣持に対してこの様に忠告すると……

 

「あ、その辺は大丈夫みたいです。ズインに釣られて来た人達は、ズインと一緒にこの戦争を戦い抜いて、戦後にズインの戦友だった事を自慢して、周囲からマウントを取りたいって野心溢れる人ばかりみたいなので、ムサシがズインの格好してちょっと激励したら、まるで薬でも使ったかの様に元気になりますから」

 

「一部は真面目にズインの力になりたいと言っている者もいるのだが……、どうしてもそっちの連中の方が目に付きやすく、印象がそっちに引っ張られやすくなってしまっているな……」

 

「ズインである僕からしたら、すっごく複雑な心境なんですよね……」

 

「何よそれ……」

 

先程まで暗かった表情を一転させ、やや苦笑しながら煌がこの様な事を言い、それを聞いた剣持が頭を抱えながらこの様な事を呟き、ムサシがそれはそれは複雑そうな表情を浮かべ、溜息をつきながらこの様に呟くと、これまでの話を聞いていた陸奥は、ズイン目当てで陸軍に入隊した者達の現金さに、ただただ呆れ返りながらこの様な事を呟くのであった……

 

その後、休憩は終わりとばかりに剣持が立ち上がり、ムサシがそれに倣って立ち上がろうとした時である

 

「待ちなさいムサシ、組手を再開する前に『コレ』を使っておきなさい」

 

不意に陸奥がそう言ってムサシを制するなり、リュックサックの中から2つの木箱と1つの金属製の箱、更には水筒の様な物を1つ取り出し、ムサシに手渡して来るのであった

 

陸奥から手渡された物が一体何なのか分からず、ムサシが思わずそれらを手にしたまま困惑していると、陸奥がそれらの開封方法をムサシに伝え、それに従ってムサシが箱や筒を開けたところ、木箱の方にはそれぞれ鋼材と弾薬が、金属製の箱にはボーキサイトが、そして水筒の様な物の中には燃料が入っていたのであった

 

「艦娘がいない陸軍だと、資源の調達がとても大変でしょ?だから此処に来る前に元帥から許可を貰って、貴方の艤装の補給用に少し資源を分けてもらったの。これなら十全に力を発揮して、剣持さんとの組手に臨めるでしょ?」

 

陸軍では艦娘や深海棲艦が使う資源が調達しにくい事を見越して、ムサシの為に資源を準備してくれた陸奥が、ムサシに向かってウインクをしながらそう言うと……

 

「ありがとう陸奥さんっ!!これならきっと剣持さんに競り勝てるよっ!!!いや、本当にありがとうございますっ!!!」

 

「ふむ、これは厄介な事になりそうだ……」

 

ムサシは受け取った資源を1度地面に置き、陸奥の両手を取ってブンブンと縦に勢いよく振りながら、陸奥に向かって感謝の言葉を述べ、その様子を見ていた剣持は、やれやれと言った様子で首を横に振りながら、この様な事を呟いていたのであった

 

因みに剣持の反応と、剣持が上半身裸になっていた理由については、ムサシとの組手を開始した直後、ムサシが奇襲として発艦した艦載機達に遅れを取ってしまい、その攻撃をモロに受けてしまった結果、上半身の衣服を吹き飛ばされてしまったからであり、その後何とかムサシの艦載機を全滅させ、ムサシを自分の土俵に引きずり込む事に成功した矢先に、こうして陸奥によって艦載機の補充を行われてしまった事が起因していたりする

 

その後の組手ではムサシの宣言通り、ムサシはボーキサイトを補給した事で、再び使える様になった艦載機を駆使する事で、見事陸奥の目の前で剣持から勝利をもぎ取る事に成功するのであった

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