※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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混沌の娘

その日の訓練を終えたムサシ達が、キャンプ地に戻った頃にはスッカリと日は傾いており、帰還したキャンプ地では何とか体力が回復した陸軍の兵達が、この日狩猟した動物達や野草を使って夕食を作っていたのであった

 

因みに野生動物の狩猟許可については、この強化合宿を開催する前に剣持が予めその地にある自治体から許可を取っていた為、無断狩猟として一部の団体から陸軍が糾弾される心配は一切無い模様

 

その後剣持以外の3人は他の兵達に混ざって夕食の準備に参加し、剣持はこの日の訓練の成果などを纏めた書類を作成する為に、自身の剣技を駆使して即席で作り上げたコテージの中に1人戻っていくのであった

 

それからしばらくして、ワイルドな食材を大量に使用して作られた夕食は無事に完成し、それらを食べる際、陸奥はムサシの隣を確保し、陸奥が隣に座った事でガッチガチに緊張し、まるで初心な少年の様な雰囲気を醸し出すムサシをからかいつつも、楽しく談笑しながらその日の夕食を楽しむのであった

 

尚、その様子を見ていた多くの陸軍兵の男性達が、陸奥の様な美人とキャッキャウフフしながら食事を摂るムサシに向かって、嫉妬に狂いに狂った緑色の炎を宿した眼光と、その全てを纏め上げて1つにしてしまえば、実際に人1人呪い殺してしまえそうな程の力を持った呪詛の言葉を掛けていたのだが、呪詛の方はムサシ達のやり取りを見て思わずニヤニヤしている煌が、2人を守る為に旧神由来の魔力を駆使する事で、秘密裏に処理してくれていたりする

 

そうして食事が終わると、陸軍の者達は半分は食事の片付けを開始し、残りの半分は書類作成を終わらせた剣持が開催する座学会に参加、陸軍の所属では無い陸奥は食事の片付けを手伝い、それらが終わる頃には就寝時間となり、陸軍の者達は各々のテントに戻って就寝準備を始め、陸奥は此処に来た時に陸奥に声を掛けてくれた女性兵と同じテントで就寝する事となるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、一部の兵が月明かりだけを頼りに哨戒する中、2つの影がテントから出て来るなり、哨戒の目を掻い潜りながら森の中へと入って行くのであった……

 

「ふぅ……、今回も成功っと……」

 

「このスーツを纏った私を、この闇の中で見つける事は中々難しいだろうからな!」

 

2つの影は無事に森の中に入る事に成功すると、追手がいない事を確認した後、この様な会話を交わす。そう、2つの影の正体とは、ズインスーツを身に纏ったムサシと煌だったのである

 

2人はこの合宿が始まったその日の深夜から、こうしてキャンプを抜け出して秘密の特訓をしているのである。その理由は、2人が着任する予定となっている場所が長門屋鎮守府である事、そしてその長門屋鎮守府が対処する相手が相手であるからである

 

この2人は自身がそれぞれ転生個体と神話生物であるが故に、それらがどれだけ人類の脅威になるのかについて重々承知しており、もしかしたら何かの切っ掛けで、それらが直接鎮守府に襲撃して来る可能性を考慮し、こうして剣持による特別訓練だけでなく、自主的に訓練を積む事で、長門屋鎮守府がその様な事態に陥った際、鎮守府と周囲の住民達を守る為に、それらとまともに戦えるだけの力を得ようと考え、こうして実行に移しているのである

 

因みにムサシがズインスーツを身に纏っている理由だが、スーツの隠密性を利用してテントからの抜け出しの成功率を上げる為と、このスーツを着ている時の方が、陸軍の戦闘服を纏っている時よりも気合が入るからなんだそうな……。尚、ムサシはスーツを纏っている間、スーツに引っ張られる様な形で一人称と口調が変わる模様

 

さて、その様な理由でキャンプ地を抜け出して来た2人は、哨戒に見つからない様にする為に光源を使わず、暗闇に閉ざされた森の中を夜目だけに頼りに進んでいき、やがて昼間に剣持と訓練をしていた場所に辿り着くと、しっかりと準備体操を行った後、秘密訓練を実行しようとするのだが……

 

「ムサシ……」

 

「気付いている……、悪意こそ感じないものの、何者かの気配を感じる……」

 

準備体操中、森の中から何かの気配を感じ取った2人は、この様なやり取りを交わした後、準備体操を中断し、真剣な表情を浮かべながら気配がする方角に向き直り……

 

「何が目的か知らないけど、コソコソと隠れてないで出てきたらどうだ?」

 

現陸軍の最高戦力である煌が、気配の主に向かってこの様に言い放ったその直後である、隠れている事が無駄であると判断した気配の主が、ゆっくりとした足取りで森の中から姿を現し、それを見た2人はその視線を今まで以上に鋭くすると同時に、何が起きてもすぐに対処が出来る様に、即座に臨戦態勢を取るのであった……

 

2人が目にした存在……、それはルルイエに所属するダゴンやハイドラと同じ様にレッサー・オールド・ワンに分類されている神話生物……、3mにも及ぶ身長を持つナイトゴーント達の首領と呼ばれているイェグ=ハだったのである……

 

「煌……、こいつは……?」

 

「イェグ=ハと言う従属神クラスの神話生物だよ……、父さんが全く同じものを従えてるからよく知ってる……。でもこいつは、如何やら父さんの所の個体じゃなさそうだ……」

 

「敵の可能性もあると言う事か……」

 

周囲に緊張感が走る中、ムサシ達が目の前で静かに佇むイェグ=ハを警戒しながら、この様なやり取りを交わしていると……

 

「……その声は、まさかヴォルヴァドス殿か……?」

 

不意にイェグ=ハの後方から少女の様な声が聞こえ、2人が突然聞こえて来た声にそれぞれの理由で驚いていると……

 

「下れイェグ=ハ、この者達は警戒しなくていい」

 

声の主がムサシ達の目の前に立つイェグ=ハに対して、この様な指示を出したその直後の事である、何とそれを受けたイェグ=ハはムサシ達から見て右側に数歩移動した後、ムサシ達の方へ歩いて来る少女に向かって跪いて見せたのである

 

その少女の姿を見た瞬間……

 

「うわぁ……、マジかぁ……」

 

突如として姿を見せた少女に怪訝そうな表情を向けるムサシを余所に、煌は思わず頭を抱えながらこの様に呟くのであった……

 

「ヴォルヴァドス殿、気持ちは分からなくも無いですが、流石にその態度は私に対して失礼過ぎるのではないでしょうか?」

 

「いや……、君の姿を見たら、どんな旧神や旧支配者、下手したら外なる神でもこんなリアクションするって……」

 

如何やら煌と面識があると思わしき少女が、そんな煌の態度にムッとしながらこの様な事を言うと、煌は溜息を吐きながらこの様に返事をするのであった

 

「煌……、この方は……?」

 

今まで完全に蚊帳の外にいたムサシが、覆面の下に不思議そうな表情を浮かべながら、煌に向かってこの様に尋ねたところ……

 

「ああごめんムサシ、この方は……」

 

「ヴォルヴァドス殿の態度を見た限り、如何やら貴方はヴォルヴァドス殿のご友人の様ですね。ならば自己紹介をした方が良さそうですね」

 

煌が彼女の事を紹介しようとしたところで、会話に割って入って来た少女はそう言うと、ムサシに向かって自己紹介を行うのであった

 

「私はイブ=ツトゥル、恐らくムサシ殿もその生涯の中で、1度はその名を聞いた事があるであろう外なる神、ニャルラトホテプの娘です。ヴォルヴァドス殿とは、ヴォルヴァドス殿の父上で私と同じくナイトゴーントを使役するノーデンス殿を通じて知り合ったのです」

 

フードの付いた緑色のローブを纏い、頭部をフードですっぽりと覆った、胸部装甲の自己主張こそ強いのの、陸奥とは対照的で控えめそうな雰囲気を纏った少女は、ムサシに向かってこの様に名乗ったのであった……

 

これにはクトゥルフ神話に疎いものの、動画サイトなどで何気なく見た動画などに登場したりしていた関係で、ニャルの存在くらいは知っていたムサシは、驚愕のあまり絶句してしまうのであった……

 

これが外なる神イブ=ツトゥル……、後にこの世界で2番目の神話艦娘、陸軍特種船の揚陸艦の艦娘にして、現行の艦娘事情を知る兼継と接触していない戦治郎達にとって、全くの未知の艦娘である神州丸となる彼女と人類のファーストコンタクトなのであった……




レッサー・オールド・ワンは下級の旧支配者の様な立ち位置の様ですが、この作品では大体『小神』や『従属神』と表現する事になると思います
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