かなりグロいかもしれません
戦治郎達を取り囲むように展開された潜水艦共に単騎で突撃を仕掛ける、普通に考えれば余りにも無謀過ぎる、玉砕覚悟の特攻だと言われてしまうところだろう
だがそれはあくまで普通に考えた場合の話だ
海中と言う戦場、生まれ変わったこの身体、仲間がいない状況、その全てが俺の味方になった、俺の全てを引き出してくれた
未だかつて誰にも見せた事のない仮面の下の素顔すらも……
俺が突っ込んで来た事に気付き集まりだす潜水艦共、陣形を組んで俺を迎え撃つつもりなのだろうがそれは今の俺に対しては下策も下策、最悪手と言えるだろう。戦治郎の改造の結果俺の艤装の航行速度も光太郎ほどとは言わないが上昇している、この調子で進めば奴らが陣形を形成し終えるよりも早く奴らの懐に潜り込めるだろう
「かぁーはっはっはぁっ!!!遅ぇ!遅ぇ遅ぇ遅ぇ遅ぇ遅ぇ!!!反応がぁ!思考がぁ!!速度がぁ!!!何もかもがすっとろいんだよ腐れ雑魚共がよぉっ!!!」
俺はそう叫びながら更に速度を上げて突撃、焦った奴が魚雷を発射するも俺に掠る事もなく魚雷は彼方へと消えていった
「覚えた、覚えたぞぉ!おめぇのそのツラをなぁっ!!!おめぇには眼球の手術が必要なようだなぁおいぃ!!!」
昂る感情を一切抑える事なく叫びながら奴らが形勢しようとする陣形にある隙間という隙間を駆け抜ける、何度も反転、突撃を繰り返し縦横無尽に駆け巡る
俺の思惑が分からず困惑するもの、焦って攻撃を仕掛けるも俺に悉く躱された挙句仲間に魚雷をぶつけてしまうもの、何が起こるか分からない恐怖に襲われ動けなくなるもの、様々な反応を示す連中と幾度となくすれ違う、さて……これで準備は完了した……
俺は奴らから距離を取り、先程とは打って変わって悠然とした態度で奴らの方を向く
「さあ、まずは『シンサツ』からだなぁ……、名前……は分かんねぇなぁ……、まあいい、俺の気分で選んだ奴からやってやらぁ……」
俺はそう言って指を鳴らすような仕草をする、するとどうだろう、潜水艦共が一斉に背後で腕を組まされたような姿勢になってピクリとも動かなくなってしまったではないか
「だ・れ・に・し・よ・う・か……な♪よぅしまずはおめぇだぁ……」
俺は奴らのツラをゆっくりと見回しその中の1匹と目が合ったので最初の相手はそいつに決め人差し指をまるで糸を繰るようにクルクルと回す、すると動けなくなっていたそいつがまるで糸に手繰り寄せられるように俺の元へとスルスルと向かってくる
種明かしをすればこれは本当に糸で手繰り寄せられているのだ、奴らの間を駆け回っていたときに仕掛けた戦治郎特製の縫合糸を使い奴らを拘束、今はその糸を人差し指で巻き取ってこちらへ引き寄せているのだ
「よぅ栄えある患者第1号、おめぇはどこが悪ぃんだぁ?顔かぁ?頭かぁ?それとも運かぁ?」
手が届くところまで手繰り寄せたところで腕を伸ばしてその首を鷲掴み、その状態から先程の質問を投げかけたのだが返事が無い、ただただ俺を見て震えるばかりである
「何か言わねぇと何も分かんねぇだろうよぉ……」
まあこう言っているが言えるわけもねぇだろうなぁ……、何しろ奴ら全員の口は俺がすれ違い様に縫い合わせているんだからなぁ……、マスク付けてた奴はわざわざ剥ぎ取ってまでなぁ……
「んん~?さっきから妙に脈拍がやけに速ぇなぁ?もしかしたら心臓が悪ぃのかもしれねぇなぁ きゅふ♪」
お道化たように言うが勿論嘘だ、俺の事を恐れて心臓がバクバクいってるだけである
「いかんなぁ……、これはいかん……これは早速手術しねぇとなぁ……!」
俺はそう言うなり患者1号の胸をメスで切り裂く、このメスも戦治郎が作ってくれたオベロニウム製の戦闘用のメスだ、斬れ味が凄まじ過ぎて皮膚どころか筋膜までまとめて斬れてしまった、まあ好都合だ
あまりの激痛に仰け反る患者第1号、そりゃあ麻酔なんてしてねぇから痛ぇのは当たり前だ、尤もてめぇらに麻酔なんざしてやるつもりは毛ほどもねぇがなぁ
「大人しくしやがれ、手元が狂うぞぉ」
俺はそんな事を言いながら手にしたペンチで肋骨を除去していく、患者1号は上げる事の叶わぬ悲鳴を上げるが完全に無視だ
「ここをこうして……、はぁい心臓ちゃんこんばんは~」
胸膜をメスで切開すると患者1号の心臓とご対面、やる気の無ぇ挨拶を交わしたところで俺はメスを逆手に握る
「んじゃあ死ね」
俺は短くそう言い放ち患者1号の心臓を握ったメスで滅多刺しにする、こいつの仲間達にもよぉく見えるように位置取りしてからだ
「痛ぇかぁ?痛ぇよなぁ?でもてめぇらも俺の仲間に似たような仕打ちしくさったよなぁ?殺気ガンガン放ちながらよぉ……俺の目の前で命を奪おうとしやがったよなぁ……?」
こんな事を言いながら何度も何度も繰り返し患者1号の心臓をメスで刺す、こいつの仲間達の目の前で幾度となく刺す、そして患者1号がピクリとも動かなくなったところで縫合糸を外して死骸を深淵に蹴り落とす、患者1号が沈んでいく様子を俺はまるでゴミを見るかのような目で見送る
「さぁて、次の方ぁ……」
俺はそう言って次の獲物……患者を選出するのだった
それ以降も最初は同じ質問をする
顔が悪いと頷いて答えた奴がいたからその顔にある皮膚と筋肉を全て削ぎ落としてやった
頭が悪いと答えた奴は脳を露出させてからハリネズミみたいになるほど脳にメスを突き立て、縫合糸を使ってメスを一斉に引き抜いてやった
眼球の手術が必要な奴が来た、視神経が繋がったまま眼球を抉り出してメスを突き立ててやった
質問中に腹が鳴った奴がいたから腹搔っ捌いて内臓を鷲掴みにして引っ張り出してその1つ1つを解説を交えながらゆっくりと握り潰してやった
運が悪いと答えた奴がいた、面白かったからフルコースをお見舞いしてやった
最後の1匹を沈めたところで俺の頭は冷静になる、これははしゃぎ過ぎたな……
俺がこうなってしまったのは何時からだっただろうか?
ガキの頃に火事で両親を失った時か?
送られた施設でいじめられ、周囲から完全に孤立した時か?
勤め先の病院の跡取り騒動に巻き込まれた時か?
それを断って開業医になった後、逆恨みした老害共に診療所を放火された時か?
その火事が原因で俺を支えてくれた多くの人が亡くなり傷付いた時か?
その被害者の中に光太郎もいて、あいつがガキの頃からの夢だったハイパーを辞めざるを得ない状態になってしまった事を知った時か?
精神科が専門のクセに心当たりがあり過ぎて分からねぇとか、これじゃあ精神科医失格だなおい……、まあ未だに俺自身の炎に対してのトラウマを自力で克服出来てねぇあたり今更か……
命の大切さは両親が身を以て教えてくれた、だから俺はそんな命を守りたくて医者になった……
命を脅かす連中に対して俺は一切の容赦をしなかった、人間のクソさを嫌と言うほど思い知らされたから……
その2つの本心が歪に混ざり合った結果があの狂気の正体なのかもしれないが、まあ誰かに聞いたところで分かりはしねぇか
こんな面倒臭ぇ本心を誰にも見られたくなくて俺は心に仮面を付けた、これは例え戦治郎の奴にも見られたくはねぇ
炎が上がらない海中、そんな海中に最も適した身体、本心を誰にも見られる心配が無い安心感と開放感からテンション上がり過ぎてつい仮面外しちまったが、今回はちと調子に乗り過ぎたと反省……
「っとぉ、こっちは片付いた事だしあっちの手伝いと洒落込みますかねぇ……、あいつらの事だしぜってぇ大騒ぎしてんだろうなぁ……、そいつぁちっと乗り遅れるわけにはいかねぇなぁ」
俺はそう呟いて戦治郎達がいるであろう場所に向かって進み始めるのだった