妖精さん達から艤装を受け取り、今後は基本艦娘として活動していく事を決意したクティーラ改めサミュエルは、自分専用の艤装を作ってくれた妖精さん達に改めて感謝の言葉を述べると、早く艤装の扱いに慣れる為にと言って、妖精さん達に別れを告げてホノルルを後にするのであった
「♪~」
そうして念願の艤装を手に入れたサミュは、その事が余程嬉しかったのだろうか、鼻歌を歌いながら、時折急激なターンを織り交ぜたり、ジグザグに移動したりしながら海上を滑る様にして航行していたのであった
「お嬢……、本当にやるんですかい……?」
「うんっ!!!」
そんな中、サミュが艤装を受け取る前から不安そうにしていたダゴンが、サミュに向かって恐る恐ると言った様子でこの様に尋ねたところ、サミュはダゴンに向けて満面の笑みを浮かべながらも、それはそれは力強く頷きながら返事をする
神話艦娘となったサミュがやろうとしている事……、それは海上で困っている艦娘達を、無償で助けようと言うものであった
彼女はクティーラとして世界を放浪していた時も、何度か世界中の海にいる艦娘達……、主にドロップ艦達を助けたりしていたのだが、自身が神話生物である事を自覚していた事も有り、表立って彼女達に救いの手を差し伸べていれば、救出した彼女達だけでなく世界中を混乱させてしまうと思い至り、救助対象が近くにいる場合は、姿を隠してさり気無く援護を行う事で、ドロップ艦達が海域を離脱する時間を稼ぎ、彼女達が無事海域を離脱し終えた事を確認し終えると、ようやく姿を現し父であるクトゥルフ直伝の格闘術や、母であるイダー=ヤアーから学んだ魔法を駆使して、ドロップ艦達の脅威となった者達と戦っていたのである
そんなサミュが横須賀鎮守府で日本海軍が抱えるドロップ艦問題の実情を知ると、艦娘になりたいと言う彼女の願望に、益々拍車がかかるのであった
何故そうなったのかと言えば、今までは自身が神話生物である事も有って、陰ながら援護を行う事しか出来なかったのだが、もしも自分が艦娘になる事が出来れば、態々姿を隠して援護する様な事をせず、最初から堂々と姿を現してドロップ艦達を直接助けられると、サミュはそう考えたのである
そして遂にこの日、サミュは念願の艦娘になる事に成功し、自分が今までやりたいと思っていた、艦娘達を表立って助ける事が出来る様になったのである。故に今の彼女の機嫌は、天に昇り、雲を裂き、宇宙を穿つほど上機嫌なのであった
「ようやく念願の艦娘になれた事だし、張り切っていこー!」
「本当に大丈夫なんですかねぇ……?お嬢の身に何かあったりしたら……、って……、あれは……?」
そんなサミュがやる気を漲らせ、力強く拳を天に掲げながらこの様な宣言をする傍らで、相変わらずサミュの事を心配するダゴンが、困った様な顔をしながらこの様な事を呟いていると、不意に遠くから何かが爆発する様な音を聞き、何事かと思わず言葉を切ってそちらの方へと視線を向けると、従属神であるダゴンだからこそ視認出来る様な、本当に遥か遠くの海上にて、深海棲艦の連合艦隊の攻撃を受ける艦娘達の姿が見えるのであった
この事に気付いたダゴンが、恐る恐ると言った様子でサミュの方へと視線を向ければ……
「あの装備からすると、あの娘達は南方海域辺りに遠征に出ている艦隊かな……?見たところかなり攻撃を受けていて、穏健派連合の人達が到着するよりも先に、皆沈められちゃいそう……。よっし!行くよダゴンッ!!」
「やっぱりそうなりますよね……、えぇいっ!こうなったらやるしかねぇっ!!」
そこにはダゴン同様遥か彼方で起こっている戦いに気付き、その様子を冷静に分析した後、彼女達を助ける決意を固めたサミュの姿があり、サミュがこの様に叫んで走り出すと、ダゴンは最早こうなっては仕方ないと腹を括り、気合いの叫びと共にサミュの後に続くのであった
場所は穏健派連合の総本山があるガダルカナル島より北にあるミクロネシア連邦付近、穏健派連合の管轄内にある海域にて、南方海域の遠征任務に就いていた6人の艦娘が、強硬派深海棲艦の連合艦隊の襲撃を受けていたのであった
彼女達が所属している鹿屋基地は、山風と言う駆逐艦の艦娘が遠征任務中に行方不明になってしまった事が原因で、山風の事をよく可愛がっていた提督がそのショックで寝込んでしまい、その影響で海軍の拠点として碌に機能しなくなってしまっているのであった……
因みに横須賀の乱の際、鹿屋基地が戦治郎達に占拠された桂島泊地に対しての攻撃命令を無視したのも、この山風ロストのショックが理由であったりする
尚、その山風は現在ガダルカナル島にて、自身の命の恩人である始の特訓が終わるのを待つ傍ら、伊吹が作り出した『スーパーカラシン』と言う武装した大型ホバークラフトの操縦の練習をしていたりするのだが、その事を鹿屋基地の関係者はまだ誰も知らないでいる……
さて、そうして拠点としての機能を失っている鹿屋基地だが、未だ尾を引く横須賀の乱での混乱や、転生個体の出現や神話生物の出現などもあって、その後始末や対策に追われる大本営に、この様な状態にあるにも拘らずその存在を華麗にスルーされ、そこに所属する艦娘達は、提督が何とか立ち直る事を祈りながら、基地の運営を維持する為に任務娘主体で各自で自発的に近海警護や、資源確保の為に遠征任務などをこなしているのであった
そしてこの日、長良型軽巡洋艦の5番艦である鬼怒が旗艦を務める艦隊は、山風が行方不明になったとされる南方海域の遠征任務を遂行中、強硬派深海棲艦の連合艦隊に遭遇してしまうのであった……
そんな彼女達が対峙した連合艦隊は、フラル3、エリル3、フラツ1、改フラヘ1、後期エリイ2、そして後期エリハ2と言う、航空戦力を投げ捨てて砲撃を兎に角尖らせた様な編成となっており、遠征任務の為軽巡と駆逐しかいない鬼怒の艦隊は、あっと言う間に窮地に追いやられてしまうのであった……
この時穏健派連合の艦隊は何故この戦いを察知し、鬼怒達の救援に急いで来ないのかと言うと、彼らもそうしたいのは山々なのだが、現在太平洋では旧支配者のグッハナイがアテも無くフラフラと彷徨い、周囲に甚大な被害を与えていたり、穏健派連合の移動を頻繁に妨げたりしている為、迂闊に出撃出来ない状況になっているのである
「う"~……、まさかこんな事になるなんてな~……」
「しかもよりにもよって、山風が行方不明になった海域で……」
「南方海域は、前より安全になったんじゃなかったのっ?!」
こうして窮地に立たされた鬼怒が、相手の攻撃によってボロボロになりながら、強硬派深海棲艦の連合艦隊をしっかりと見据え、この様な言葉を漏らしたところ、白露型駆逐艦の3番艦の村雨が悲し気な表情を浮かべながらこの様な言葉を口にし、それに更に白露型駆逐艦の1番艦である白露が、叫ぶ様にしてこの様に続く
「何とか駆逐の皆だけでも、逃がしてあげられればいいんだけど……」
旗艦である鬼怒が険しい表情を浮かべながら、この様な事を呟いたその直後、相手の旗艦と思わしきフラルが鬼怒目掛けて砲撃を行い、思考を巡らせていた為反応が遅れた鬼怒が、しまったとばかりにその表情を引き攣らせたその時である、突然鬼怒の目の前に巨大な氷の壁が出現し、フラルが放った砲弾をその身にヒビ1つ入れる事無く、完全に防いでみせるのであった
余りにも突然過ぎる出来事に、鬼怒達も、そして強硬派深海棲艦達も動揺し、その動きを止める中……
「間に合って良かったっ!!」
不意に誰かの叫び声が聞こえ、一同が思わずそちらに視線を向けたところ、そこにはこの場にいる誰もが、今まで1度も見た事も無い艤装を背負った艦娘の姿があり……
「艦娘としての初救助……、しっかりバッチリ護っていこうっ!!!」
鬼怒達にとって正体不明の艦娘……、サミュは声高らかにこの様に宣言すると、連合艦隊目掛けて突撃を開始するのであった