ここで英吉郎について、少し掘り下げていこうと思う
2019年の時点で76歳になる彼は、新幹線の車体関係の技師であった父に憧れ、自身もその様な技術者になろうと、若い頃に海外に留学して技術者としての修行を積み、帰国した後は今では大手となった家電メーカーや自動車メーカーなどに就職し、技術者としての腕に更に磨きをかけていた
さてここで1つ疑問に思うところがある事だろう、如何して英吉郎は複数の企業に就職したのか?と言う点である
その答えは簡単なもので、その当時から血の気が多く手が早かった英吉郎は、人間関係で頻繁にトラブルを起こしていた為、しょっちゅう会社をクビになったり、これ以上付き合い切れないとばかりに上司に辞表を叩きつけ、自主退職していたからである
こんな調子で人間性に問題がある彼だが、技術者としての腕前は本当に素晴らしいものがあり、彼が会社を辞めると聞いた時、彼が開発した製品がよく売れていた事から彼の腕前を認めていた者達は、その多くが彼の辞職を嘆き悲しんだと言う……
そうして様々な家電メーカーや自動車メーカー、果ては造船所や技術研究所などに就職し、様々な知識や技術を身に付けた英吉郎は、その知識と技術をフル活用出来る場所を自ら作ろうと思い立ち、貯金をはたいて修理屋を開業する事にしたのである
こうして始まった英吉郎の修理屋は、その腕が確かである事が評判となり、瞬く間の内に多くの近隣の住人達が押し寄せてくるほどの人気のある修理屋となり、年月を重ねる度に利用客は増加し続ける事となるのであった
ただ、これによって思った以上に仕事が入って来る様になってしまい、流石にこれでは自分と成長した息子の2人だけでは手が回らない……、そう思った英吉郎は、1~2人ほどバイトを雇う事を決意するなり早速求人を出し、それに応募して来たのが、義肢の研究の為の資金を稼ぎつつ、自分達の技術者としての腕前を磨きたいと考えていた、当時大学生であった戦治郎と空なのであった
さて、そんな2人を面接の際に目にした英吉郎は、これまでの経験から来る勘により、この2人は技術者として化けるであろう事を確信、彼らが望む通り自身が持つ知識と技術を授け、世界に名を轟かせる様な技術者にしようと決意し、2人を雇い入れ、鍛え上げる事にするのであった
因みにこの時である、戦治郎達がバイトを始めた事を聞きつけ、私兵達に英吉郎の素性を徹底的に調べさせ、彼が特に問題がある人物ではないと判断した正蔵が、戦治郎達がいない時を狙って英吉郎の店を訪ね、彼と何度か言葉を交わした後、戦治郎達の事を彼に託す事にしたのは……
尚、英吉郎の性格が性格であった為、彼に教えを乞う戦治郎達も海戦ちゃんぽん要塞の伊吹達同様、頭をまるで南瓜や西瓜の選別でもするかの様にバカスカ叩かれながら技術者として育てられており、そのせいもあって、戦治郎と空は英吉郎には畏怖の感情を感じつつも、自分達を立派な技術者として育ててもらった恩義から、彼には頭が上がらなかったりする
又、この時に英吉郎は、戦治郎達に自分が海外で修行していた事を話しており、それが戦治郎達が自分達の見聞を広げる為のアメリカ留学を決意させる切っ掛けとなっていたりもする
更に言えば、戦治郎達が長門屋を始めた切っ掛けの1つには、自分達を育ててくれた英吉郎に対しての敬意があったからだったりする
それから月日は流れ、戦治郎達が大学院を出て、自分と同じく修理屋を始めると言ってバイトを辞め、英吉郎の修理屋を去ったそんなある日、英吉郎は自分の身体に起こった異変に気付く事になる……
作業中に握っていたスパナをよく落とす様になったり、日常生活の中においても、何の前触れも無く突然激しい眩暈に襲われる様になったのである
それを不審に思った息子の勧めで、英吉郎は現在戦治郎の兄が院長を務める病院で診察を受け、それによってそれらの症状は、脳卒中の初期症状である事が判明するのであった
こうして闘病生活を余儀なくされた英吉郎は、店を息子に譲り渡し、自身は投薬しながら息子の作業を無理しない範疇で手伝い、自分達だけでは仕事が捌き切れなさそうな時は、戦治郎達の店を紹介する様にする事で自身にかかる負担を減らし、何とかその命を繋いでいたのであったが……
2017年12月24日、とある事故で愛弟子である戦治郎達が亡くなった事を知り、それによって英吉郎は激しい精神的ショックを受ける事となり、それが原因で容態は悪化、遂に入院する羽目になってしまうのであった……
その後、英吉郎が戦治郎の知り合いである事を知った命による、懸命な治療が行われる事となるのだが、日に日に衰弱していく英吉郎は、2019年6月25日にこの世を去ってしまうのであった……
こうして死を迎えた英吉郎が再び目を覚ました時、彼はオリジナルコアの手によって欧州水姫の転生個体に作り変えられ、その身体は南方海域にあるソロモン海のド真ん中に浮かんでいたのであった……
さて、状況がサッパリ掴めずにいる英吉郎が混乱の極致に至り、状況整理の為にその場に胡座をかき、考え込む様に眉間に皺を寄せながら腕を組んでブツブツと呟いていると……
「そちらの方、一体如何なされたのですか?」
上空から声が聞こえ、その声に反応した英吉郎が即座にそちらに顔を向けると、そこにはペーネロペースーツを装着した璃栖瑠が、ゆっくりと降下して来る姿があった
如何して此処に璃栖瑠がいるのかと言えば、戦治郎達が南方海域を去った後、璃栖瑠はリチャードから海戦ちゃんぽん要塞の管理を任される事となり、その日は定期連絡と書類の受け渡しの為、ペーネロペースーツを使ってガダルカナル島に向かっていたのだが、その道中で偶々海上で考え込む英吉郎の姿を目撃し、ついつい話し掛けたのである
さて、そんな璃栖瑠の姿を見た英吉郎は……
「何じゃ貴様はあああぁぁぁーーーっ!!!」
「ごふっ!?」
自分の方へと歩み寄って来た璃栖瑠に対して、叫び声を上げながらその顔面に右ストレートを叩き込み、見事ペーネロペースーツのメインカメラを破壊しつつ、璃栖瑠をノックアウトしてしまうのであった……
その後、意識を取り戻した璃栖瑠は、メインカメラが駄目になったペーネロペースーツの頭部を外した後、何とか英吉郎を落ち着かせ、英吉郎の身に起こった出来事についてや、この世界の事について、そして穏健派連合の説明を行い、それを聞いた英吉郎は……
「ふむ……、話を聞いとる限り、如何やらこの世界はボロボロにぶっ壊れとるようじゃのう……。よしいいじゃろうっ!そう言う事ならわしは穏健派連合に身を置き、このぶっ壊れた世界をキッチリ修理してやるわいっ!!」
そう言って穏健派連合に所属する事を決めると、璃栖瑠と共に穏健派連合のトップであるリチャードのいるガダルカナル島へ向かい、挨拶を終えた後、その経歴から技術班に所属する様言い渡される事となるのであった
こうして技術班に配属された英吉郎は、初日の初っ端にとんでもない事をやってしまうのであった
以前の失敗を基に、技術班は伊吹主導で剛用のパワードスーツを作っていたのだが、英吉郎は目聡く製作途中のそのパワードスーツを発見し、たった1人で、それも大した時間も掛けずに、そのパワードスーツを完成させただけでは留まらず、強化改造まで施してしまったのである
これにより英吉郎の技術力は技術班にも認められ、英吉郎は配属初日に技術班班長に任命されてしまうのであった
これは余談だが、こうして出来上がったパワードスーツを見た、戦治郎達長門屋鎮守府の工廠組の反応はと言うと……
「イカン危ない危ない危ない……っ!!!」
「次元連結システムは……、不味い……っ!!!」
「よりにもよってグレートの方かよぉっ!!?」
「う~ん、世界壊れちゃうッスねぇ……」
「これが師匠達が言っていた、グレートゼオライマーと言う奴なんですか……?」
この様な感じだったのだとか……
尚、このパワードスーツは、とある事情で釧路にあるツァトゥグアが経営する神話生物専門の病院に入院する事となった剛に、退院祝いとして贈呈される事となっており、戦治郎達がコレを目にするのもその時となっている