※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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永遠の眠りへと誘う珈琲の香り

「皆っ!!無事だったんだねっ!!」

 

英吉郎に艤装を修理してもらうだけでは留まらず、改二改修までしてもらった鬼怒達が、古鷹達が待つと言う要塞の入口に向かったところ、転生個体達に囲まれて不安そうな表情を浮かべていた古鷹型重巡洋艦の1番艦である古鷹が、彼女達の存在に気が付くなり、涙を浮かべながら駆け寄って来て、先頭に立っていた鬼怒に抱き着きながらこの様な事を口にするのであった

 

「古鷹さん……、心配させてしまって本当にすみませんでした……」

 

そんな古鷹の姿を見て、鬼怒が申し訳なさそうな表情を浮かべながら、古鷹に向かってそう言うと……

 

「心配してたのは古鷹だけじゃないんだよな~……」

 

「ホントだよ、鬼怒ちゃんが出した救難信号を受信した時、基地内全体の空気が凄い事になってたんだからね~……」

 

「まぁ、おかげで動揺してオロオロする古鷹の写真が沢山撮れたんですけどね」

 

古鷹と共に救援に駆け付けた古鷹型重巡洋艦の2番艦である加古と、青葉型重巡洋艦の2番艦である衣笠は、鬼怒達の無事を確認した事で緊張感が解けたのか、発する言葉とは裏腹に安堵の表情を浮かべており、一方で青葉型重巡洋艦の1番艦である青葉は、冗談めかす様にニシシと笑いながらこの様な事を口にするのであった

 

その後、古鷹達と無事に合流した鬼怒達は、これ以上基地の仲間達を心配させる訳にはいかないからと言って、海戦ちゃんぽん要塞を発とうとしていたのだが……

 

「う~ん……、その面子だと少々心許ないところがあるかな……?」

 

鬼怒達が要塞に背を向けて歩き出したところで、不意に璃栖瑠が不安そうな表情を浮かべながらこの様な事を言い、それを聞いた鬼怒達は思わずその足を止めてしまうのであった

 

事実、サミュに助けられた鬼怒達も、自分達の実力不足は嫌と言うほど痛感しているし、古鷹達も璃栖瑠の要請で態々迎えに来てくれた穏健派連合の艦隊の護衛がなければ、道中で遭遇してしまった転生個体……、ミッドウェーでの決戦の後、撤退中に仲間からはぐれてしまい、今の今まで南方海域を彷徨っていたアビス・コンダクターの一員であった1人の変態に襲われ、全員仲良く轟沈していたかもしれないと、穏健派連合の艦隊の戦いを見て、そう思っていたのである

 

故に

 

「よし、食堂の方は粗方捌けている事だし、僕が鬼怒ちゃん達の護衛に付こう」

 

もしかしたら無事に帰れないかもしれないと言う不安に押し潰されそうになり、その感情を表情にも出していた鬼怒達に向かって、璃栖瑠がこの様に申し出てくれた時には、内心で驚きと安堵感が綯交ぜとなった感情が湧き起こるのであった

 

と言っても、それはあくまで鬼怒達……、食堂で英吉郎や伊吹、璃栖瑠の事を聞いていた4人だけの事であり、まだ璃栖瑠の事を信用出来ていない古鷹達は、まだ少々不安げな様子であった……

 

只それも、璃栖瑠の実力を思い知るまでの間だけの事ではあるが……

 

 

 

それからしばらくして、ペーネロペースーツを装着した璃栖瑠と共にちゃんぽん要塞を発った鬼怒達は、その道中……、丁度サミュが鬼怒達と出会った場所で、やはりと言うべきか、恐ろしい数の強硬派深海棲艦の艦隊と遭遇してしまうのであった……

 

その数はサミュが戦った連合艦隊の実に6倍、72隻もの様々な深海棲艦達の姿があり、璃栖瑠の予想ではこの海域で消息を絶った連合艦隊を探す為に、リコリスの指示で派遣された大艦隊なのではないか?と言われていた

 

「これは不味いですねぇ……」

 

「気付かれない様注意しながら迂回する……?」

 

「いや、相手には空母もいるみたいだし、相当大回りで迂回しないと駄目じゃないか……?」

 

青葉、衣笠、加古の3人が、その大艦隊の存在に気付くなり、深刻そうな表情を浮かべながらこの様な事をそれぞれ言っていると……

 

「じゃあ僕がちょっと行って片付けて来るよ」

 

「えっ!?璃栖瑠さんっ?!」

 

突然璃栖瑠がこの様な事を言い出し、その発言に驚いた古鷹が慌てて璃栖瑠を制止しようと、そう叫びながら手を伸ばすのだが、悲しいかなその手は空を切り、璃栖瑠は単身その大艦隊に突っ込んで行くのであった

 

「……何かさ、鬼怒は似た様な場面を少し前に見た様な気がするんだ……」

 

そんな古鷹達のやり取りを見ていた鬼怒が、思わずこの様な言葉を零したところ、それに同意する様に白露達が無言で、静かに首を縦に振って見せるのであった……

 

さて、こうして単騎で大艦隊に突撃を仕掛けた璃栖瑠だが……、結果だけ言えば璃栖瑠の圧勝であった……

 

ペーネロペースーツで飛行する璃栖瑠は、鬼怒達がいる場所からある程度離れた所まで来ると、一気に加速して空気の壁を2枚ほどブチ抜き、その勢いのまま敵陣に突っ込むと、先ずはソニックブームで駆逐や軽巡を容易く消し飛ばして見せた

 

その後璃栖瑠はソニックブームを発生させる以外、特に攻撃らしい攻撃は行わず、深海棲艦達の意識を自分に集中させる為なのか、ただ只管敵陣の中を縦横無尽に飛び回るのだが、ここで深海棲艦達の方に変化が現れる

 

何と璃栖瑠とすれ違った深海棲艦達が、次々と安らかな表情を浮かべながら、海上に立ったまま眠り始めてしまったのである……

 

その一部始終を見ていた古鷹達が、一体何が起こったのか分からず困惑していると……

 

「香り高いコーヒーの香りに包まれながら、安らかに眠ると良い……」

 

深海棲艦達が全員眠ってしまったところで、璃栖瑠は飛び回るのを止め、深海棲艦達の頭上でホバリングしながら、それはそれは穏やかな声色でこの様な事を呟き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の艤装の主砲の砲弾を、ペーネロペースーツに装備されたファンネルミサイルや両腕部に装着したビーム・ユニット内にあるメガ粒子砲を模した熱線砲が放つ熱線を、無防備に眠る深海棲艦達にこれでもかと言うくらいに叩き込むのであった

 

当然の事ながら、眠りこける深海棲艦達は回避も防御も行う事も出来ず、璃栖瑠のフルオープンアタックの直撃を受けて次々と沈んでいき、遂には誰一人残らず、綺麗さっぱり轟沈してしまうのであった

 

 

 

「ただいま」

 

「お、おかえりなさい……」

 

宣言通り単騎であの大艦隊をジェノサイドした璃栖瑠が、何事も無かったかの様に古鷹達の所に戻って来て、呆然とする古鷹達に向かってそう言うと、誰よりも早く我に返った古鷹が、その表情を引き攣らせながら応対する

 

その直後、古鷹の嗅覚が焙煎したコーヒー豆の様な香りを感知し、古鷹が無意識の内に匂いの出処を探る様、スンスンと鼻を鳴らしたところ……

 

「あぁ、この匂いはあまり嗅がない方がいいよ、この匂いは僕の能力によるものでね、嗅ぎ過ぎるとたちまち強烈な睡魔が襲って来て、さっきの深海棲艦達みたいに眠ってしまう事になっちゃうよ」

 

璃栖瑠はそう言って古鷹達に注意を促すのだが、時既に遅しと言うべきか、古鷹達はウトウトし始め、加古に至っては先程の深海棲艦達同様、立ったまま眠りこけていたのであった……

 

そう、先程の戦いの中で璃栖瑠が敵陣の中を飛び回っていたのは、この璃栖瑠が放つ心を安心感で満たして眠気を誘う香り、『ヒュプノス・アロマ』を撒き散らす為だったのである

 

「……戦闘前にちゃんと説明しておくべきだったかな?」

 

能力の持ち主である璃栖瑠以外の誰もが睡魔に負けて眠ってしまった中、璃栖瑠は申し訳なさそうにそう呟くのであった……

 

その後璃栖瑠は皆が起きるのを待った後に移動を再開し、古鷹達を日本近海まで無事に送り届けると、マッハ2と言う速度を叩き出しながら海戦ちゃんぽん要塞に帰投するのであった

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