※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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江田校祭編
江田校祭と提督科の悩み


舞鶴鎮守府での研修を終えた戦治郎達は、新幹線で京都駅から広島駅に向かい、駅のホームで長門屋鎮守府(張りぼて)の見学を終え、博多駅から新幹線で広島に戻って来た磯風達と合流し、江田島軍学校にするなり戦利品の整理をすると言う瑞鳳と別れ、それと入れ替わる様に戦治郎達を出迎えに来てくれた鹿島と合流すると、各々の荷物を自室に片付けた後、戦治郎と大和の部屋に集合するのであった

 

そうして皆が各々に体験した休み中の出来事について話をしている時に、最後に戦治郎達の部屋にやって来た毅が、眉間に皺を寄せながら部屋に入って来るなり……

 

「戦治郎……、やっぱおめぇが言った通りになってたわ……」

 

「あちゃ~……、やっぱりか~……」

 

戦治郎に向かってこの様に言い放ち、それを聞いた戦治郎はこの様な事を口にしながら己の額をペチリと叩くのであった

 

「戦治郎さん、一体何の話をしているのでしょうか……?」

 

そのやり取りがどうも気になった浜風が、不思議そうな表情を浮かべながら戦治郎に向かってこの様に尋ねると、戦治郎はゆっくりと左右に顔を振りながら深い溜息を吐いた後……

 

「休み明けの提督候補生が、一体どれだけ残ってるかって話さ。んで、横須賀の燎から聞いた話や、俺が実際に提督候補生達の様子を見て予想していた事が、現実になっちまったみてぇなんだわ……」

 

「あぁ……、その事でしたか……」

 

苦々しい表情を浮かべながらこの様な事を言い、それを聞いた鹿島が困った様な表情を浮かべながら、呟く様にそう言うのであった……

 

そう、休み前でもかなり減っていた提督候補生達が、今回の休みによって厳しい訓練から解放された事に喜びを感じると共に、軍学校での生活を馬鹿らしく感じる様になってしまい、軍学校に戻る事を拒否する様に退学届を提出し、軍学校を去って行ったのである

 

「まあ大体が金と名誉と地位と女の為に、提督になろうとしてた様な連中ばっかだったからな……」

 

「提督だったら厳しい訓練は無いだろうと考えて、軽い気持ちで軍学校に入って見たら、普通なら考えられんくらいの訓練地獄が待っていて、理想と現実が乖離し過ぎてて絶望しているところに今回の休みだからな~……、逃げ出すには丁度良い機会だったんだろうよ」

 

荷物を置きに行った際、休み明けが近いにも関わらず、人気も無く完全に静まり返って寮の様子を実際に見て来た毅は、呆れた様子でこの様な事を言い、それを聞いた戦治郎が毅同様情けないとばかりに再び溜息をつき、この様に言葉を続けるのであった

 

「それってさ、もしかして新幹線の中で私が江田校祭の話をした時、2人揃って唸り始めた事と関係あったりするの……?」

 

「「ありもあり、大有りなんだよなぁ……」」

 

そんな2人の様子を見ていた瑞鶴が、新幹線内での出来事をふと思い出し、2人に向かってこの様に尋ねてみたところ、戦治郎と毅は口を揃えてこの様に答えるのであった……

 

提督候補生達が大量に辞めてしまった事と江田校祭……、この2つにどの様な関係性があるのかについて、鹿島と大和以外の艦娘達が不思議そうに小首を傾げていると、戦治郎が相変わらず眉間に皺を寄せながら、不思議がる彼女達に分かり易く自分達が悩んでいる理由について説明し始めるのであった

 

戦治郎が言うには、江田校祭は江田島軍学校の関係者と地域住民が、この行事を通して交流する事で互いの理解を深め、それと同時に地域住民からの軍に対しての信用と信頼を獲得しようと言う目的で開催されているものなのだそうだ

 

そしてその内容は、簡単に言ってしまえば軍の公開演習に高校の文化祭の要素を取り込んだ様なものとなっており、軍学校はこの日に限って一般公開され、来場者達は生徒達が展開する出店を楽しみつつ、各艦種から選抜された艦娘候補生達の演習を、実際に身近で見る事が出来る様になっているのだそうな

 

因みに戦治郎が江田校祭の事を知っている理由は、言うまでもなく過去に別の軍学校で似た様なイベントを実際に経験した事がある燎や大和から、この事を事前に聞いていたからである

 

「んで、今年の江田校祭みたいな軍学校主催のイベントは、横須賀の乱で失ってしまった日本帝国海軍の信用信頼を取り戻す為に、軍からもある程度資金を援助するから、大いに盛り上げる様にと各軍学校にお達しが来てるんだわ」

 

「何で戦治郎さんがそないな事知っちょるん?普通そないな情報は、軍学校関係者内にしか……」

 

「そりゃおめぇ、俺のダチの中には元帥の補佐官やってる奴がいるんだべ?それ以外にも、俺達が横須賀鎮守府に居候している間、ここで教官する事になってる大和や綾波も近くにいた訳だ、当然教官をする大和達にもこの通知は来ている訳だから、自然と俺の耳にもその情報が入って来るってモンよ」

 

「そもそも、その通知が記載された書類は、提督になる為の修行の一環として、元帥や源中将の手伝いをしていた提督が作成されたものですから……」

 

少し話が逸れ、そもそも江田校祭が開催される理由についてと、大本営から軍学校に向けて通達があった事について戦治郎が語ったところで、この情報をどうして戦治郎が持っているのか不思議に思った浦風が、ふと戦治郎に向かってこの様に尋ねてみると、戦治郎はどこか誇らしげに胸を張ってこの様に答え、その直後に件の書類作成を手伝っていた大和が、苦笑しながらこの様な事を口にするのであった

 

その後戦治郎は話を本題に戻す為、1度咳払いをした後にこの様な事を口にする

 

「さて、軍から江田校祭を盛り上げる様に通達が来ている訳だから、当然軍学校もそれに従って生徒達や教官達にもこの話をして、このイベントを盛り上げようとする。んで、教官達は演習を成功させる為に、参加するメンバーを会議なんかで厳選してイベントを盛り上げようとするよな?じゃあ俺達候補生達は、どうやってイベントを盛り上げようとする?」

 

「順当に考えれば、出店やステージなどでの出し物か……?」

 

戦治郎がこの部屋にいる者達全員に向かって、この様に問い掛けたところ、少し考え込んだ後磯風がこの様に答え、それを聞いた戦治郎は磯風の答えを肯定する様に静かに頷き返した後、この様に言葉を続ける……

 

「Exactly~、では更に続けて聞くが、それらをやる為に必要なものってな~んだ?」

 

戦治郎の言葉を聞いた艦娘候補生達は、一瞬怪訝そうな表情を浮かべるのだが、これまでの話の流れを思い出し、何かに気が付いたのかハッとしながら戦治郎の方へと視線を向け……

 

「鹿島、今残ってる提督候補生の数って分かるか?」

 

皆の視線が集まっている事を確認した戦治郎は、この中でこの江田島軍学校の現在の生徒数を知っていそうな鹿島に向かってこの様に尋ね……

 

「非常に言いにくいんですけど……、今この江田島軍学校の提督科に在籍しているのは、此処にいる戦治郎さんと京候補生、三原候補生と宮島候補生、そして弘前候補生の5人だけで、それ以外の方は皆、休み期間中に郵送で退学届を送って来ました……」

 

戦治郎に尋ねられた鹿島が、非常に申し訳なさそうな顔をしながらこの様に答えると、この部屋にいる艦娘候補生全員が、その衝撃的過ぎる返答に思わず言葉を失ってしまい……

 

「何をやるにしても超重要な人材と言うものが、今の提督科には全然無い状態になっている事は分かってもらえたか……?」

 

「このままじゃ俺達提督科は、碌な出し物も出来ずに江田校祭に参加する羽目になりそうなんだよ……」

 

「因みに出し物が出せない場合、提督科は大本営からの通達を履行出来なかった罰として、来場客の立ち入りが出来ない施設で自習をする事になるそうです……」

 

その直後に戦治郎と毅、そして戦治郎と共に江田校祭を回りたいと考えている大和が、それはそれは暗い表情をしながら、この様な言葉を口にするのであった……

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