※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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呉の三原

提督科の出し物が戦治郎の日本舞踊に決まった後、戦治郎は勉に特設ステージの使用許可の申請を頼み、その間に自分は当日に着る衣装を注文したいからと言って、教室を後にするのであった

 

因みにだが、大本営から各軍学校のイベントを盛り上げる様にとの通達があった関係で、全ての軍学校はイベントが終わるまでの間は授業を中止し、それによって出来た時間を全てイベントの準備に使う様指示を出している為、戦治郎達の行動は江田校祭の準備の為と言っておきさえすれば、教官を始めとする軍学校の関係者から咎められる事もない様である

 

こうして教室を出た戦治郎は、今日の段階では特にやる事も無く、手持無沙汰になってしまった毅と共に自室へと向かい、いつも携行している格納ボックスからタブレットを取り出すと、自室にあるテーブルの上にタブレットを置いて、誰かと通話し始めるのであった

 

「なぁ戦治郎、一体誰と通話するんだ?」

 

「あぁ、俺の仲間の中に司って言う衣類系にドチャクソ強い奴がいて、そいつに当日使用する着物を作ってもらおうと思ってな」

 

「お前の仲間って、ホントバリエーション豊かだよな……」

 

その様子を見ていた毅が、不思議そうな表情をしながらタブレットの前に着席する戦治郎に尋ねると、戦治郎は何気無しと言った様子でこの様に返答し、それを聞いた毅は思わず苦笑しながらこの様な言葉を口にするのであった

 

その後、司と通信が繋がると戦治郎は着物の柄や色などを細かく指定しながら注文し、その間毅はやたら自分の事を持ち上げまくりながら話す司にドン引きしながら、そのやり取りを静かに見守り……

 

「そんじゃ宛先は大和にしておいてくれ、んで誰が見ても恥ずかしくない様な、しっかりしたモン仕上げてくれよ?んじゃな~」

 

『アイアイボス~、モストアイルティメットスプリームイケメンなこの俺様が、ボスの魅力を悪魔的に……、いんや、鬼神的に爆上げしちゃったりしちゃう衣装を仕立てちゃったりしちゃいますから、大戦艦に乗ったつもりで期待してて下さいってね~』

 

戦治郎がそう言って通信を切った後、すぐさま別の誰かに通信を繋げるところを見て、これまた不思議そうな表情をしていると……

 

「取り敢えず三原の方は護に、紅葉の方はイオッチに任せるか……」

 

通信が繋がるまでの間に戦治郎がこの様な事を呟いた為、毅は戦治郎が今何をしようとしているのかを察し、その様子を黙って見守る事にするのであった

 

そして……

 

『ハイハ~イ、現在取り込み中の護に代わって、ワイがお相手するンゴ~』

 

「イオッチか、取り込み中って護は何やってんだ?」

 

『絶賛ネトゲ中ンゴ、最近ワイ達のチームにACEって奴が加入したンゴ。んで、今日は互いの親睦を深めようって事で、交代制で3vs3型式のFPSやってるンゴ。因みにワイはついさっき護と交代したばかりンゴ』

 

「よしイオッチ、今すぐ護のPCの電源落とせ」

 

『お、鬼がいるンゴ……、流石にそれは止めてあげて欲しいンゴ……』

 

戦治郎のタブレットの画面にイオッチの姿が映り、戦治郎はイオッチとこの様なやり取りを交わした後、イオッチに三原と紅葉の素性調査を依頼し、それを聞いたイオッチは報酬として翔特製ピザとLLサイズのコーラのセットを要求、戦治郎がそれを了承するとイオッチはその音声データを記録した後、手が空いている事もあるのか早速調査を開始するのであった

 

「あいつらが抱えている問題も解決してやろうってか?ホントお前はお人よしなんだな……」

 

「あいつらの為って言うよりも、今後の俺の為ってのが中心だがな。舞鶴で話したから分かると思うんだが、こっちは大量に味方が欲しい状況なんだ。だからあいつらに少しでも恩を売って、こっち側に引き込もうって寸法なんだわ。まあそれ以上に、俺があいつらがあんな態度を取る理由が気になるってのもあんだけどな。っとぉ、もう調べ終わったのか……」

 

イオッチが情報収集を開始した直後、毅は呆れた様子で戦治郎に向かってこの様な事を言い、それに対して戦治郎がこの様に返答したと同時に、イオッチからデータが送られてきて、その仕事の早さには流石の戦治郎も驚き、思わずそう呟くのであった

 

さて、そうして送られて来たデータに、戦治郎と毅は目を通していくのだが……

 

「これはまぁ……、三原が民間人に対してあんな言い方すんのも、何か納得しちまうわ……」

 

「流石にこれはねぇわ……、おめぇら一体誰のおかげで呉に住んでいられると思ってんだよ……」

 

データを読み進めて行くに連れて、戦治郎と毅の表情は苦々しいものへと変わっていき、2人は口々にこの様な言葉を口にするのであった……

 

イオッチから送られて来たデータによると、如何やら三原は現呉鎮守府の提督を務める三原提督の1人息子の様で、母親は三原が小さい頃に中々家に帰ってこない夫に嫌気が差し、三原提督と離婚するなりすぐに男を作り、三原を残して男の実家の方へ行ってしまったのだとか……

 

こうして父子家庭となった三原は、呉鎮守府の提督と言う立場上、仕事が忙しく中々家に帰ってはこないものの、偶に帰って来た時は最大限の愛情を三原に注いでくれた父を尊敬する様になり、そんな父の様な提督になる為に努力を重ね、この江田島軍学校に入学した様である

 

そんな三原親子に、無情にも悲運が襲い掛かる……、深海棲艦の大規模な艦隊が、呉鎮守府に襲撃を仕掛けて来たのである……

 

これにより呉鎮守府は甚大な被害を被る事になり、戦力の補充と鎮守府の復旧が急がれる状況に陥ってしまい、何とかこの戦いで生き延びる事に成功した三原提督は、今まで以上に仕事に追われる様になり、これまで以上に家に帰れなくなってしまうのであった……

 

そしてここからが問題である……

 

呉鎮守府襲撃によって呉市民の不安が高まる中、その事を聞きつけた他県の戦争反対派が大挙して呉市に押し寄せ、軍に対しての大規模な抗議活動を開始し、それにより煽動された呉市民も抗議活動に参加するようになったのである……

 

しかもそのメンバーの中には、かつて三原親子を捨てた母親と、母親の新しい男の姿もあり、あろう事か男の方に関しては、この抗議活動の首謀者だったのだとか……

 

その抗議活動の内容には呉鎮守府の復旧の妨害、復旧中の設備の破壊などもあり、これによって呉鎮守府の復旧は大幅に遅れ、今でもまだ呉鎮守府は復旧が完了しておらず、更にその影響は今現在のラバウル基地やショートランド泊地の復旧の遅延や、長門屋鎮守府建設に人手を割けなくなったと言った形で出ているのだとか……

 

こうして戦争反対派の相手もせざるを得なくなった三原提督は、精神的ストレスによって病を患ってしまい、遂には執務中に意識を失って病院に緊急搬送される事態となり、その後も自分の代わりになる様な優秀な人材が今の海軍にいない関係で、投薬しながら提督業を続行しているのだそうな……

 

そんな弱り切った父の姿を見た三原は、自分が父の代わりになる為にと、提督になる決意を一層固めると同時に、自身が尊敬してやまない父を此処まで追いやった、口先ばかりが達者で、軍に守られていると言う事実から目を背け、この戦争が如何いったものであるかも知ろうともしない民間人に対して、嫌悪と憎悪の念を抱く様になってしまったのだそうな……

 

『民間人はこんなアホばっかじゃなく、ピザの配達員の兄ちゃんみたいなまともな奴もいると言うのに……。三原とか言う奴の中では全部ごっちゃになっていそうンゴ』

 

「このアホ共……、何で態々他県から遠路遥々やって来て、こんな馬鹿みたいな事やってんだよ……?しかも三原の母ちゃんまで抗議活動してるとか……、提督やってる旦那に構ってもらえなかったモンだから、その元凶となった軍に噛み付くってか……?こいつ本物の馬鹿だろ……?」

 

「多分元帥のクソ爺は報告を受けていながらも、三原の父ちゃんならこの問題もすぐに捌けるって、このくらいの病気なら耐えられるって判断したんだろうな~……。あの脳みそお花畑爺……、こう言う時こそおめぇが出しゃばる時だろうがよぉ……」

 

三原のデータを読み終えた戦治郎達と、データを集める際に内容に目を通していたイオッチは、それぞれこの様な事を口にした後、それはそれは深い溜息を吐くのであった……

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