※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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誰が為の金

「三原の問題を解決するには、ちょっち時間と準備が必要そうだな……。多分、江田校祭までに解決するのは無理かもしんねぇ……」

 

「だろうな……、いくらお前でも、この問題は早々解決出来ねぇだろうよ……」

 

「民間人が関わってるってのが、厄介な点なんだよなぁ……。まあ神話生物やアタマおかしい転生個体の相手するよりゃ、よっぽど楽だと思うけどな。って事で取り敢えず三原の件は後回し!次は紅葉いくぞぉっ!」

 

三原が民間人に対して明らかな敵意を露わにする理由を、イオッチが集めてくれた情報から知った戦治郎達は、この様なやり取りを交わした後、取り敢えず三原の件は後回しにし、紅葉の金銭に対しての執着心の原因について纏められたデータに目を通し始めるのであった

 

結論から言えば紅葉の金への執着は、故郷にいる家族の為である事が主な理由であった

 

彼女の父はその昔、彼女の地元で小さな会社を経営していたそうなのだが、その会社は海軍や艦娘とは殆ど縁の無い商品を取り扱っていた事が原因で、今も尚加熱し続ける艦娘ブームに乗る事も出来ず、艦娘や提督に憧れて軍学校や軍に入る為に退職しようとする従業員を引き留める事も出来ず、結果として会社は人手不足と売り上げ不振から、倒産してしまったのだそうな……

 

そして会社が倒産した事によるショックと、会社を何とか存続する為に抱えた莫大な借金を苦に、紅葉の父は入水自殺でこの世を去ってしまったのだとか……

 

その後、遺された紅葉の家族達は父が遺した莫大な借金を返済する為に、何とか互いを助け合いながら細々と生活をしていたのだが、日頃の無理が祟ってしまい、生活費を稼いでいた紅葉の母が病に倒れ、父を追う様にして亡くなってしまったのである……

 

これだけで話が済めばまだ良かったのだが、残念ながらそうはいかなかった。宮島家は近所でも有名なくらいに子沢山で、紅葉の上には兄と姉が1人ずつ、下にはまだまだ幼い弟が3人、妹が2人もいたのである……

 

これまでは母が生活費を稼ぎ、兄が借金の返済を、姉が紅葉を含む下の子供達の学費を稼ぐ形で、宮島家の生活は何とか成り立っていたのだが、母が亡くなった事でこの大所帯の生活費を確保する事が難しくなってしまったのだ……

 

この事態を重く見た紅葉を含む上3人の兄妹達は、親戚を交えて話し合いを行い、小さい兄弟達を親戚に預けて学費を肩代わりしてもらう代わりに、兄はこれまで通りに借金の返済に集中し、姉は小さい兄弟達の生活費を送ると言う約束を交わすのであった

 

只、これでも問題があった。兄の稼ぎでは利子分を払うのが精一杯で、中々本体である借金が減らないのである……

 

このままでは駄目だ……、現状を見てそう思った紅葉は、現在艦娘の次に収入が多いとされる提督になり、自分達を苦しめる借金を兄の代わりに完済し、姉の代わりに兄弟達の生活費を稼ごうと決意し、提督になる為に通う必要がある軍学校の学費を調べ上げ、予め軍学校の学費を準備する為に、高校生になったばかりでありながら、学生バイトを始めるのであった

 

さて、何故紅葉は現在最も収入が多い艦娘になろうと考えなかったのだろうか?その答えは単純なもので、彼女には艦娘の適性が無かったのである……。故に彼女は艦娘ではなく、提督になる道を選んだのである……

 

「あああぁぁぁーーーっ!!!おあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

「うぉっ!?ビクったぁっ!!」

 

ここまでデータを読み進めたところで、突如として戦治郎が非常に悔しそうな表情をうかべながら、その悔しさを紛らわす様に咆哮を上げ、テーブルをカチ割らんばかりの勢いで叩き、戦治郎の咆哮とテーブルを叩く音に驚いた毅は、1度身体をビクリと震わせた後、何事かと慌てて戦治郎の方へと視線を向ける

 

「なして俺に相談しなかったんだよっ!!紅葉の父ちゃんはよぉっ!!!商売の話なら幾らでも親身になって聞いてたぞこの野郎っ!!!何ならウチの祖父さんに相談しても良かったっ!!!長門流経営術の開祖の祖父さんなら、零細企業を巨大財閥にだって出来るってのによぉっ!!!」

 

「いや、データにある日付見た限り、それは幾ら何でも無理だろ……。この日付、前に言ってたお前がこの世界に来た日よりかなり前なんだからよぉ……」

 

尚も今更過ぎる事を吼え続ける戦治郎に対して、毅はガックリと肩を落とし、呆れた様子でこの様なツッコミを入れるのであった

 

その後、何とか戦治郎が落ち着きを取り戻したところで、2人は紅葉の事で話し合いを始める

 

「紅葉の件は、なるべく早急に解決したいところだな……。もし紅葉が今のまま提督になっちまえば、金目的で横流しやら何やらやっちまう様な提督になっちまう……。そうなると軍の評価を落とす羽目になって三原の件も悪化、最悪剛さん達の手を煩わせる事になっちまいそうだ……」

 

「剛さんってのは、お前の仲間か?」

 

「そそ、ブラ鎮に制裁を加えるお仕事もする、ウチの鎮守府の特警隊の隊長さん」

 

「……最悪、紅葉がその人の手に掛かる可能性があるのか……?」

 

「ホント最悪の場合は、だけどな。まあ、俺がそんな事させねぇさ」

 

このやり取りの後、何か策を練っているのか、難しそうな表情を浮かべる戦治郎の言葉を聞いた毅は、同期の仲間が同期を始末する展開が発生せずに済みそうな事に安堵の息を吐くのであった

 

「さてさて……、紅葉の意識改革の方法だが……、こりゃちょっち荒療治する必要があっかな~……?」

 

先程のやり取りからしばらく経ったところで、ある程度考えがまとまった戦治郎が、苦々しい表情を浮かべ、後頭部をポリポリと掻きながらこの様な事を口にする

 

戦治郎の口から出た荒療治と言う単語に、少々嫌な予感を感じて眉を顰める毅が、荒療治の内容について戦治郎に尋ねると……

 

「さっき言ってた剛さんに協力してもらって、紅葉に今の自分の未来の姿と、その結末を見てもらうって感じだな。まあ、多分動くのは剛さんじゃなくて通と艦娘達になるだろうけどな……」

 

戦治郎は苦笑しながらこの様に答え、その返答を聞いた毅は思わず不思議そうな表情をするのであった

 

そんな毅に対して、戦治郎が剛が水母棲姫の転生個体である事を告げると、毅は納得したのか小刻みに首を縦に振りながら苦笑するのであった

 

そう、剛は下半身の形状が特殊な水母棲姫である為、変装で正体を隠す事が非常に難しく、もしこの戦治郎の企みの中で剛の正体が紅葉にバレてしまえば、剛が戦治郎の仲間である事から、流れで戦治郎の正体もバレてしまう可能性が非常に高まり、現状まだ正体を隠しておきたい戦治郎に、不都合が生じてしまうかもしれないのである

 

「これは俺がリスクを背負う事になっちまうが、俺達の戦力になってくれそうな紅葉をむざむざ失う様な事はしたくないし、何より腐り切った紅葉の姿とか、あいつの兄弟達は見たくないだろうから、やる価値はあると思うんだわ」

 

「お前がそう言うなら別にいいんだが……、その紅葉に見せる現場はどうするんだ?」

 

「それについては……、そこにピザ臭いロトムがおるじゃろ?」

 

戦治郎の言葉に対して、毅がこの様な疑問をぶつけると、戦治郎はこの様な事を言いながらタブレットの右側に視線を向け、毅がそれに倣ってそちらに視線を向けると、そこにはそれはそれは美味しそうにピザを頬張るロトム……、いつの間にかこちらにやって来ていたイオッチの姿があったのであった……

 

この後、戦治郎から追加注文と追加報酬を貰ったイオッチは、即座にターゲットとなるブラック拠点を調べ上げ、その情報を得た戦治郎はすぐにその拠点と接触する方法を考え、剛にこの事をお願いする為に通信を入れるのであった

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