※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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隠形鬼の真骨頂

外で剛達が基地の艦娘達相手に大立ち回りをしている中、執務室の方はどうなっていたのかと言えば……

 

「おぉ~、盛大にやってんねぇっ!!」

 

「地下からの攻撃とか、普通はまぁ想定しねぇよな……。それ見た基地の艦娘達が、皆動揺して動けなくなってやがる……」

 

戦治郎の腕力を用いる事で、先程まで自分達が座っていたソファーを盾にしつつ、神通達から最も離れた場所である窓際まで移動した戦治郎と毅は、外の様子を覗き込む様にして窓から眺めながらこの様なやり取りを交わしていた

 

一方、先程執務室に入って来た神通達の方はと言うと……

 

「よっとぉっ!!」

 

自分達に向かって飛び掛かって来る艦娘を上手い具合にいなし、それによって出来た隙を突く様にして、川内が掛け声と共に相手の艦娘を投げ飛ばし、床に叩きつけられた艦娘が苦悶の声を上げるよりも早く、川内は戦闘が開始してからすぐに腰から引き抜いたスタンバトンの先端を倒れた基地の艦娘の首筋に押し付け、その電気ショックで彼女の意識を奪い去ってしまう

 

その傍らでは……

 

「ふっ!!」

 

神通が自分に掴みかかろうとして来た艦娘の片腕を左手で取り、自身の方へと引き寄せて相手の体勢を崩しつつ、その勢いに乗せて相手の鳩尾に自身の右肘を突き立て、肘打ちをモロに受けた相手が苦し気に前のめりになったところで、神通はすかさず一本背負いの要領で相手を投げ飛ばしていたのであった

 

如何やら格闘スキルに関しては、基地の艦娘達よりも神通達の方が上手の様で、執務室に突入して来た時には十数人はいた基地の艦娘達も、その半分は神通達の手によって気絶させられていたのであった

 

恐らく彼女達はこの数で2人しかいない神通達を取り囲み、艤装の砲を向ければきっと大人しくなるだろうと思っていたのだろう、突入当初は余裕あり気にニヤニヤと笑みを浮かべていたのだが、いざ戦いが始まれば神通達に圧倒されてしまい、今の彼女達の表情には焦燥感がベットリと張り付いていたのであった

 

ここで基地の艦娘達のミスを挙げるとするならば、神通達の実力を見誤った事、屋内戦用の装備の準備や屋内戦を想定した格闘技術を身に付けていなかった事、大人数で狭い室内に突入し戦闘を開始すればどうなるかを想定していなかった事だろうか……

 

実際、彼女達は戦いが始まるや否や、艦娘でありながら格闘戦を仕掛けて来た2人に動揺し、仲間が数名やられてしまったところで我に返り攻撃を仕掛けようとしたのだが、艤装に取り付けられた兵装の威力がモチーフとなった兵装のものと遜色ない事を思い出し、もしそれをこの執務室内で使用しようものならば、自分達の金蔓である提督まで巻き込んでしまう可能性に思い至り、自分達の唯一の武器である艤装の不使用を余儀なくされてしまい、更には大人数で狭い執務室に突入してしまった事で、仲間を自分の攻撃に巻き込まない様にしようとした結果、碌に身動きが取れない状態になってしまい、そこを神通達に付け込まれてしまったのである

 

こうして神通達に徐々に追い詰められていく基地の艦娘達だが、彼女達の中にはどうしても不可解と思う点が1つだけあった……

 

そう、神通達の実力云々は兎も角として、彼女達はたった2人しかいないにも関わらず、通常では有り得ない速度で自分達を打ち負かしているのである……。基地の艦娘達はこの点が気になって仕方が無いのである……

 

そんな事を考えている間に、川内が身軽な動きで仲間の1人に飛びつき、両脚で首をギリギリと絞めつけて仲間の1人の意識を刈り取り、その場に倒れ込みそうになる仲間の身体を、プロレス技のフランケンシュタイナーの要領で投げ飛ばそうとしていた為、それに巻き込まれない様退避しようとしたのだが……

 

不意に誰かに背中を強く押され、驚きつつも背中を押した犯人の顔を確認する為にそちらに視線を向けるのだが……

 

(誰もいない……っ!?)

 

彼女の視線の先には、既に神通達にやられ倒れ伏せる基地の艦娘達の姿しかなく、信じ難い事実を目の当たりにした事と、押された時の力が思った以上に強かった事が合わさり、彼女は踏み止まる事も出来ずに川内のフランケンシュタイナーに巻き込まれ、その衝撃で気絶してしまうのであった……

 

「さて、こっちは終わったよ?」

 

「こちらも全員鎮圧しました。では提督……、その身柄を拘束させてもらいます」

 

これにより執務室に突入した艦娘達は、全員が神通達にやられてしまい、残るは提督だけとなり、川内と神通がこの様なやり取りを交わした後、その身柄を拘束するべく提督の方へとツカツカと歩み寄っていくのだが……

 

「くそっ!!!」

 

提督は捕まってたまるかとばかりに、懐に忍ばせておいた自動拳銃を引き抜き、戦治郎達がいる窓際の方へと走り出すのであった。如何やら提督は、戦治郎達提督候補生の誰かを人質に取り、逃走しようと目論んでいる様である……

 

それに気付いた神通と川内が急いで駆け出し、戦治郎もソファーから飛び出して提督を迎え撃とうと構えを取るのだが……

 

「グガッ?!」

 

その次の瞬間、何者かの手によって足を掬われた様にして、提督はその勢いのまま前のめりになって倒れそうになり、提督は拳銃を投げ捨てて受け身を取るべく両手を床に叩きつけようとするのだが、それよりも早く提督の頭が床に穴が開く程の勢いで叩きつけられ、提督は完全に沈黙してしまうのであった……

 

「え……、えぇ……?」

 

「おい……、一体何が起こったんだ……?」

 

ソファーの裏から頭だけを出し、その様子を見ていた紅葉と毅が、信じられないとばかりに呆然としながらこの様に呟く中……

 

「さっすが副隊長、カッコよく決めてくれたね~」

 

「ありがとうございます、通さん……」

 

川内はニヤニヤしながら、神通は何処か申し訳なさそうな表情を浮かべながら、ピクピクと痙攣する提督の方へそれぞれこの様な言葉を発するのであった。因みに勉は精神的ショックのあまり、ソファーの裏で気絶していたりする……

 

その直後である

 

「神通さんは私の手を煩わせない様頑張っていた様ですけど、私も特警隊の副隊長としてこの任務に就いているのですから、何もしないまま帰る訳にはいきません。なのでその様な顔をしないで下さい」

 

この言葉と共に突如として提督の頭を押え込む黒衣が姿を現し、紅葉と毅は突然姿を現した黒衣に驚愕、言葉を失い黙り込んでしまうのであった

 

そう、この黒衣の正体は、剛から特警隊の副隊長に任命された通なのである。彼は今回の任務に参加するにあたって、普段つけている仮面を外し、歌舞伎などの裏方である黒衣に変装し、姿を隠して常に神通達から離れず行動を共にしていたのである

 

そして戦闘が始まった時、通は姿を隠したまま神通達のサポートを行っており、基地の艦娘達の減りが早かった原因も、先程基地の艦娘を川内のフランケンシュタイナーの巻き添えにした犯人も、全てこの姿を隠した通だったのである

 

(あれが最近通が体得したって言う、『光遁の術』って奴か……。光の屈折率を変えて姿を隠す……、MGSのステルス迷彩みたいなモンを忍術で使える様になったって剛さんから聞いてたが……、マジで姿を視認出来なかったな……。まぁ通が纏う微弱な剣気や闘気のおかげで、ギリギリ俺は通を感知出来たが……、これまたおっかねぇ術を体得したモンだなぁ……)

 

そんな中、今回の話を剛にした際、剛から聞かされていた通の新しい忍術の話を思い出しながら、戦治郎は内心でこの様に呟いていた

 

尤も、この光遁の術と言うのは通のでっち上げであり、この技の正体はダークネスの力を一時的に借りる事で、他者から見える自分の姿をダークネスの闇で包み隠し、誰にも自分の姿を視認出来ない様にすると言う、この世の中ではダークネスの相棒である通にしか出来ない芸当となっていたりする……

 

尚、闘気や剣気に関しては、神通達への識別信号代わりにする為、敢えて闇での隠蔽はせず、最低限に抑えつつ放っていた模様……

 

こうして提督は通の手により手錠をかけられ、これを以て基地の制圧が完了、それから間もなくして剛の通報を受けた憲兵隊が基地に到着し、提督の身柄は憲兵達に渡され、残った艦娘達と提督候補生である戦治郎達は、事件への関連性を調べる為、事情聴取を受ける事となるのであった

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