※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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石油を求めるのは不本意

基地制圧戦を仕掛ける様に剛に依頼を出した際、戦治郎は1つだけ空宛ての言伝を頼んでいた

 

その内容はと言うと、手が空いている者を出来る限り集めて、自分が指定した場所で温泉を発掘して欲しいと言うものであった

 

そう、戦治郎が指定するその場所と言うのが、紅葉の実家がある場所なのである

 

この時戦治郎が発掘する物を石油にしなかったのは、幾ら紅葉が自分の同期であっても、正直なところ現状ではそこまでの事をしてあげる程の義理を戦治郎が紅葉に対して感じていなかった事と、生活が苦しいからと言って、日本では非常に貴重な油田を気前よくポン!とプレゼントしようものならば、紅葉の家族が善人であるならば確実に委縮され、悪人ならば戦治郎の気前の良さに甘ったれて、戦治郎を無心の対象にするかもしれないと言う懸念があったからである

 

又、以前神帝之型を用いて天候操作を行った際、誤って地震と地殻変動を引き起こしてしまった戦治郎だが、彼はこの時に日本の地質が変化してしまっている事に、鎮守府の敷地内にボーキサイトの鉱脈が出来ているにも関わらず気付いていない事もあって、日本で早々掘れるものではない石油を掘るよりも、岩盤を貫けば大体出るであろう温泉を掘った方が確実性が高いと考えていたのである

 

更に言えば、戦治郎がこの様な考えに至った理由には、あるものの存在が大きく関わっていた……。そう、空がエイブラムスとの戦いの最中に偶然入手した温泉……、『自由の湯』である

 

この温泉、開業当初は思った程客が来ていなかったのだが、ある日を境に爆発的に人気が出て、今では毎日多くの客で賑わっているのだそうな

 

そうなった切っ掛けとは一体何かと言うと、先ず最初は地元のスポーツ系の部活をやっている学生達の口コミであった。彼等が言うには部活の後に『自由の湯』に入ればその日の肉体疲労が嘘の様に無くなり、練習中に負った打ち身などのちょっとした怪我の痛みも見る見るうちに和らいだのだとか……

 

それが地元の草野球チームなどに広がり、その中から若い頃に無理をし過ぎた事が原因で故障してしまった腕や肩の調子が戻ったと言う報告がされ、その話がSNSなどを通じて日本中に拡散され、それを目にした怪我で二軍落ちしていたプロ野球選手が半信半疑になりながらも湯治の為に『自由の湯』を訪れたところ、その噂が事実である事を証明する様に二軍リーグで目覚ましい活躍をし、ペナントレース中にも関わらずに一軍復帰を果たし、仕舞いには所属するチームにクライマックスシリーズの切符を掴ませるほど貢献したのだそうな……

 

これにより多くのプロスポーツ選手がこの『自由の湯』を訪れる様になり、その影響でプロアマ問わず多くのスポーツを愛する者達が『自由の湯』を利用する様になり、何時しか『自由の湯』は【湯治の聖地】として親しまれる様になっていたのだった

 

どうしてこうなった……、その原因は空とエイブラムスにある

 

この世界では『力ある者の言葉には力が宿る』……、戦治郎はこの理屈を利用してネームド艦載機の量産を成功させている訳だが、これと同じ現象が『自由の湯』にも発生したのである

 

『自由の湯』は元々旧支配者のアトラク=ナクアであるエイブラムスが仕掛けた流水トラップを、空が上手く利用して温泉にしてしまった事で誕生したものである。そう、その誕生には邪神として人々に恐れられる旧支配者と、旧支配者の中でも実力があるクトゥルフと生身で互角に渡り合える空が大きく関わっているのである

 

これによって『自由の湯』に力が宿るフラグが成立し、そこに空が温泉経営をするにあたって《帝国海軍に祀られる龍神の憩いの地》と言うキャッチコピーを付けた事で言霊の力が発動し、『自由の湯』に力が宿ってしまったのである

 

因みにこの『自由の湯』の効能、龍神(=空)が海軍内で武神やら闘神やら戦神やらとして崇められている事から、スポーツなどの競技(=戦い)で負った怪我などに特に効く様になっている他、この効能のせいで陰に隠れてしまっていてまだあまり世間には知られていないが、縁結びの神としても慕われている事から、不妊にも大きな効果があり、『自由の湯』に入った夫婦は子宝にも恵まれるのだとか……

 

この事に関しては空も戦治郎も売り上げ調査を行った際、ついでにこの効能についても調査を行っていた為既に把握しており、戦治郎は温泉を掘る様にと指示を出した際、必ずメンバーに空を入れる様に厳命し、それを受けた空もそれを了承していた。そうする事で今回掘る温泉でも確実に『自由の湯』の時と同じ現象が起こり、石油ほどの利益は出せなくても、間違いなく稼げる温泉が作れると……、戦治郎と空はそう考えたのである

 

しかし戦治郎達の目論見は……

 

「如何せ掘るなら石油にしようぜっ!!温泉でチマチマシコシコじれったく稼ぐよりも、石油でドカァーンッ!!とでっかく稼いだ方がいいだろっ!!?そもそも空が温泉掘り当てるって話、これで一体何回目だよっ?!そんな天丼やるよりも、石油掘った方がよっぽど酒の肴になんだろうがっ!!!」

 

戦治郎と空とは小学校~高校までの期間を共に過ごして来た幼馴染の1人であり、南方海域で拠点を建設しようとしていた強硬派深海棲艦達に単騎で奇襲を仕掛け、彼女達が準備していた拠点用の建材を根こそぎ強奪した事で、その時着用していたスタジャンの背中に描かれていた絵柄と、その腕力に任せてあらゆる障害物を片っ端から破壊しながら突撃して来る荒々し過ぎる戦いぶりから、『⑨(ナインボール)デストロイヤー』と言うあだ名を付けられている輝の発言によって、物の見事に粉砕されてしまうのであった……

 

この時空は戦治郎と自分が温泉を掘ると決意した理由を、誰が聞いてもしっかりと理解出来る様に言葉を選びながら説明した上で、その能力によって長門屋鎮守府に必要な建物の建設を粗方終えてしまい、手持無沙汰になってしまって若干ストレスが溜まり気味の輝の説得を試みたのだが、どうせやるならば派手な事をでっかくやって、溜まったストレスを発散したいと言う輝は、空の説得を聞き入れなかったのである

 

それどころか輝の発言によって、面白い事超極絶大好き人間の護と、輝とは逆に現在自分達が担当する事となっている農場と、農作業に必要なポリ戦車(タンク)用のアタッチメントが完成していない関係で手持無沙汰になってしまっている天龍と暁が輝の味方になってしまい、長い話し合いの末、もし目的地の地下に石油の油脈があれば石油を、無ければ温泉の湯脈を掘る事で、平行線をたどり続けていた話し合いは一応の決着を見せるのであった

 

因みに天龍と暁が農業を担当する事になった経緯だが、天龍は未だに本調子を取り戻していない龍田が、何かしらの形で皆の力になりたいと言い出し、具体的にどうするかについて2人で話し合った結果、天龍が中部海域で経験した出来事から、皆が安心して食べれる様な物を供給出来る様にすると言う事で話が纏まった事が切っ掛けとなっており、暁の方はあまりに彼女の偏食が酷かった為、それを矯正する為に農家さんの苦労を彼女に知ってもらおうと言う翔の提案により、半ば強制的に参加させられる羽目になったのだとか……

 

話を採掘対象の方へ戻し、イオッチに頼んで地底の微生物を探知機化して地質調査を行ったところ、紅葉の実家の地下に油脈が存在する事が発覚、空達のターゲットは石油に変更される事となるのであった……

 

こうして石油を掘る事になった空達は、基地の制圧を終えて鎮守府(張りぼて)に帰還して来た陽炎達の姿を確認すると、前日から準備していた荷物を輝の艤装に全て格納し、彼女達と交代する様な形で穴の中へと入って行き、輝の思い付きで誰が最初に目的地に到着するかで勝負する事となるのであった……

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