正しくは『氷海法師』となっております……
目当ての石油を無事発掘する事に成功した空達であったが……
「シゲ、その白はポンだ」
「「ぎゃああぁぁぁーーーっ!!!」」
「これで空さんは大三元確定ッスねぇ……、もしこの状況で輝さんが放銃しようモンなら、大三元を確定させたシゲと仲良く飛びッスね~。いや~、さっきのサマバレの罰符がここで響いて来たッスね~」
「くっそぉ……、護ぅ……、お前後で覚えとけよぉ……」
空と輝が勢い余って足場となる岩盤を粉々に破壊してしまった事と、石油が噴き出す勢いが思った以上に強いせいで、噴出する石油の勢いが収まるまで配管が出来ない状態となってしまった為、石油の噴出が落ち着くまでの間暇になってしまった空達は、輝が持ち込んだカード麻雀を興じて時間を潰していたのであった
因みに今回の麻雀のルールは、対戦治郎ルールとして見つからなければイカサマの使用が認められており、もし見つかった場合はチョンボとして全員に親子関係無しに4000点の罰符を払う事になっている
このルールが出来た原因には、軍学校の入試の際に見せた戦治郎の豪運の存在があり、戦治郎に親を渡さない様にするには、イカサマを使ってでも高い役でスピーディーに上がり続け、何が何でも戦治郎を親になる前に飛ばす必要があった為、30代ズの提案でこのルールが設けられたのだとか……
尚、先程の護と輝のやり取りで察する事が出来ると思うが、空の大三元が確定する前、輝はスタジャンの袖に仕込んでいたカードを手札とすり替える事で、国士無双13面待ちを仕掛けようとしていたのだが、それを護に見抜かれてしまった為、チョンボ罰符を払うハメになったのであった
因みに現在大三元が確定している空だが、彼もまたイカサマを使って今の状況を作っており、その内容は輝よりも大胆なもので、光速正拳突きの要領で山札から必要なカードを引き抜くと共に、手札のいらないカードを山札の中に差し込むと言うものでとなっている。これに関しては、シゲが一応目を光らせてはいるのだが、空の腕の動きがシゲの動体視力を遥かに上回っている事が原因で、未だに見抜かれてはいないのだとか……
その様子を空の背後から見ていた天龍は……
「こうまでしねぇと倒せねぇ戦治郎さんって、一体どんだけつえぇんだよ……?」
只々愕然としながら、この様な事を呟くのであった……
こうして空達がカード麻雀を興じている頃、ロシアの北にあるカラ海よりも更に北にある北極海のド真ん中で、以前空がパンツ調査を行った際に出会った、始達と共に行動していた比叡は、寒さにその身を震わせながらも、何かを探す様にキョロキョロと辺りを見回しながら航行していたのであった
「師匠の事だから、きっとこの辺りにいるはず……っ!」
そんな彼女がそう呟いたその直後、微かながら琵琶の音色が彼女の耳を打ち、それに気が付いた比叡は急いで琵琶の音色が聞こえた方角へと顔を向け、腰に差した打刀を揺らしながら全速力でそちらへ走り出すのであった
そして……
「師匠っ!!!ようやく見つけましたよっ!!!!!」
目当ての人物を発見した比叡は、喜びとやる気が絶妙なバランスで混ざり合った様な声でその人物に声を掛ける。すると琵琶を弾きながら何処かへ向かってゆっくりと海上を歩いていたその人物は、琵琶を弾くその手と歩みを止めて比叡の方へと顔を向け……
「ヒエイ……、またアナタデスカ……。前にも言いましたガ、拙僧は剣術に関する弟子入りは認めていませんヨ……」
比叡の姿を確認すると、彼女に向かって溜息交じりにこの様に言い放つのであった
さて、比叡が師匠と呼び慕うこの人物、その恰好は極めて奇抜なものとなっており、一言でその姿を表現しようとすると、如何しても『痴女』と言う言葉が真っ先に出て来てしまうほどである……
サイハイブーツを履き、マントを羽織ってはいるものの、マントの前を閉めていないせいで恥部を前張りで隠している事以外はまともに衣服を着ていない事が丸分かり、中々に実った2つの乳房は左右をそれぞれ顎くらいの高さで纏めた髪によって隠されている……。所謂『裸マント』と言う状態なのである……
これでもかなり異様な格好と言えるのだが、それを更に際立てている物が何と3つもあるのである……
その1つは今彼女(?)が手にしている琵琶なのだが……、それ以上のインパクトを与えて来る物として、彼女(?)が装着する艤装が挙げられる……
彼女(?)の艤装は黒い巨大な2本の腕の様な形状をしており、片方だけでも彼女(?)本体より大きく、かなりの威圧感を発する物となっているのだが……
それをぶち壊す様に、彼女(?)の艤装はそれはそれは巨大な
これで2つほど彼女(?)の異様さを際立てる外見的特徴を挙げたが、先程も言った通り彼女(?)の異様さを際立てているものは3つ……、後1つ存在するのである……
その最後の1つと言うのが、彼女(?)が被っている帽子である
彼女(?)が被っている煙突の様な帽子……厳密には冠だが、本来ならばそれは頭の上に乗せる様な感じで被る物なのだが、何をトチ狂ったのか彼女(?)はそれをすさまじく深く……、虚無僧の笠の如く顔全体をスッポリと覆ってしまうほどに深く被っているのである……。その冠にそれほどの伸縮性があるのか疑問に思えて来るところだろうが、既に出来てしまっているのだから今更気にするべきではない……
「師匠が戦いが嫌いな事は知っていますっ!可能ならば武力を使う事無く、この世界の海上を彷徨う魂達を、深海棲艦達を鎮めたいと考えている事もっ!!ですが私には師匠が持つその剣術が如何しても必要なんですっ!!!ですからお願いしますっ!!!!私に師匠の剣術を教えて下さいっ!!!!!」
この変質者に弟子入りを断られてしまった比叡だが、それでも尚も真剣な表情を浮かべながら食い下がり、仕舞いには土下座しながら彼女(?)に剣術の師事を乞うのであった
比叡が空と出会った際に触れたと思うが、比叡は佐世保の金剛に認められたい一心で、ドロップ艦としてこの混沌とした世界の海に飛び出し、その道中で強硬派深海棲艦に襲撃されて沈められそうになった事があるのだが、その時に彼女を強硬派深海棲艦達から助け出したのが、今彼女の目の前に立つ深海棲艦……、異様な姿をした北方水姫なのである
その時に比叡が目にした北方水姫の剣術……、それは比叡が剣術に魅了されてしまう程に美しく、素晴らしいものであったらしく、金剛に認められたいと思っていた比叡は、彼女(?)の剣術を体得する事が出来れば金剛に認められるのではないか?と思い至り、日本に連れ戻された後、何とか日本刀を調達すると北方水姫を探し出し、剣術を師事してもらうべく、日本刀を手に再びドロップ艦として海に飛び出したのである
こうして再び海上に立った比叡は、幾度となく深海棲艦の襲撃を受けるのだが、脳裏に焼き付いた北方水姫の動きを思い出しながら剣を振るう事で、これらの苦境を次々と乗り越え、そうする毎に益々正式に北方水姫の弟子になり、剣術の腕を磨く事を望む様になっていた……
故に再び北方水姫と出会えたと言うこのチャンスを、比叡は物にしたくて物にしたくて仕方が無かったのである。だから彼女は、北方水姫に対して土下座までしてみせたのである……
「ソコまでされてしまってハ……、断る事が出来ないではないデスカ……」
そんな比叡の姿を目の当たりにした北方水姫は、再び溜息を吐きながらこの様な言葉を口にし、その言葉を聞いた比叡は満面の笑みを浮かべながら顔を上げる
と、その直後である……
「……師匠?」
「ヒエイも感じ取りましたカ……、
深海棲艦と戦う術を持たないドロップ艦でありながら、師の見様見真似の剣術を用いる事で今まで生き残り続けて来た事で、半人前とは言え剣客としての才覚が目覚めた比叡と彼女の師である北方水姫は、これまで感じた事が無い様な異様な気配を感じ取ると、顔を見合わせる事無くこの様なやり取りを交わし、周囲を警戒し始めるのであった……
それから間もなく、異質な気配の正体が姿を現す……
「これは……?」
「ナルホド……、これは亡者の類デスネ……。
それを……、グリーンランドに本拠地を構えるアビス・コンダクターに所属する山城 駆が、拠点を防衛する為に近海に撒き散らしたと思われる、強硬派深海棲艦を基に作り出した死霊兵を目の当たりにした2人は、各々に思った事を言葉にして放ち、直後に死霊兵が攻撃を仕掛けようとして来た事に勘付くと、すぐさま散開して戦闘態勢に入るのであった
「ヒエイ、弟子入り最初の稽古の内容ハ、見取り稽古としまショウ。アナタは下がって拙僧の動きをよく見ていてクダサイ」
「分かりましたっ!!」
今にも死霊兵に斬りかかりに行きそうな比叡に向かって、北方水姫はこの様な事を言って彼女を制止し、それを聞いた比叡は素直にその言葉に従い、後方に下がって北方水姫の一挙手一投足を見逃すまいと、目を皿の様に開いて彼女(?)の戦いを観察する事にするのであった
こうして比叡の師匠である北方水姫……、いや、北方水姫の転生個体にして『氷海法師』の名で日本中を行脚しつつ、琵琶を用いた独特の説法を説いて回っていた流浪の帰化ロシア人僧侶、
氷海法師ことナザール=ラスプーチンの名前は、帰化申請して改名した後の名前と言う設定です
父称まで入れちゃうと、日本だとややこし過ぎるからね……、シカタナイネ……