極北の地で比叡が自身が師と仰ぐ氷海法師と再会し、ちょっとした襲撃に遭いながらも弟子入りを果たしている頃、戦治郎達は無事に軍学校に帰還し、戦治郎達が例の基地から機材を貰って来る事を事前に聞かされていた教官達の手を借りながら、車に積み込んでいた機材を降ろし、機材を保管している倉庫に運び込んでいたのであった
その際、基地制圧戦のどさくさに紛れて戦治郎達が戴いて来た最新の機材は、貰って来た戦治郎達が独占して使える様にと、その倉庫とは別の、基本生徒達が早々立ち入らない様な場所に運び込まれるのであった
これに関しては教官達だけでなく校長にも移動中に話を通していた為、戦治郎達は軍学校側からは特に独占に関して咎められる事は無く、逆に鎮圧戦に巻き込まれてしまった事に対して、これを仕組んだのが戦治郎であるなど、細かい事情を知らない軍学校関係者からは同情や慰めの言葉を貰う事となるのであった
そうして戦治郎達が機材の運搬をしていた中、不意に紅葉のスマホに着信が入り、それに気が付いた紅葉は少々不機嫌になりながら誰からの着信であるかを確認、それが自身の家族からのものである事が分かると、戦治郎達に一言断りを入れてからこの場を後にし、通話を開始するのであった
(おっ!空達がやってくれたか?)
そんな紅葉の様子を見ていた戦治郎は、タイミング的に空達が手筈通りに温泉を掘ってくれたのだと思い、ニヤニヤしながら機材の運搬をしていたのだが……
(……ん~?な~んか予想よりも紅葉のリアクションが激しくな~い?)
機材を運び終え車の所まで戻って来た戦治郎が次に紅葉の様子を確認した時、紅葉は顔色を真っ青にしながらスマホに向かってがなり立てており、紅葉の様子がどうもおかしい事に気付いた戦治郎は、思わず怪訝そうな表情を浮かべるのであった
それから間もなくして、戦治郎の存在に気が付いた紅葉は一度通話を切り、スマホを懐に仕舞い込むと猛ダッシュで戦治郎の所まで駆け寄り……
「ちょっとあんたっ!!これは一体如何言う事よっ!!?まさかこれが餞って奴なのっ!?!」
「ちょっち落ち着け紅葉、実家の地下から温泉が出たってので驚くのは分かるが……」
「温泉っ!?何言ってんのよっ!!出て来たのは温泉じゃなくて石油だって、今姉さんから電話入って来たんだからっ!!!」
「アイエエエッ!!セキユッ?!セキユナンデッ!??」
混乱の極致に至った紅葉は物凄い剣幕で戦治郎に詰め寄り、そんな紅葉の気迫に気圧されてしまった戦治郎が、後退りしながら温泉の件を弁明しようと口を開くのだが、紅葉は戦治郎の言葉を遮って先程の電話の内容を戦治郎に話し、それを聞いた戦治郎は想定外の石油と言う単語に驚愕し、激しく動揺し始めるのであった
それもその筈、輝の提案で空達のターゲットが温泉から石油に変更された件に関して、戦治郎は本当に何にも知らされていないのである。故に戦治郎は紅葉の口から飛び出して来た石油と言う言葉に対して、大いに驚愕し困惑したのである
その後何とか落ち着きを取り戻した戦治郎は、同じく正気に戻った紅葉から石油が出て来た経緯について尋ね、彼女の話を聞き終えると即座にスマホで空に連絡を入れ、空の方から温泉狙いから石油狙いに変わった理由を聞き出すのであった
因みに紅葉の話によると、彼女の実家に役所の依頼で水道管の調査をしたいと言う、スーツ姿の女性が数名の作業員を引き連れてやって来て、紅葉の姉から許可を取ると早速彼女達の実家の庭を工事し始めたのだとか……
これに関しては当初から戦治郎が計画し、地方自治体に許可を取りにいっていた事もあって、戦治郎も落ち着いて話を聞けていたのだが、工事中に突然そこから石油が噴き出して来たと聞くなり、心底不思議そうに顎に手を当てて小首を傾げるのであった
尚、件のスーツ姿の女性と言うのは変装した空の事であり、作業員も変装した輝達の事だったりする
そして現場の責任者であった空から話を聞き終えた戦治郎は……
「石油は駄目って言ったでしょ~~~?如何して勝手にそんな事しちゃうの~~~?俺、これ以降どんな顔して紅葉に会えばいいと思ってんの~~~?」
『済まない戦治郎……、俺ではああなった輝を止める事が出来なかったんだ……』
「それをやるのが責任者の仕事でしょ~~~?」
『本当に済まない……』
今回の件ばかりは流石に許容出来なかったらしく、心底困った様な声色の中に鋭い棘を潜ませながら空を叱責し、それに対して空は輝達の暴走を止められなかった事に本当に責任を感じているらしく、只管戦治郎に向かって謝罪の言葉を口にするのであった……
こうして事の真相を知った戦治郎は、深い溜息をついた後、苦笑しながら紅葉の方へと顔を向け……
「え~っと……、その……、何だ……。例の餞は当初の予定だと温泉だったのですけれど、こっちの不手際で急遽石油になってしまいました……」
「不手際で石油って何なのよ……?いえ、それよりもこの石油はどうしたらいいのよ……?」
「取り敢えず海軍辺りに売ったらどうだ?海軍の補給基地には艦娘の艤装用燃料用の製油設備あるし、多分結構な額で取引してくれるはずだわ。あぁ、初回の取引については、今回の件の詫びの意味も込めて俺の方から可能な限りサポートさせてもらうぜ。それ以降はお前さんの家族の経営手腕次第だな、流石に全部俺が面倒みたりすると……、な……?」
紅葉とこの様なやり取りを交わし毅達に残りの機材の運搬をお願いした後、紅葉を連れて自室へと戻り、紅葉に正蔵直伝の長門流交渉術を伝授しながら、紅葉の家族用のマニュアルの作成を開始するのであった
これにより宮島家の借金は即座に消し飛ぶ事となり、紅葉を除く宮島家の面々は戦治郎が懸念していた通り長門屋鎮守府全肯定botと化し、紅葉に複雑な感情を抱かせながら、戦治郎の頭を抱えさせる事となるのであった
一方その頃、作戦を終えて鎮守府に帰投した剛が、自室でPCを使って今回の騒動の報告書を作成していると、不意に通信機から伊吹の声が聞こえて来るのであった
伊吹からの通信は珍しいと思い、詳しい話を聞いてみたところ、如何やらΞの時の失敗を活かして作ったと言う、剛専用のパワードスーツが完成した為、スーツの微調整の為のデータを取る為に1度ガダルカナルか海戦ちゃんぽん要塞のどちらかに来て欲しいのだそうな
それに対して剛は、こちらで微調整するのはどうかと提案したのだが……
『実はそいつに搭載されちょる装備の都合で、今の状態では日本にこのパワードスーツを持ち込めんのですよ……』
「その装備って?」
『剛さんに言って分かるかどうか分からんのですが、山のバーストンの多弾頭核ミサイルって奴が……』
「あぁ、確かにそれは非核三原則を唱える日本には持ち込めないわねぇ……」
伊吹の返答をある程度聞いた剛は、核ミサイルと言う単語だ出るなり、即伊吹の言葉を遮る様にしてこの様な言葉を口にするのであった
その後剛は伊吹の頼みを引き受ける事にし、後日不知火と瑞穂、陽炎と時雨の4名を連れてガダルカナル島に向かう事となるのであった
因みに件のパワードスーツ、グレートゼオライマースーツが抱えている核弾頭の問題は、空がクロム・ドラゴンスーツの改良の際に生み出した対深海棲艦用核弾頭『レッドキャップ反応弾』のデータのおかげで何とか解決するのだが、その弾頭を作るのに多大な時間が掛かってしまった事と、以前にも触れたがある事情で剛がツァトゥグァが釧路で密かに経営している神話生物用の病院に入院する羽目になってしまった為、スーツが剛の手元に届くのは相当先になってしまった模様